タ2000形式(タ2002)

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昭和16年にタム200形式から、昭和26年にタム900形式からそれぞれ改造され登場した10t積みアルコール専用タンク車です。アルコール専用車としては初めての10t積み車となります。紹介しているタ2002形式はタム900形式からの改造車で、このタム900形式も昭和23年に戦災で被災した国鉄貨車の廃車台枠を流用し、タンク体を新製した「戦災復旧車」でした。積み荷は苛性ソーダです。タ2002はタム900形式の台枠、タンク体をそのまま流用しています。
荷役方式は上入れ下出し方式。化成品分類番号は「燃31」です。
最後に残った「タ」形式として有名でしたが、平成8年に廃車となりました。これにより、荷重13t以下のタンク車「タ」は全滅しました。

タ3050形式(タ3077)

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昭和27年に登場した10t積みホルマリン専用のタンク車です。42両が製作されましたが、そのうちの9両はタム100形式(2代)15t積み濃硝酸専用車より改造されています。写真は那珂川清流鉄道保存会にて、東北地方某所に保存されていたものを復元した貴重な車輛です。

タム200形式(タム229)

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昭和7年に登場した15t積み二硫化炭素専用タンク車です。積荷は危険物であるため、荷役方式は上入れ上出し方式です。所有者により様々な形態がありました。化成品分類番号は「燃毒36」です。
写真のタム229が最後まで活躍した車輛で、平成7年に形式消滅しています。
二硫化炭素(Carbon Disulfide 化学式:CS2…融点-112℃、沸点87℃の硫黄と炭素の化合物です。不快臭のある無色または淡黄色引火性液体で、揮発性が高く有毒。セロハンやレーヨンの製造過程で溶剤として用いられる他、ゴムの加硫促進剤などに用いられています。

タム500形式(タム2920)

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昭和6年に登場した15t積みガソリン専用タンク車です。初めての15t積み車で、石油類専用車仕様としたタム4000形式があります。昭和36年まで製造され、2軸タンク車では最大の621両がつくられました。化成品分類番号は「燃32」です。小口輸送として重宝され、支線区などで活躍しましたが平成12年に形式消滅しています。

タム3700形式(タム3742)

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昭和26年に登場した15t積みメタノール専用タンク車で、新製車では初のメタノール専用車でもあります。似た形式としてタンク体をアルミニウムで製作したタム3400形式(1両のみ)、ステンレスで製作したタム3450形式(1両のみ)があります。化成品分類番号は「燃31」です。平成12年に形式消滅しています。
※メタノール(Mathanol 化学式:CH3OH)…融点-95℃、沸点65℃の後期ある無色引火性液体で、揮発性が高く有毒。有機溶媒などに用いられるアルコールの一つ。メチルアルコールや木精とも言われています。天然ガスの部分酸化で製造した一酸化炭素に酸化銅などの触媒によって生成されます。ホルマリン、テレフタル酸ジメチルなど有機溶剤の原料として用いられています。

タム5000形式(タム6265・タム6089)

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昭和13年に登場した15t積み塩酸専用タンク車です。専用種別はこの他にアミノ酸、味液、エスサン原液がありました。塩酸は鉄(車体)を腐食する積荷であるため、タンク車では初めて、タンク内面にゴムライニング処理を施しました。塩酸は小口輸送が多いため、30年に亘って脈々と作られ、多数の所有者がありました。化成品分類番号は「侵82」(塩酸のみ)です。平成17年に最後の車輛が廃車となり、形式消滅。これにより小口輸送の主役であった「タム」が鉄路から去りました。
塩酸(hydrochloric acid 化学式:Hcl)…塩化水素の水溶液で、代表的な酸の一つとして知られています。刺激臭のある無色の液体で、腐食性が強いのが特徴。基本的な無機薬品として化学工業全般で大量に使用されています。身近なものでは調味料の一つ、しょうゆの原料にも使われています。
アミノ酸(amino acid)…様々な種類が多く存在しており、私たちの体でも生成されるもので、体内では生成できないが、必要な物を必須アミノ酸という。近年健康ブームで、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸などを耳にしますが、これらはアミノ酸の一つです。鉄道輸送ではグルタミン酸ソーダ製造時の副産物で、しょうゆの原料となる茶褐色の液体を運んでいます。

