所有路線
東横線 渋谷~横浜駅 24.2km 全線複線(田園調布~日吉間5.4kmは複々線) 全線電化(1500V)
目黒線 目黒~日吉駅 11.9km(田園調布~日吉間5.4kmは東横線と並行) 全線複線、電化(直流1500V)
田園都市線 渋谷~中央林間駅 31.5km 全線複線(二子玉川~溝の口間2.0kmは複々線)、電化(直流1500V)
大井町線 大井町~溝の口駅 12.4km(二子玉川~溝の口間2.0kmは田園都市線と平行) 全線複線、電化(直流1500V)
池上線 五反田~蒲田 10.9km 全線複線、電化(直流1500V)
東急多摩川線 多摩川~蒲田 5.6km 全線複線、電化(直流1500V)
世田谷線(軌道線) 三軒茶屋~下高井戸駅 5.0km 全線複線、電化(直流1500V)
こどもの国線 長津田~こどもの国 3.4km (第2種鉄道事業で、第3種鉄道事業者(施設の保有)は横浜高速鉄道) 全線単線、電化(直流1500V)

JR東日本山手線の渋谷、目黒、五反田駅を起点に東京都南西部から神奈川県東部に路線を持つ鉄道会社で、大手私鉄の一つです。一般的には『東急』の愛称で親しまれています。田園都市の開発を目的に大正7年に設立された田園都市株式会社で鉄道部門とした子会社である目黒蒲田電鉄に始まります。その後、少しずつ大きな鉄道会社へと成長していき、戦前には現在の小田急電鉄や京急電鉄、京王電鉄などを多数の鉄道路線を経営し『大東急』と呼ばれる時代もありました。戦後になると概ね現在の路線になり、現在に至ります。
路線名の変更や区間の変更があり、昭和38年に大井町線を田園都市線に。昭和44年には軌道路線であった玉川線のうち、渋谷~二子玉川園(現:二子玉川駅)間を廃止し、新規に新玉川線を開業。残った三軒茶屋~下高井戸駅間を世田谷線に名称変更。昭和54年に新玉川線と営団半蔵門線の相互乗入れ運転開始に伴い、田園都市線と新玉川線の相互直通運転を開始。田園都市線の旧大井町線区間を大井町線として再度分割。(現在の大井町線になる。)
平成12年、目蒲線(目黒~蒲田駅)の営団南北線、都営三田線との相互乗入れを開始するため、目黒線と東急多摩川線に分割。また、相互直通運転を行っていた田園都市線と新玉川線を田園都市線に名称を統合しました。
車輛は技術面においては車輛製造工場(東急車輛製造:現横浜金沢プロパティーズ(鉄道車輛事業は総合車両製作所横浜事業所(JR東日本グループ))があった事もあり、先進的で、日本では初となるステンレスカー5200系と導入し、以降ステンレスカーを導入すると共に、界磁チョッパ制御方式、全電気指令式電磁直通ブレーキ、VVVFインバータ制御方式など先進技術を積極的に導入しています。平成元年には日本の鉄道では初となる鉄道線車輛が全て回生ブレーキを装備し、同時に大手私鉄では初となる鉄道線の営業車輛の全てがステンレス車をはじめとする軽量車体で統一されました。このように、日本の鉄道界の先頭に立っている鉄道会社であることが伺えます。
東急で活躍した電車の一部の車輛が地方へ譲渡され、活躍している姿も見られます。

車輛の紹介

7600系

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昭和61年に7200系を改造して登場した通勤形電車です。この7200系(写真左の7600系とほぼ同じ形。)は昭和42年に登場した通勤形電車で、地下鉄乗入れ用に設計された7000系の全電動車方式を1:1のMT比に見直したモデルチェンジ車で、田園都市線や目蒲線、池上線、大井町線で活躍しました。このうち、大井町線で活躍していた7200系を目蒲線、池上線へ転用しましたが、6両編成から3両編成へ変更した際にクハ7500形式(制御車)があまり、電動車が不足してしまいました。
ならばと、この余剰の先頭車を電動車化改造しようという事になり、この7600系が誕生しました。
電装品は7200系のものではなく、同時期に登場した9000系とほぼ同じの三相交流かご形誘導電動機・・・つまりVVVFインバータ制御方式に改造しました。この他にパンタグラフや冷房装置の設置が行われました。こうして3両編成が3本改造されました。
その後、7700系との編成構成を揃えるためデハ7600形式を電装解除するなどの変化が出ます。平成6年には池上線のワンマン運転実施のため、その対応工事と車輛更新が実施されます。大きな変化として、運転台計器盤が1000系に準じた新規のものとなり、マスコン、ブレーキ弁ハンドルが個別のツーハンドル式から一体となったワンハンドル式になった事とワンマン運転に対応した機器が設けられました。
編成でも中間に位置していた先頭車の運転台が撤去され、そこに車椅子スペースが設けられました。前面の「ダイヤモンドカット」と呼ばれる独特の前面形状は残されたままとなっています。改造後、デハ7670形式と形式変更が行われ、デハ7651、デハ7652の2両は先頭車の改造であるため、デハ7681(写真右)、デハ7682に改番しています。
最後は池上線、東急多摩川線で活躍し、後継の新7000系に仕事を譲り平成27年に引退しました。

