0番代
平成3年に901系の試用実績を元に登場したグループです。基本性能や車体構造はほぼ同じです。主回路装置はC編成(920番代)で試用されたモジュール型定電圧GTOを用いたVVVF制御方式、MM4個一括2群方式を採用しています。主電動機は交流電動機で95Kwの小型のもので、4M6T編成としています。この主電動機は起動時には過負荷を前提に設計されています。運転最高速度は110km/hです。ブレーキ制御方式は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、滑走時の再粘着制御は各台車制御方式となっています。降雪時の耐雪ブレーキも装備しています。
運転台はノッチ、ブレーキを左手で操作するワンハンドルマスコンを採用。205系500番代で採用された14インチモニターを使用した運転システムを継承。モニターは液晶パネルとし、コンパクト化を図っています。また、踏切事故対策として前面を強化すると共に運転士座席背面に救出口を設けています。
現在は京浜東北線から撤退し、南武線で6両編成1本が残るほか、2000番代車の種車として改造をうけて活躍をしています。
登場した頃の209系
クハ208-1~(クハ208-64)
大船・立川方の偶数向きの制御車です。車端部には通勤形電車では初めてとなる車椅子スペースが設置されています。写真は晩年の姿で、列車番号表示器がマグネットタイプからLEDへ、ホーム検知装置(前面下部の突起状のもの。)がつけられています。
※ホーム検知装置
何らかの理由で列車がホームに停止していない時やホームの無い側で、車掌が誤ってドアを開けないようにする装置。操作しようとするとベルが鳴動する仕組みになっている。
クハ209-1~(クハ209-13)
大宮・川崎方の奇数向きの制御車です。クハ208形式とは連結する向きが異なるだけで、車体は同じです。床下には電動空気圧縮機が搭載されています。(ドアが電気式となった3次車以降、南武線仕様車にはありません。)
モハ208-1~(モハ208-37)
補助機器を搭載する中間電動車です。SIV装置や電動空気圧縮機(スクリュー式)を搭載しています。
本系列の換気窓は当初、車端部の小窓4か所(制御車は後部2か所)が下降窓で開閉でき、非常時には妻面部が開けられる仕組みでしたが、とある日、架線停電事故により長時間停車によって閉じ込められた多数の乗客が気分が悪くなる事象(酸欠のような状態)があり、大窓部を分割して開閉を可能とする工事(対策)が行われました。写真はその工事を終えた車輛の例です。
500番代
209系0番代のシステムを進化させた950番代(後のE231系)が登場し、量産車の登場を待つ形となりました。しかし、総武・中央緩行線で活躍する103系に相次いで大きな輸送障害をもたらす車輛故障が発生しました。これら老朽車を置き換えるために平成10年に登場したグループです。
基本性能は0番代とほぼ同一ですが、車体を950番代と同じく定員の増加を目的とした、拡幅車体を採用しました。客室座席のクッション材をウレタンからポリエステル樹脂成型品に変更。汚損時の交換を容易にしたほか、廃棄時のリサイクル性を高めました。
また、客室窓も大窓部を開閉可能な構造とし、妻面にある非常用換気口を廃止する変更が見られます。
なお、6扉車は拡幅車体構造採用により、定員増加が見込める事から製造はされていません。
クハ208-501~(クハ208-515)
大船・三鷹方の偶数向き制御車です。車端部には車椅子スペースが設けられています。
モハ209-501~(モハ209-503・モハ209-528)
本番代のパンタグラフ付中間電動車です。VVVF制御装置を床下に搭載します。なお、初期車はPS28B形式、後期車はシングルアーム式パンタグラフのPS33形式を搭載しています。
1000番代
常磐緩行線と東京メトロ(旧:帝都高速度交通営団)千代田線の相互乗入れ輸送力増強を図るために平成11年に登場したグループです。この時、950番代、500番代が登場し、拡幅車体を採用していましたが、千代田線内の車輛限界の関係から2800㎜幅となっています。また、起伏の激しい地下鉄線内の走行条件を満たすため、この系列では初めて6M4T編成となっています。