タム8000形式(タム8001)

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昭和37年に登場した15t積み過酸化水素専用タンク車です。積み荷の過酸化水素は分解をし易い性質のため、タンク体には純アルミニウムが使用されており、形式記号の前に「ア」の記号が付けられています。化成品分類番号は「化侵58」です。平成15年に形式消滅しました。
過酸化水素(Hydrogen peroxide 化学式:H…タンク車では35%又は60%の水溶液で輸送される無色の不燃性液体。過酸化水素は不安定で酸素を放出する性質があり、分解を防止するため高純度のアルミニウムが使用されます。分解、発生した酸素は常時逃がす必要があり、通気状態で輸送します。身近なものでは理科の実験で酸素を取り出す時に使うのが過酸化水素。パルプや繊維の漂白、医薬品の原料などに使われています。

タム9400形式(タム9400)

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鉄道ファンの皆さん「ヨンサントウ」という言葉を耳にしたことがありませんか。この言葉は、国鉄の歴史に残る昭和43年10月に行った時刻改正の事です。このダイヤ改正で様々な出来事がありました。貨車についても大きな変化があり、貨物列車の運転最高速度を75km/hに引き上げる事になりました。2軸貨車についてはその走行性能を満たさない貨車は失職しました。(一部は除く。)また、2軸貨車が製造禁止となりました。
2軸貨車は小口貨物に適した存在でありました。このタム9400形式はタム5000形式塩酸専用車の増備が出来ないため、ボギー車として昭和45年に登場したものです。荷重は同じ15t積みです。台車はTR41D形式を履いています。平成15年に形式消滅しています。

タム9600形式(タム9600:写真は模型です。)

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昭和48年に登場した16t積みLNG(液化天然ガス)専用タンク車です。積荷のLNGは超低温下での輸送が求められるもので、断熱性を確保するため内外を二重構造とし、その隙間を真空構造とした「魔法瓶」構造を採用しているのが特徴です。タンク車では唯一の形式でもあります。全長は18950㎜の大型車体で、形式記号の前に16m以上の車体長をもつ貨車である事を示す「オ」の記号が付けられています。
車体には、西ドイツ(当時)の技術が用いられ、断熱ための様々な設備が設けられています。荷役装置などの設備はタンク上部ではなく、端部(写真では左側)にあり、積込み時は-162℃でガスを荷役します。様々な装備のため、自重は荷重の倍以上の35.2tもあります。昭和62年に形式消滅しました。

タキ200形式(タキ200・タキ216)

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昭和38年に登場した30t積みトリクロールエチレン専用タンク車です。10両製作されており、うち3両は新製車(写真左)、残り7両はタキ2600形式からの改造車(写真右)で構成されています。(タキ204~209番は欠番。)車体長は約9000㎜であり、10m以下の車輛である事を示す記号「コ」が形式の前に付きます。化成品分類番号は「96」です。タンク体は積荷の純度を保つため、ステンレスが使用されています。平成18年に形式消滅しています。
※トリクロールエチレン(trichloroethylene)…沸点87℃、融点-85℃の香気ある無色不燃性液体で、エチレンと塩素を原料として作られる有機塩素系溶剤の一つで、石油化学製品です。溶剤、洗浄などに用いられています。

タキ300形式(タキ4561・タキ4581)

