ワム90000形式(ワム139568)

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昭和13年より標準的な15t積み有蓋車として大量生産されたワム23000形式の走り装置を二段リンク化した形式です。新製車とワム23000形式を改造したグループに大別でき、ワム23000形式は原番号の頭に1がくわえられ、10万番代となっています。(写真)この他にワム50000形式(木造有蓋車)の改造車も少数ありました。
片開き引戸が特徴の戦後を代表するポピュラーな有蓋車で、約19000両活躍していました。

ワム60000形式(ワム67501・ワム66172)

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昭和36年に登場した15t積み有蓋車です。ワム70000形式をもとにコスト低減を図った形式で、組立工法や台枠構造を合理化した設計が特徴です。妻面や側引戸に軽量プレス鋼板を用いている点はワム70000形式と同じですが、全てを溶接によって組み立てている点が異なります。両開きの側引戸はフォークリフトの荷役をし易いように間口を拡大し、鴨居部分に雨どいを設けました。屋根は断熱性確保のため丸屋根に変更しており、同じ積載空間ながらも軽量化も図られました。
ワム60000形式を改造した派生形式としてヤ400形式があります。信号機器を輸送する貨車(職用車)で、「信号機器専用」、「連結注意」の表記が特徴です。車内にはホイスト(クレーン)が装備されていました。写真右は信号機器を輸送する代用車(車内にホイストがない。)になった例です。国鉄有蓋車の近代化を図った代表的な形式の一つとして活躍しました。

ワム70000形式(ワム72138)

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ワム90000形式などの2軸有蓋車は片引き戸が一般的で、荷役は人力によるものでした。しかし、荷役作業にフォークリフトなどが導入され近代化が進み、貨車もこれらに対応する必要が出てきました。そこで、昭和33年に従来の2軸有蓋車のマイナーチェンジ仕様として登場したのがこのワム70000形式15t積み有蓋車です。荷役作業の近代化に対応した仕様のほか、車体製作などにも新しい設計手法が採り入れられました。
国鉄有蓋車の近代化を担った有名な形式の一つです。

ワラ1形式(ワラ8390)

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昭和30年代の激増する貨物輸送に対処するために、ワム60000形式を極限まで大きくした(これを極限設計車といいます。)17t積みの有蓋車で、2軸有蓋車では唯一「ラ」の記号となっています。昭和37年に登場し、汎用有蓋車として活躍しました。

ワム80000形式

有蓋車の荷役作業は人海戦術によるものでした。コンテナ輸送が始まった昭和34年、有蓋車の荷役作業の近代化を図るためパレット(貨物や荷物を載せる荷台)を用いて、フォークリフトで荷役作業を行うことが考えられ、試作車ワム89000形式が登場。昭和35年に改良量産車としてワム80000形式が登場しました。
荷重は15t積みと従来のワムとは変わりありませんが、この荷重はパレットの重量を含んだもので、試作車では容積が小さく15tの積載が出来ませんでした。ワム80000形式では車長を伸ばし、容積を確保しました。最大の特徴は側面を総開きの4枚引戸とした点です。どの場所からも荷役が出来るようになりました。パレット荷役をする有蓋車であることから、「ワム」とワムの前に「パ」の記号が付けられ区別されました。(「パ」は後に「ハ」に改称されています。)車体の色も黒色からとび色となり、貨物列車でもひときわ目立つ存在となりました。
パレット輸送による大量輸送に活躍、昭和59年のヤード集結輸送方式廃止に伴い多くの汎用貨物車が廃車となる一方で、製紙業者による新聞紙印刷用紙輸送に生き残り、JR貨物へも継承され活躍しました。現在は、事業用車(救援車代用)のみに数両が残っている程度で、活躍する姿は見られません。

ワム80100~82999(ワム82506)

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1次量産車のグループで、試作車の結果を基に細部を改良したグループです。

ワム83000~88999、180000~188801(ワム183278)