7700系

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昭和62年に7000系(初代)を改造した通勤形電車です。昭和37年に登場したオールステンレスカーのパイオニアである7000系は、その後登場する7200系などの車輛が冷房化される中、冷房装置の電源が確保できないことや自重の増加に台車が耐えられないことから冷房化が行われていませんでした。加えて、電装品や車内アコモの老朽化、陳腐化が進んでいました。
このまま廃車するか否か、判断が求められました。車体はステンレス製であるため、外見はまだまだ使用でそうです。そこで、内部を調べてみよう。という事で、構体の接合部などを調査をした所、腐食も無く溶接部分も強度が保たれている事から、骨組みと外板を流用し、台車や電装品、内装を総リニューアルし、冷房改造を行って登場したのがこの7700系です。構体は50年以上使用し続けています。
電装品はほぼ全てが交換され、制御方式をGTOサイリスタ素子を用いたVVVFインバータ制御方式に、ブレーキ制御方式は途中の編成から電気指令式空気ブレーキ方式に変更するなど大胆な改造となりました。台車は種車の台車は自重増に対応できないため8000系に使用されているものへ交換されています。
運転台もツーハンドル式からワンハンドル式に変更されるなど、一気に近未来の電車へと変貌をしました。でも、外観は7000系と同じで、編成を短くした。という感じでもありました。
こうして、4両編成と2両編成が誕生し、目蒲線向けの車輛とする予定でしたが4両編成にホームが対応しておらず、それまでは大井町線で活躍。その後に目蒲線で活躍を始めます。
平成6年に変化が訪れます。平成10年よりワンマン運転を実施する池上線の7200系を置換えるため、3編成の中間付随車サハ7950形式を抜き取って、転用しました。この余剰となった中間付随車を試験を兼ねて活用する事となり、東急では初めてのIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御方式、シングルアーム式パンタグラフを装備した7915編成(写真右)が誕生しました。前面は1000系に似たスタイルが特徴でした。このVVVFインバータ制御は3群で構成され、通常は走行用に2群、1群をSIVに使用する「デュアルモード」方式を採用しており、故障時の冗長化を図っています。
平成12年に目蒲線が目黒線、東急多摩川線に分割される事になり、7700系は東急多摩川線での活躍となり、余剰車が発生し十和田観光電鉄に譲渡された車輛以外は廃車となりました。その後、7000系(2代)や1000系1500番代に置き換えられる事となり、まもなく終焉を迎えます。

8000系

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昭和44年に登場し、平成20年まで活躍した通勤形電車です。この後に登場する8500系、8090系、8590系の3系列も8000系グループ(機器などがほぼ同じ)として大量に増備が行われ、東急の主力車輛として活躍をしています。
昭和37年に登場した7000系は米国バッド社のライセンスによってオールステンレス車として登場しました。この8000系はその第2弾として、輸送力増強と新玉川線(現:田園都市線)で使用する事を目的に、初めての20m級両開き4扉車として登場しました。このスタイルは以降の標準スタイルとなります。
機器類などは極めて先進的で、制御方式は回生ブレーキ付他励界磁チョッパ制御方式を世界で初めて実用化しました。また、制御する主幹制御器も日本では初めての、マスコンハンドルとブレーキ弁ハンドルを一体化した「ワンマスコンハンドル」が採用されました。人間工学に基づいて、手前に引くと力行(加速)、奥に押すと制動(ブレーキ)という方法が採用されました。これは、人間が直ちに止めなければならないという事態が発生した時にとる行動で最もし易い方法。との事です。以降、ワンハンドル車は輸入車を除いて、この方法(構造)となっています。ブレーキ制御方式はこれも最先端となる全電気指令式電磁直通空気ブレーキ方式を採用。補助電源装置にもメンテナンス軽減のため静止型インバータ(SIV)を採用しました。
東横線、大井町線用に26編成がつくられ活躍。平成13年より後継車輛の導入により廃車が始まり、平成20年に引退しました。

8500系

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昭和50年に登場した通勤形電車です。8000系の改良型に当たる系列で、田園都市線、帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)半蔵門線相互乗入れ用車輛とした系列となります。
昭和44年から建設中であった地下鉄線となる新玉川線(現:田園都市線渋谷~二子玉川駅間)向け車輛として地下鉄線火災対策基準である「A-A基準」に適合した8000系を登場させ、東横線に投入しました。その後、半蔵門線と乗り入れる事となり、東急と営団共通の車輛規格がつくられました。これが8500系です。8000系のマイナーチェンジ車とでも言いましょうか、登場時は8000系と呼ばれ、数が増えるとやがて8500系と呼ばれるようになりました。
車体では、8000系より高運転台構造としており、正面窓が小さくなりました。また、路線の識別として、前面に東急のシンボルカラーと警戒色を兼ねた赤帯が配されました。当初は小田急9000形によく似たデザインが計画され、9000系を予定していましたが、最終的には切妻形状としています。
車体材質は7000系から採用しているオールステンレスで、昭和56年以降に製作された車輛はバッド社の技術をもとに、東急車輛が開発した軽量ステンレス車体とし、軽量化が図られました。
制御方式は8000系と同じ、界磁チョッパ制御方式で、主要機器もほぼ同じですが、半蔵門線での急曲線、急勾配に対応するため、また車輛故障時に救援するために電動車比率を向上する必要があり、8000系では6両編成時4M2Tでありましたが、8500系では5M1Tとし、10両編成時では8M2Tと十分に対応できる性能を確保しました。
界磁チョッパ制御方式の8500系ですが、平成元年にVVVFインバータ制御への更新、新型車輛導入(2000系)に向けた試作車として、GTO素子を用いた試作VVVFインバータを搭載した試作車が改造によって登場し、8642編成に組み込まれました。さらに平成3年に最終増備車が量産型のVVVFインバータを搭載して登場し、こちらも8642編成に組み込まれ、界磁チョッパ制御、試作VVVFインバータ制御、量産VVVFインバータ制御と1つの編成で3つの異なる制御装置を搭載する珍編成が誕生しました。

