昭和30年代後半頃より、経済成長が著しく伸びていましたが、高速道路網は未発達で物流輸送は鉄道が主力でした。しかし、輸送力の増強はひっ迫しており、電化延伸、主要幹線の複線化、列車運転速度の向上及び1列車あたりの輸送量増強などを効率よく、早急に進める必要がありました。
特に輸送力がひっ迫している東海道本線向けに新性能直流電気機関車EF60形式が投入され活躍を始めます。電化が山陽本線まで延伸し、コンテナによる効率的な輸送方法が確立されると、EF60形式に問題が生じました。それは、高い速度で運転が出来ない。という問題です。
EF60形式は牽引力は強いものの、定格速度は旧型電気機関車であるEF15形式やEH10形式とほとんど変わらなかったのです。このため、旅客列車と貨物列車の運転速度をほぼ同じとするダイヤ(運転時刻)を作成するには無理がありました。重い貨物列車を安定した高い運転速度で長距離を運転出来る機関車が必要となり、昭和40年にEF65形式が誕生しました。
クイル式駆動方式などで失敗してしまったEF60形式ですが、少しずつ改良し3次車ではほぼ問題なく安定していたため、この3次車をベースに開発が行われました。主に歯車比の変更やバーニア付電動カム軸制御器を採用した点が異なり、他の主要機器はほぼ同じとなっています。このため、通常の試作機を設計し、長期間にわたる性能確認試験等を行い、機器の信頼性の確認や改良などが行われます。しかし、ほとんどが同じである事から1号機から量産車としてスタートしました。
基本設計は貨物用ですが、その高速性能を活かしてブルートレイン牽引用(P形)、重貨物列車を重連で運用するため、P形を基に重連総括制御機器を搭載した貨物用(F形)、F形を基に耐寒・耐雪構造などの装備を施したPF形が派生グループとして登場しました。国鉄電気機関車では最も多い308両が製作されました。

0番代

EF60形式の改良型として、昭和40年に登場したグループです。外観はEF60形式3次車とほぼ同じ。しかし、主回路機器などに最新技術を盛り込んでおり、限流継電器を用いた自動進段方式の電動カム軸、バーニア制御器、軸重移動補償装置(勾配上において空転が発生した際に、主電動機に与える電流量を制限する事により回転数を制限し、浮き上がり脱線などを防ぐ装置)、再粘着を促す空転検出装置などを装備し、EF60形式よりも操縦性能を向上させています。また、制御電源を交流化し、制御機構の簡素化、省力化も図られています。
牽引力はEF60形式よりもやや下回りますが、定格速度が向上しています。東海道本線や山陽本線を主体とした幹線や支線で貨物輸送に活躍したほか、JR移行後はジョイフルトレイン指定機として活躍もしました。現在は全てが廃車となり、番代消滅しています。

1次車(EF65 1~47)

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EF60形式3次車とは屋根上のモニター形状の変更(角の角度の違い。)になります。かつて、模型雑誌でお手軽改造として載っていて改造した殿方もいらっしゃるかと思います。試作機はなく、1号機から量産してしまったためバーニア制御器の故障が相次いで発生してしまいました。

2次車(EF65 48~72)

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故障の相次いだバーニア制御器を改良したグループです。また、乗務員室へ外気を取り込む通風口がスカートから前面飾り帯下へ移動しています。

3次車~5次車(EF65 73~120)

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外観の変化として、後部標識灯の形状が変化しています。また、誘導作業環境改善のため、手すりが延長されたほか、機関士側スカート部に足かけの欠き切りが施されました。機器面でも主電動機、バーニア制御器、避雷器などの改良、ATS電源未投入防止装置(ATSを投入しないとベルが鳴動し続ける警報装置)、警報継続装置加えられ保安度向上を図っています。また、踏切事故対策で前面が強化されています。ブレーキ関係では貨物列車の高速化に伴い、単機増圧ブレーキが追加されています。

6次車(EF65 121~135)

0番代の最終増備車で、外観は5次車と同じです。運転台廻りの機器(デフロスタ(曇り止め装置)、ワイパー)の改良、EB装置及びTE装置が搭載されています。

500番代(旅客用:P形)