車体は500番代がベース(基本システムは0番代と同じ。)になっていますが、前面は地下鉄線内での非常用貫通扉が設置されています。客室設備では車椅子スペースが東京メトロ側に合わせ、2号車及び9号車に設置されています。
クハ208-1001~(クハ208-1001~)
代々木上原方の1号車になる制御車です。209系の地下鉄仕様車になります。
2000番代・2100番代
JR東日本千葉支社管内で活躍する113系、211系の置換え用として平成21年に登場したグループです。0番代を改造したもので、10両固定編成の中間付随車を抜いた6両編成と固定編成を解体後に組み合わせた4両編成の2種類が存在します。これにより、同支社内の列車編成が概ね統一される事になりました。
改造内容は0番代のリフレッシュに近いもので、行先表示器のLED化、先頭車のスカートを強化型に換装、分割・併合が行われる事から先頭車全車に電気連結器及び自動解結装置の装備、一部セミクロスシート化、モハ208形式トイレ設置、VVVFインバータ装置やブレーキ制御装置など主要機器の更新などが行われています。
番代は種車のドアエンジンの違いによって区分されており、空気式を2000番代、電気式を2100番代とし、原番号に2000又は2100番を加えています。
※209系セミクロスシート車の様子。
クハ208形式2000番代(クハ208-2003)
クハ208形式0番代のうち、空気式ドアエンジンをもつ車輛を改造したグループです。蓄電池、整流装置を持っていないため、廃車となったモハ208形式から転用して装備しています。車内はセミクロスシート仕様に改造しています。
クハ209形式2100番代(クハ209-2125)
クハ209形式0番代のうち、電気式ドアエンジンを持つ車輛を改造したグループです。車内はセミクロスシート仕様に改造されています。窓際には小さなドリンクホルダーの付いたテーブルが備えられていますが、栓抜きはついていないのでビンジュースを飲む時には注意が必要です。
2200番代
0番代が投入されている南武線ですが、投入時期が2回ありドアエンジンが空気式と電気式がそれぞれ1本ずつあります。メンテナンスをする上で統一が望ましい事から、空気式をもつ編成を廃車とし、その補充用に電気式ドアエンジンを持つ0番代を改造したグループです。その後、205系の転出に伴う充当、運転本数増加に対応するため2本追加投入され、3本が活躍しています。2000番代、2100番代同様に機器更新を中心に改造が行われています。
クハ208-2201~(クハ208-2203)
クハ208形式0番代を改造した車輛です。スカートは強化型になっていないので、ほぼ原形に近い姿です。
3000番代
平成8年八高線八王子~高麗川間電化開業、川越線相互乗入れに対応するために登場したグループです。209系の6次車になります。3000番代は川越線で活躍する103系3000番代に合わせたものです。
投入される八高線、川越線では列車交換や折返しで長時間停車があり、半自動扱いが行われる事から(現在は通年扱い。)、乗降扉に半自動機能が付きました。また、鹿山峠などの勾配区間が数か所あり、この区間で停車した時、空転による起動不能を避けるため勾配起動スイッチ(ブレーキを扱いながら、加速する事が出来る機能。)を装備しています。
帯色は八高線、川越線のウグイス色に乗入れ先の青梅線(現在は廃止。)のオレンジ色をまとったものになっています。
クハ208-3001~(クハ208-3004)
八王子、高麗川方の偶数向き制御車です。八高線、川越線で運用されるため、路線名表示器(列車種別表示器)は装備されていないのが特徴です。
3100番代
平成17年に八高線、川越線に投入されたグループです。同線区で活躍してきた103系を淘汰するため205系の投入を考えていました。同じ頃、東京臨海高速鉄道の所有する70系電車が大崎駅より相互乗入れを行うため、10両編成に統一する事になり、制御車4両と中間電動車2両が余ってしまいました。70系は209系をベースに作られた電車で、この車輛は使えるとJR東日本が購入しました。
209系とほぼ同じであるため、制御機器等はほとんどそのままとし、保安装置などを変更しています。接客設備も座席などは種車のままで、帯色の変更、半自動スイッチの追加装備が行われました。
制御車は4両、中間電動車は2両・・・おや、中間電動車が2両足りません。不足分は新製しました。
