タキ9250形式(タキ9263)

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昭和42年に登場した30t積みアセトアルデヒド専用タンク車です。タキ6850形式とほぼ同じ外観です。違いはタキ6850形式の設計は通常のタンク車の構造でしたが、タキ9250形式は高圧ガスタンク車に準じた設計を採用している点です。15m級の大きめのタンク車で、保冷キセとタンク体上部にある荷役配管などの収まった箱が特徴でした。平成16年に形式消滅しています。

タキ9550形式(タキ9551:マワ車所蔵)

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昭和41年に登場した35t積みガソリン専用タンク車です。35t積み車ではタキ9900形式、タキ9750形式に続いて3番目に登場した形式になります。タキ9900形式を始まりとする99系タンク車の欠点を改良するため、日本車輛で2両製作した試作車になります。外観はタキ9900形式に独特の軽量台枠を組み合わせたスタイルで、石油類専用車としてタキ9650形式が製作されました。この改良結果は後に登場するタキ35000形式で開花しました。平成19年に形式消滅しています。

タキ9750形式(タキ9761)

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2軸車から始まったタンク車ですが、そのスタイルは台枠の上にタンク体を載せるシンプルなものでした。1度に輸送できる量を増やすためにはタンク体を大きくする方法があります。しかし、大きさにも限界があります。そこで、ボギー車の誕生となります。こちらもタンク体の大きさに限界があり、重心位置など物理的理由から2200㎜程度となります。荷重はガソリンなどで30t程が限界になります。限られた空間において、荷重増を出来ないかと車輛メーカーで模索が始まります。共通した事柄ではタンク体の径を場所により変える「異径胴タンク体」に発展していきました。荷重が増える分、車体重量も増えるため、場合によっては軸重制限がかかってしまい、走れる線区が限られてしまいます。このため、車輛の軽量化という課題も並行して開発が行われました。
タキ9750形式は昭和37年に登場した35t積みガソリン専用タンク車で、タキ9900形式に続いて登場した形式です。汽車会社製作のタンク車で、フレームレス構造のような特殊構造を用いず、タキ3000形式30t積み車をベースに35t積みを可能としたもので、10系タンク車(汽車型軽量35t車)の第1号として設計されました。タンク体は2200㎜~2300㎜の異径胴で、両端が絞られたスタイルとなっています。中梁に耐候性高張力鋼を用いて、側梁を省略して軽量化を図りました。石油類専用車としてタキ10000形式があります。平成13年に形式消滅しています。

タキ9800形式(タキ9827・タキ9856・タキ19876)

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昭和37年に登場した35t積み石油類専用タンク車です。タキ1500形式に続く2番目の形式となります。車体構造はタキ9900形式99系タンク車と同じ、フレームレス構造を採用しています。(タキ9900形式の石油類専用車)496両が製造され、多室構造の変形車などもありました。ドームの形状にもいくつか種類があり、初期車では玉ねぎ形スタイルが特徴でした。台車はTR41C形式ですが、晩年はTR209系に履き替えた車輛も見られました。加熱管は1本のタイプが多くありましたが、中には2本もった車輛もありました。平成20年に形式消滅しています。

タキ9900形式(タキ9913・タキ39938・タキ59931)

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昭和37年に登場した35t積みガソリン専用タンク車です。ガソリン専用車としては初めての35t積み車で、99系タンク車の第1号形式となります。日本車輛で昭和35年に登場したタキ50000形式50t積みガソリン専用車(下記イラスト参照。伊勢崎軌道様より拝借しました。)で、採用した「魚腹形異径胴タンク体」を採用しました。

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タキ50000形式では容積を増やすため、タンク体の中央部を太く設計した「魚腹形異径胴タンク体」。中梁を省略して、台枠内にタンク体を落とし込む構造です。タキ9900形式ではさらに軽量化を図るため、タンク体に台枠の機能を付加した設計。つまり、タンク体を強固に設計して、側梁を省略しました。このタンク体と台枠を一体化した構造を「フレームレス構造」と言います。また車体長はタキ3000形式より約1mほど短く、軽量化と車長短縮を同時に実現したタンク車として546両が製作されました。また、多くの99系タンク車が製作されています。
初期車は玉ねぎドームと呼ばれる特徴のある形状。台車はTR41C形式でした。