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※異なる制御装置を組み込んだ8642編成(左)、試作VVVFインバータ制御装置を搭載したデハ8799号車。(右)
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8500系では車輛番号にも特徴があります。こんなに多く増備されるとは考えていなかったのでしょう。デハ8700形式、デハ8800形式では8799、8899まで番号を付けました。この次は100番目となり、形式番号を重ねる訳にもいきません。では5桁にするつまり、18700や18800とする方法があります。しかし、車輛を管理するシステムが4桁で管理されていたため、0700~と0800~という変則番号が付けられました。
平成15年に半蔵門線が水天宮前~押上駅間が延伸し、同時に東武鉄道伊勢崎線、日光線との相互直通運転が開始されました。これにより8500系は東武日光線南栗橋駅まで乗入れるようになります。
この際、全車に東武鉄道の保安装置を装備させる形を予定していましたが、バリアフリー対応を行うため新5000系で対応する事になりました。これにより、一部の車輛は大井町線へ転属する事となり、正面の帯色を赤から黄色に変化するグラデーション帯に変更し、誤乗防止ステッカー(路線名)を貼り付けて活躍する事になりました。(写真上、右)

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一方、残った編成のうち経年の高い初期車とVVVFインバータ制御試験編成の8642編成は東武直通車とはしませんでした。識別に貫通扉に丸で『』の文字が書かれたステッカーを貼っています。
平成14年まで400両が在籍し、新5000系が登場すると廃車が始まりました。また、地方私鉄への譲渡もあり数を少しずつ減らしてきています。
★塗装変更車
・TOQ-BOX虹色装飾

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TOQ-BOX(トークボックス)(東急の広告貸し切り列車の名称)の装飾を施していたもので、側面にも赤い帯が巻かれました。前面、戸袋部分に虹、楽器、音符のイラストを描いていました。写真左はTOQ-BOXとして運行していたもので、前面の行先表示器がフルカラーLEDになっていました。現在は右の写真のように赤い帯だけが残され、行先表示器は3色LEDに変更されています。
・TOQ-BOX青色装飾

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前面、側面共に青色の帯になったもので、先頭車には7色のシャボン玉が描かれているのが特徴でした。(現在は青色の帯のみ)写真右は東急ケーブルテレビ(現:イッツ・コミュニケーションズ)の広告電車として使用されていたものです。
・伊豆のなつ号

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平成18年より車体広告編成「伊豆のなつ号」となったもので、ハワイアンブルーの帯が巻かれています。この伊豆のなつ号は東急グループの伊豆急行、伊豆半島の観光PR電車を言います。現在はキャンペーンは終了していますが、色はそのまま残っており、目立つ存在となっています。

8090系・8590系
昭和55年に登場した通勤形電車で、8000系の最後に登場した系列となります。8090系は8000系で試作された軽量試作ステンレス車であるデハ8400形式(後にデハ8200形式に変更)の実績をもとに、従来のオールステンレス車よりも車体で約24%(約2t)、編成全体では8%の軽量化を果たした、日本では初めてとなるステンレス軽量車体を採用した車輛です。90両がつくられました。

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20m級片側4扉構造の車体で、東急のステンレス車では初めて赤い帯を2本側面に配しました。前面は当初は丸みを持たせたデザインが考えられていましたが、コスト面から3面折妻形状となっています。非貫通構造で、前面ガラスは当初は3枚連続の固定(写真左)でしたが、後に破損時の交換を容易にするため個別の固定に変更されています。車体断面はコルゲートを無くしており、歪みを防ぐ目的で上部を内側に傾斜させ、裾を絞った卵形となっています。(写真右参照)

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8090系は東横線に投入され、1次車は7両編成でした。その後2次車が8両編成で登場し、1次車の8両編成化も行われました。増備を進めていくと下2桁である90番を使い切ってしまったため80番代を付けています。最終増備となる4次車では機器配置の見直し、低運転台から高運転台に変更、編成の変更が行われました。外観では初期の車輛は一体化した前部標識灯と後部標識灯のケースの位置が低く、4次車以降は少し高い位置になっています。
東横線で活躍していた8090系ですが、平成17年より大井町線へ転属する事になり、編成を5両編成としています。前面は赤から黄色に変わるグラデーション帯に変更、列車種別表示器及び列車番号表示器の外側に設置されていた急行灯はLED化の際に廃止し、塞いでいます。編成短縮化により発生した中間車は廃車となりました。
活躍は長く続かず、平成21年より廃車が始まり、平成25年に全車が廃車となり8090系は系列消滅しました。

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昭和63年、横浜高速交通みなとみらい線との直通運転に備えるために、編成の出力を上げる、つまりM:T比を高くする(5M3Tから6M2Tへ)編成変更を行い、あわせて地下鉄乗入れのために前面に貫通扉を備え、かつ制御電動車とした車輛が10両つくられました。(デハ8590形式、デハ8690形式5両ずつ)この制御電動車を組み込んだ8両編成を8590系として区別をしています。自動放送装置など9000系に準じた構造で、8500番代となった理由は先頭車が電動車を意味する8500系の要素が入っているからです。
平成16年より計画通り、みなとみらい線の直通運転に活躍し、後継車の登場で大井町線に5両化の上転属、また10両編成に増強し田園都市線に転属しました。現在は後者の田園都市線で2編成が活躍しています。東武鉄道へは乗入れが出来ないため「」マークを掲出しています。