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昭和7年に登場した30t積み濃硫酸、発煙硫酸専用タンク車です。化成品分類番号は「侵(禁水)84」です。2軸車であったタム400形式15t積み車を大きくした形式で、昭和52年までに約480両が製造、改造による編入が行われました。これはタンク車の同一形式製造期間の最長記録となっています。長期にわたって製作されたため、様々なスタイルをもつ車輛がたくさんありましたが、晩年は写真左のように台車を走行性能改善のためTR41D形式とした近代的なスタイルをした車輛が活躍していました。写真右はタキ1700形式からの改造車の1両です。この他にシキ150形式、タキ6000形式(初代)、タ580形式からの改造車もありました。平成18年に形式消滅しています。

タキ750形式(タキ750)

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昭和39年に登場した30t積みプロピオン酸専用タンク車です。化成品分類番号は「侵燃83」。12m以下の車輛である事を示す記号「コ」が形式の前に付きます。1形式1両のみの存在で、改造車の形式(タキ16300形式)もありましたが、唯一の形式となっていました。タンク体はステンレス製で、自肌色(銀色)となっています。写真は晩年の姿で、ドーム部(タンク体中央の飛び出た部分)脇よりS字状に配管されていた液出し管と空気管が撤去されています。平成19年に廃形式となっています。
※プロピオン酸(propionic acid 分子式:C3H6O2)…融点-21℃、沸点141℃の悪臭ある無色引火性液体です。水、エタノールなどに溶けやすく、刺激性、腐食性が強いのが特徴。食品添加剤やセルロース誘導体などの原料として用いられています。

タキ800形式(タキ800:写真は模型です。)

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昭和38年に登場した30t積みスチレンモノマー専用タンク車です。2軸タンク車では最後の新製車となったタ4000形式の増備車になります。1形式1両の存在でした。タンク体は純度を保つためステンレス製で、変質防止のため保冷キセが巻かれています。タンク体両端に洗浄用のバルブがあり、対角線上に踏み板が配置され独特の外観を有しています。昭和59年に廃形式となっています。
※スチレンモノマー(styrene monomer 化学式:C6H5-CH=CH2)…略称でSMとも言う。融点-30.6℃、沸点145~146℃、引火点31℃の香気ある無色または淡黄色引火性液体です。別名スチロール、フェニルエチレン、ビニルベンゼンなどの名称もあり、石油化学製品の一つ。ポリスチレンやABS樹脂などのプラスチックやゴム、塗料の原料として利用されています。一般的には原油やナフサなどから得られたエチレンとベンゼンを化学反応させ出来るエチルベンゼンから水分を取り除いて造られています。重合し易い性質のため、安定剤を添加しています。

JR貨物タキ1000形式

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平成5年に登場した45t積みガソリン専用タンク車です。タキ43000形式243000番代をさらに拡大すると共に、走り装置を大幅に改良して運転最高速度を95km/hにした高性能タンク車第1号です。タキ43000形式と同じく、大量消費されるガソリンの効率的運用を行うために荷重を優先したため、線路に対する負担(軸重)が大きくなり、走行できる区間が限定されています。(運転区間制限貨車と言います。)
外観はタキ43000形式に似ていますが、台車が異なるので容易に識別できます。この台車はJR貨物コキ100系に用いられているFT1形式を基に設計されたFT21形式というもので、タンク体に触れないように車輪径を810㎜とやや小型の車輪を使用しています。車体及びタンク体は「フレームレス」という、台枠の一部を省略し、タンク体を台枠と一体化した構造としたもので、タキ43000形式243000番代よりも荷重を増加させるため、はしごなどの付属品にアルミ合金を使用するなど軽量化を図っています。
化成品分類番号は「燃32」です。ガソリン専用ですが、臨時種別として石油類も輸送します。
平成5年に試作車の1番(上写真左(ともよフォトオフィス様撮影))と2番(上写真中央)が登場し、その結果を反映した量産車(上写真右;マワ車所蔵)が登場しました。
車体色は日本石油輸送株式会社所有車は灰色1号とエメラルドグリーンの2色塗り、日本オイルターミナル株式会社所有車は青15号にスカイブルーと銀色の細い帯を組み合わせた塗装(旧塗装)(現在は青15号のみ)となっています。