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平成20年に私有貨車では形式消滅したタキ9900形式。平成12年に廃車となったタキ9900形式(タキ39961)をJR北海道が購入し、『散水車』に改造しました。夏季においてレール温度を下げるために改造したもので、積荷が水の場合は記号が「ミ」(水運車)となるのですが、そのままタンク車の記号を使っています。岩見沢運転所所属となっています。

タキ10000形式(タキ10062)

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昭和38年に登場した35t積み石油類専用タンク車です。タキ1500形式、タキ9800形式に続いて登場した形式て、タキ9750形式ガソリン専用10系タンク車の石油類専用車として製作されました。C重油などの高粘度、高比重の油類を輸送するタンク車で、積み降ろし時に流動性をよくするための蒸気加熱管が設置されています。
ラストナンバーであるタキ10084はタキ35000形式から改造された車輛で外観は大きく異なっていました。平成13年に形式消滅しています。

タキ10100形式(タキ10108・タキ10123)

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昭和42年に登場した35t積み二硫化炭素専用タンク車です。タキ5100形式30t積み車を拡大した形式になります。保冷キセ付のタンク車で、特徴として積荷が引火性があり、爆発を防止するため空積にかかわらず1t程度の水を積んでいます。タキ10117~最後のタキ10123までは保安対策車となっています。

タキ10450形式(アコタキ10463・アコタキ10453)

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昭和43年に登場した35t積み濃硝酸専用タンク車です。タキ7500形式30t積み車を拡大した形式になり、そのスタイルも似ていますが、荷重の増えた分車体が延長されています。この形式も昭和49年の保安対策による荷重見直しで、35tから32tに変更されています。純アルミタンク体をもつタンク車で、タンク体は地肌色(銀色)となっています。一部の車輛では保冷のため、タンクの周りにキャノピー型キセを設置した車輛もありました。(写真右)平成21年に形式消滅しています。

タキ10500形式(タキ10500)

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昭和43年に登場した40t積みアルミナ専用タンク車で、1形式1両の存在です。オールアルミ車で、タキ8400形式、タキ8450形式に続く3番目の形式となります。所有車の保有するタキ6400形式をアルミを用いて車体を軽量化し、その分荷重を増やしています。荷役方式は珍しい真空吸引式となっており、元を辿れば荷主会社がアルミナ輸送を始めた時、国鉄の長物車にコンテナを積載して始まった事によるもので、以降同社の保有するアルミナ専用タンク車は真空吸引式を採用していました。台車はTR210形式です。平成7年に形式消滅しています。

タキ10600形式(タキ10628)

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昭和43年に登場した35t積みセメント専用タンク車です。タキ7300形式の荷役方式であるエアスライド方式に圧送方式を併用したため、新形式として登場しました。タキ1900形式40t積み車が席巻していた時期に35t車を製作した理由は、40t積み車では軸重制限を受ける線区への対応のため、荷重を減らしたためです。平成12年に形式消滅しています。

タキ10700形式(タキ10700・タキ10736・タキ10752)

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昭和43年に登場した35t積み希硝酸専用タンク車です。タキ8100形式を拡大した形式になります。平成7年までに60両が製作されました。タンク体はステンレス製で、ドーム付とドームレスの2種類があります。製造年が昭和50年頃の車輛より保安対策が盛り込まれました。保安対策により、タンクの空容積増加で徐々に長くなり、これにあわせて台枠も延長されています。平成5年以降に製造された車輛は近代的なスマートなタンク車となっていました。(写真右)平成21年に形式消滅しています。

タキ11000形式(タキ11005)

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昭和39年に登場した35t積み石油類専用タンク車です。C重油を輸送するキセ付タンク車として初めての形式となります。この形式は日本車輛製で、11系日車型軽量35t車の第1号形式で、同社の開発したタキ50000形式に採用した異径胴タンク体と中梁省略の構造としており、さらに当時では珍しい高張力鋼を採用し、軽量化を図った形式です。主に北海道地区で活躍しました。現在は廃形式となっています。

タキ11250形式(タキ11252・タキ11255)