9000系

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昭和61年に登場した通勤形電車です。21世紀を迎えるにあたり、より良い居住性、乗心地向上、省エネルギー、メンテナンスフリーをコンセプトに開発されました。
車体は軽量ステンレス製20m級片側4扉構造で、将来の営団(現:東京メトロ)南北線、都営三田線への乗入れも考えられていたため、前面には非常用貫通路が設置されています。前面スタイルにはパノラミックウィンドゥを使用するなどのデザインが計画されていましたが、切妻スタイルという形におさまっています。また、ステンレスはダルフィニッシュ(艶消し)仕上げとし、前面及び側面にコーポレートカラーの赤い帯を巻きました。9001編成(写真左)は先行量産車で、制御装置形式などが量産車と異なっています。また、3次車以降(9008編成以降)は外板幕板と腰板を溶接構造からプレス加工構造に変更しています。
東横線向けは4M4T8両編成、大井町線用は3M2Tの5両編成となります。前者の東横線は平成25年に東京メトロ副都心線との相互直通運転に伴い撤退しています。
乗務員室は操縦性向上が行われており、T字形状のデッドマン装置付ワンハンドルマスコン、表示灯のLED化、ウィンドゥウオッシャー付電動式ワイパーを初採用、電気笛などを設置しています。
サービス面でも見直しが行われており、着席幅の拡大、7人掛け座席には中間に仕切り板を設け、着席定員を守り易くしています。車端部には3人掛けのロングシートに加え、クロスシートを設置しました。平成12年に制定された交通バリアフリー法では、車椅子スペースを3人掛けロングシートを撤去し、設置しています。車内放送は初めて、音声合成式自動放送装置が設けられ、以降の標準装備となっています。
制御方式は量産車では初めてとなる、VVVFインバータ制御方式、かご形三相誘導電動機を採用しました。ブレーキ制御方式は回生ブレーキ付電気指令式空気ブレーキ(T車遅れ込め制御機能付)としています。
東横線向けに登場した編成は、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅まで様々な列車に活躍しました。その後、後継車の投入により大井町線に減車の上移動しています。
大井町線向けに登場した編成は、当初はパンタグラフが菱形でしたが、検車区がないため、降雪時の着雪に対応が難しいことから、着雪し難いシングルアーム式パンタグラフに換装されています。

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車体装飾は東横線時代にいくつか行われていました。写真はTOQ-BOXに用いられ、終了後前面にシャボン玉だけ残されていた頃のものです。

1000系

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昭和63年に登場した通勤形電車です。9000系の設計を基本に18m級片側3扉構造のステンレス車としたもので、全長や扉など数で異なる部分がありますが、使用する機器類や部品は共通のものとし、メンテナンスコストを低く抑えています。外観の識別として、おでこの部分(種別表示器、行先表示器、列車番号表示器)が黒く塗られています。
東横線の帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)日比谷線の乗入れ車輛として製作された7000系(初代)を置換える目的のグループと池上線の7200系を置換える目的としたグループに分けられます。
制御方式はGTOサイリスタ素子を用いたVVVFインバータ制御方式で、制御装置は世界で初めてヒートパイプ冷却式を採用し、その後に登場する電車に普及しています。
平成2年には当初、目蒲線向けはありませんでしたが、東横線と目蒲線の共通の予備編成が4両編成が新製される事になりました。この編成では中間に連結される先頭車の貫通扉が中央に位置しており、他車とは外観が異なります。東横線での運用が終了した後は、貫通扉の位置を合せるため編成を変更しています。

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池上線に投入された車輛は2M1Tの3両編成で登場し、東横線仕様とは異なる事から1000N系とも呼ばれています。
現在は東横線からは撤退し、池上線、東急多摩川線で活躍をしています。一部の車輛は地方私鉄の車輛として転出をしています。
◎1000系1500番代

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東横線と日比谷線の相互乗入れ用に使用されてきた1000系を、池上線、東急多摩川線に転用したもので、平成26年から改造が始まりました。編成を短縮化する際に余剰となった中間車の電装品を制御車に取り付けて電動車化改造を行ったほか、車内アコモや塗装と7000系(2代)と同じ緑系にしています。この他、ワンマン運転を行う事から必要な機器を搭載しています。戸袋部には三日月のマークがアクセントとして加えられています。この他、列車種別表示器は廃止され、この部分に車番を表す場所にしています。
●車体装飾

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平成28年に登場したもので、かつて活躍したデハ3450形に施されていた東急旧標準色になって登場しています。

2000系

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平成4年に登場した通勤形電車です。田園都市線輸送力増強を目的に9000系を基本として設計された20m級片側4扉構造の車輛です。田園都市線及び半蔵門線のみの運用で、東武鉄道への乗入れは行われていません。これは、編成が3編成と少なく、教習の手間がかかるためで、非乗入れ車である事を示す「」マークが付けられています。
9000系の半蔵門線乗入れ用とも言える系列で、機器類など多くの部分が共通化されています。
東武鉄道へ乗入れのない運用で活躍をしていますが、その運用が少なく、編成も少ない事からちょっとしたレア系列となっています。
9020系

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平成30年に中間付随車を除いた8両(1編成あたり)に対し、内装のリニューアル及び機器更新が施されました。車内での火災対策や空調装置、腰掛モケットや床敷物、化粧板などの交換が実施されています。機器ではメンテナンスフリーの三相誘導電動機(主電動機)の交換、VVVFインバータ素子をSiC-MOSFET素子に変更しました。
僅かな期間、田園都市線で活躍した後、5両編成に大井町線へ転属する事になりました。当初は2000系のままでしたが、平成31年に9020系に系列変更し、2000系は消滅しました。現在、3編成全てが大井町線で活躍しています。

3000系(2代)

