トキ900形式(トキ4837:長老フォトオフィス様撮影)

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昭和18年から昭和21年の僅か4年間で約8200両も大量生産された30t積み無蓋車です。登場した背景は、当時は第二次世界大戦中であり、輸送力増強を目的に開発されました。「戦時設計」と言われる方式で設計されており、3軸無蓋車です。
この「戦時設計」とは製作に必要な資材や労力を節約しつつ、輸送力を増強しようというもので、トキ900形式は船舶の石炭輸送を鉄道輸送で担う目的で設計されました。
貨車は大型化すれば当然、荷重を増やすことが出来ます。当時は軸重制限が16tという制限があり、2軸車ではトラ級(荷重17t)が限界でした。ボギー車にすれば…そこは戦時設計です。余分な資材を使う訳にはいきません。そこで、当時、一般的な2軸無蓋車の軸間にもう1軸を追加し、荷重を増やしています。荷重が増えた分、車体は強固な設計としなければなりませんが、逆に強度ギリギリの設計を行っています。
輸送効率は向上しましたが、戦時設計が後に仇となり、走行性能は安定せず脱線はもとより、ブレーキを動作させた際に押された貨車の力に耐えられず圧縮され破壊するケースまで、現在では考えられないような事故が多発したそうです。
戦後、欠陥だらけのトキ900形式は早々に廃車の対象に。一部は改造されるなどのケースもあり、昭和34年に形式消滅しました。
時は流れて、平成12年JR東海浜松工場で作業用に使われていた車がトキ900形式であることが判明し、復元保存される事となりました。戦争という悲惨の極みの中で生まれた歴史的価値のある車輛で、戦争の悲惨さを伝える語り部として末永く残っていて欲しものです。

トラ6000形式(トラ11348)

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昭和16年に登場した17t積み無蓋車で、戦前から戦後にかけて新製、改造車を含めて約6600両がつくられました。戦前形、戦時形、戦後形の3種類に大別されます。戦時中は一部の車輛が輸送力増強のため、3軸車にして増トン改造した28t積みトキ66000形式に改造され、戦後復元されるという経歴を持つ車輛もありました。
車体は戦時下の輸送力増強のため、限界一杯まで延長されおり、鋼材を節約するため妻板やあおり戸は木製です。写真のトラ11348は戦時形と呼ばれる10000番代を名乗るグループです。
戦後になりトキ66000形式の復元が終了後、戦後初の新製2軸無蓋車としてトラ6000形式がつくられました。昭和58年に廃形式となっています。

トラ40000形式(トラ41143)

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昭和35年に登場した15t又は17t積み無蓋車です。車体長を抑え、容積を増してばら積み貨物(砕石や石炭など)の増積を可能としたほか、嵩高貨物にも対応できるよう妻板が高いのが特徴です。通常は17t積みで、嵩高貨物の場合は15tまで積載可能とした「トラ」と呼ばれる無蓋車の一形式です。
車体は木製で、くぎ打ちなどによる積荷の固定が容易であることから荷主には好評の貨車だったそうです。足廻りは近代的な構造を有しており、全国各地で活躍をしました。昭和60年に形式消滅しています。

トラ45000形式(トラ148466・トラ151676)

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昭和35年に登場した17t又は15t積み無蓋車で、戦前に作られた2軸無蓋車の老朽置換えを目的に8184両が製作されました。通常は17t、嵩高貨物は15t積みとしたトラ車の一形式です。あおり戸のみ木製で、その他を鋼製とした半鋼製車です。
現存する車輛は昭和53年に積荷の転動防止を容易とするため、床板を木製に変更し、妻板をプレス鋼板から平板に改造したもので、原番号に100000を加えた車輛です。一般的には145000番代として区分されています。
現在は営業用としての活躍はなく、車輛部品輸送用の事業用車として活躍をしています。

トラ55000形式(トラ57964)

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昭和37年に登場した18t又は15t積み無蓋車です。トラ45000形式より寸法を少し大きくし、各部材の軽量化を行って1t増の荷重18tとしました。また、無蓋車としては初めて車体全体を鋼製とした点も特徴の一つです。
無蓋車の主力車種の一つとして活躍しましたが、昭和61年に形式消滅しています。

トラ70000形式(トラ70717・トラ73134)

