900番代

 昭和54年に登場した先行試作車です。かつては本州からの玄関口である函館駅を中心とした運行体系でしたが、札幌駅を中心にする運行体系へ転換する計画があり、基本編成7両とし、必要に応じてサービス機器用電源装置を搭載する車輛を含めて最大3両まで連結し、最長10両編成とすることにしました。
 特急形気動車としてはキハ181系に次ぐ、3番目となる系列で、設計にあたってはメンテナンスフリーと信頼性の確保に重点が置かれたために、在来形式で実績のある方法を採用していくことになりました。
 車体は列車の分割・併合を行わない事とし、先頭車は高運転台構造としています。また、着雪防止を図るため前面部は横から見るとくの字となるスラントノーズという、独特の形状を採用しています。また、視認性確保のため前照灯は下部と運転台屋根上に配置されました。車体色は国鉄特急伝統のクリーム4号に赤2号とし、先頭車前面は警戒色の意味合いも込めて、太目に配されています。
 車体構造は同時期に登場した781系と同じ耐寒・耐雪構造をもち、客室では冷房故障時に備えて、内折れ式の換気用窓があるほか、緊急時の非常用扉も設置されました。
 駆動用エンジンは、各車輌に1基ずつ搭載されていますが、サービス用電源装置の搭載の有無により2種類あります。1つはサービス用電源装置を搭載するキハ183形式及びキハ184形式にはキハ40系で採用されたDMF15HSA(220PS/1600rpm)を搭載、電源装置の無いキハ182形式及びキロ182形式にはキハ66系で使用されるDML30HSI(440PS/1600rpm)をそれぞれ搭載しています。
 客室の設備はリクライニングシートが配され、シートピッチは新幹線と同じです。食堂車は製作せず、車内販売で対応する事になり、キロ182形式に車内販売準備室を設置しました。
 約1年半ほど試用し、良好な結果が得られて量産車が登場。量産化改造を受けて、量産車と共に活躍しましたが、平成13年に廃番代となっています。

キハ183 901~(キハ183 904)

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先行試作車の先頭車です。量産車との外観上の違いはスカートの形状や運転台窓の大きさがあります。車内は機器室、客室のみでトイレ、洗面所の設備はありません。

キハ182 901~(キハ182 904、キハ182 905)

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先行試作車で最も多い中間車です。試作車の外観の特徴に冷房装置故障時を考えて、車端部4か所に内折れ式の換気窓がありました。量産車化改造でなくなってしまい、非常口だけが違いとなってました。

キロ184 901(キロ184 901)

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先行試作車で、中間車として唯一サービス用電源装置を搭載する形式として1両製作され、キハ184 901として登場しました。乗降扉が機器室と客室の間にあるのが特徴です。量産車とは定員や車体構造が異なるため、昭和60年にグリーン車に格上げされました。この際、サービス電源用機関を撤去し、車内販売準備室に変更しました。平成元年には車内販売準備室の拡大、車掌室の設置、駆動用機関出力向上などの改造を受けました。

0番代

 先行試作車の結果を受け、昭和56年より登場した量産車です。キロ182形式、キハ184形式に大きな変化がありましたが、概ね試作車に準じた設計となっています。主な変更として自動消火装置、燃料タンク、台車、新鮮空気導入装置の改良、非常口の廃止があります。

キハ183 1~(キハ183 16、キハ183-1)

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試作車とほぼ同じ設計ですが、スカートの折り曲げをやめるなどの違いがあります。駆動用、サービス用電源装置を1基ずつ搭載、車端部には業務用室があります。写真右は登場時の国鉄色にした復刻塗装車です。よく見ると車体番号にハイフンが設けられるなど若干の違いがあります。

キハ183 101~(キハ183 101・キハ183 103)

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特急列車の短編成化に伴い、不足となる先頭車をサービス用電源装置を持つキハ184形式を先頭車化改造したグループで昭和59年に登場しました。分割・併合運転に対応するため、貫通型となり番代区分されています。

キハ183形式200番代(キハ183-212)

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特急「オホーツク」の夜行列車及び「まりも」に14系寝台車を連結するため平成5年に出力アップを図ったグループです。N-DMF13HZC(420PS/2000rpm)に機関を換装すると共に、変速機や減速機も換装しました。一部車輛には車内販売準備室が設置されています。原番号に200番を足しています。

キハ182 1~(キハ182-4)

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量産車の中間車です。駆動用機関は試作車と同じです。

キハ184 1~(キハ184 6)