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平成11年に登場した通勤形電車です。翌年に控えた目黒線と帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)南北線、東京都交通局三田線との相互乗入れ用として登場しました。もともと9000系を改造して対応する予定でしたが、ホームドアに対応する改造や南北線内の急勾配に対し、出力不足が考えられたため新製車となったものです。東急ではかつて3000系を名乗る系列があったため、2代目となり新3000系とも呼ばれています。
コンセプトは「すべてにやさしく美しい車輛」で、20m級片側4扉構造の車体で、ビードの無い軽量ステンレス鋼製で、全面ダルフィニッシュ(艶消し)仕上げとなっています。コーポレートカラーの赤い帯を中心にアクセントに紺色と白色の帯が配されています。前頭部はFPP成形品で、曲線を多用したデザインとして、パノラミックウィンドゥが前面窓に採用されています。非常用貫通扉はオフセット配置で、プラグドアとなっています。
サービス面では東急の車輛では初となる集中式冷房装置を採用しました。車内はローズレッド系のものとし、ロングシートとなっています。この他に車椅子スペースの設置があります。また、車内で異常が発生した場合、乗客が扱う非常通報器では乗務員と相互通話が可能なタイプとし、非常通報器を扱った後に乗務員が応答しない場合は、列車無線を介して輸送指令所へ連絡するシステムとなっています。
制御方式はIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御方式。ブレーキ方式は回生ブレーキ併用デジタル指令アナログ変換式全電気指令式ブレーキ方式(T車遅れ込め制御付き)となっています。常用ブレーキを手動で操作する際は7段ですが、ATO運転時は15段の多段制御になります。
現在は3M3Tの6両編成(1次車(量産先行車)は8両で登場し東横線で活躍後、6両編成化。)ですが、将来の8両編成化にも対応しています。

5000系(2代)
老朽化、陳腐化の進む8000系、8500系などの在来車の置換えを目的に平成14年に登場した通勤形電車です。昭和29年に登場し、昭和61年まで活躍した初代5000系と区別するために新5000系と呼ばれる事もあります。
主力車輛であった8000系及び8500系は新造費が高かったため、40年から50年程度使用する予定でした。しかし20年を経過すると老朽化や陳腐化が見られ、試験的に改修工事をしてみた所、コスト面などの問題が出てきました。
お隣のJR東日本では国鉄より継承し、老朽化の進む大量の車輛を早急に置き換えるべく『重量半分・価格半分・寿命半分』をコンセプトに設計された209系を東急車輛製造などと共同開発し、平成3年から投入を開始していました。東急でも目黒線に向けに登場させた3000系では、車体構造など一部に209系を参考に設計されていました。
5000系では209系の改良系列であるE231系を基本とて構体設計を共通化し、主要機器は3000系を基本としました。3000系と比べると製造コストは削減されました。また、平成15年に日本鉄道車輌工業会が制定した通勤・近郊電車の標準仕様ガイドラインに準拠した設計を行っています。(5101編成は除く。)
車体はE231系を基本とした軽量ステンレス製ですが、地下鉄に乗り入れるため裾絞りは無く、プラットホームとの段差を解消するため床面高さを低くしています。前頭部はFRP成形品で、後退角と前後方向に緩やかな傾斜を設け、切妻車輛と比較して地下駅に進入する際の列車風を低減しています。
車内はE231系を基本としたオールロングシート仕様ですが、複合材料を使用したものを新たに設計しており、様子が異なります。乗降扉には初の液晶ディスプレイ式案内装置が設置されており、TOQビジョンや次の停車駅などの表示が行われます。
5000系はいくつか種類が誕生し、田園都市線(一部は東横線)向けに5000系、東横線向けに5050系、目黒線用の5080系があります。
●各系列の簡単な概要
・5000系

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主に田園都市線向けのグループで10両編成です。一部の車輛は東横線で活躍をしています。こちらは8両編成です。ラインカラーは田園都市線用がライトグリーン、東横線用が桜色(ピンク)です。田園都市線用は半蔵門線、東武鉄道へも乗入れを行っています。車内の配色は青系としています。

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田園都市線用では乗降時間短縮、混雑緩和を目的に平成17年より6扉車を投入しました。10両編成のうち、特に混雑の激しい号車へ連結され10両編成中2両を6扉車とし、登場した18編成のうち17編成に順次組み込む計画をしました。組み込まれた編成の先頭車には識別用の6DOORSと書かれたステッカーが貼られています。平成21年からはもう1両6扉車を追加し、10両編成中3両が6扉車となりました。すでに10両編成で登場した編成からは4扉車の余剰車が生まれ、この車輛は新製する編成に組み込みました。このため、行先表示器などが字幕式とLED式が混在する編成もあります。
東急電鉄では2020年(平成32年)までにホームドアの設置を発表したため、6扉車は廃止される事が決定されました。このため、6扉車をもとの4扉車に戻した編成もあります。
・5050系

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東横線向けのグループで平成16年に登場しました。ラインカラーは桜色(ピンク)です。東横線のほか、東京メトロ副都心線、西武鉄道、東武鉄道に相互乗入れを行います。編成は8両編成で、前面に「8CARS」のステッカーが貼られています。車内の配色はパステル調です。
・5050系4000番代

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こちらも東横線向けのグループで平成23年に登場しました。10両編成を8両編成と区別するために4000番代に区分されており、車体番号も4001~の表記となっています。5050系とは編成が異なるだけで基本は同じです。また、編成の呼び名が変わり、第1編成~となりました。

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4000番代は10編成製作されており、その最後の第10編成は渋谷ヒカリエ開業1周年記念特別列車「Shibuya Hikarie(シブヤ ヒカリエ)号」として登場しました。編成構成は従来と同じですが、車体幅を5000系、5080系と同じ2800㎜としています。車体は「渋谷ヒカリエ」をイメージした金色をメインとし、「渋谷ヒカリエ」など渋谷を代表するビルの外観が描かれています。車内はモケットにランダムストライプと色とりどりの矩形模様が散りばめられ、床敷物にはラメを練り込んで多様性を表現。吊り手(吊り革)はクリア・シック・アクティブの3パターンを用意し、クリアは紺と白の交互配置、シックは紺一色、アクティブは萌黄、茶、黒、灰、緑、紺、白、赤を配置し、側天井部に様々な色の板を取り付けて、賑わいのあるデザインとしています。また、編成中1ヶ所の手すりにキラリと光るハートマークを刻印し、「見つけると幸せになれるかも。」というメッセージを込めてエンターテインメント性を持たせています。ご乗車になった際に探してみて下さい。
・5080系