タキ1000形式はタキ35000形式やタキ45000形式などのタンク車を置換える目的で現在も増備中の形式ですが、色々な変化が伺えます。

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まずは手ブレーキを見てみましょう。写真上の左から15番、345番、678番ですが、手ブレーキとその付属品を見ると違いが出ているのがお解り頂けるかと思います。初期の頃はタキ43000形式に近い形態ですが、部品の見直しや製造工程の変更と思われる変化となっています。因みに、中央の345番は会社の籍が移動になり、前の会社時代の車体色に新会社の名称の組み合わせで、現在は見る事の出来ないものとなっています。

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次に空気ブレーキ装置、台車を見てみましょう。写真上の左から67番、353番、400番です。こちらもタキ43000形式を基に設計されているため、初期の頃は似た感じでしたが、中央の353番のように部材の太さが変わる変化が見られ、393番以降では製造工程の簡略化のため、空気ブレーキ装置のユニット化が行われています。台車では台枠に補強板が設置されていましたが、改良により無くなっています。

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最新のブレーキユニットは写真左上の感じ(755番)となっています。台車も改良が加えられたFT21A形式台車を履いています。写真中央は日本オイルターミナル株式会社の創設40周年記念及びタキ1000形式で組成された貨物特急「スーパーオイルエクスプレス」号のPRを兼ねた記念塗装車で、矢羽と呼ばれる8つの楕円は同社の所有する製油所を表したものです。現在は青15号1色に戻っています。写真右上は米陸軍輸送部隊に貸し出されているもので、タンク車に向かって右側に添付されているJP-8がポイントです。このJP-8ととは、アメリカ合衆国で制定されたジェット燃料の一つで、JP-4ジェット燃料よりも高い安全性をもっており、ベンゼン、n-ヘキサンが減らされている特徴を持っています。航空機のほか戦車などのガスタービンやディーゼルエンジンの燃料としても使用されているそうです。

JR貨物タキ1100形式(タキ1100-18)

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平成9年に登場した37t積みフライアッシュ及び炭酸カルシウム専用タンク車です。ホキ1000形式に続く、往路と復路で積荷が異なる貨車で、タンク車では初めての形式となります。また、紛体輸送用タンク車では初の運転区間制限貨車でもあります。
車体は薄青色で、タンク体の補強環が特徴です。荷役方式はエアスライド併用圧送方式となっています。台車はFT21形式のばねを変更したFT23形式となっています。
山口県の工場と島根県の火力発電所を結ぶ仕事に活躍していましたが、平成25年に山口県を襲った集中豪雨により、貨物列車が運休。同年、火力発電所でトラブルが発生し、貨物列車が廃止となり、本形式も廃車、形式消滅しています。

タキ1150形式(アコタキ1150・アコタキ1165)

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昭和40年に登場した30t積み過酸化水素専用タンク車です。タキ7650形式の拡大車になります。初期車は手ブレーキ、後期車は側ブレーキを採用しており外観が異なります。この他、タンク体を支える受台が8つの車輛と4つの車輛があります。化成品分類番号は「化侵58」。タンク体は純アルミ製タンク体であるため、「ア」の記号が、また車体長が12m以下のタンク車であるため「コ」の記号を形式前の付けています。平成15年に形式消滅しています。

タキ1250形式(タキ1250)

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昭和35年に登場した30t積みリン酸専用タンク車です。タンク体はステンレス製で、タンク体の色も地肌色(銀色)となっています。(一部は黒色。)化成品分類番号は「侵80」です。平成9年に形式消滅しています。
※リン酸(燐酸 phosphoric acid 化学式:HPO)…五酸化二リンと水を反応させてできるリン化合物の一つ。鉄道輸送ではオルトリン酸75%の水溶液で、無色無臭不燃性液体。腐食性が強いのが特徴です。リン酸は肥料や洗剤の原料、エチレン製造の触媒、清涼剤(コーラの酸味料)、金属表面処理剤など幅広い分野で用いられています。

