所有路線
伊豆急行線 伊東~伊豆急下田駅 45.7km 全線単線、電化(直流1500V)

静岡県伊豆半島東部に路線を持つ鉄道会社です。一般的には「伊豆急」と呼ばれており、東急グループの企業として知られています。
路線は昭和36年に開業し、開業と同時に国鉄伊東線(現:JR東日本伊東線)に相互乗入れを始めました。海が見える路線のイメージがありますが、実際は路線の半分程度となっています。川奈~富戸間の海を見下ろせる場所や大島など伊豆七島を車窓から眺望できるなど見どころが多いのが特徴です。沿線は古くからの温泉街、別荘地や保養地が多いことでも有名で、多くの観光客が年間を通してやってきます。
開業以来、国鉄~JRとの相互乗入れを行っており、JRの様々な車輛を見る事も出来ます。

8000系

 1990年代に入り、開業以来活躍してきた100系電車の老朽化が進み、置換え車輛を考える時期がきました。当初は親会社の東京急行電鉄8000系が候補に挙がりました。しかし、当時廃車予定がない上、サービス面で片側2扉構造に改造すると伊東線との直通運転に難がある事から、JR東日本113系及び115系を改造した200系をつなぎ役として導入しました。その後、平成16年に8000系を譲り受け改造し、順次投入したのがこの8000系になります。これにより200系全車、2100系「リゾート21」の古い編成を置き換える事になりました。
 主な改造として、東急8000系時代と制御装置などはほぼ同じですが、MT比や保安装置の関係で運転最高速度や起動加速度の設定が変更されています。伊豆急8000系では制御電動車が必要なため、中間電動車の先頭車化改造が行われています。(東急時代には制御電動車形式がない。)この際、離線対策(パンタグラフが架線から離れてしまう事。)としてパンタグラフが運転台寄りに設置されています。この他、編成が短くなることから、機器類の移設などの改造が行われました。
 車内は居住性を向上させるため徹底したリニューアル工事が実施されています。車内半分(海側)をクロスシート化。座席は西武鉄道10000系のリニューアル化工事の際に譲り受けたもので、回転やリクライニング機構は使用せず、固定化されています。洋式トイレの設置(車輛構造の都合によりバリアフリー対応ではありません。)などが行われています。
 登場当初はクモハ8150形式+クモハ8250形式の2両編成、クハ8000形式+モハ8200形式+モハ8100形式+クハ8000形式の4両編成の2種類が用意され、最大6両編成での運転が始まりました。

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※先頭車からの改造車と中間車からの改造車で前面を中心に印象が異なるなど多彩なバリエーションがあります。

 当初、50両を導入する計画で、200系及び2100系1~3次車を置換える事としましたが、2100系3次車の廃車が中止され45両の導入に変更し、編成の見直しが行われる事になりました。2両編成と4両編成、それぞれを半分で分割して3両編成に変更。あわせて、各編成にトイレを設置する工事が行われました。
 編成番号は熱海方からクハ+モハ+クモハのA編成(TA○)と熱海方からクモハ+モハ+クハのB編成(TB○)の2種類となりました。トイレはA編成ではモハ、B編成ではクハに設置されています。

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※TA7編成は東急時代のステンレス無塗装となっており、懐かしい姿を見せています。また、写真のクモハ8152号車は唯一、8500系からの改造車でもあります。

2100系

 昭和60年に登場した電車で、「リゾート21」という愛称が付けられています。先頭車に展望席を配し、海側の景色を見易くするため独特の座席配置となっているなど普通列車用の車輛としては、豪華な設備が特徴の車輛です。
 車輛の海側と山側でデザインが異なっているのが特徴の一つにあり、側面の窓は海側では展望を考えて、大型の連続窓としていますが、山側は当時としては珍しいベクワラットタイプ(内折れ式窓)を採用しています。塗装も同様に、左右非対称のデザインで海側が赤帯、山側が青帯となっています。
 現在までに8両編成5編成が製作されています。1次車、2次車では制御装置の一部、主電動機を100系より流用していますが、3次車以降は全て新製となっています。

