試作車900番代
平成10年に登場した209系950番代を編入したグループです。編成の半分で製作会社が異なり、1~5号車が東急車輛製、6~10号車が同社の新津車両製作所製となっています。209系を踏襲したデザインですが、大きく進化しています。
最大の特徴とも言えるのが「TIMS:ティムス」の導入です。従来の制御伝送装置は対象となる機器から情報集約→伝送→表示という情報処理機能に留まっていましたが、機器の統合集約や編成の一括制御機能を採り入れ、加速や回生ブレーキの適正管理、空調設備の全自動制御、出区点検(列車を運行する前に必ず行われる車両点検)の自動化などが実現しました。引通し線や艤装配線の大幅な削減ができ、209系と比べると80%も削減しています。
車体にも工夫がされており、車体幅を150㎜拡大した拡幅車体を採用。混雑緩和対策に有効なものとされ、同社所有の通勤形電車では初めての試みとなっており、以降の標準スタイルを確立しました。制御装置はIGBT素子を用いたインバータ制御で、2レベル、3レベル方式を試用しています。また、通勤形電車ですが運転最高速度が120km/hとなっています。
総武・中央緩行線で活躍をしています。
クハE230-901(クハE230-901)
クハ208-951を編入した車輛です。前面のFRP部分は銀色(総武・中央緩行線)に塗装され、209系500番代との識別できるようにしています。
クハE231-901(クハE231-901)
クハ209-951を編入した車輛です。クハE230-901と同一の車輛で、連結される位置が異なる事から形式が分けられています。量産車との区別は前面FRP部分が銀色である事を確認し、側面のJRマークの位置を見ればわかると思います。(量産車と見比べて下さい。)
モハE231-901(モハE231-901)
モハ209-951を編入した車輛で、3号車に位置するパンタグラフ付中間電動車です。パンタグラフは空気配管削減のため、電磁式のPS33形式を採用しています。制御機器は近郊形に採用されたものを搭載しています。
モハE231-902(モハE231-902)
モハ209-952を編入した車輛で、8号車に位置するパンタグラフ付中間電動車です。制御機器は通勤形に採用されたものを搭載しています。少し見ずらいですが、901番と違う事がお解り頂けると思います。
0番代
209系950番代(900番代)を元に製作された通勤形のグループです。車体構造や運転台のレイアウトなどはほぼ同じものとなっています。車内も209系とほぼ同じですが、荷棚や吊革は女性やお年寄りが使い易いように低く設計されています。全形式ロングシート仕様で、トイレの設備はありません。
総武・中央緩行線(黄色)と常磐快速線(ウグイス色とエメラルドグリーン:各駅停車との識別のためウグイス色を巻いているようです。)
主制御器は3レベル式VVVFインバータ制御方式、ドアエンジンは電気式となっています。
クハE230-1~(クハE230-40)
三鷹・上野方に連結される偶数向きの制御車です。前位台車には駐車ブレーキが装備されています。
クハE231-1~(クハE231-43)
千葉。取手方に連結される奇数向きの制御車です。クハE230形式と同じ構造です。車内には車椅子スペースがあります。写真は常磐快速線で活躍中の車輛で、増解結があることから電気連結器を装備しています。この他、車外スピーカーが準備工事となっています。
500番代
平成17年に山手線に導入されたD-ATC(デジタルATC)に対応するため、平成14年に投入されたグループです。車体構造などは0番代と変わりありませんが、前面デザインが変更されています。
このグループ最大の特徴として、VIS装置(情報提供装置)を搭載した点にあります。各車内乗降扉上部に15インチ液晶ディスプレイが2台ずつ設けられ、向かって左側は運行に関するもの(行先、次駅、乗換え、運行情報など)、右側は広告や文字放送などを表示します。これらの情報は地上側から行い、運転室に設置された送受信装置によって行われ、リアルタイムな表示が可能となりました。また、同装置を用いてTIMSに記憶された乗車記録や車輛故障情報などを送信する機能も備わる予定となっています。
編成は205系と同じ11両編成ですが、6扉車を2両に増強していました。後に、ホームドア設置により、6扉車は廃止となっています。この他の機能として、長時間停車時の車内温度確保のため、各車1扉を残して、他のドアを閉める3/4閉じ回路を新設しています。
クハE230-501~(クハE230-544)
外回り電車では先頭車となる1号車に位置する制御車です。VIS装置が搭載されたため、0番代とは運転台機器配置が異なっています。
500番代ホームドア設置に伴う新しい番代
ホームから何らかの理由で転落し、進入してきた列車に轢かれる事故が全国各地で古くより発生していました。その理由の一つに旅客が酒に酔っていた事により、転落するというものがあります。平成13年に新大久保駅で泥酔した旅客が転落し、それを助けようと線路内に進入した旅客2名、計3名が轢死する痛ましい事故が発生。この事故を受けて全国的に安全対策を強化するようになりました。
ちなみにホームに写真のような緊急停止ボタンが設置されています。もし、転落事故など列車の運行に支障がある事故を見つけたら押して下さい。押したら、そこから動かないで駅員が来るのを待って下さい。転落した人をすぐに助けたい気持ちはわかりますが、まずはこのボタンを押して列車を止めて下さい。そして救出は駅員に任せて下さい。素人が線路に立ち入る事は大変危険な行為です。(某鉄道会社社員のお話。)