タキ1500形式(タキ31515・タキ15119)

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昭和21年に登場した35t積み石油類専用タンク車です。化成品分類番号は「燃31」です。平成9年に形式消滅しています。石油類専用タンク車では初めての35t積みの形式で、タキ2100形式石油類専用タンク車と共に大量製作されました。(897両)主にC重油などの高比重、高粘度の油を輸送するタンク車で、蒸気加熱管を装備しています。(中にはないものもあるようです。)両数が多い中で、変形車もあります。その一つが写真右のタキ1500形式です。タンク体が太いのです。外国向けに製作したタンク車のタンク体を転用した車輛でした。平成14年に形式消滅しています。

タキ1800形式(タキ1864)

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昭和27年に登場した30t積みベンゾール専用タンク車です。65両製作され、タキ2100形式に似たスタイルが特徴で、さらにキセの有無や加熱管の有無など様々な種類がありました。化成品タンク車の歴史は大正3年に始まり、「ベンゾール」も初期の部類になる専用品目でした。タキ950形式などのベンゾール専用タンク車がありましたが、このタキ1800形式が最後まで活躍しました。平成12年に形式消滅しました。
※ベンゾール(ベンゼン:benzene 化学式:C6H6)…ベンゾールとはドイツ語(Benzol:ベンツォール)風に読んだもの。融点5.5℃、沸点80℃、無色で甘い芳香のある引火性液体で有毒。炭素の豊富な素材が不完全燃焼を起こす事で出来ます。森林火災やたばこの煙でも発生する。工業的にはコールタールから造られていましたが、消費量が増えた現在では石油化学工業で生産されています。他の化学物質の製造のための材料、プラスチックの原料となるスチレン、樹脂や接着剤のフェノールなどに用いられています。

タキ1900形式

昭和39年に登場した40t積みセメント専用タンク車です。昭和56年までに1729両が製造され、私有貨車では最大の車輛数を誇ります。荷重40tという輸送効率の高さからホッパ車を差し置いて、セメント専用貨車の標準的車輛として有名です。この40t積みを可能としたのは、その構造で台枠とタンク体をタンク受台を介して、強度的に一体化している点です。軽量かつ巧妙なすぐれた設計により、特殊な材料を用いることなく大荷重を達成しました。車体長は10800㎜で、12m以下のタンク車を示す「コ」の記号が形式の前に付きます。
荷役方式はエアスライド式です。この方法はタンク下部より空気を送り込み、車体と積荷の間に空気層をつくり、積荷を降ろす方法です。台車はTR41系を中心とし、TR209系なども使用していました。現存車は全てTR225形式に履き替えています。
形態については、製造会社、所有者の荷役設備等によりマンホールの数、手すりなどが異なります。ここでは、製造会社による違いを中心として一例をご紹介しましょう。
●川崎製(左からタキ21295・タキ112188・タキ112481)

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川崎製はタンク下部より補強環が出ているのが特徴です。台車は写真左の車輛はTR41C(昭和40年製)、中央の車輛はTR41G(昭和48年製)、右の車輛はTR41E-13(昭和50年製)をそれぞれ履いています。
●日立製(タキ71947・タキ111974)

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昭和45年から登場した日立製のタキ1900形式。同社で開発したタキ19000形式を統合したもので、タンク体には4本の補強環が巻かれているのが特徴です。写真左は昭和45年製で、右は昭和47年製、タンク体受台の形状が異なっています。
●日車製(タキ111955・タキ112172)

