タキ20350形式(タキ20351)

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昭和55年に登場した35t積みブチルアルデヒド専用タンク車です。38系タンク車のステンレス製タンク体を持っており、キセは無く、このタイプの38系タンク車はこの形式が唯一のものでした。5両製作され、全ての車輛が後に専用種別をアセトアルデヒドシアンヒドリンに変更しました。平成19年に形式消滅しています。
※ブチルアルデヒド(butyraldehyde 化学式:CO)…融点-99℃、沸点85℃の甘酸っぱい焦げたような特有の刺激臭を持つ可燃性無色の液体で、アルデヒドの一つ。悪臭防止法の特定悪臭物質に指定されています。石油化学製品の一つであり、有機合成の原料や可塑剤の製造などに用いられています。
※ラクトニトリル(lactonitrile 化学式:CNO)…アセトアルデヒドシアンヒドリンは別名。融点-40℃、沸点180℃の麦わら色の引火性液体で有毒。溶剤、乳酸、酢酸エチル合成の中間体として用いられています。

タキ20500形式(タキ20506・タキ20517)

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昭和45年に登場した35t積み石炭酸専用タンク車です。タキ3900形式を拡大した形式で、35系タンク車の一つです。21両製作された車輛のうち、平成3年製のタキ20518~タキ20520以外は、断熱材に用いていたウレタンの劣化によりタンク体を更新(新製)しています。荷役方式はタキ20500~タキ20512までは上入れ下出し方式、タキ20513以降は上入れ上出し方式となっています。平成15年に形式消滅しています。

タキ20700形式(タキ20700・タキ20701)

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昭和46年に登場した35t積みパークロルエチレン及びトリクロールエチレン専用タンク車です。5両製作され、タキ20703及びタキ20704はタキ10700形式からの改造車です。長い台枠に細いタンクを載せたスタイルが特徴で、タキ20700のみTR41C形式台車を履いています。この他はTR41E-12又はTR41DS-12形式となっています。平成19年に形式消滅しています。
※テトラクロロエチレン(tetrachloroethylene 化学式:CCl)…別名パークロルエチレンなどと呼ばれる融点-19℃、沸点121℃の無色透明の不燃性液体で、鋭く甘い悪臭が特徴。製造方法や用途はトリクロールエチレンに似ていますが、溶解力が低いためドライクリーニングに多く用いられています。

タキ21350形式(タキ21366・タキ21374)

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昭和52年に登場した35t積み塩素酸ソーダ液専用タンク車です。昭和46年にタキ21300形式という、同じ塩素酸ソーダ液35t積み車のタンク内面をFRPライニングから保安対策によりステンレスライニングに変更したため登場した形式になります。外観はタキ21300形式が側ブレーキ装備に対し、タキ21350形式は保安対策を盛り込んだスタイルで、手ブレーキや台車(TR225形式又はTR213C形式)に違いが見られます。タキ21350~タキ21369は新製車で、タキ21370~タキ21374は昭和62年にタキ21600形式塩素酸ソーダ専用(粉体)タンク車を改造したものとなっています。これは、本州と北海道を結ぶ青函トンネル開業の際、危険品通過禁止品目の中に粉体となる塩素酸ソーダがあり、運用を可能とするための改造です。平成19年に形式消滅しています。
※塩素酸ナトリウム(sodium chlorate 化学式:NaClO3)…融点248℃、沸点300℃の塩素酸ソーダとも言う、ナトリウムの塩素酸塩で、無色の無臭の結晶で潮解性の性質を持つほか、水に溶け易い性質を持ちます。強い酸化作用があり、有機物、硫黄、金属の粉などが混ざると、加熱、摩擦、衝撃で爆発します。ソーダ工業製品の一つで、熱濃厚食塩水の電気分解で製造されます。鉄道輸送では25~45%の水溶液です。二酸化塩素を合成し、パルプを漂泊するのが主な用途。各種塩素酸塩の原料としても用いられています。身近なものとしては、除草剤に使われています。かつては純粋な塩素酸ナトリウムが農薬としてありましたが、爆発物に非合法に利用された(昔の刑事ドラマで、犯人が爆弾をボロアパートでつくる時のシーン参照。)ため、現在では炭素塩など混ぜたものとなっています。(現在は環境問題もあり、使用量は減少。)

タキ21600形式(タキ21603)