緊急停止ボタンのほかに安全対策として設置が行われたのが、可動式ホーム柵、いわゆるホームドアです。JR東日本でも平成22年より、山手線各駅にホームドア設置を始めました。これに伴い、車輛側の対応として6扉車の廃止が決まり、サハE230-501~は全車が廃車となり、4扉車のサハ231形式が登場する事になりました。このサハE231形式は、すでに製造が行われているE233系に準じた設計になっているのが特徴です。
サハE231-601~(サハE231-602)
7号車に連結される中間付随車です。車体構造はE233系に準じていますが、主要寸法や床面高さは500番代と同じです。車内は座席、荷棚がE233系と同じものになっています。製造費用低減のため、廃車となったサハE230-501~からブレーキ装置、台車、空調装置などを再利用しています。
800番代
東京メトロ東西線との相互乗入れ用に活躍してきた301系及び103系1000番代、同1200番代の置換用として平成15年に登場したグループです。
地下鉄線走行のため、同系では初めて拡幅車体を採用しないタイプの登場となりました。また、6扉車もありません。前面は貫通構造となっており、助手側にスイングプラグ式の外開き非常用扉が設置されています。
クハE230-801~(クハE230-806)
三鷹方に位置する10号車の制御車です。東西線の保安装置(ATC)や同社の保安装置ATS-P型を装備しています。
3000番代
平成30年に登場した新しい番代です。八高線で活躍する205系3000番代の置換えを目的に、中央・総武緩行線で活躍していた0番代を転用したものです。
半自動ドア機能の追加やラインカラーの変更が主で、内外装は0番代とほとんど変化がありません。
クハE230-3001~(クハE230-3001)
八王子・高麗川方に位置する偶数向きの制御車で、クハE230-1~を改造しました。半自動機能が追加されており、乗降扉付近に押しボタンが設置されています。
クハE231-3001~(クハE231-3002)
高麗川・川越方に位置する奇数向きの制御車です。クハE231-1~を改造したもので、改造はクハE230-3001~と同じです。車内では後部の7人掛け座席の一部が優先席に変更されています。
モハE230-3001~(モハE230-3002)
モハE230-1~を改造した中間電動車です。半自動ドア扱い時に使用するボタンが外観の特徴となっています。
モハE231-3001~(モハE231-3001)
モハE231-1~を改造したパンタグラフ付中間電動車です。209系3500番代とよく似ていますが、パンタグラフがシングルアームを使用している点が識別のポイントです。
近郊形各番代
中、遠距離向けのグループで、通勤形とは異なるデザインが特徴です。運用される線区では踏切が多くあり、踏切事故対策を盛り込んだ運転台が設計されました。衝撃を吸収するクラッシュブルゾーンと乗務員を保護するサバイバルゾーンを設けた広い運転台、運転席も遠くを見渡せるように通勤形よりも高い位置にあります。また、遠方より列車の接近が気付けるように、高い位置に前部標識灯が設置され、HID灯(高光度放電灯)が初めて採用されました。
番代区分も多くあるのが特徴でもあります。セミクロスシート仕様:2000番代、トイレの設備を有する、又は加えて踏切事故対策構造仕様:5000番代、耐寒・耐雪構造仕様:1000番代が基本で、その車輛の仕様の番代を足すと判る仕組みになっています。例えば、トイレがあり、耐寒・耐雪構造仕様の車輛は何番代?5000+1000=6000で、6000番代となります。この他の仕様(ロングシート)は0です。
制御システムやブレーキシステムは通勤形と同じですが、抑速ブレーキを装備している点が異なります。
クハE230-6001~(クハE230-6034)
附属編成の上野・熱海方に位置する制御車です。ロングシート仕様で、車椅子スペース、車椅子対応大型トイレの設備があります。6061番以降はグラスコックピットに変更されています。
※グラスコックピットとは?
アナログ計器類(指針のある計器類)を廃し、液晶モニタにより計器類を表示するもの。航空機の導入が最初で、鉄道界でも近年主流になりつつあります。
クハE230-8001~(クハE230-8022)
基本編成の上野・熱海方に位置する制御車です。セミクロスシート仕様で、車椅子スペース、車椅子対応大型トイレの設備があります。8064番以降はグラスコックピットに変更されています。
クハE231-8501~(クハE231-8519)
国府津車両センター所属の基本編成東京方に位置する制御車です。セミクロスシート、車椅子スペースに加え、車椅子対応大型トイレを設置したため新しい番代となりました。
モハE230-1501~(モハE230-1505)
国府津車両センター所属の基本編成8号車に位置する中間電動車です。ユニットになるモハE231形式が3500番代を名乗るため、車号を合わせる必要があり派生した番代です。
サロE230-1001~(サロE230-1002、サロE230-1042)
本系列では初めてとなる二階建てグリーン車で、平成16年に登場しました。車掌室と業務用室の設備があります。台車にはヨーダンパが設置されている車輛と無い車輛の2種類があります。