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試作車とは異なり、定員確保のためトイレ、洗面所を廃止しています。また、通路を変更し、デッキと機械室の仕切り扉を廃止しています。先頭車化改造の種車になった車輛もあります。現在は廃形式となっています。

キロ182 1~(キロ182 4)

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量産車のグリーン車です。試作車との違いは車内販売設備で、新幹線のビュッフェ並みの設備となっています。電子レンジや流し台など調理、厨房設備及び売店が設けられています。乗降扉は試作車が車端部であったのに対して、中央寄りに移設されると共に、業務用扉が新設されました。保留車で1両が籍をおいています。

キロハ182 1~(キロハ182 3)

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特急「オホーツク」号のグリーン車は利用率が低く、輸送力の適正化が必要でした。そこで、車内販売準備室を撤去して普通席に転用し、平成8年に登場した形式です。屋根上にあった水タンクは撤去したほか、車掌室横に喫煙室を設置しています。(細長い窓の部分)

500番代・1500番代(N183系)・550番代・1550番代(NN183系)

 国鉄分割民営化に伴い、新会社(JR北海道)の経営基盤整備を目的とし、昭和61年に2次形として登場したグループです。性能、アコモデーションの向上、コスト削減を図るため、各所の仕様が変更されました。車体は同時期に登場したキハ185系とほぼ同じで、キハ185系はステンレス鋼を採用したのに対し、キハ183系は鋼製としました。
 0番代では高運転台でしたが、500番代、1500番代は全く異なるスタイルで、増・解結が可能な貫通スタイルとなり、新キハ183系やN183系とも呼ばれます。列車編成を短編成化するにあたり、0番代に存在するサービス用電源装置を搭載するキハ184形式を上手に運用できるように、本番代では電源装置を搭載する車輛を1500番代、電源装置を搭載しない車輛を500番代として区分しました。
 客室設備も見直され、側窓は拡大し連続窓風のデザインになりました。グリーン車はハイデッカー構造を採用し、屋根まで達する大型曲面ガラスを採用して雄大な北海道の風景を楽しむ事が出来ます。
 駆動系統も見直されました。走行用機関は直噴化され、キハ183形式500番代、キハ182形式、キロ182形式にはDML30HSJ(550PS/2000rpm)、キハ183形式1500番代はDMF13HS(250PS/2000rpm)を搭載しています。サービス用電源装置の発電機も小型、軽量化されています。
 ブレーキ方式は0番代と同じCLE方式(応荷重式電磁自動空気ブレーキ)ですが、高速運転に対応できるよう、ダイナミックブレーキの準備工事が行われています。これは、高速域よりブレーキを動作させた際に、車輪に制輪子を押し当てた時、摩擦による発熱や車輪がロックしフラットが発生する事から、電子制御によりコンバータブレーキやエンジンブレーキを併用させるものです。現在はN183系全車に施行され、運転最高速度を120km/hとしています。
 JR北海道へ移行後、昭和63年にN183系のマイナーチェンジ車としてキハ183形式及びキハ182形式の2形式が製作され、550番代、1550番代が登場しました。NN183系とも呼ばれるグループです。当初より運転最高速度120km/hとしたもので、駆動用機関の出力向上が図られました。

キハ183 501~(キハ183 505)

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将来の高速化に備え、昭和61年に登場した2次車グループです。車体の軽量化、台車の改良などが行われ、前面も分割・併合が可能な貫通型になりました。車内にはトイレ、洗面所の設備があります。駆動用機関(DML30HSJ(550PS/2000rpm))1基を搭載しています。

キハ183 1501~(キハ183 1505)

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キハ183 501~と似た外観をしていますが、車内にはトイレ、洗面所の設備がありません。床下にはサービス用電源装置の発電機を搭載し、駆動用機関(DML13HS(250PS/2000rpm))を1基搭載したグループです。

キハ183 1551~(キハ183 1551・キハ183 1562)

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NN183系とも言われる昭和63年に登場したグループで、将来の更なる高速化(130km/h運転)に備えたものです。キハ183形式1500番代と同じ仕様ですが、駆動用機関はインタークーラーが追加装備されたDMF13HZ(330PS/2000rpm)を搭載しています。また、台車も高速走行に対応できるようヨーダンパ・滑走検知装置が装備されています。ブレーキ装置もダイナミックブレーキが新製時より装備されています。車内では、初期(1551~1554)と後期(1555~1566)で違いがあります。

キハ182 501~(キハ182 505)