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昭和46年に登場した35t積み塩素酸ソーダ専用タンク車です。化成品分類は「化51」です。タキ21300形式やタキ21350形式は液体にして輸送しますが、この形式は粉状で輸送するため、輸送効率は高いので工場からストックポイント間の輸送に活躍しました。タンク体の補強環が特徴の35系タンク車(写真)と38系タンク車(タキ21350形式タキ21374を参照。)の2つのスタイルがありました。荷役方式に特徴がある形式で、積み込む際はそのままザーッとタンク内に入れ、荷卸しの際は粉塵爆発を防止するため水を注入して取り降ろす方法となっていました。積荷が固形化し詰まらないように工夫がされていました。平成19年に形式消滅しています。

タキ22900形式(タキ22905・タキ22910・タキ22928)

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青化ソーダ液を輸送する際、苛性ソーダ液専用タンク車を用いて、臨時専用種別変更を行い輸送をしていましたが、昭和46年毒物及び劇物取締法の改正に伴い専用のタンク車で輸送する事になり、昭和47年に初めての35t積み青化ソーダ液専用タンク車として登場しました。タンク体上部にあるマンホールや弁装置類が収まった3つのプロテクターが特徴です。外観は大きく別けて3種類あり、タキ22908までは側ブレーキ、タキ22909からは手ブレーキとなっています。タキ22927~タキ22930の最後の4両は保安対策車で、タンク体や台枠が延長されています。平成19年に形式消滅しています。
※シアン化ナトリウム(sodium cyanide 化学式:NaCN)…青化ソーダ、青酸ソーダとも言われる融点563℃、沸点1496℃の無色の結晶。ソーダ工業製品の一つで、シアン化アルカリとして最も主要な製品です。化学的、生理的性質はシアン化カリウム(青酸カリ)に似ており、毒物及び劇物取締法で毒物に指定されています。シアン化水素と水酸化ナトリウムの中和反応によって生成されます。鉄道輸送では30%の水溶液を輸送しています。有機合成に用いる青酸の発生原料として用いられています。

タキ23600形式(タキ23631・タキ23634)

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昭和47年に登場した35t積み液体硫黄専用タンク車です。保温キセ付ドームレスタンク車で、タキ23631まではタンク体材質に普通鋼又は溶接構造用圧延鋼を使用し、内部は高温酸化予防及び硫化水素による腐食防止を目的にアルミニウムメタリコン処理を施していました。平成5年に登場したタキ23632~タキ23634はタンク体材質をステンレスとしています。積荷の硫黄は熱を加えると液化する性質があり、液化した状態で輸送をしていました。輸送する時の温度は140℃~150℃で、タンク車の積荷では最も高温です。平成18年に形式消滅しています。
※硫黄(sulfur 元素記号:S)…原子番号16の元素。酸素族元素の一つ。様々な種類があり、融点などが異なります。沸点は444℃です。太古から知られるもので、誰が見つけたかはわからない。硫黄の英語名に「sulphur」というのがありますが、ラテン語で「燃える石」を意味する言葉が語源となっています。常温では黄色の固体。原油の脱硫によって得られ、用途は化学工業では最も需要な酸の硫酸や黒色火薬、合成繊維、医薬品などの原料として、また様々な分野において硫化物や各種化合物にも用いられています。

タキ23650形式(タキ23651)

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昭和57年に登場した34t積み液体硫黄専用タンク車です。タキ23600形式を増備する際、余剰となっていたタキ1500形式を改造したもので、35t積み車としたかったのですが、自重増となってしまい荷重を減らしたため、新形式となりました。2両が改造され、共に台枠以下を流用し、タンク体は溶接構造用圧延鋼を用いたものを新製。タンク内はアルミニウムメタリコン処理が施されています。台枠に合わせた細長いタンク体のタンク車でした。平成16年に形式消滅しています。

タキ23800形式

昭和47年に登場した35t積みラテックス専用タンク車です。タキ8850形式に続いて登場した形式で、保温性能を高め、かつ自重軽減を目的に登場しました。平成3年までに34両が登場し、1つの形式で色々な外観を持つ車輛がある賑やかな一家のような形式でした。平成20年に形式消滅しています。
●タキ23800~タキ23802(タキ23801)、タキ23803(タキ23803)