かつて、国鉄路線拡大を行うため私鉄を買収し、その車輛が国鉄車として編入され活躍していた時代がありましたが、平成になり私鉄車輛が編入されるとは誰もが思わなかったでしょう。209系の中でも珍しいグループとして活躍をしています。
クハ208-3101~(クハ208-3102)
元70系の制御車(70-029、70-039)です。八王子、高麗川方に連結されています。改造は保安装置の変更や半自動ドア化などになります。
クハ209-3101~(クハ209-3101)
元70系の制御車(70-020.70-030)です。高麗川、川越方に位置します。クハ208-3101~と同じ改造を施しています。種車時代の面影が前面、台車、室内などに見る事が出来ます。
モハ208-3101(モハ208-3101)
同グループの不足する中間車を補うために新製されました。209系の最後の増備車となります。側面行先表示器は他車と合わせるためLED化されていますが、内装は0番代と同じです。
3500番代
平成30年に登場した八高線・川越線用のグループです。同線の205系3000番代老朽化、陳腐化に伴い、総武・中央緩行線で活躍していた500番代を種車として改造したものです。主な改造は半自動機能の追加、帯色の変更で、車内外ともに種車の面影が残っています。車体番号に用いられている数字のフォントが少し変わっているようです。
クハ208-3501~(クハ208-3501)
八王子・高麗川方の偶数向き制御車です。クハ208-501~を改造したもので、半自動扱い時のボタンが追加設置されており、外観の特徴となっています。
クハ208-3501~(クハ208-3502)
写真の3502番は、床下に線路設備モニタリング装置というものが搭載され、他車とは外観が異なっています。この装置は線路状態などを簡易的に検査するもので、保線メンテナンス軽減を目的にJR東日本が導入をしました。
クハ209-3501~(クハ209-3501)
高麗川・川越方の奇数向き制御車です。クハ209-501~を改造したもので、クハ208-501~と同じ改造内容となっています。
モハ208-3501~(モハ208-3501)
SIVや電動空気圧縮機を搭載する中間電動車です。モハ208-501~を改造したものです。
モハ209-3501~(モハ209-3501)
主制御機器やパンタグラフを搭載する中間電動車です。モハ209-501~を改造したものです。
900番代
平成2年に登場した901系A編成を量産車化改造したグループです。川崎重工製で、2シート貼り合わせ工法で製作された車体で、主回路は素子にジャイアント・トランジスタを採用した方式で、VVVFインバータを直列に4個接続した構成となっています。各電動車にインバータ装置を搭載し、それぞれを独立させています。(ユニット方式ではなく、M1+M2となっています。)
電動空気圧縮機は日本初となるスクリュー式を採用したのも特徴の一つです。車内に目を転じると、7人掛け座席中央部には荷棚が無い(忘れ物防止対策)のが特徴です。運転台は従来車と操縦性に違和感が無いように205系などと同じ2ハンドル方式としています。
平成4年に量産車化改造が施され、荷棚や吊革の増設、マスコンの改良が施されています。平成10年にはD-ATC(デジタルATC)化に伴い、性能の統一化で主回路機器が量産車と同じ、1C4M×2方式に変更されています。
クハ208-901(クハ208-901)
クハ900-1を改造した大船寄りの偶数向き制御車です。2ハンドルだったマスコン・ブレーキハンドルは量産化で1ハンドル化されています。
910番代
901系B編成を量産車化改造したグループで、東急車輛製です。車体は従来の工法に工夫を加え、軽量化したものとなっています。客室窓に特徴があり、2分割となって外観からでも識別が出来ます。主回路は小容量GT0(ゲート・ターン・オフ・サイリスタ)を採用した1M1C制御方式で、台車付近に制御装置を分散配置しています。電動空気圧縮機は従来車でもおなじみのレシプロ式となっています。
車内は吊革をなくし、握り棒のみとした大胆なもので、客室照明もレール方向から枕木方法にした他に例のないものとなっていました。空調設備は屋根上に室外機、天井内に室内機を分散配置したセパレート方式となっています。