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昭和57年に登場した32t積みアセトアルデヒド専用タンク車です。タキ9250形式を増備するにあたって、長距離輸送時の保冷性能を改善したため形式変更となりました。この際、輸送効率を改善しており、32t積みとしています。保冷キセ付38系タンク車の一つで、全長は15m級の大形貨車です。昭和57年製(写真左)は4両、平成3年製(写真右)は2両製作されました。平成19年に形式消滅しています。
※アセトアルデヒド(acetaldehyde 化学式:CHCHO)…アルデヒドの一つ。人体ではエタノール(お酒)の酸化によって生成し、二日酔いの原因とされる物質として有名。融点-123℃、沸点21℃の刺激臭のある無色透明の液体。非常に引火性が強く、有毒。石油化学製品の一つでもあり、酢酸エチルの原料や酢酸系薬品の原料に用いられています。

タキ11350形式(タキ11372)

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昭和56年に登場した31t積み生石灰専用タンク車です。タキ11500形式をベースに設計されており、容積の関係から半端な荷重となっています。荷役方式はエアスライド及び圧送方式を併用しています。これは将来タキ11500形式にも転用が出来るようにとしたためで、実際は昭和56年に新製車が10両作られ、その後の増備は転用先となる予定であったタキ11500形式からの改造車で20両が改造され編入されました。平成4年に形式消滅しています。

タキ11500形式(タキ11539・タキ11585)

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昭和43年に登場した40t積みセメント専用タンク車です。タキ1900形式に続いて登場した形式で、タキ1900形式の荷役方式であるエアスライド方式に圧送方式を加えたため新形式となりました。外観は大きく別けて2種類あり、日本車輛製と日立製はタンク体に補強環が4本入っています。川崎製と富士重工製はタンク下部に補強環を配したものとなっていました。平成19年に形式消滅しています。

タキ11600形式(タキ11600)

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昭和43年に登場した35t積みプロピレングリコール専用タンク車です。1形式1両の存在で、タム7000形式15t積み車を拡大した形式なります。昭和62年に専用種別がエチレングリコールに変更され、プロピレングリコール専用車は消滅しました。ステンレス製タンク体を持つ化成品タンク車ですが、荷役は上入れ下出し方式となっています。平成15年に形式消滅しています。
※プロピレングリコール(propylene glycol 化学式:C)…融点-59℃、沸点188℃の有機化合物の一つ。1,2-プロパンジオールとも言い、無色の無味無臭の可燃性液体で、吸湿性が高い。酸化プロピレンの加水分解によって得られます。少しの量ならば毒性が低く、無味無臭である事から保湿剤、乳化剤、不凍液、溶媒などに用いられています。また、保湿性や防カビ性を利用して医薬品、化粧品、食品の品質改善などにも用いられています。

タキ11800形式(タキ11804)

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昭和43年に登場した35t積み潤滑油添加剤専用タンク車です。積荷は低温になると粘度が高くなってしまうため、断熱材、外部加熱装置などを設けていました。平成8年に5両あるうちのタキ11802~タキ11804の3両が青化ソーダ液に種別変更を受け、改造工事を受けました。(写真)荷役方式は上入れ上出し方式に変更、タンク内面にゴムライニング加工を施しました。平成18年に形式消滅しています。
※潤滑油添加剤…鉄道輸送されるのはジアルキルジチオフォスフェート亜鉛やアマイド化合物を鉱物油に溶かしたもので、特異臭ある暗褐色液体です。

タキ11850形式(タキ11850:マワ車所蔵)

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昭和57年に登場した37t積み塩化第二鉄液専用タンク車です。1形式1両で、タキ1500形式を改造して登場しました。台枠から下は種車のものを流用し、耐候性高張力鋼のタンク体を新製しました。タンク内は積荷が鉄、ステンレスを腐食するためゴムライニング加工が施されています。細長いスタイルに、タンク体の補強環が特徴のタンク車でした。平成16年に形式消滅しています。
※塩化第二鉄(ferric chloride 化学式:FeCl)…塩化鉄(Ⅲ)とも言う、融点282℃、沸点351℃(無水時)の黒褐色の粉末(無水物)。潮解性の特徴を持っています。塩化鉄(Ⅱ)と塩素の反応で得られます。鉄道輸送では、38%の水溶液で、塩素臭のある黒褐色液体で、腐食性が強いのが特徴です。電子部品や金属のエッチングなどに用いられています。

タキ12200形式(タキ12245)