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2次量産車のグループで、昭和43年の時刻改正で貨物列車の運転最高速度が65km/hから75km/hに向上するのに伴い、これに適合しない貨車が大量に廃車され、この補充と近代化をかねて投入されました。1次車とは側ブレーキ(留置用ブレーキ)が両側に配置されたほか、屋根をプレス構造に変更し、室内の天井板が省略されています。

ワム280000~288499(ワム286634・ワム285890)

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昭和50年から登場した走行安定対策車と呼ばれるグループで、走行性能を改善するために軸距離を延長したほか、台枠構造が変更されています。また、軽量化のため引戸がアルミ化されています。外観の変化では雨どいが妻板部に設置、屋根は耐候性高張力鋼を採用し、ポリエステル樹脂を塗布する方式に変更したため、屋根が薄茶色となりました。このグループがJR貨物へ大量に継承されました。発足後、写真右のように水色の車体に「パワー全開JR貨物」や「未来を拓くJR貨物」などのPRロゴが書かれた車輛がありました。

ワム380000~380499(ワム380064・ワム380421)

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平成3年に280000番代車を改造した保守向上車と呼ばれるグループです。平軸受からころ軸受に変更したもので、識別のため車体色は貨物ブルーに変更し、走行抵抗が小さくなったことから「転動防止注意」の表記が加えられました。車輛の一部には青味が濃い車輛があり、通なファンからは「名古屋色」と呼ばれていました。(写真右)

物資別適合車

汎用車をベースに目的に応じた貨物輸送(物資別適合輸送)に構造をもったグループで、580000番代車と呼ばれています。汎用車からの改造や新製車があります。国鉄末期にほとんどが廃車となりましたが、JR貨物になって新しい物資別適合車として480000番代が登場しました。
●580000番代

昭和42年に近距離鮮魚輸送用として登場したグループです。車体を白くして断熱効果を高めているのが特徴です。車体が白いので貨物列車でも冷蔵車と並んで目立つ存在でした。焼津港に水揚げされる冷凍マグロの輸送に活躍し、晩年は上諏訪駅などで味噌を運ぶ仕事をしていました。

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●581000番代
 昭和42年に大型板ガラス輸送用として登場したグループです。汎用車の屋根に板ガラスを荷役する開口部を設けたもので、屋根に上がるはしごが設けられていました。
●582000番代
 昭和43年に自動稲刈り結束機(バインダー)輸送用として登場したグループです。車内に荷棚を設置し、2段積みで輸送が出来るようにしていました。
●583000番代
 昭和43年にオートバイ輸送用として登場したグループです。582000番代と同じく、車内に荷棚が設置され、2段積みで輸送ができ、帰りに一般の貨物も輸送できるように荷棚が持ち上がるようになっていました。
●585000番代
 昭和44年にケース入り瓶ビールの輸送用として登場したもので、ワム80000形式物資別適合車では最も両数の多いグループとなっています。外観は汎用車とほぼ同じですが、ビール輸送用のパレットはサイズが異なるため、側柱の位置が異なっています。
●480000番代
 平成10年に登場した木材チップ輸送用のグループです。280000番代からの改造ですが、屋根に大きな開口部を設け、側面を全て張替え(片側のみ)、下部に荷卸し用のあおり戸が設置されるなど大規模な改造となっており、有蓋車というよりは無蓋車に改造した感じが強いのが特徴です。車体色は赤紫色(JRFレッド)となっていました。

その他のワム80000形式(ワム284129・ワム287506・ワム286955)

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貨物輸送の環境変化などにより、余剰となったワム80000形式はその手ごろなサイズなどの理由により、事業用車へ転用されるケースもあります。現在籍を置くワム80000形式は事業用となっています。写真左と中央は車輛基地や工場への車輛部品の配給車として活躍をしている例です。写真右は常備駅を指定しているもので、特定の貨物を輸送する場合に管理局(写真では「水」国鉄時代では水戸鉄道管理局のこと。)や常備駅が表記されています。