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500番代(N183系)の中間車です。駆動用機関DML30HSJ(550PS/2000rpm)を1基搭載しています。

キハ182 551~(キハ182 560)

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昭和63年に登場したNN183系と呼ばれる高速化対応の中間車です。駆動用機関はパワーアップされ、DML30HZ(660PS/2000rpm)を1基搭載しています。500番代の改良型でもあり、屋根上に水タンクが移設されたほか、男子用小便所が設置されました。現在は全車2550番代に改造され、廃番代となっています。

キロ182 501~(キロ182 506)

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昭和61年に登場した2次車のグリーン車です。客室部分はハイデッカー構造となり、屋根まで達する曲面大型ガラスが特徴です。車内販売準備室も設置されており、簡易調理ができます。駆動用機関DML30HSJ(550PS/2000rpm)を1基搭載しています。

キハ183-1501~1503(サロベツ用)(キハ183-1502)

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平成12年の時刻改正で、宗谷本線高速化工事完成により同線に、特急「サロベツ」、「利尻」が新設される事となり、その車輛としてリニューアル工事を施した車輛です。
稚内方に連結される車輛は、デッキ側に新しくトイレ、洗面所、清涼飲料水自動販売機が設置され、外観に変化が出ました。

キハ183-1504・1555・1556(サロベツ用)(キハ183-1504・キハ183-1555)

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上記と同じ、「サロベツ」、「利尻」用のリニューアル車で旭川方に連結される車輛です。キハ183-1501~1503も同じですが、車内の床材の張替え、座席をキハ261系と同じものに交換、座席下にコンセントの増設などが行われています。

キハ183形式3550番代(キハ183 3563)

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キハ183形式1550番代を種車に130km/h運転を可能としたグループで、平成5年に登場しました。ブレーキ装置の改造が主で、制御装置の改良、ブレーキてこ比の変更、ブレーキシリンダー径の大型化などが行われています。原番号に2000番を足しています。

キハ183形式4550番代(キハ183 4562:tuboフォトオフィス様撮影)

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130km/h走行可能改造車は在来車との混結が出来ません。このため、120km/h走行まで出来る在来車の予備車が不足し、これを解消するためどちらにでも対応できる車輛として平成5年に登場したグループです。ブレーキシリンダー圧力切換弁による自動読替機能を追加装備しています。原番号に3000番を足しています。

キハ182形式2550番代(キハ182 2551)

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キハ182形式550番代に130km/h運転対応工事を行ったグループで、平成6年に登場しました。キハ183形式3550番代と同じ、ブレーキ関係の改造が主なものとなっています。原番号に2000番を足しています。

キロ182形式2550番代(キロ182 2553)

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キロ182形式500番代に130km/h運転対応工事を行ったグループで、平成5年に登場しました。ブレーキ関係の改造のほか、機関換装も行われておりDML30HZ(660PS/2000rpm)に変更しています。客室内も改良が施され、座席の3列化、床段差の解消などが行われています。

キサロハ182 551~(キサロハ182 552)

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平成3年に登場した特急「スーパーとかち」号用のダブルデッカーグリーン車です。2階は3列シートの座席、1階は機械室、2人用個室5部屋があります。後に特急「おおぞら」号でも使用するため塗装変更が行われています。平成13年に運用を離れ、保留車となって平成26年に廃車、廃番代となっています。

ジョイフルトレイン

 本系列の車体構造や駆動システムを用いて新製され、キハ183系の仲間として扱われるジョイフルトレインがあります。

ニセコエクスプレス(キハ183 5001・キハ182 5001)

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スキー場が多数あるニセコ地域へのスキー客アクセス用リゾート列車として昭和63年にJR北海道苗穂工場で新製されたジョイフルトレインです。キハ183 5001+キハ182 5001+キハ183 5002の3両編成です。
先頭部は大型曲面ガラスを用いた傾斜角のある流線型としました。車内は荷物棚を使い易い構造とするため、ハイデッカー構造は採用していません。冷房装置は床置き式で、冬季になると取り外され、その場所をスキー板などの荷物置き場としています。また、乗降扉はJR車輛では初めてとなるプラグドアを採用しています。このドアを採用した理由の一つに着雪防止の目的があります。
性能面はキハ183系550番代と同じで、運転最高速度は120km/hとなっています。駆動用エンジンはDMF13HZ(330PS/2000rpm)をキハ183形式には2基、キハ182形式には1基搭載しています。ブレーキ方式はCLE方式(応荷重装置付電磁空気ブレーキ)で、ダイナミックブレーキの装備もあります。