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昭和43年に登場した40t積みセメント専用タンク車です。40t積みセメント専用車を各社で開発していましたが、タキ12200形式は富士重工の独自開発によるもので、異径胴タンク体とフレームレス構造を合わせた構造となっています。タンク体下部は漏斗型になっており、側梁はフレームレス構造のためありません。荷役方式はエアスライドと圧送の併用を予定していましたが、エアスライド方式のみとなっています。

タキ13700形式(タキ13709)

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昭和44年に登場した35t積みアルコール専用タンク車です。タキ7250形式のタンク体に用いられていた耐候性高張力鋼からステンレスに材質を変更したため新しい形式として登場しました。タキ35000形式に似た35系タンク車の一つで、タンク体は地肌色(銀色)です。台車はTR41C又はTR41E-12形式です。平成19年に廃形式となっています。
※アルコール…鉄道輸送では「アルコール」はメタノールを言います。
※メタノール(ethanol 化学式:CO)…エチルアルコール(ethyl alcohol)やお酒の主成分である事から酒精とも言われる身近な物質の一つ。融点-114℃、沸点78℃の無色引火性液体で揮発性、吸湿性が高いのが特徴です。アルコールの発酵やエチレンによる有機合成によって作られています。飲用のほか、殺菌、消毒、燃料、有機合成の原料として使われています。なお、酒類のうち、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒はアルコール専用車で輸送されています。

タキ13800形式(タキ13806・タキ13802)

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昭和44年に登場した35t積み酒類専用タンク車です。酒類専用タンク車としては唯一の形式で、25両がつくられました。タキ13700形式を一回りした小さくしたスタイルとなっています。昭和63年に一部の車輛がアルコールに専用種別を変更しており、比重の違いにより、荷重を28t積みに変更しています。平成19年に廃形式となっています。
※酒類…鉄道輸送で「酒類」とは、ワインや日本酒などの醸造酒のことを言います。実際にはこの他にりんごジュースなどの輸送もタキ13800形式で運んでいたそうです。

タキ14300形式(タキ14303)

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昭和43年に登場した35t積みノルマルパラフィン専用タンク車です。ノルマルパラフィン専用車としては唯一の形式で、7両作られました。外観はタキ35000形式によく似たスタイルで、蒸気加熱管の設置があるのが違いとなっています。平成20年に廃形式となっています。
※ノルマルパラフィン(normal paraffin)…灯油、軽油から分離抽出される直鎖状飽和炭化水素の総称で、鉄道輸送では炭素数10~18の無色引火性液体です。アルキルベンゼン、高級アルコール、可塑剤などの原料に使われています。

タキ14700形式(タキ14709・タキ14713・タキ14733)

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昭和44年に登場した30t積み液化酸化エチレン専用タンク車です。液化酸化エチレン専用車としては唯一の形式で、保冷キセ付の高圧ガスタンク車です。高圧ガス保安法によりタンク体はねずみ色1号(灰色)となっています。また、化成品分類番号は「毒燃G26-3」です。タンク体は純度を保つためステンレス鋼を用いて、保冷性能に優れたウレタンを断熱材に使用しています。初期の車輛は両側ブレーキ、タキ14713以降は手ブレーキになっています。台車もTR41C形式に始まり、TR211F、TR216A形式へと保安度が向上しているのが特徴です。初期車の老朽化による廃車は同形式の新製によって賄われていました。
※酸化エチレン(エチレンオキシド(ethylene oxide 化学式CO))…略称はEO。エポキシエタン、オキシランなどと呼ばれる融点-111℃、沸点10℃の刺激臭のある無色引火性気体で有毒。空気がなくとも火花や静電気で爆発する。水や有機溶媒に溶ける性質を持っています。エチレンの酸化によって製造されるもので、有機合成の中間体、界面活性剤などの原料に使われています。

タキ14800形式(タキ14803)

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昭和44年に登場した35t積みカプロラクタム専用タンク車です。積荷は高い保温性能を要求するもので、ステンレス製タンク体にウレタン断熱材を巻いています。また、空気に触れると酸化、変質を起こすので窒素を封入して輸送されます。35系タンク車の一つですが、魚腹形異径胴タンク体を初めて採用し、独特のスタイルとなっています。川崎・富士重工製(写真)と三菱製の2種類があり、外観が異なっていました。平成19年に廃形式となっています。
※カプロラクタム(ε(エプシロン)-カプロラクタム(ε-Caprolactam)化学式:C6H11NO)…融点69℃、沸点267℃の白色粉末。吸湿性があり、水に溶けやすい。加熱、燃焼によって分解し、窒素化合物、アンモニアなどを生じます。ポリアミド繊維(ナイロン)、樹脂の原料として用いられています。