ワキ10000形式(ワキ10182)

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昭和40年に登場した10000系高速貨車シリーズの30t積み有蓋車です。この10000系高速貨車はトラックや海運に対抗するため貨車の運転速度向上を目的に設計されたもので、運転最高速度は100km/hです。CLE(応荷重装置付電磁自動空気ブレーキ)方式、空気ばね台車の採用などの新機軸を盛り込んでおり、専用の機関車(EF66形式など)も用意されました。ワキ10000形式は東海道・山陽本線と九州を結ぶ高速特急貨物列車で混載貨物用の有蓋車として設計されたもので、パレット荷役輸送にも対応していました。車体色は屋根、妻板部などが黄緑6号(ウグイス色)、総開きとなる側扉部は自肌色(アルミ色)となっていました。
国鉄末期に高速性能をいかした寝台特急「カートレイン」号の自動車輸送用に転用され、その際に車内の改造及び車体色の変更(黄緑色を青色に)しました。この改造車のみJRへ継承され活躍しました。

ワキ5000形式【ワキ5000~6264】(ワキ5254)

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昭和40年に登場した30t積みの有蓋車。小口貨物や混載貨物で活躍してきたワキ1形式やワキ1000形式の後継車です。ワム80000形式を大型化したスタイルで、拡大車と思われがちですが、ワキ10000形式の車体にコキ5500形式の足廻りを装備したもので、ワキ10000形式の廉価版となる有蓋車です。運転最高速度は85km/hで、ワキ5000~5099は先行量産車、ワキ5100~5414が前期量産車となります。
外観ではワキ10000形式の前期車と同じ丸屋根が特徴です。側引戸は4枚の総開き構造となっています。台車はTR63B形式で、チキ5000形式(後のコキ5500形式)とほぼ同じ台車ですが、ワキ5000形式の使用条件に合わせたものです。ただし、前期量産車のグループのうちワキ5185~5264の80両はTR63D形式を履いています。このグループは輪軸(車輪の軸)が新幹線で使い古されたものなのです。車軸の径が太いのが特徴で、台車の軸箱の形状が異なっていました。

ワキ5000形式【ワキ6265~6231】(ワキ5847)

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後期量産車で屋根をプレス鋼板変更し、天井板を廃止するなど軽量化と製作工程数低減などの設計変更を行ったグループです。外観では、丸屋根が各屋根になっています。これにより内容積が拡大しています。この他、台車等は前期形と同じです。

ワキ5000形式【ワキ6232~6514】(ワキ6299)

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昭和44年から登場したグループで、本形式の足となるTR63形式台車の問題点を改良すべく、ワキ6232~ワキ6234の3両にTR220形式試験台車を履かせて問題の解決を図りました。同年にその結果を基にした量産車が登場。台車やブレーキ装置が大幅に変更されました。台車はTR216A形式となり、オイルダンパーが設置され蛇行動の抑制を図っています。ブレーキ装置では積空切換装置が手動から自動化されたARSD方式(中継弁付積空自動切替式自動空気ブレーキ)に変更しました。車体は後期量産車と同じですが、ワキ6285~6514までは側引戸がテフロン製に変更されるなどの改良が施されています。

ワキ5000形式30000番代(ワキ35453)

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昭和60年にワキ5000形式後期量産車を中心に改造して登場したグループで、新聞印刷用巻き取り紙輸送用となったものです。床板の突起物を無くし、強化合板で床板を強化しました。製紙工場から紙を運び、帰りは混載貨物輸送に活躍しました。

ワキ50000形式59000番代(ワキ59013・ワキ59009)

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ワキ10000形式をコキ50000形式と併結して運転ができるように主にブレーキ装置関係を改造して昭和53年に登場した30t積み有蓋車です。他の番代も計画されていたのか、59000番代となっています。しかしこの他のグループは作られる事はありませんでした。車体色は側引戸部を除いた黄緑6号(ウグイス色)からとび色2号に変更しています。台車は改造当初は種車のものでしたが、昭和58年よりコキフ50000形式乗心地向上のため台車と交換しTR223B形式となっています。種車となるワキ10000形式の前期車からの改造が多く、各屋根となった後期車からは数両の改造となっています。