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目黒線向けのグループになります。ラインカラーは紺色。東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道、都営地下鉄三田線に相互乗入れ用として平成15年に登場しました。編成は6両編成で、車内はローズピンク系となっています。(床は青色です。)制御機器では5000系、5050系ではIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御方式でしたが、5080系では高耐圧、低損失化を図ったIEGT素子(注入促進型ゲートトランジスタ:Injection Enhanced Gate Transistor)を使用したVVVFインバータ制御方式となっています。また、停止用回生ブレーキに加えて、0km/hまでの全電気ブレーキ機構を初めて採用しました。
●製造年次による違い
・1次車(5101編成)

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田園都市線の東武鉄道へ相互直通運転を開始するのに伴い、量産先行車として5000系10両編成1本が登場しました。(写真は5101編成)
・2次車(5102~5106編成、5181編成)

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通勤・近郊電車の標準仕様ガイドラインに準じた設計となり、車体幅などの細部の寸法が異なります。屋根は1次車では水はけを比較するためビード屋根とフラット屋根を採用していましたが、2次車からはビード屋根になっています。目黒線向けの5080系が新しく登場します。(写真は5105編成)
・3次車(5151~5153編成、5182編成)

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東横線向けの5050系が新しく登場しました。車体番号の前にラインカラーを表した■が追加されました。(1次車及び2次車も後に貼り付けられています。)(写真は5152編成)
・4次車(5107編成(9両編成)、組換え用6扉車、5154~5158編成)

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5000系では車内の床や座席を5050系と同じデザインにしたほか、火災対策としてポリカーボネート(熱可塑性プラスチックの一つ。)からアルミに変更しています。
6扉車を組み込むため、編成の位置が変わる車輛に対して車椅子スペースやフリースペースの設置が行われました。また、6扉車組み込みにより捻出された車輛は新造される編成へ組み込まれています。このため、10両編成ではなく、必要な両数だけつくられる事になりました。(写真は5157編成)
・5次車(5108~5110編成(9両編成)、組換え用6扉車、5159~5165編成、5183編成、5184編成)

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車内の設備などを中心に改良が行われました。(優先席のつかみ棒の形状変更など)また火災対策対応として、車内貫通扉が自動で閉まる傾斜式に変更しています。(写真は5184編成)
・6次車(5111~5114編成(9両編成)、組換え用6扉車、5166~5168編成、5185~5187編成)

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外観では乗降扉の窓が複層化されて、窓周りの凹面がなくなりました。扉の内側は化粧板仕上げとなり、扉同士が当たる部分、靴擦り部に黄色のマーキングが施されています。(写真は5113編成)
・7次車(5115・5116編成(9両編成)、5117・5120編成(10両編成)、組換え用6扉車、5188~5190編成)

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外観では排障器(スカート)が強化型に変更したほか、電動空気圧縮機をスクリュー式からスクロール式に変更しました。乗降扉のそばにドア開閉表示灯が設置されました。(写真は5120編成)
・8次車(5118・5119編成(6両編成)、5121編成(10両編成)、5122編成(7両編成)、5170~5172編成(6両編成)

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7次車との大きな変更はなく、東横線向けの5000系は余剰となった中間車を組み込むため新製数が少ないのが特徴です。(写真は5118編成)
・9次車(5169・5173・5174編成(8両編成)、5170~5172編成(6両編成)、サハ5404)

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5050系では東京メトロ副都心線に乗り入れるため、ワンマン運転対応機器や車上ITVモニター画面の設置など大幅なレイアウトの変更が行われています。(写真は5174編成)
・10次車

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5050系の派生番代である4000番代が登場しました。(写真は第1編成)第1編成から第4編成までは9両が新製でつくられ、1両を5000系で出てきた中間付随車を電装化改造して改番し、編入をしています。

6000系(2代)

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平成20年に登場した通勤形電車で、大井町線の急行列車専用として活躍をしています。かつて6000系が存在していた事から、新6000系とも言われています。6両編成6本がつくられました。
5000系(2代)の派生系列の一つで、「人と環境にやさしい車輛」をコンセプトに5000系と共通の部材を使用したステンレス製車体をもつ電車です。先頭車前面はFRP製で、特徴あるくさび形をしています。
配色はこれまでの5000系列とは異なり、前面と側面窓上から屋根部にかけてコーポレートカラーである赤色を配し、色調をカーマイン(紅色)やマルーンに近いものとしています。側面にはラインカラーの橙色が配されていますが、裾部の帯に加えてスピード感を増すために、1両あたり2ヶ所前面形状と同じ「くの字」形が大きく描かれており、3号車と4号車を境に両端に向かうデザインとなっています。
車内はロングシート仕様で、モケットは座面部が橙色、背もたれを赤や橙色を配したモザイク柄としています。ユニバーサルデザインを多く取り入れており、手すりを通路部に弓状に出っ張らせた形状、つり革位置を低めに設置し、子供や高齢者、小柄な旅客がつかまり易いようになっています。荷棚も同様に低くしています。客室窓ガラスは熱線吸収及びUV(紫外線)カットのもので、5000系列同様にカーテンは省略されています。
大井町線の大井町~溝の口駅間の急行列車に使用されるほか、中央林間駅発や長津田発着の運用もあります。

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写真は平成31年より大井町線で実施されている「QSEAT(キューシート)」を組み込んだ編成です。先頭から3両目のオレンジ色の車輛がQSEAT車です。
QSEATとは、平成30年から実施されている有料座席指定サービスで、平日の19時台から23時台にかけて田園都市線に直通する急行列車に対して、座席指定サービスを行っています。(有料)この座席指定を行うにあたり、専用とする車輛の座席構造をデュアルシート(ロングシートからクロスシートに転換可能)としたもので、6000系(2代目)では新たに車輛の新造を行っています。

7000系(2代)