20系特急形寝台客車の牽引用としてEF60形式500番代を使用してきましたが、定格速度が低く、高速列車牽引には不向きでした。そこで、0番代を基本に20系客車牽引用として昭和40年に登場したグループです。運転最高速度は110km/hに引き上げられ、応速度増圧ブレーキ装置、電磁ブレーキ指令装置、客車のブレーキ装置や空気ばねに空気を供給する元空気だめ管(MRP)、カニ22形式のパンタグラフ昇降スイッチ、客車への連絡用電話の設置などの追加が行われています。ただし、電源車の電動発電機(MG)の停止スイッチ機能は追加されませんでした。
車体色は客車に合わせて、青15号の車体にクリーム1号で、車体側面に細い帯が巻かれました。
大きく別けて、新造車と改造車の2つのグループがあり、これらグループをP形(Pは旅客を表すPassengerが由来です。)と呼んでいます。

1次車(EF65 501~512)

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0番代2次形と同じ構造となるグループです。スカート廻りが異なるのが特徴です。写真左は唯一、車籍を有する501号機(JR東日本高崎運転所所属)です。更新工事を受けており、後部標識灯の形状が異なっています。写真右の504号機を参照してみて下さい。

2次車(EF65 527~531)

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0番代3次車と同じ構造となるグループです。バーニア抵抗器が変更されています。外観ではスカートの欠き切りなどの変化があります。

3次車(EF65 535~542)

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昭和43年に登場したグループで、寝台特急増発に伴い登場したての0番代3次車(77~84号機)を改造編入しました。改造内容は500番代に準じた装備を追加し、塗装変更をおこなっています。

500番代貨物用(F形)

 編成重量1000tの高速貨物列車を運転最高速度100km/hで牽引するため、P形をベースに重連総括制御装置、10000系高速貨車対応装備、連結器に自動復心装置(常に連結器が中心となるようにする装置)を施したグループで、昭和40年に登場しました。貨物を表すFreightからF形と呼ばれています。連結器廻りは空気管コック、電気連結器が設置され、連結器は空気管付密着自動連結器となり、さらに自動復心装置がついてP形とは異なり、いかつい前面となりました。東海道、山陽本線では重連で運用し、EF66形式の登場する昭和43年まで活躍しました。高速貨物列車の任務を譲った後も同線の貨物輸送に活躍、一部は上越線に転出し、その際に耐寒、耐雪構造の改造を受けています。

1次車(EF65 513~517)

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P形とF形はそれぞれ仕様及び目的が異なりますが、一つのグループとされているためF形のトップナンバーは513号機となります。2次車が登場するまでの間、試運転を兼ねて寝台特急の牽引をしていました。

2次車前期(EF65 518~526)

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山陽本線の貨物列車用として登場したグループです。1次車とほぼ同じですが、外観では自動復心装置がカバーで覆われている違いがあります。機器ではバーニア制御器が変更されています。

2次車後期(EF65 532~534)

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F形最終となるこのグループではブレーキ増圧回路が編成増圧回路から単機増圧回路に変更されています。写真は上越線に転用されていた車輛で、スカートだけが残されています。

EF65形式上越仕様

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東海道本線のほか、直流電化主要幹線にも活躍したEF65形式F形。その進出先に上越線がありました。EF15形式が使用されていた急行貨物列車の牽引をするためです。簡易な耐寒・耐雪構造が施され、スノープラウ、氷柱切り、ホイッスルカバーなど外観上変化が出ました。

1000番代(PF形)

 昭和44年に登場したグループで旅客・貨物列車に、汎用的に使用できるようにしたものです。500番代F形をベースに重連総括制御機能を備え、上越線などで問題となった点の改良を施しました。寒冷地運用での重連運転に備えて前面には貫通扉が設置され、この扉には屋根上の昇降用はしごを備えています。このため、前面形状は平妻スタイルとなり、飾り帯も省略され外観が異なります。耐寒・耐雪構造も強化されました。一方で、10000系貨車用の空気管付連結器などの装備は省略されており、通常の並形連結器となっています。
PF形として139両が製作されており、EF65形式の中で最も多いグループとなっています。

1次車(EF65 1001~1017)

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東北本線・上越線で活躍するF形を置換えるために投入されたグループです。0番代5次車に相当する機器を装備していますが、界磁制御器のみ新形式のものを使用しています。上越線では必要となる運転台窓上部の氷柱切りは当初は装備されず、後に装備されました。ただし、前照灯の氷柱切りは未装備のままです。

2次車(EF65 1018~1022)

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20系客車のカニ22形式のパンタグラフスイッチが撤去されたほか、機関士一人乗務に備えて、EB装置及びTE装置、記録紙気速度計の装備を行ったグループです。このグループより、運転台上部氷柱切り、前照灯氷柱切りが標準装備となっています。