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35系タンク車のグループです。タンク体はステンレス製で、キセの付いたタイプとなります。写真左は日本車輛製、断熱材はウレタンを使用。側ブレーキ構造、台車はTR41C形式。色は黒色です。右は富士重工製で、断熱材はグラスウール、手ブレーキ構造、台車はTR225形式。色は地肌色(銀色)です。
●タキ23804~タキ23818(タキ23804・タキ23806・タキ23810)

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38系タンク車のグループです。保安対策で空容積が増加しました。この他はタキ23803と同じ構造です。写真は左から日本車輛製、富士重工製、日本車輛製で、細部が異なっています。台車は全てTR225形式を履いています。
●タキ23819~タキ23821(タキ23819)

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平成元年に登場したグループで、富士重工製。新製車とのことですが、実際は当時廃車となったタキ24400形式35t積みアクリルアマイド専用タンク車の部品を流用したものです。このグループのみ台車はTR41E-12形式です。
●タキ23822~タキ23833(タキ23824・タキ23832)

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平成2年から3年にかけて登場したグループです。タキ23822~タキ23830が富士重工製、タキ23831~タキ23833が日本車輛製です。38系タンク車ですが、タンク体は35系のようなタイプの不思議な組み合わせが特徴のグループでもあります。最後の日本車輛製は洗練されたスタイルが印象的です。

タキ23900形式(タキ23902)

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昭和48年に登場した40t積みカオリン液専用タンク車です。一見すると、ごく普通の化成品タンク車に見えますが、積荷が高粘度であるため、タンク体を圧力容器(圧力構造規格容器に定める第二種圧力容器)としているのが特徴です。残液防止のため、タンク体が中心に向かって折れ曲がっている点も見逃せませんね。タンク体はステンレス製となっています。平成9年に形式消滅しています。
カオリナイト(kaolinite 化学式:AlSi10(OH))…カオリン石又は高陵石とも言う、白色の粘土鉱物の一つ。同質の粘土はカオリン(kaolin)と呼びます。カオリナイトとは、中国の有名な粘土の産地である江西省(こうせいしょう)の高嶺(カオリン:Kaoling)が由来となっています。高嶺で産出する粘土を用いて、景徳鎮(けいとくちん)で作られる陶磁器の材料として有名です。カオリナイトは吸湿性が高いのが特徴。陶磁器のほか、コート紙の塗工材などに用いられています。鉄道輸送では、カオリン(含水ケイ酸アルミニウム)の粉末を水に混ぜた30%の水溶液で、製紙用の艶出しや不透材に用いられています。

タキ24100形式(タキ24109)

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昭和49年に登場した35t積み軽質ナフサ専用タンク車です。軽質ナフサ専用車としては唯一の形式です。保冷キセ付17系タンク車の一つで、全長は14m級の大型タンク車になります。積荷は低比重であるため、タンク容積は54.6㎥とキセ付タンク車の中では最大の容積を誇ります。平成13年に形式消滅しています。
※ナフサ(naphtha)…原油を蒸留装置によって蒸留分離して得られる様々な製品のうち、沸点範囲が30℃~180℃のものを言う。粗製ガソリンや直留ガソリンなどの呼び方もあります。ナフサのうち、沸点範囲が35~80℃程度のものを軽質ナフサと言い、石油化学工業のエチレンプラントの原料として使用されています。80~180℃程度のものを重質ナフサと言い、ガソリン(ホワイトガソリン:オイルライターなどの燃料。)、芳香族炭化水素製造の原料として用いられています。鉄道輸送では、ガスナフサμ(ユニファイナ:脱硫の事)で、無色引火性液体です。都市ガスの原料に用いられています。

タキ24300形式(タキ24312・タキ24356)

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昭和49年に登場した35t積みテレフタル酸専用タンク車です。粉体タンク車では珍しい35系シリーズの形式でもあります。純度を保つためステンレスタンク体となっており、荷役方式は窒素を使ったエアスライド方式となっています。タキ24300~タキ24312は積込口が3か所ります。台車はTR41E-13形式を履いています。残りのタキ24313~タキ24360は当初、積込口は3か所ありましたが、自重を軽くするため2か所を閉鎖し、1箇所のみとなっています。台車はTR225形式を履いています。平成11年に形式消滅しています。
テレフタル酸(terephthalic acid 化学式:C)…融点300℃、沸点は昇華性(昇華(sublimation)とは、元素や化合物が液体を経ずに固体から気化又は気体から固体になる現象のこと。例えば、二酸化炭素の塊であるドライアイス。)の芳香族ジカルボン酸。略称はTPA。高純度のものはPTA(purified terephthalic acid)と呼びます。石油化学製品の一つで、白色の結晶又は粉末。エチレングリコールと合わせ、ポリエチレンテレフタレート(PET)となり、ペットボトルや衣類の原料として使われています。

