昭和40年に入り、東名・名神高速道路の整備が進みトラックによる貨物輸送の需要が少しずつ拡大していきました。これに対抗するため、国鉄では所要時間の短縮が必要とされた生鮮品輸送を中心に貨物列車の高速化を計画しました。
運転最高速度100km/hの高速貨車10000系を開発。コンテナ車コキ10000系、冷蔵車ではレサ10000系などが登場し、この高速貨車シリーズと並行して、専用新型機関車の開発も行われました。
当初は8軸のH級機関車の構想もありましたが、大出力電動機の開発に成功しF級機関車として設計が始まりました。昭和41年に試作機関車が完成、形式をEF90形式と命名されました。MT56形式主電動機を6基搭載し、定格出力は3900kw。この出力は当時の狭軌では世界最大の高出力でした。
10000系貨車と共に各種試験を行い、この結果を基に昭和43年に登場したのがEF66形式です。EF90形式は量産車化改造を受け、EF66形式に編入されました。
量産車の登場により、10000系高速貨物列車はEF65形式F形重連運用からEF66形式に引き継がれており、単機で東海道、山陽路を駆け抜けました。
車体は従来車にはない、高運転台非貫通構造です。ボンネット特急形電車の先頭形状を圧縮し、きれいに配置した独特の前面で、一段高い運転台、前部標識灯及び後部標識灯をライトケースに縦配置とし、その間に通風口も備えた飾り帯、チャンピオンマークをあしらったナンバープレート、青15号の車体にクリーム1号の前面及び側面の細い帯。見ればすぐにわかる独特のフォルムで、欧州にありそうなスタイルが特徴です。
性能面では、1000t貨物列車を運転最高速度100km/hで走行する性能を有する機関車として設計されました。EF65形式などで採用されていたMT52形式主電動機と比べて、EF66形式に採用されたMT56形式は新しい吊り掛け駆動装置を使い、1.5倍の高出力の性能となっており、貨物用機関車でありながらEF58形式重連に相当する走行性能を有しています。つまり、EF65形式の牽引力とEF58形式の走行性能を兼ね備えた万能機となっています。
10000系高速貨車の牽引が前提であるため、ブレーキ装置には電磁ブレーキ指令装置、応速度単機増圧装置を備えています。また、10000系貨車の空気ばねに空気を供給するなど圧縮空気の使用量が多いため、EF65形式と同じ電動空気圧縮機を2基搭載しています。連結器も空気管付密着自動連結器を装備しています。
制御方式は一般的な抵抗制御方式ですが、細やかな速度制御が出来るよう新開発のバーニア制御、界磁制御器を搭載。制御回路にダイオード、サイリスタ、シンクロ電動機などの新しい技術が多く用いられました。これら技術はEF65形式をはじめとする他の機関車にも採用されました。運転台は従来のものとは異なり、人間工学に基づいた設計が採用されているのが特徴で、ノッチ扱いは電車と同じ主幹制御器ハンドル、電気機関車では初となる「セルシン」と呼ばれるシンクロ変換器を用いた弱め界磁ハンドル、視認性を考えて一直線に配置された機器類が配置されています。
昭和60年に入り、ブルートレインの牽引を開始、JRへ移行後の平成元年に、JR貨物でEF66形式の増備が行われました。現在はJR貨物に所属する車輛のみが活躍をしています。

EF66 901

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昭和41年にEF90形式として登場した、EF66形式の基となった試作電気機関車です。10000系貨車との各種試験を行い、昭和43年に量産車(EF66形式)が登場する際に量産車化改造が行われました。運転台前面窓の桟がやや太く、両端の桟がやや内側に寄っているのが特徴です。平成13年に廃車となっています。

EF66 1~20(1次車)

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試作車の結果を基に製作された量産車グループです。高速走行時の安定性能向上を図るため、空気ばね、台車の変更が行われたほか、機器類の改良が行われています。16号機以降は肩部分にある主抵抗器排熱口が2分割から4分割になっています。また、登場時は運転台上部にひさしがありませんでしたが、5~7号機、13~17号機は国鉄時代に、他の車輛も11号機を除いて更新工事の際に付けられています。

EF66 21~55(二次車)

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高速貨物列車増発に対応するため、昭和48年より登場したグループになります。外観ではパンタグラフ頂上部のすり板と呼ばれる架線と接する部分から発生する金属粉や摩耗を防ぐ目的で塗られるグリス(油)の飛散による運転台窓の汚れを軽減するため、運転台窓上にひさしが設けられました。この他、側面にある点検蓋の移設、ナンバープレート下にある飾り帯に設けられた通風口の廃止などの変化があります。
機器類の大幅な変更があり、番代区分も検討されましたが、補助機器類が中心という事もあり続番で製作されています。その大幅な変更とは、送風機や空気圧縮機などを動かす電動機をメンテナンス低減のため、三相誘導電動機に変更したことです。この変更により容量が増大しています。主電動機の改良も行われており、この改良は1次車にも実施されました。
自動空気ブレーキでは単機増圧機能に加え、編成増圧装置が追加されました。この装置は高速走行時に非常停止をした時、車輪と制輪子の間に発生する摩擦熱によって、ブレーキ力が低下する事から、これを補うためにさらに強い力を加えるようにする指令を出す装置です。
昭和60年より東京~九州間のブルートレインの編成増に伴い、EF65形式では牽引力が不足する事から、高出力のEF66形式が選ばれ牽引するようになりました。JR西日本へ40~55号機が移管され活躍しました。

EF66 101~108(100番代1次車)

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JR貨物に移行し、コンテナ列車増強及び長編成化に対応するため平成元年に登場したグループです。JR貨物では初めての新製機関車として知られています。
基本構造や性能面は0番代2次車とほぼ同じですが、前面形状や塗装など大きくイメージチェンジが図られています。
外観では前面部は運転台窓が大きくなり、灯具類なども配置が変更されました。合せて、機関士の作業環境改善のため空調装置が搭載されています。機器類は時代の変化に対応したものとなり、スイッチ類や高速度遮断器などに用いられているアスベスト素材の廃止、バーニア制御器や電動発電機の細部改良が行われています。また、10000系高速貨車が無いことから、連結器は通常の自動連結器を装備しています。

EF66 109~133(100番代2次車)

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平成2年に登場したグループです。1次車で発生した改良点や時間的制約で1次車に導入出来なかった改良点を採り入れているのが特徴です。外観では灯具類の角形化、ガラス製保護カバーの装備が行われたほか、裾部に青い帯が追加されています。
機器類ではパンタグラフの昇降方式を空気式から電磁弁方式に、運転台機器類のレイアウト変更などが行われています。

延命・機器更新工事など

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EF66形式の延命・機器更新工事は平成5年頃より始まりました。機器類の更新工事に加えて、飾り帯の撤去などメンテナンス軽減も図っています。識別のため塗装変更が行われました。(写真左)平成16年以降は、塗装が変更となり、原色と同じ色を用いて帯の位置を裾部に変更したものとなっています。また、一部の車輛では運転台上部に空調装置が設置されています。(写真右)