3次車(EF65 1023~1039)

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このグループより、貫通扉下部にあるステップが前面手すりの内側までに短縮しました。この他の変更点はなく、2次車と同じです。

4次車(EF65 1040~1049)

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3次車までの車輛とは異なり、外観などに変化が出ました。乗務員室に扇風機が設置され、屋根上に扇風機カバーが設置されました。これに伴い、前面にあった通風口が無くなっています。後部標識灯は内ばめ式から外ばめ式に変更となり、形状が異なります。機器類は保守を容易とするため、バーニア制御器、界磁制御器が形式変更となっています。前面ではKE59形式ジャンパ連結器が廃止されたため、その部分が空いています。(スカートの形状変更を行わなかったため)

5次車(EF65 1050~1055)

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山陽本線の波動輸送用として登場したグループです。スカート形状が変更され、KE59形式ジャンパ栓のあった場所が埋められた仕様となり、若干外観が変わりました。機器類では継電器が変更されたのに伴い、バーニア制御器の形式が変更されています。

6次車(EF65 1056~1091)

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マワ車所蔵

5次車から4年後に登場したグループで、首都圏で活躍する旧型電気機関車の置換えを目的として大量に増備されました。マイナーチェンジを行ったと言ってもよい外観の変化があり、パンタグラフは菱形(PS17形式)から下枠交差式(PS22B)に変更、車号も車体に直接貼り付ける切抜き文字からステンレスエッチング加工のブロック式に変更されています。機器類では各機器、配線に対して不燃化、難燃化対策を行いました。

7次車(EF65 1092~1118)

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マワ車所蔵

EF65形式P形を置換えるために登場したグループです。重連運用や寒冷地での運用が無いため、スノープラウや汽笛カバーなどが新製配置後に取り外されました。(新鶴見機関区配属車は除く。)

8次車(EF65 1119~1139)

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EF65形式最後のグループとなります。関西地区で寝台列車を牽引してきたEF58形式の老朽化に伴う置換え用として登場しました。関西~九州間の夜行列車を牽引するため、寒冷地装備の一部が省略されて登場しています。

EF65形式の仲間

旅客会社所属機

●JR東日本
国鉄より、旅客会社では最も多い42両が継承されました。500番代1両と1000番代41両の内容で、500番代はイベント列車を中心に現在も活躍しています。1000番代は民営化後は東北方面(寝台特急あけぼの、急行八甲田、津軽など)や東海道方面(寝台特急瀬戸、出雲、寝台急行銀河など)の先頭に立って活躍する姿が見られましたが、これら列車の廃止に伴い、初期車から廃車が発生し定期運用は無くなりました。現在は工事列車などの臨時列車に使われています。
★EF65 1019・EF65 1118スーパーエクスプレスレインボー指定機

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欧風客車スーパーエクスプレスレインボーを牽引する指定機として、EF65 1019号機が指定されました。チェリーレッドの車体にEF65の大きなロゴが配された大胆な塗装が特徴です。1019号機が廃止され、2代目に1118号機が指定されました。平成12年に客車は廃車となりましたが、機関車の塗装はそのまま残っています。現在も工事列車などの先頭で活躍する姿が見られます。
★冷房装置搭載車

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平成18年頃から始まった工事で、運転台上部に台形状の冷房装置が搭載されています。1000番代のみ全機に行われているようです。
★パンタグラフ交換車

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PS17形式パンタグラフを搭載するグループですが、PS22B形式パンタグラフに変更された同社所属機の1両です。

●JR東海所属機

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JR東海では0番代5両を国鉄から継承しました。そのうちの105・106・112号機の3両は国鉄時代より、中京地区を中心に活躍していた欧風客車「ユーロライナー」の指定機になりました。ユーロライナー号廃車後も工事列車などで活躍をしていましたが、現在は全機廃車となっています。
●JR西日本所属機
JR西日本では0番代1両、1000番代22両が国鉄から継承されました。0番代は岡山電車区に所属していた「ゆうゆうサロン岡山」の指定機でした。1000番代は主に関西~九州間寝台特急列車の牽引に活躍していました。現在は定期運用は無く、工事列車や臨時列車に活躍しています。同社所属機の特徴として、台車など下廻りが灰色に塗装されています。
★ゆうゆうサロン岡山指定機(マワ車所蔵)

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JR西日本に唯一継承された123号機です。客車の塗装に合わせたものとなり、晩年は客車の塗装変更に伴い、黄かん色一色になり、パンタグラフがPS22B形式に変更されていました。
★現在のJR西日本機