タキ24700形式(タキ24701・タキ24709)

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昭和49年に登場した25t積み小麦粉専用タンク車です。車体長は16m級で、粉体タンク車では日本一の大きさです。タキ11500形式を延長したスタイルで、タンク体には補強環があり、保冷のためのキャノピー構造のキセがあり、10両のうちタキ24700~タキ24707とタキ24708・タキ24709では覆う面積が異なっています。荷役方式はエアスライド方式と圧送方式の併用です。塗装は当初は黒色でしたが、クリーム色4号になっています。平成9年に形式消滅しています。
小麦粉(wheat flour)…小麦を挽いてつくる穀粉。うどん粉やメリケン粉とも言い、メリケン粉は俗称であり、国産をうどん粉、輸入した小麦を製粉したものをメリケン粉と呼んだ事によります。このメリケンはアメリカン(American)の事で英語の発音からきたそうです。小麦粉は成分の7~8割がデンプン。約1割タンパク質も含まれており、主なタンパク質はグリアジン、グルテニンで、これら水分を含むと粘りのあるグルテンになり、小麦粉独特の料理を生み出す。グルテンのみを取り出したものが「麩(ふ)」です。タンパク質の割合と、グルテンの性質により薄力粉、中力粉、強力粉に分類されています。タンパク質分を除いて精製したものを浮き粉と言います。薄力粉はタンパク質の割合が8.5%以下のもので、ケーキなどの菓子類、パンなどに。中力粉はタンパク質割合が9%前後で、うどん、お好み焼き、たこ焼きなどに。強力粉はタンパク質割合が12%以上のもので、パンや麺類に使われています。この他に全粒粉(小麦の皮、胚芽、胚乳を全て粉にしたもの。精製された小麦粉より食物繊維や、ミネラル、ビタミンが豊富。ビスケットやシリアル食品に使われています。)、グラハム粉(全粒粉の一つ。小麦を胚乳、表皮、胚芽に分け、胚乳は小麦粉と同じ細かさに挽き、表皮、と胚芽は粗挽きにして、混ぜ合わせたもの。)、セモリナ粉(小麦より粒の粗い粉。セモリナとはラテン語で穀粉に由来します。)などがあります。

タキ25000形式(タキ25109・タキ25348)

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昭和41年に登場した25t積みLPガス専用タンク車です。タサ5700形式を拡大した形式であると同時に、高圧ガスタンク車で初めて断熱材と波除板を省略し、大幅な自重軽減を達成した画期的な形式として知られています。車体長は17m~18m級の大型タンク車で、高圧ガス取締法(現:高圧ガス保安法)の規定により、タンク体はねずみ色1号(灰色)に指定されています。台車は高圧ガスタンク車向けのTR207形式、TR211B形式、TR216B形式を履いていました。また、初期車は側ブレーキで、手ブレーキ装備車と車体長が異なります。平成19年に形式消滅しました。
※液化石油ガス(liquefied petroleum gas)…LPガス、LPGとも言われるもので、主成分はC3成分(プロパン、プロピレン)とC4成分(ブタン、ブチレン)です。無色、無臭の気体。(私たちの周りにあるのは漏れた時の危険を知らせるため臭いを付けています。)圧縮する事で常温でも液化できるガス燃料の一つです。体積はガスの時の1/250となり、漏れて爆発すると強大な破壊力で、コンクリートさえも砕いてしまいます。用途は家庭用、工業用、自動車用燃料、有機合成の原料などで、燃料用は混合物、合成原料は精製された単一成分となっています。

タキ25800形式(タキ25801)

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昭和49年に登場した35t積みアニリン専用タンク車です。3両製作され、活躍をしていましたが、平成3年に青化ソーダ液専用に種別変更を行い、この際にタンク内部にゴムライニングが設置され、鏡板にはライニング施行用の作業口が設置され、タンク上部にはプロテクタ内にマンホールや弁装置類が収納されました。写真は青化ソーダ液専用のものです。平成15年に形式消滅しています。
※アニリン(aniline 化学式:CNH)…融点-6℃、沸点184℃の無色透明の可燃性液体で、有毒。芳香族化合物の一つです。染料、ゴムなどの化学製品、農薬や医薬品などの製造時の中間物質として用いられます。