本番代で初めての試みも行われました。電気式戸閉装置の試用です。戸閉装置とはドアの開閉装置で、車掌が扱います。従来は荷物や人などが挟まった場合は、車掌がスイッチを扱い開閉を行います。ドアの開閉には圧縮空気が用いられ、使用し空気圧が一定の値まで減ると電動空気圧縮機が動作します。都市部の電車では開閉数が多いため、電動空気圧縮機の動作回数も増え、その分メンテナンスもかかります。この改善に電気の力を使おうというもので、ドアが閉まる前に何かが挟まった時に生じる電圧を検知して、自動的に開閉を行うというもので、空気圧縮機の動作回数が減る事で、1編成あたりの個数も削減できるという事になります。この試用は量産車が登場した後も続けられ、3次車より正式に採用され、以降登場する車輛の多くがこの仕様になっていきます。
平成4年に量産車化改造で910番代へ、平成10年にD-ATC化に伴い主回路の変更が行われました。
クハ208-911(クハ208-911)
クハ900-2を改造した大船寄りの制御車です。車体側面に行先表示器がないのが、外観の特徴ともなっています。
クハ209-911(クハ209-911)
クハ901-2を改造した大宮寄りの制御車です。客室の分割2枚窓は量産車化改造後も残されています。この他特徴として、運転台前面の黒い帯上部が丸くなって終わっているのはこの番代だけです。
モハ209-911~(モハ209-911)
モハ901-3~を改造したパンタグラフ付中間電動車です。912番には行先表示器が設置されていません。パンタグラフ近くの避雷器の位置が量産車とは位置が異なっていました。
920番代
901系C編成及びC’編成を量産車化改造したグループです。C編成は8両で川崎重工製、C’編成は2両で大船工場で製作されました。
車体は900番代と同じ2シート貼り合わせ工法で、室内も荷棚が異なる程度の違いとなっています。1両だけ吊り広告を廃し、天井部や乗降扉上部に液晶モニターを設け、ビデオテープを用いた動画広告を行う、現在見られる車内広告の画面化を試みました。当時の結果として採用には至らず、量産車化改造時に撤去されています。
主回路システムは量産車で採用されたGTO素子を用いた1C4M制御2組を電動車に配したものとなっています。
クハ208-921(クハ208-921)
クハ900-3を改造した大船寄りの制御車です。他の車輛と異なり、車椅子スペースが設けられていないのが特徴です。
mue-train(ミュートレイン)
JR東日本では、次世代の車輛開発、研究を行うため平成20年に多目的試験電車を製作しました。愛称は「mue-train」と付けられました。mueとはMulttipurpose Experimental、多目的試験を意味します。
この車輛で「車輛の性能向上に関する開発」、「次世代車輛制御システムの開発」、「営業用車輛を用いた地上設備の状態監視用機器の開発」などが研究開発対象としてあり、走行試験による検証が不可欠であることから、このミュートレインの誕生に至りました。
種車は0番代で、様々な機器類などが搭載されています。その試験の目的によって変化が見られます。塗装については幾何学模様のラッピングが施されました。これは、明るい未来、希望を白帯で表し、多くの分野の光輝く新技術が結集して、新しい鉄道システムを創り上げていくイメージを帯に集まるブロックパターンとmueの文字で表現しています。
現在も様々な試験が行われています。例えば「Wi-Max」(ワイマックス)という高速データ通信システムはE259系やE233系5000番代で採用されています。
これからも同社の新型車輛開発の陰の主役として活躍をしていくでしょう。
青い梅氏撮影(マワ車所蔵)
クヤ208-2(クヤ208-2)
クハ208-2を種車とした1号車になる制御車です。空気ばね車体傾斜機構、降雨時のブレーキ力向上の試験を目的としています。屋根上にはアンテナ類、床下にも錘や機器類が追加されています。車内は座席が撤去され測定室に改造されています。
モヤ209-3(モヤ209-3)
モハ209-3を改造したもので、5号車に連結されています。パンタグラフは狭小トンネルに対応したものに交換されており、その周囲には測定用機器、カメラ、ライトなどが設置されています。営業用車輛を用いた地上設備の状態監視用機器の開発に使用されています。