タキ14900形式(タキ14903)

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昭和44年に登場した39t積みホルマリン専用タンク車です。タンク車では初めて荷重に端数トン数を最初に採用した形式として知られています。5両が製作され、35系タンク車の一つです。積荷は腐食性のある性質ですが、上入れ下出し方式を採用している点も特徴でした。平成10年に形式消滅しています。

タキ15600形式(タキ15600)

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昭和44年に登場した40t積み亜鉛焼鉱専用タンク車です。タキ15600~タキ15619までは富士重工製、タキ15620~タキ15637は日立製であり、前者と後者で全く違うスタイルとなっており、別形式でも不思議ではありませんでした。日立製は平成8年に廃車され、富士重工製は平成25年に廃車となり、形式消滅しました。スタイルは同社のタキ12200形式に似ていますが、積荷の比重の関係でやや小さいです。晩年は台車をTR209系に履き替えた車輛もありました。
※亜鉛焼鉱…閃亜鉛鉱(せんあえんこう)などの亜鉛鉱石のうち、低品質のものを粉砕、焙焼し硫黄などの不純物を除去して、金属分の品位を高めたもの。

タキ15700形式(タキ15707)

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昭和44年に登場した35t積みメチルメタアクリレート専用タンク車です。35系タンク車の一つで、保冷キセの巻かれたスタイルとなっています。荷役方式は上入れ下出し方式で、荷卸しの際に流入する空気を除湿するための除湿装置が設置されています。化成品分類番号は「燃31」です。平成13年に形式消滅しました。
※メタクリル酸メチル(methyl methacrylate 化学式C5H8O2)…メチルメタアクリレートのこと。略称はMMA。融点-48℃、沸点101℃の香気ある無色の可燃性液体。アセトンとシアン化水素(青酸の事。)を原料に製造されています。用途は各種ポリマー合成の原料で、メタクリル酸メチル樹脂(略称:PMMA アクリル樹脂の一つ。ガラスの代わりになるほどの透明性の高いプラスチック。)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(略称MBS ポリ塩化ビニル(PVC)の改質剤)、スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合樹脂(略称SMM PMMAに添加すると、特性を損なわず耐熱性を向上させる改質剤。自動車のメータパネルや光学フィルムなどに使用されています。)に用いられています。

タキ15800形式(タキ15801・タキ15814)

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昭和44年に登場した35t積みエチレングリコール専用タンク車です。全部で24両が製作され、タキ15819~タキ15823はタキ45000形式からの改造車になります。タンク体は純度保持のためステンレス製となっています。また、残液を防ぐために車体中央に向かってわずかに傾斜しています。ドームレスタンク車では珍しい構造として知られていました。補強環は4本または6本あります。平成20年に形式消滅しています。

タキ15900形式(タキ15903)

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昭和44年に登場した35t積み液体硫酸アルミニウム専用タンク車です。タキ6050形式に続いて登場した形式で、タキ6050形式を軽量化した形式となります。増備が期待されましたが、保安度向上対策により重量が増えるため、タキ6050形式が再び製作される事となり、4両のみで終わってしまいました。平成9年に形式消滅しています。

タキ16200形式(タキ16205)

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昭和44年に登場した35t積み酢酸ビニル専用タンク車です。タキ8700形式30t積み車を拡大した形式で、35系タンク車の一つです。タンク材質はステンレス製ですが、一部の車輛は酢酸の臨時輸送に対応するために設計されていました。平成11年に形式消滅しています。

タキ16500形式(タキ16511)