タキ26000形式(タキ26005・タキ26002)

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昭和50年に登場した35t積み亜硫酸ソーダ液専用タンク車です。タキ20100形式に続いて登場した形式で、保安対策によりタンク内部のライニングを変更(タキ20100形式はゴムライニング、タキ26000形式はステンレス)したため、登場しました。昭和55年に種別をニトロベンゼンに変更。この時は設計比重が近い数値であったので、表記の変更のみに留まりました。(写真左)、平成7年に再度種別変更が行われ、青化ソーダ液を専用種別としました。タンク内部に設置された加熱管を撤去し、ゴムライニングが施行されています。タンク上部には箱型プロテクタが設置され、マンホール、弁装置類などが収められました。平成20年に形式消滅しています。
※亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite 化学式:NaSO)…無色結晶の無機化合物の一つ。亜硫酸ソーダとも言う。主にパルプ、紙工業で利用されています。
※ニトロベンゼン(nitrobenzene 化学式:CNO)…融点6℃、沸点210℃の桃を腐らせたような甘い芳香をもつ黄色油状液体で有毒。濃硝酸と濃硫酸を混合した混酸をベンゼンと反応させ作る。このような反応をニトロ化と言い、ニトロ化合物のような爆発性はないのでご安心を。ニトロベンゼンをスズ又は鉄と塩酸と共に反応させ、塩酸アニリンができ、さらに水酸化ナトリウムを加えるとアニリンが出来ます。用途はこのアニリン及びその誘導体として用いられ(例:メチレンジフェニルイソシアネート(MDI))、ゴム、殺虫剤、農薬の製造に用いられます。

タキ26100形式(タキ26104・タキ26100)

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昭和50年に登場した35t積みアミノカプロラクタム水溶液専用タンク車です。積荷の保温のために二重壁型構造(ダブルウォール)という珍しい構造を採用しており、8つの補強環でタンク体と台枠が結合しています。外側のタンクと積荷の入るタンクの隙間には発泡ウレタンが充填されており、これにより内部のタンクは支持されています。保温性に優れている点が特徴で、普及が期待されましたが、構造が複雑で高価なため、このタキ26100形式とタキ17500形式の2形式のみで終わっています。昭和60年に保温性の高さをいかして、ラテックスに種別が変更され、荷重も32t積みになりました。重圧なスタイルが特徴でしたが、平成19年に形式消滅しています。
※アミノカプロラクタム…正式にはα-アミノ-ε-カプロラクタムといい、鉄道輸送では65%の水溶液を輸送しています。飼料添加剤の原料として用いられています。

タキ29100形式(タキ29115・タキ29121)

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昭和51年に登場した35t積み濃硝酸専用タンク車です。タキ10450形式、タキ29000形式に続いて登場した形式で、保安対策の決定版と位置づけられる形式です。昭和49年に全自動化操車場である武蔵野操車場が開業し、この際純アルミ製タンク車は連結時の強度に難があるため、通過禁止の処置がとられ、車体に「武蔵野操通過禁止」の表記がされました。純アルミ製タンクはステンレス製などに置き換えられました。この中、濃硝酸を輸送するタンク車には代替材質が無く、昭和50年に登場したタキ29000形式も純アルミ製タンク体として製作されました。通過禁止の解消と強度を確保するため、外面をアルミニウム合金、内面を純アルミとした「アルミクラッド」という構造が開発され、世界初の採用例としてこのタキ29100形式が誕生しました。タンク体には従来見られた「純アルミ」、「連結注意」の表記がなくなりました。積荷の保冷のため、キセが付いており、全体は見れません。昭和生まれのタキ29100~タキ29120と平成生まれのタキ29121~タキ29126では外観が異なります。世界初のタンク車でしたが、平成21年に形式消滅しています。

タキ29300形式(タキ29302・タキ29329)

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昭和51年に登場した39t積み濃硫酸専用タンク車です。タキ5750形式の保安対策車になる形式で、台枠側梁の追加、台車の安定走行化などの保安対策が盛り込まれており、自重増により荷重は1t減って、39t積み車となりました。タキ29321までは手ブレーキと積空ブレーキ、以降は手ブレーキとCSD型積空ブレーキとなってます。台車はタキ29306まではTR225-1形式、以降はTR213形式を履いています。