北陸本線、信越本線、羽越本線、奥羽本線などで構成される重要幹線の日本海縦貫線はそれぞれの線区で異なる電化方式が採用されました。このため、これら直流電化区間、交流電化周波数50Hz及び60Hz区間を相互に直通できる三電源方式の電気機関車が必要となり、昭和43年に登場したのがEF81形式です。
EF80形式が昭和37年に登場していますが、自重軽減を目的に特殊な設計が用いられているなど保守や性能面ではまだ問題があるため、採用には至りませんでした。1960年代後半には直流機、交流機ともに標準的な形式が登場していましたが、双方を1つの車体に載せた交直両用機は、とても複雑な構造となるため開発期間や費用の面などまだまだ問題のある分野となっていました。
そこで、EF81形式では直流機の標準型であるEF65形式を基とし、広範に使用出来る交直両用機として開発が進められました。制御方式は抵抗制御方式で、粘着性能を確保するため6軸のF型としました。しかし、交流機では制御方式が異なり、連続制御で4軸のD型で充分な粘着性能を確保していたのに対して、6軸駆動でもその能力には達していない欠点もあります。
車体は18m級、幅2900㎜の大型車体となりました。これは、交直流機器を収容するためで、重連運転は行わないため重連総括制御装置は装備せず、非貫通構造となっています。耐雪及び耐塩害のため断路器などの特別高圧機器は車内に収容されており、主抵抗器は屋根上にありますが、カバーで覆われています。耐寒装備として空気ブレーキ装置などにヒーターの設置やスノープラウの装備があります。
制御方式は抵抗制御方式で、交流区間では交流20000Vを主変圧器、主整流器、主平滑リアクトルにより、直流電源に変換して制御を行います。解り易い考えでは、EF65形式に交流機器を足したものとなっています。1時間当たりの定格出力は直流区間では2550kw、交流区間では2370kwとなっています。
旅客列車用のサービス機器は、電気暖房用電源を装備しています。交流区間では主変圧器から、直流区間ではEF80形式63号機で試用されたサイリスタインバータ装置から供給されます。
日本海縦貫線、常磐線をはじめ活躍をし、関門トンネルなどで活躍範囲を広げました。現在は老朽化などにより、徐々に廃車が進んでいます。

EF81 1(マワ車所蔵)

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量産先行車として登場しました。登場時は車体正面に向かって左側下部にタイフォンが設置されて、外観の特徴となっていましたが、後に撤去されています。

EF81 2~38

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1号機の試用結果を基に細部が改良された量産車グループになります。バーニア制御器、界磁制御器、主整流器などが改良されました。屋根上の抵抗器カバーも抵抗器の容量が増えたため、形状が変わりました。空転時の再粘着方式では1号機で3種類の試験が行われ、量産車では再粘着ブレーキ、ノッチ止めが採用されました。

EF81 39~136

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このグループより外観に変化が見られます。前面の乗務員室へ外気を取り込む通風口が廃止されたほか、後部標識灯、屋根上抵抗器カバーの形状変更。車体番号は切り文字からプレート式に変更されています。主制御器や主抵抗器などの内部機器の一部仕様変更が行われたほか、人間工学に基づいた計器盤の配置、機器操作など運転台レイアウトの変更が行われました。また、一人乗務に対応するため、EB装置及びTE装置が設置されています。このグループより20系客車用のジャンパ連結器が廃止されました。
42号機以降はパンタグラフ断流器に誤作動保護回路装置が設けられています。47号機以降では電気暖房表示器の電球交換方法が変更となり、形状が変更となっています。(127号機以降はさらに小型化しています。)

EF81 137~152

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0番代の最終グループです。車体構造が見直され、前面運転台窓上部に氷柱切りが設置されています。主電動機、バーニア制御器などの改良が加えられ、メンテナンスフリー、絶縁対策が強化されました。

300番代(EF81 301~304)(写真はマワ車所蔵)

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昭和48年に登場したグループで、関門トンネル用に設計された特殊装備のEF81形式です。関門トンネルで活躍をしていたEF30形式の増備車として登場しています。海水が含まれる高湿度のトンネル内の環境に対応するため、車体にはステンレスを使用し、補強のためコルゲート板が巻かれています。このため、車体は無塗装となっています。機器類は同時期に製作されていた75号機以降と同様ですが、運用区間が短いため電気暖房装置は搭載されていません。また、スノープラウの装備も無いのが特徴です。
投入時は単機による旅客列車を牽引する運用が中心でしたが、EF30形式が運用を離れると貨物列車の運用にも就くようになり、重連運用もあるため重連総括制御の改造工事が行われています。301及び302号機は一時期、常磐線で活躍をしていた事がありローズピンク(赤13号)に塗装されています。