ワ100形式900番代(ワ100-903)

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鉄道と自動車との荷役作業にはフォークリフトやクレーンなどを介するのが一般的ですが、異なる輸送方式にこれらを介さず直通させる方式を「複合一貫輸送」と言い、英語ではインターモーダル輸送(Intermodal Freight Transport)として呼ばれています。
複合一貫輸送はコンテナ輸送が有名ですが、他の方式としてワ100形式ではバイモーダル輸送方式という、トレーラーに鉄道台車を履かせて貨車に仕立てる方法です。鉄道大国アメリカではすでに実用化されているもので、かつて国鉄時代にもトラックと鉄道を結びつける方式として、フレキシバン方式やカンガルー方式などが模索されましたが、特殊構造によるコスト面の問題などで実用化には至りませんでした。
平成4年にワ100形式試作有蓋車が登場。デュアル・モード・トレーラー(Dual Mode Trailer:DMT)と称し、車体はアルミバンボディ型セミトレーラーで荷重は13t。牽引力の伝達はこの車体を介して行います。道路を走ってきたトレーラーは鉄道用の専用台車に載せて輸送をします。登場した翌平成5年より実用化へ向けて試験が行われましたが、台車の脱着時間などの技術的課題などの理由により実用化には至りませんでした。

レム5000形式(写真は模型です。)

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この白い貨車は冷蔵車といい、有蓋車から派生した物資別適合車の一つです。記号は「いぞう」のです。外観は有蓋車と同じですが、構造面では何らかの断熱構造を持っており、さらに保冷装置や冷却装置を設置しているのが特徴です。主に冷蔵車では氷、ドライアイス、冷凍機を備えています。積荷は冷凍食品や魚などの冷凍したもので、中には冬季に果物や野菜などを凍ってしまうと品質が低下するものを保温する目的で輸送するというのがありました。車体構造は有蓋車では引戸を用いるのに対し、保冷性を高く維持する目的から開き戸を用いています。
写真のレム5000形式は昭和39年に登場した冷蔵車で、初めて15t積みを可能とした冷蔵車です。ドライアイスを用いて保冷を行います。車体には青い帯が巻かれていますが、これはレム5000形式が登場する以前、レム1形式、レム400形式という軽保冷車が登場していました。この2形式は有蓋車の役割も兼ねられるように設計されたため、保冷性が低く、荷主から嫌われていました。このため、このレム5000形式も「レム」という記号から、荷主から「ダメな貨車」というイメージがあり、これを払しょくするため青い帯をつけてイメージアップを図る目的でつけたそうです。
冷蔵車は道路網の整備拡充、冷凍機付きトラックの発展に伴い、輸送距離の短い我が国では積み替えに時間がかかる鉄道では太刀打ちできず、昭和60年頃に全廃となっています。現在では冷凍コンテナとしてみる事が出来ます。

レムフ10000形式(レムフ10000)

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レサ10000系と呼ばれる10000系高速貨車シリーズの1形式で、レサ10000形式に車掌室を設けた冷蔵緩急車で昭和41年に登場しました。トラック輸送に対抗する高速貨車で、運転最高速度は100km/hです。レサ10000形式24t積み冷蔵車と共に運用を組み活躍しました。車体はレム5000形式とほぼ同じで、車内は仕切りを設けた2室構造でした。幡生~東京市場駅間特急鮮魚貨物列車「とびうお」、博多港~大阪市場駅間特急鮮魚貨物列車「ぎんりん」の愛称で活躍しました。写真のレムフ10000形式は鉄道博物館に保存されている貴重な1両で、当時の荷役の様子などを伺う事ができます。