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昭和44年に登場した35t積みプロピレンオキサイド専用タンク車です。平成5年まで造られ、形態は35系、17系(写真)、38系タンク車があり、寸法は各々異なっていましたが、15m級大型タンク車として知られていました。17系、38系は保安対策車です。平成20年に形式消滅しています。
※プロピオンオキサイド(酸化プロピレン(化学式:C3H6O))…略称 PO。融点-104℃、沸点34℃のエーテル臭を持つ無色引火性液体で有毒。有機化合物で、エポキシドの一つ。プロピレンオキシド、メチルオキシランなどとも言われています。ポリウレタンをはじめとする各種化成品の原料で、石油化学製品の一つです。沸点、引火点が低く、引火性が強いため、鉄道輸送では低温輸送されています。用途はポリウレタンやポリエステルの製造に主に用いられています。

タキ16600形式(タキ16601)

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昭和44年に登場した35t積みエチレングリコール専用タンク車です。タキ15800形式のタンク材質はステンレス製ですが、これを普通鋼とし、タンク内をステンレスライニングしたため登場した形式です。外観はタキ6600形式を一回り大きくしたスタイルでした。平成9年に廃形式となっています。

タキ17600形式(タキ17603)

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昭和45年に登場した30t積み金属ナトリウム専用タンク車です。化成品分類番号は燃(禁水)44」。積荷は非常に危険な物質のため特殊な輸送方法が特徴となっています。120℃で溶かした積荷をタンク車に注入し、加熱管から低温の油を使い冷やし、固めます。これを輸送。荷卸しは加熱管に140℃の油を注入し、積荷を溶かして取り出すという方法が行われていました。車体重量軽減のためでしょうか。側梁省略構造が特徴のタンク車です。平成9年に形式消滅しています。
※金属ナトリウム(sodium metal 元素記号:Na)…原子番号11の元素で、融点98℃、沸点883℃の銀白色固体。工業分野では曹達(ソーダ)といい、ナトリウム化合物を造る会社の社名にもなっています。非常に反応性が高い金属で、水に触れると激しい反応を起こします。空気中に放置をすると容易に酸化してしまいます。(灯油で保存。)水酸化物や塩化物を融解塩電解(イオン性の固体を高温にして溶かし、電気分解する方法。)をする事で得られます。ソーダ工業製品の一つで、染料の製造や有機合成試薬などに使われています。

タキ17900形式(タキ17903)

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昭和44年に登場した35t積みアルミナ専用タンク車です。同じ積荷、荷重のタンク車ではタキ6400形式、タキ7400形式とありますが、タキ6400形式とは荷役方式(真空吸引式ではなく、上入れ下出し方式)が、タキ7400形式とはタンク体材質(アルミ合金ではなく、普通鋼)が異なるため新形式となっています。日立製と日本車輛製の2種類があり、それぞれ、同社の製作したセメント専用タンク車(日立はタキ19000形式、日本車輛はタキ1900形式)をモデルにしていました。写真は日立製です。平成12年に形式消滅しています。

タキ18100形式(タキ18100)

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昭和44年に登場した35t積みPPG(ポリプロピレングリコール)専用タンク車です。タキ35000形式に似ていますが保温キセが付いています。また、タンク体はステンレス製となっています。2両作られ、活躍していましたが平成13年に形式消滅しています。
※ポリプロピレングリコール(polypropyleneglcol)…ポリプロピレンオキシド(polypropyleneoxide)とも言い、ポリエーテルの一つ。無色または淡黄色の粘稠性液体です。石油化学製品の一つで、たくさんの製品があり、その品種ごとに物性が異なります。ポリウレタン樹脂や界面活性剤の材料として用いられています。

タキ18300形式(タキ18303)

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昭和45年に登場した35t積み液体ポリ塩化アルミニウム専用タンク車です。全部で8両が製作され、タキ18303~タキ18307は保安対策車となっています。積荷は鉄やステンレスを腐食するため、タンク内面にゴムライニング加工が施されています。平成11年に形式消滅しています。
※ポリ塩化アルミニウム(poly aluminum chiorde 化学式:Al)…略称 PAC。無色透明又は淡黄褐色の弱酸性の液体です。用途は水処理用凝集剤として使われています。

タキ18600形式(タキ18628・タキ18643・タキ18691)