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昭和46年から登場しました。同社の製造したホキ5300形式、ホキ5700形式の後継車に位置付けられています。日立製に似ていますが、補強環の位置が異なっています。
写真左は昭和46年製でTR41C形式(写真は現在のもので、TR225形式に履き替え)、右は昭和48年製でTR41G形式を履いています。
●三菱及び川崎製(コタキ101903・コタキ101948)

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昭和44年より52両登場したグループです。当時の私有貨車では珍しくコロ軸台車を採用したため、番代区分が行われています。タキ1900形式101900番代と言われています。台車はタキ101900~101939までがTR209B又はTR209C形式、タキ101940~101951までがTR209D台車を履いています。
●各社共同制作(タキ112027・タキ112416・タキ112606・タキ112666・タキ112689)

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セメントの共同基地となるセメントターミナル株式会社を設立するにあたり、タンク車の構造を統一したもので、昭和49年以降の車輛(一部を除く)は全てこのグループの仕様となりました。セメントターミナル所属車は塗装を大量集約輸送を意味する淡緑3号(薄緑色)にしています。台車は写真上段左より、TR41F形式、TR41E-13形式、TR225形式、写真下段左よりTR225-1形式、TR213C形式となっています。昭和56年、タキ112698番をもってタキ1900形式の製造が終わりました。平成27年現在、中京地区で活躍をしています。おそらく、最後の舞台となるでしょう。

タキ2050形式(タキ2051:写真は模型です。)

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昭和50年代に起きたオイルショックにより、多くの石油類を専用とするタンク車が余剰となっていました。これら余剰車を化成品用タンク車に改造する事が行われ、このタキ2050形式もそのうちの1つです。昭和56年に登場した25t積みブチルアルデヒド専用タンク車で、台枠の切り詰め改造が禁止されていたため、台枠の長さに合わせた細長いタンク体が特徴です。晩年はアセトアルデヒドシアンヒドリン専用に変更されていました。平成7年に形式消滅しています。
※ブチルアルデヒド(butyraldehyde 化学式CO)…融点-99℃、沸点85℃の有機化合物で、アルデヒドの一つ。可燃性の無色の液体で、甘酸っぱい焦げた刺激臭が特徴。悪臭防止法により特定悪臭物質に指定されています。化成品の材料として用いられています。

タキ2100形式(タキ12164)

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昭和26年に登場した30t積み石油類専用タンク車です。タキ100形式の軽量化した形式になります。昭和43年まで649両が製作され、タキ1500形式と共に全国で活躍をしました。形態は様々あり、大きく別けると暖地向けと寒冷地向けのグループになります。平成12年に形式消滅しています。

タキ2600形式

昭和28年に登場した30t積み苛性ソーダ液専用タンク車です。製品の純度を保持するためタンク内面に「ゴムライニング」を初めて採用した形式として有名です。新製車の他に改造車があり、その多くはタキ2800形式からの編入車になります。車体長は10mで、形式の前に12m以下のタンク車を示す「コ」の記号が付きます。台車はTR41A、C形式でしたが、走行性能改善によりTR41D-2又は-4に改造されています。車輛の中には登場から50年近くも活躍した古豪もありましたが、現在は廃形式となっています。様々なスタイルがあったタキ2600形式を見て下さい。

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上の3枚は左からタキ2636、タキ12620、タキ12673で、新製車になります。登場年や車輛メーカーの違いでしょうか、ドーム部の形状など異なっています。また、写真右のタキ12673はキセが無いのでしょうか、タンク体を留めておく帯金が丸見えです。このタイプは数が少ないのか見かけたのはこの車輛のみです。

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上の3枚は左からタキ22680、タキ22683、タキ32680です。キセにもいろいろあるようで、左はかまぼこ型キセのタイプ。中央は標準的なタイプ。妻面のポッコリ出っ張った部分はなんだろう?、右は一見すると標準的ですが、液出し管に断熱材を巻いた寒冷地仕様のタイプです。