クリスタルエクスプレストマム・サホロ(キハ183-5102・キハ182-5101・キサロハ182-5101)

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北海道の雄大さ、自然の美しさを堪能できるリゾート列車として、JR北海道ジョイフルトレイン第5弾として、苗穂工場で製作、平成元年に登場しました。先頭車はパノラマカーで、運転台を2階、1階部分を展望席としています。(平成22年に発生した函館本線での踏切事故の対策として、現在は座席が撤去され使用できない。)、客室部分は屋根に達する大型曲面ガラスを使用しています。中間車はハイデッカータイプの車輛で、屋根まで達する大型曲面ガラスを設け、妻部にもガラスが配されドームカーの愛称で360度の展望が出来ます。当初は3両編成で始まり、平成2年にダブルデッカーの中間付随車キサロハ182形式が追加されました。気動車では初めての2階建て車輛で、1階は個室、ギャレー付ラウンジ、2階はセミコンパートメントの構造となっています。ちなみに台車は国鉄から継承され、用途が無いまま廃車となったサハネ581形式のものを使用しています。
性能面はキハ183系550番代と同じで、運転最高速度は120km/hとなっています。駆動用エンジンはDMF13HZ(330PS/2000rpm)をキハ183形式には2基、キハ182形式には1基搭載しています。

キハ183系1000番代(キハ183 1002・キハ182-1001・キハ182-1002)

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このグループは長崎県にある「長崎オランダ村」(現在の同県にあるハウステンボスのルーツとなるテーマパーク)のアクセス輸送として、JR九州が昭和63年に登場させたジョイフルトレインです。キハ183系500番代の主要構造を基本としたことからキハ183系の仲間としています。
先頭車は当時、JR東日本に所属していたパノラマエクスプレスアルプスに似た車体で、側窓などにN183系と同じ連続風窓の処理が行われています。車体色はオランダ国旗と同じ、トリコロールカラーで窓上上部が赤色、窓廻りが白色、車体下部を青色として、上下に白色の帯を巻いています。(下記写真参照。)

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駆動用機関や変速機などはN183系と同じで、キハ183形式及びキハ182-1002にはDML30HSJ(550PS/2000rpm)、サービス用電源装置を搭載するキハ182-1001はDMF13HS(250PS/2000rpm)を搭載しています。さらに、この1000番代には特徴があり、「オランダ村特急」号を運転するにあたって、門司港・小倉~鳥栖間は列車運転密度が高いため、電車特急列車に併結する必要が出てきたため、485系との併結運転を可能としています。また、当時北陸本線でキロ65形式による電車併結運転がありましたが、併結時は付随車扱いとなっていましたが、本番代では電車側からの指令を読み取る機器を搭載し、協調運転を可能としています。
1000番代全体の特徴として、登場時から現在まで数度の改造を行っています。昭和63年に「オランダ村特急」としてデビュー。平成4年に列車廃止となり、久大本線特急「ゆふいんの森」号の増発用として特急「ゆふいんの森Ⅱ」になり、内外装の改造を受けます。キハ182-1002に設けられていた「ぷれいらんど」(子供用の遊具を設置したコーナー)を一般座席化、キハ183形式展望室部分をミニバーに改造、塗装はメタリックグリーンに金帯を巻いたものとなりました。平成11年にキハ72系(ゆふいんの森Ⅲ)が登場し、今度は大村線に新設される特急「シーボルト」に使用する事になり、塗装を「オランダ村特急」時代に近い感じに変更。しかし、利用率低迷により平成15年に列車廃止、車輛は保留車扱いになりました。
それもつかの間、平成16年に久大本線に特急「ゆふDX」(形式写真)に抜擢。3度目の改造を行いました。古代漆色に塗装が変更され、展望室部分をパノラマシートに改造しました。平成20年に車体色を山吹色(プレミアムイエロー)に変更しています。
平成23年に4度目となる改造を受けました。豊肥本線に特急「あそぼーい」が新設される事になり、車体色を黒と白の2色塗りに変更、列車のマスコットキャラクターである「くろちゃん」のイラストをちりばめました。キハ182-1002の座席の一部を「白いくろちゃんシート」とし、通路側と窓際の座席構造を異なるものとし、窓側の座席を子供の体格にあわせて、座面と幅のあるクッションの厚みを変えて、常に子供が窓際に、保護者が通路側に座るようにした構造としています。
現在はこの特急「あそぼーい」号で活躍をしています。