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※写真左は1次車。唯一連結器が出ていました。右は2次車で特急「リゾート踊り子」号で活躍していた頃の様子。

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※完全新製車となった3次車。制御方式(抵抗制御方式)やブレーキ制御方式(発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-D))は1、2次車と同じ。現在は「Izuky KINME Train」として、伊豆地方の特産品、金目鯛をPRする電車として、赤色の塗装に金目鯛のイラストが散りばめられた可愛い電車として活躍しています。

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※4次車は平成2年に登場。愛称が「リゾート21EX」に変更。仕様が変更され、前面窓が大きな1枚ガラスになったほか、パンタグラフの下枠交差式に変更されるなど、印象が異なります。この編成からグリーン車「ロイヤルボックス」が連結されました。ハイルーフを採用し、トンネル内を走行すると添乗が星空になる工夫が施されています。好評であった事から1~3次車各編成にも追加されました。(現在は廃車。)
現在は2代目黒船電車(下田開港150周年を記念し、車内で下田開港当時の資料を展示しています。初代は1次車。)として活躍しています。

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※平成5年に最終増備車となる5次車が登場しました。車体デザインが大きく変更され、赤と青色の斜めの帯は交互に配置され、リゾートシリーズ+αという意味で「アルファ・リゾート21」という愛称となっています。この編成のロイヤルボックスの特殊照明は星空から海底をイメージしたものに変更されています。乗降扉の4枚折戸も特徴です。

前面では行先表示器は当初設置していませんでしたが、LED式のものが後に設置されました。
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5次車は平成29年より新しい観光列車へと生まれ変わり、水戸岡鋭治氏が手掛けた「THE ROYAL EXPRESS」として活躍しています。この愛称は「煌めく伊豆。美しさ感じる旅。」を実現するため「伊豆の素晴らしい魅力をさらに感じて頂けるような、貴賓と特別感のある観光列車にしたい」という意味が込められています。コンセプトは「美しさ、煌めく旅」となっています。
デザインは水戸岡氏の培ってきたノウハウのほか、鉄道車輛では禁じ手ともされる色、形、素材を用い、和でも洋でもない世界中の様式が散りばめられ、高品質で特別な感覚とし、懐かしさと新しさが調和するように設計されました。車内はゴールドクラスとプラチナクラスの客室、プラチナクラス用食堂車、マルチカーで構成されおり、定員は100名と観光列車では日本最大級となっています。(8両編成)

200系

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この系列は平成12年に誕生し、平成20年まで活躍した電車です。開業以来活躍してきた100系、1000系(100系の車体更新車)は40年近く使用され、経年及び塩害による老朽化が問題となってきました。置換え用の車輛に東急8000系が検討されましたが、当時は廃車予定がありませんでした。そのような状況から、JR東日本が同社の保有する113系や115系を提示してきました。これらの電車を伊豆急行仕様とし、東急8000系の譲渡車輛が発生するまでのつなぎ役として登場しました。
もともと相互乗入れをしており、113系も乗り入れている事から都合の良い車輛だったようです。115系は抑速ブレーキが付いているほかは、113系とほぼ同じで勾配区間もあったため、より適した車輛だったようです。
移籍してきた車輛は全て、JR東日本時代に更新工事を受けている上、早期の廃車が計画されている事から、塗装変更のほか、分割・併合作業のための電気連結器の装備、日本では初めての燃焼式の汚物処理装置設置、車椅子スペースの設置といった改造で済ませています。
200系には投入された車輛の種車により種類があります。
113系1000番代からの改造グループ→白と青色の塗装。側面のデザインが運転台寄りが白色、半分が青色というもの。4両編成。
115系0番代及び800番代からの改造グループ→白と青色の塗装。3両編成。
115系300番代からの改造グループ(写真上)→115系0番代及び800番代と同じ塗り分けで、白と赤色の塗装。3両編成。
平成16年、計画通り東急8000系の投入が始まり、少しずつ置換えが行われ、平成20年に全車廃車となっています。