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平成19年に登場した通勤形電車です。5000系列の派生系列の一つで、池上線、東急多摩川線向けに18m級片側3扉構造の軽量ステンレス車体としました。かつて7000系が存在したことから、新7000系とも言われています。
当初は3両編成17本をつくる計画でしたが、東京メトロ日比谷線との相互直通運転の取り止めにより、余剰となる1000系を改造した車輛を導入する事で在来車の置換えをする事となり、7本が登場した時点で増備は中止されています。
基本は5000系列と共通の部材を使用しており、主要機器の二重化を図っている点も同じです。前面形状は流線形を採用し、車体配色は無塗装の外板に濃淡の緑色をデザインしており、屋根部は緑色となっています。
車内は「居心地の良い空間の提供」をコンセプトとしており、木目調のものが採用され、5000系列と共通のペーパーハニカム材にアルミ板と高硬度アートテックやデコラ化粧板を貼り付けた複合材料を使用しています。座席はロングシートを基本としていますが、中間車のデハ7200形式の車端部のみ2+1列のボックスシートが設置されています。
制御方式はIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御方式で、ブレーキ方式は回生ブレーキ付電気指令式空気ブレーキ方式としています。主回路システムと補助電源の冗長化を図るため、VVVFインバータとSIVを一体化したデュアルモード構成としています。M:T比は駅間が短く、加減速の多い池上線、東急多摩川線で使用される事から2M1Tとなっています。
登場した頃(写真左)と最近(写真右)では、前面にある3つの取っ手が無くなっている変化が見られます。

2020系

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平成30年に登場した通勤形電車です。2020年(令和2年)に東京オリンピックが開催される事、また東急が創業100年を迎えるのを機に、沿線の町や駅と調和する事を目的に登場、形式の由来としました。
デザインは多摩田園都市など「街づくり」に起源をもつ同社らしさを意識したもので、沿線の街や駅との親和性を高め、利用者に親しみをもってもらうと同時に「これまでにない新しさを感じる外観、車内空間」を目指しており、エクステリアデザインのコンセプトカラーに「INCUBATION WHITE(美しい時代へ孵化(ふか)していく色)」を使用し、先頭車の前面から側面上部には導入線区の路線カラー(田園都市線は緑色)を配置しています。また、丸みのある先頭形状は柔らか味のある顔をイメージしたものとしています。
車体は総合車両製作所のブランドであるsustina(サスティナ)を採用。レーザー溶接の積極的な採用、骨組みの軽量化などで従来車よりも軽量化を図ったほか、オフセット衝突時の対策も万全に行われています。
車内は前述のコンセプトに従い、親しみやすさ、心地よさをデザインしたものとしており、座席はハイバック仕様のロングシート、車椅子及びベビーカー用のフリースペースを各車輌に設置しています。側窓上部及び妻面引戸上部にはデジタルサイネージ(電子看板)が設置されているほか、乗降扉上部にも車内案内装置が設置されています。この他、防犯カメラも設置されています。
制御関係ではJR東日本のE235系などで実績があるINTEROSを採用しているのが特徴の一つにあり、運転台の計器や表示灯類の集約化を図っているほか、ブレーキ制御などに使用されています。
制御装置はSiC-MOSFETとSiC-SBDを組み合わせたフルSICパワーモジュールを用いた2レベル式VVVFインバータ制御方式で、1台の制御装置で主電動機4台を制御する1C4M方式です。
制御装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ制御方式で、INTEROSの編成ブレーキ力管理システムからの指令により、編成全体の応荷重制御、電空協調制御、回生ブレーキを優先させる遅れ込め制御を行い、省エネルギー運転と制輪子の摩耗量低減が図られています。回生ブレーキが安定しない降雨時や降雪時に安定した制動力が得られるようにしているほか、降雪時の減速度が低下した場合のバックアップとして非常ブレーキ時の回生補足機能が新たに追加されています。これは、通常非常ブレーキ時は全て空気ブレーキで作用し、回生ブレーキは使用されませんが、INTEROSにて減速度の演算をし、ある程度減速度の低下が見られた場合に回生ブレーキで補助するもので、降雪時においての更なる安全性を高めています。

6020系

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平成29年に登場した大井町線用の通勤形電車。2020系を大井町線用にしたもので、編成は7両編成となっています。主な仕様は2020系と同一ですが、ラインカラーはオレンジ色と異なっているほか、大井町駅方から3両目は「QSEAT」車(写真右)で、外観はオレンジ色、車内はデュアルシートの構成となっています。また、車内に置いてはデジタルサイネージ(電子看板)が省略されているなど違いがあります。

3020系

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東急と相模鉄道の相互乗入れに伴い、新しく用意される新横浜線開業時用の車輛として平成31年(令和元年)に登場した通勤形電車です。
相互乗入れが開始されると8両編成となりますが、現在は目黒線などで6両編成で活躍しています。2020系の派生系列ですが、運用される線区の全ての駅でホームドアが完備されている事から、車輛間の転落防止幌が省略されているほか、ホームドアに対応した設備の変更やワンマン運転もあるため、関係する機器の装備などが行われています。

300系
平成11年に登場した世田谷線用の軌道車輛です。老朽化した車輛の置換え、バリアフリー化、サービス向上を目的に2車体3台車の連接車で、10編成がつくられました。東急の連接車では「ペコちゃん」の愛称で親しまれたデハ200形以来となります。
「やさしい空間づくり」をコンセプトに、利用者の要望、乗務員や検修社員からの作業性や操作性を反映させた設計となっています。車体色は編成ごとに異なっているのが特徴の一つです。
車体はセミステンレス構造で、腐食が考えられる箇所にステンレスを使用し、その他の部分を鋼製としています。前面部は大きな1枚ガラスで、視界確保のため前面ガラスを側面まで回り込ませています。客室窓は下段を固定窓、上段を内開き式とし、熱線吸収ガラスを採用し、カーテンを省略しています。車内は進行方向に向かって1人掛けの座席が設置されており、スタンションポール(立って乗車する時のつかみ棒)があります。車椅子スペースも設置されており、この場所の座席は折り畳み式です。また、運賃箱とPASUMOの読み取り機があり、乗車時に運賃を払う仕組みとなっています。
制御方式はPWM方式のVVVFインバータ制御方式。ブレーキ方式は回生ブレーキ、発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキです。パンタグラフは着雪防止対策としてシングルアーム式を搭載しています。
台車はデハ70形及びデハ80形に称されていたものを再利用(310編成は新製)しているのも特徴の一つです。