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説明の通り、下廻りが灰色となっており、外観の特徴ともなっています。

●JR貨物所属機
国鉄より、0番代、500番代、1000番代総数199両を継承し、貨物列車増発により車籍を抹消された0番代16両が加わって新会社としてスタートしました。老朽化の進んだ機関車の延命工事などが見られましたが、後継の新形式の増備が進み、0番代及び500番代は全て廃車となり、番代消滅しています。現在は1000番代が活躍していますが、法令の関係で2000番代車になっています。
★塗装変更車

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マワ車所蔵

かつての旧型電気機関車を彷彿とさせるぶどう色2号の塗装です。9・56・57・75号機の4両が塗装変更されました。全機が出そろった時期は無く、9号機が最初に登場し、廃車と入れ替わりに56号機、57号機と続いています。どれも「茶ガマ」の愛称で呼ばれていました。

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JR貨物発足後に始まった試験塗装車の例です。左は1059号機、右は1065号機です。この他に21号機、116号機が試験塗装車となりました。このうち、21号機の塗装色は後の更新車の塗装の基礎となりました。
★更新工事車
同社所有のEF65形式に対して、平成元年頃より機器更新等、更新車と在来車を識別する塗装変更が行われました。主な工事内容は主要電気配線交換、主電動機のリフレッシュ、車体の補修などです。

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最初は0番代、500番代から始まりました。ライトパープルをベースに車体上部をディープブルーとスカイブルーの青系2色の3色塗装となりました。その後、1000番代にも更新工事が始まり、同じ3色の車輛が登場しました。ナンバーに切抜き文字を使っていた初期車はステンレスプレートを用いたものに変更されました。

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平成18年頃になると、ライトパープルとディープブルーの2色に変更されています。0番代では当初、前面運転台窓部分の僅かな場所を黒くしていました(連続窓風)が、その後無くなっています。

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500番代も同様に2色塗りになっています。F形の更新車は少なく、ちょっぴりレアな存在でした。

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1000番代も同様に2色塗りになりました。広島車両所で更新工事を行った車輛は前面貫通扉がからし色になった独特のものとなっています。

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★その他JR貨物所属機
・EF65 43

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0番代でこの車輛だけなのでしょうか、スノープラウを装備した車輛です。
・EF65 535(マワ車所蔵)

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更新色が増えつつあるJR貨物機のなか、原色である特急色(クリアラッカー仕上げ)でファンを虜にした車輛です。引退後はイベントなどでも見られましたが、現在は大手電機メーカーで保存されています。
・EF65 1089

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パッと見るとごく普通の1000番代ですが、側面ルーバー上部に何かが付いています。これは蛍光灯だそうで、何を目的にしたのかは不明ですが、貨物更新色になっても残っています。
・EF65 1085他

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EF65形式の一部に冷房化された車輛があります。助手側窓に見られる排気口が冷房装置の一部になります。更新工事などで多くの車輛に設置されたようです。

★減圧促進改造車
EF64形式の頁でも説明いたしましたが、この改造はEF65形式から始まりました。コキ50000形式250000番代車を牽引するため、ブレーキを扱ってから停止するまでの距離を短縮する事が目的です。

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当初は識別のため、前面は青15号、側面はコキ50000形式250000番代に合わせた緑色のプレートを付けていました。しかし、夜間などにおいて見難かったのでしょうか。

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前面は青色のまま、側面をクリーム色(左)や赤色(右)に組み合わせた車輛が見られました。これは視認性のテストなのでしょうか?結果…

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前面、側面共に赤色に統一する事になりました。これ以外の組み合わせは非改造車という事になります。

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非改造車では、更新車では前面青色、側面白色、国鉄色(原色)では前面青色、側面クリーム色の組み合わせが見られました。
★保安装置搭載による番号変更

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平成24年、国土交通省の鉄道に関する技術上の基準を定める省令により、100km/hを超える列車の運転を行う際に運転状況記録装置(保安装置)の搭載が義務付けられました。旅客会社とJR貨物所有車との区別を行い、運転最高速度の違いを区別するため原番号に1000番を加える番号変更が行われました。この時には0番代、500番代は廃番代になっていたため、対象となった車輛はありません。左上は2093号機(旧1093号機)で青色のプレート、右は2060号機(旧1060号機)で赤色のプレートです。

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2050号機(旧1050号機)では、前面が白色、側面が青色のプレートになっており、種類がある事がわかります。