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タキ2600形式は苛性ソーダ液専用ですが、この他に苛性カリ液、苛性ソーダ液及び苛性カリ液と表記した車輛もありました。

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さあ、ここからは改造車の紹介です。まず、写真左のタキ32622です。台枠を見るとつるんとし、タンク受台の帯金の位置にも特徴があります。このタイプはタ300形式からの改造車になります。このタ300形式は液化エチレン専用車で、マルチボンベ型高圧ガスタンク車として唯一の形式でした。台枠から下部を流用し、タンク体等を新製しました。写真中央及び右はタキ2800形式からの改造車になります。外観はタキ2600形式と区別がつきません。何故ならば、タンク内部にゴムライニングを施した改造だったからです。でも、色々見ていると怪しいのもあるんですよ。

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写真左はタキ42690で台枠がさっぱりしたものです。中央のタイプはタキ42627で、台枠がさっぱりしているのは同じですが、台枠の中がスカスカになっています。台枠受けも新製車に見られる形状になっています。タンク上部のドーム部が低いですね。いろいろ調べた所、タキ2800形式時代にタキ1400形式から改造、編入したものと思われます。3回形式が変わったようです。そして、タキ2600形式の変形車で有名なのが写真右の太いタンク体をもつ車輛です。タキ42629、この車輛もタキ2800形式以前にタキ1400形式を名乗っていたようです。

タキ2800形式(タキ12824)

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昭和28年に登場した30t積み苛性ソーダ液専用タンク車です。同一荷重、専用種別を持つ形式にタキ400形式、タキ1400形式、タキ2600形式があり、4番目の形式として登場しました。タキ2600形式と同一の外観ですが、タンク内はゴムライニング処理を施していない車輛のため別形式となったものです。タキ2600形式はタキ400形式及びタキ1400形式からの改造編入車が多く在籍し、さらにゴムライニング処理を行いタキ2600形式へ形式変更する車輛が多数あり、ちょっぴり複雑な歩みを辿るものが多くありました。平成18年に形式消滅しています。

タキ3000形式(タキ23148・タキ3124)

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昭和24年に登場した30t積みガソリン専用タンク車です。先に登場したタキ50形式を軽量化した形式で、外観は同じです。1594両製作(改造車編入含む)され、戦後の貨物輸送を担った形式として有名です。タキ3000~タキ3049は国鉄が所有する車輛で、当時の資材不足により側梁の一部がない特徴がありました。台枠の上に普通鋼のタンク体の載せたシンプルなデザインで、両数の割には形態的な差は少ないのが特徴です。一部のタキ3000形式では連接タンク車という試験に供された車輛もありました。荷役作業の省力化及び時間短縮を図るために、複数の車輛をホースでつないで積込み、荷卸しを行うもの。アメリカでは実用化されていましたが、成功しなかったようです。
タキ3000形式のもう一つの顔を紹介しましょう。写真右の車輛です。何やら数字が大きく書かれていますが。この車輛は米国陸軍輸送隊が所有する車輛で、昭和27年に発効したサンフランシスコ講和条約に伴って、日本に駐留する米軍の航空機や船舶などの燃料を輸送する車輛の接収が出来なるため、タンク車が用意されました。

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※伊勢崎軌道様より拝借しました。

登場した頃は、上記のようにコテコテのアメリカンタンク車でしたが、簡略化されていき最終的には軍番号と輸送しているものを表す黄色のバーコード状のもののみとなりました。一部の車輛は韓国に送られたそうです。日本各地に点在する米軍基地への燃料輸送に活躍しましたが、現在は民間会社のタンク車をレンタルしています。
平成13年に形式消滅しています。

タキ3500形式(タキ3578)

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昭和29年に登場した30t積みアルコール専用タンク車です。20t積みであったタサ3200形式を大きくした形式です。当時の標準的なタンク車のスタイルで、タキ3000形式に似ています。平成11年に形式消滅しています。