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昭和45年に登場した25t積み液化アンモニア専用タンク車です。保冷キセ付の高圧ガスタンク車で、タンク体は高圧ガス保安法により白色が指定されています。全長は18級の大型タンク車で、16mを超えるタンク車である事を示す記号「オ」が形式の前に付きます。
タキ4100形式と同じですが、タキ25000形式LPガス専用タンク車に用いられた新技術(波除板の廃止や高圧ガスタンク車用の新しい台車(TR207形式)など)を採用して設計されたため、新しい形式となっています。タキ18600~タキ18629までは側ブレーキ、タキ18630~タキ18699、タキ118600~タキ118627は手ブレーキ付で外観が異なります。台車はTR207、TR211、TR216B形式台車を履いています。平成21年に形式消滅しました。
※アンモニア(ammonia 化学式:NH)…融点-77℃、沸点-33℃の特有の刺激臭ある無色の気体で、非常に有毒。化学工業において、窒素源としてとても重要なものとなっています。アンモニアは液化し易い特徴があります。水に溶かす事もでき、「アンモニア水」と呼ばれています。アンモニアは毒性が強く、粘膜に対する刺激が強い。目に入った場合には失明に至る。悪臭防止法では特定悪臭物質の一つに(ちょっとお手入れの行き届いていない公衆便所の臭い)、毒物及び劇物取締法でも劇物に指定されています。アンモニアは水素と窒素を高圧下で反応させ生産されます。用途は肥料や硝酸の製造、無機薬品の原料などに用いられています。
ちなみにアンモニアの由来はエジプトのアモン神殿近くからアンモニウム塩が産出されていた事によります。ラテン語でsol ammoniacum(アモンの塩)が語源です。

タキ18700形式(タキ18701:マワ車所蔵・タキ18704)

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昭和45年に登場した35t積み酢酸及び無水酢酸専用タンク車です。タキ3700形式を拡大した形式で、初めての35t積み車となります。35系タンク車の一つで、保温キセの付いたタイプとなります。5両製作されたうち、タキ18702~タキ18704までは保安対策車で、空容積増加によりタンク体が延長されたのに合わせ、車体長が長くなっています。手ブレーキ付や走行性能が安定したTR225形式台車を履くなどの保安対策車の特徴があります。平成23年に廃形式となっています。

タキ19000形式(タキ19103)

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昭和42年に登場した40t積みセメント専用タンク車です。川崎重工が開発したタキ1900形式に対抗する形で、日立が開発した形式です。普通鋼のみで製作したタキ1900形式ですが、タキ19000形式は普通鋼と耐候性高張力鋼を併用している点が異なります。タンク体の補強環がポイントです。平成18年に形式消滅しています。

タキ19500形式(タキ19503)

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昭和45年に登場した35t積みスチレンモノマー専用タンク車です。タキ800形式を拡大した形式となります。35系タンク車の一つで、保冷キセ付タイプとなっています。6両製作され、タキ19503~タキ19505は保安対策車となっており、初期車とは車体長などが異なります。平成15年に形式消滅しています。

タキ19550形式(タキ19550・タキ19551)

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昭和57年に登場した25t積み液化イソブチレン専用タンク車です。昭和57年に1両、平成5年に1両づつ製作されました。保冷キセ付の高圧ガスタンク車で、設計段階よりタキ18600形式液化アンモニア専用車に転用が出来るように計画されていました。タンク体はガス容器であるため、高圧ガス保安法によりねずみ色1号(灰色)が指定されています。18m級大型タンク車であるため、16m以上のタンク車を表す「オ」の記号が形式前に付けられています。化成品分類番号は「燃(G)23」です。
イソブチレン(isobuthylene 化学式:C)…融点-140℃、沸点-7℃の特異臭のある無色引火性気体。石油化学製品の一つで、重要な炭化水素です。ブチルゴム、ガソリン添加剤の原料、有機合成の中間体に用いられています。

タキ19600形式(タキ19607・タキ19610)

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昭和45年に登場した35t積みTDI(トルエンジイソシアネート)専用タンク車です。このタンク車も時節柄、保安対策車があり、初期の車輛タキ19600~タキ19607は35系タンク車として、保安対策車となったタキ19608~タキ19610は38系タンク車としており、外観が異なっていました。化成品分類番号は「毒61」です。平成10年に形式消滅しています。
※トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate 化学式:C)…融点11℃~13℃、沸点251℃の無色または淡黄色油状液体で、有毒。芳香族ジイソシアネートの一つです。トルエンとホスゲンから製造される化学物質で、ポリウレタンの原料(自動車の座席、寝具、塗料、食品包装用接着剤など)に用いられています。