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昭和42年に登場した17t積み無蓋車です。戦中から戦後にかけて製作されたトラ6000形などの長尺物対応無蓋車(通称長トラ)の老朽置換えを目的として5100両が製作されました。国鉄が製作した二軸無蓋車の最終形式として有名です。
車体は全鋼製で、トラ30000形式と同一の寸法となっています。積荷の転動防止のため、4か所に木が埋め込まれています。(後期形では長手方向2ヶ所に変更されています。)

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汎用貨物輸送として全国各地で活躍しましたが、輸送体系の変化で徐々に運用は減り、最後は海外からの輸入塩を輸送する仕事をしていました。当初は直接積載していましたが、後に専用のコンテナに入れて積載する方式となりました。例のトラ73134がこの塩輸送に活躍しており、腐食したあおり戸を保守の容易な平板に交換する車輛も見られました。

トキ15000形式(トキ20043)

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昭和23年に登場した35t積みの大型無蓋車で、戦前に製作されたトキ10形式の後継車になります。汎用貨物のほか、物資別適合車への改造も行われ、中には長物車へ改造された車輛もありました。後継のトキ25000形式と共に大型無蓋車の代表として活躍しましたが、昭和61年に形式消滅しています。写真は栃木県にある那珂川清流鉄道保存会に保存されている貴重な1両です。

トキ25000形式

昭和41年に登場した36t積みの大型無蓋車で、トキ15000形式の老朽廃車に伴う補充を目的として登場しました。プレス鋼板をふんだんに用いた画期的なスタイルで、車体色は赤3号(赤茶色)になりました。荷重が36tであることを示すためにトキの前に「オ」の記号が付けられています。様々なグループがあるのでご紹介しましょう。

トキ25000~26299(トキ25718)

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最初に登場したグループです。台車はTR41Cから密封ころ軸受としたTR209形式を採用しています。

トキ26300~28649(トキ28417)

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外観は前期グループと同じですが、転動防止のため木が床に埋められています。写真は2tトラックの荷台を輸送する専用貨車となったもので、一部の車輛は写真のように明るい緑色に塗り替えられていました。

トキ28650~29149(トキ29022)

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あおり戸などを改良したグループです。台車は枕ばねをコイルばねとしたTR213-2形となりました。

トキ29150~29399(トキ29329)

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ブレーキ装置をKC方式からARSD方式に変更したグループです。写真はあおり戸を補修し易い平板に交換したもので、傷んだ車輛に適時行われていたようです。台車はTR213-1形を履いています。

トキ29400~29499(トキ29425)

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昭和50年に登場した最終増備のグループです。マイナーチェンジが行われ、あおり戸や妻板が平板になり、外観が一変しています。

汎用貨物を輸送する貨車として活躍しましたが、現在は事業用として数両が残って活躍をしています。

トキ23900形式(トキ23911)

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昭和55年にトキ25000形式を改造して登場した36t積み亜鉛塊専用無蓋車です。側面のあおり戸を撤去し、三角のスライド屋根を設けています。この他はトキ25000形式と同じです。平成7年に形式消滅しています。

トキ80000形式(写真は模型です。拡大はできません。)

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昭和48年に登場した30t積み大形板ガラス専用無蓋車です。トキ25000形式の派生形式で、国鉄トキ22000形式(トキ15000形式改造)という同じ積荷を専用とする貨車がありましたが、大きさが制約されるために新しく私有貨車として登場しました。
荷台部分は低床式になっており、板ガラスは立てかけて輸送していました。しかし、連結時の衝撃などにより、ガラスが破損または全損する事が多かったらしく、10年ほどで廃車されてしまいました。

JR貨物トキ25000形式(トキ25000-1)

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平成11年に登場した亜鉛精鉱専用40t積み無蓋車です。JR貨物(国鉄)所有のトキ25000形式の置換えに伴い登場しました。車体寸法はほぼ同じですが、荷重を増やしています。荷重の増加に伴い各部材の強化が図られています。あおり戸も同じ4分割ですが、積荷を降ろす際はカーダンパーを用いており、貨車ごと傾斜させて荷役をするため通常は使用していないそうです。あおり戸、妻面、床板にはステンレス板が貼られており貨物がスムーズに降ろせるようになっています。台車はFT1C形式を履いています。高速貨車用の台車ですが、運転最高速度は75km/hとなっています。
※亜鉛精鉱・・・閃亜鉱石など亜鉛鉱石のなかで、低品位なものを粉砕し、焙焼して硫黄などの不純物を取り除き、金属分の品位を高めたもの。