テラ1形式(テラ146)

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この「テ」の記号をもつ形式は「鉄製有蓋車」といい、その名前の通り車体を全て鉄でつくった有蓋車です。「つ」のが記号となります。主に消石灰(酸化カルシウム)を輸送する際に使われる有蓋車で、積荷の消石灰は水分を含むと発火する性質があり、雨などの水分に触れないように有蓋車とし、万が一発火した場合でも可燃物がないことから被害を最小限に抑える目的で登場しました。
テラ1形式は昭和38年に登場した17t積み鉄製有蓋車で、15t積みのテム300形式を大きくしたものです。台枠の軽量化などを行い重量はテム300形式よりやや軽くなっています。車体は側柱を外側に配し、吊り方式の引戸を備えています。車内には内張りは無くフラットになっていました。昭和61年に形式消滅。写真は貨車博物館に保存されている貴重な1両です。

ワフ21000形式(ワフ21120)

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2軸客車を改造した車掌車の老朽化に伴い、鉄道省時代の昭和8年に登場した2t積み緩急有蓋車です。初めての鋼製車体を持つ形式となりました。乗務員用設備の改善が目的であり、車掌室がメインとなっています。当初は電燈やストーブなどはなく、後につけられています。
荷重の偏りを考え、軸距離を長くとると共に貨物室側寄りに軸を配しています。この配置は後に登場する緩急有蓋車の基本となっています。1段リンク式でしたが、昭和43年の貨物列車速度向上に伴い2段リンク化改造を受け、運転最高速度65km/hから75km/hへと向上。1段リンクのまま未改造とした車輛はワフ121000形式に改められ、低速貨車を示す黄色い帯を巻いて北海道地区で活躍しました。ワフ121000形式は昭和50年、ワフ21000形式も昭和60年に廃形式となっています。写真のワフ21000形式は西濃鉄道に譲渡され活躍した1両で、現在は貨車博物館に保存されています。

ワフ22000形式(ワフ22775)

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大正時代に設計された有蓋緩急車の老朽化に伴い、昭和22年に登場した2t積み有蓋緩急車です。戦時中の輸送力重視(貨物室がメイン)の木製有蓋緩急車ワフ28000形式に対し、戦前に作られた車掌室メインのワフ21000形式と同じデザインを採用しています。外観はほぼ同じですが、車軸の違いや溶接構造とされている点が異なります。
ワフ22000形式も登場時は電燈やストーブが当初はありませんでしたが、後につけられました。昭和43年の貨物列車速度向上に伴い2段リンク化工事を受けました。未改造車はワフ122000形式に改称しています。ワフ122000形式は昭和51年、ワフ22000形式は昭和61年に形式消滅しています。

ワフ29500形式(ワフ29984)

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昭和30年に登場した5t積み緩急有蓋車です。昭和30年代のローカル線では車掌車と有蓋車を合体させた緩急有蓋車が多く活躍していました。貨物輸送量が少ない事と、C11形など機関車の牽引できる能力(これを牽引定数といいます。)が大きくないことから、1両でまかなえる緩急有蓋車は重宝されていました。ワフ29500形式は老朽化した緩急有蓋車の置換えを目的に登場しました。
設計にあたり、以前の形式を見てみると車掌車又は貨物室のどちらかに重点を置いたもので、貨物が多く積めないか車掌室が狭いという問題がありました。もちろん、両立させた形式(ワフ29000形式7t積み緩急有蓋車)も登場しました。しかし、デッキが無く車掌から不便という指摘を受けました。そこで、このワフ29000形式の貨物積載量を5tに減らして、デッキを設けて貨物積載量、車掌室の広さを確保した決定版としたのがこのワフ29500形式です。新製時より車掌室には電燈、石炭ストーブが備えられ環境は大きく良くなりました。
有蓋緩急車では最後の新製形式で、ローカル線を中心に貨物輸送のほか貴重品輸送、荷物、郵便車の代用として活躍しました。