400番代(EF81 401~414:写真左401号機はマワ車所蔵)

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関門トンネルの主として活躍してきたEF30形式の置換え用として0番代に重連総括制御機能を装備させた改造車グループで、昭和61年に登場しました。
重連運用に対応するための様々な機器の追加及び統一が図られているほか、必要のない電気暖房装置の撤去(主整流器に付帯する機器はそのまま)が行われました。塩害対策として、パンタグラフ、屋根上機器に防食剤が塗られています。
現在は401~408号機のJR貨物所属車のみ活躍をしています。

500番代(EF81 501~503)

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JR貨物発足後、日本海縦貫線の貨物輸送量増加を受けて増備されたグループです。基本的な構造、性能面では0番代の最終増備車と同じですが、旅客列車の牽引がないため電気暖房装置等の機器が省略されています。塗装色はJR貨物の標準的なものを採用しています。

450番代

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平成3年の時刻改正で本州~九州間の貨物列車増発に対応するため、400番代の増備車として登場した関門トンネル仕様のグループで、5両製作されました。
500番代の設計を基に、重連総括制御機能を装備させたもので、400番代では片渡り構造のため機関車の向きに制約が出る問題がありましたが、このグループでは両渡り構造としています。塗装は500番代と同じですが、車体下部に青色の帯が追加されています。
車体は451・452号機は灯具類を一体化し、運転台窓下部に設置しています。453~455号機は500番代と同じ配置としています。

JR貨物所有機(更新車・保安装置装備車)

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EF81形式の初期車では車齢が30年を越えたため、更新工事が実施されました。機器類の整備又は交換を中心に工事が行われ、その識別として車体裾部に白い帯が巻かれています。
平成24年に国土交通省より鉄道に関する技術上の基準を定める省令により、運転最高速度100km/h以上の運転を行う際に、新しい保安装置(運転状況記録装置)の搭載が義務付けられました。この装置の有無をJR旅客会社とJR貨物所有車との運転最高速度の違いを区別するため、0番代に対して原番号に600番を加えた改番が行われました。同社の所有する300、400、450、500番代は他社にないため、改番は行われていません。

JR東日本所有機

●EF81 81

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昭和60年に催された国際技術博覧会で運転されたお召し列車の牽引機に指定されました。赤13号(ローズピンク)の車体側面に銀色の細い帯が入れられました。(写真左:マワ車所蔵)その後、平成元年に赤2号1色塗りを経て、北斗星牽引機の塗装に変更されました。この時、手すり、連結器などが銀色のままでお召し機時代を残していました。現在は元の赤13号に戻り、銀色の帯が入れられてお召し機時代に戻っています。
●寝台特急「北斗星」号牽引指定機、赤2号塗装

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JR東日本所有機は車体色を交流電気機関車と同じ赤2号に変更しました。田端運転所所属機のうち、寝台特急の牽引を主体とする車輛に対して主電動機などの整備を行い、その識別として銀色の流れ星が描かれており、ファンからは「北斗星色」などと呼ばれています。
●寝台特急「カシオペア」号牽引指定機

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北斗星色となった車輛のうち、4両(1両は廃車による補充)が寝台特急「カシオペア」号を牽引するため、白地に黄色、だいだい色、青色の4色のブロックパターンの塗装に変更されました。平成24年にこの塗装は消滅しています。
●スーパーエクスプレスレインボー牽引指定機 EF81 95

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昭和62年に登場した欧風客車「スーパーエクスプレスレインボー」の牽引機として、チェリーレッドのボディーにEF81の大胆なロゴを配した塗装に変更されました。客車廃車後の現在もこの塗装のままとなっています。
●双頭連結器装備車

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青森地区の電車を郡山総合車両センターで検査するなどの際に使われるもので、青森車両センター及び長岡車両センターに所属するEF81形式を改造しました。双頭連結器装備のほか、電気指令式空気ブレーキを装備する車輛のブレーキを掛けるため、ブレーキ読替指令装置、ジャンパ栓などが追加されています。

JR西日本所有機

●寝台特急「トワイライトエクスプレス」牽引指定機

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大阪と札幌を結んでいた寝台特急「トワイライトエクスプレス」を牽引する車輛に対して、客車と同色の緑2号(モスグリーン)に黄色の帯を巻いた配色となりました。当初は機関車の塗装変更でしたが、衝撃を緩和するため、連結器を密着自動連結器に交換し、大容量の緩衝装置を装備しました。(写真右)