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左から302編成モーニングブルー、303編成クラシックブルー、304編成アップルグリーン
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左から305編成チェリーレッド、306編成レリーフイエロー、308編成サンシャイン
※残りの編成も順次撮影を予定しています。

7500系

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平成24年に登場した東急の事業用車です。東急の所有する世田谷線を除く、営業路線の軌道検測や電気検測など総合検測を行うほか、長津田車両工場への車輛の回送など用途に活躍しています。
先代となる事業用車7200系のデヤ7200形及びデヤ7290形は製造から40年以上活躍しており、置換えの時期を迎えていました。その置換えとして登場したのが本系列で、デヤ7500形(写真左)とデヤ7550形(右の写真、奥の車輛)がつくられました。両形式とも両運転台構造で、1両の単独で運転できるほか、中間に回送車輌を組み込んだ5両編成まで運転が出来ます。車輛には愛称が付けられており、「TOQi(トークアイ)」と命名されています。この愛称は東急では初めての一般公募によるもので、東急と親しみのある「TOQ(トーク)」に検測を意味する「inspect」の頭文字、さらに目を意味するeyeや愛の意味も込められています。
車体は池上線、多摩川線用の7000系をベースにした軽量ステンレス構造で、側構体はやや内側に傾斜した台形断面構造となっています。また、前面は三面折構造のシンプルな貫通構造を有したものとなっています。
デヤ7500形は動力車、デヤ7550形は電気検測車で、側面は片側に4枚の窓が配置され、出入口用のドアが設置されています。デヤ7550形は屋根部に架線観測用ドームが設置され、前後を低屋根構造としています。塗装は先進性、安心感、スピード感、躍動感を表現したもので、同社のコーポレートカラーである赤色をメインカラーとし、デヤ7500形は精密をイメージした「青色」、デヤ7550形は電気をイメージした「黄色」が配されています。
写真右の中央に連結されている車輛はサヤ7590形軌道検測車で、デヤ7200形、デヤ7290形に組み込んで使用する目的で平成10年に登場しました。
ステンレス鋼製で、当時の検測車の塗装となっています。3台車方式が外観の特徴で、渦電流式変位検出器やガードレール検出器など各種の検出器が装備されています。
通常は軌道検測車も連結した3両編成で運転されますが、架線検測のみの場合は2両編成で運転されています。

デハ200形

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デハ200形は田園都市線の前身にあたる玉川線(渋谷~二子玉川園駅(現:二子玉川駅)及び三軒茶屋~下高井戸駅を結んでいた路線(軌道路線)。この他に支線がいくつかあり、三軒茶屋~下高井戸駅間は世田谷線に改称し、現存しています。)で活躍していた電車(路面電車)で、昭和30年に登場しました。当時の最新技術を盛り込んだ設計が特徴で、画期的な超低床構造2車体連接車となっており、玉川線が廃止されるまで活躍しました。
車体は前年に登場した東横線デハ5000形のモデルとしたもので、高抗張力鋼を使用し、旧日本海軍の航空機技術を応用したモノコック構造、ボディマウント構造を採用。大幅な軽量化を実現しています。卵型断面であるため、車体とホームに隙間が出来てしまう事から、可動式のドアステップが設けられています。前面はデハ5000形と同じく、国鉄モハ80系電車の影響を受けており、2枚窓の流線型デザインとなっています。
超低床構造を実現した1つに車輪(台車)があります。直径510㎜の小さなもので、海軍の鋳造設備を利用し、特殊鋳鋼による一体鋳造で実現しています。この他にも航空機設計技術の手法を用いて徹底した軽量化が図られています。
制御方式は抵抗制御方式ですが、ここにも最新技術が盛り込まれています。乗客数に応じて主電動機の限流値を自動可変させる事で加速度を制御する応荷重装置を装備するなど、加速をスムーズにするために工夫が施されています。ブレーキ制御方式は東急では初めてのHSC電磁直通ブレーキを採用しています。
利用者からは「ペコちゃん」(不二家のマスコットキャラクター)というあだ名が付けられていましたが、個性的な下膨れで丸みの強い車体、そして緑色の車体、また走行するとローリングが激しい事から「イモムシ」や「イモ電」といった呼ばれ方もしていました。一方で、自動ドアや強力な送風があるファンデリアは夏場に好評だったそうです。
こうしてデハ200形は活躍を始めましたが、特殊な構造が故に故障時や部品交換などに手間を要するなどメンテナンス面での問題があったほか、車体間をつなぐ1軸台車が引き起こす揺れが酷いなどといった問題があり、6編成が製造されたのみに終わりました。
現在、宮崎台駅にある電車とバスの博物館にデハ204号が静態保存されています。前面行先表示板の横にある「連結2人のり」とは、連結運転の際に、運転士及び車掌のほか、連結部に運賃を収受する係員、扉扱いをする係員の2人が乗車していました。昭和42年に合理化するため、乗車口を列車の最前部、最後部とし、降車口を連結面にある中央にしました。要するに前乗り後降りのワンマン車を背中合わせにした方法で、東急ではこれを「連結2人のり」と言いました。その後、昭和44年に玉川線が廃止され、デハ200形も廃車。製造からわずか14年と短い生涯となりました。