貨車とは。

 貨車(Freight Car)とは、鉄道においては貨物を輸送するために用いられる車輛の事を言います。様々な形態がかつてはありましたが、日本では現在ではコンテナ車とタンク車が主流となっています。種類など詳しくは貨車のページをご覧下さい。

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貨車を見ていると、どんな構造になっているのかな。やどうやって積み込んでいるんだろうなどいう疑問があるでしょう。このページでは貨車(コンテナ)の構造を中心に見てみましょう。

有蓋車をみてみよう。

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屋根
 有蓋車に必ず必要なものです。雨から貨物を守るもので、簡易な雨どいが付いています。
引き戸(側板)
 車体から一段出っ張った構造となっており、横に開閉します。写真のワム80000形式は側面が4枚の引き戸で構成され、側面全ての位置から荷役が出来るようになっています。
妻面
連結器
走り装置(2軸車)(ボギー車は台車)
側ブレーキ
現存するワム80000形式の室内はイメージとしては合板(ベニヤ板)(これを内貼りと言います。)が貼られた倉庫です。なぜ、合板が用いられているのかと言いますと、貨物の保護、転動防止を目的としているためです。転動防止は貨物を置いて、そこに動かないように固定具(ロープ止めなど)を設置し易いようにするためです。

無蓋車を見てみよう

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あおり戸(側板)
 貨物が落ちないようにするための扉。留め具を外すと下に落ちる構造で、中の様子は写真右のようになっています。写真は鋼製で、主に石炭などの鉱石としています。一方で木製のタイプもあり、こちらは汎用貨物で積荷を固定する金具などを設置し易くするため木製となっています。積荷によってはあおり戸を設けていない貨車もあります。
妻板
あおり戸受け
 あおり戸を開いた際に、台車などにあたって戸や台車などを傷めないようにするための保護具です。戸を開くと下の写真のようになります。

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走り装置(台車)
側ブレーキ
 写真を見ると、妻面に白い2本の縦線が見えますが、これは側ブレーキのある側を示したものです。現在では留置する際の目印ですが、かつては突放入換の際の目印ともなっていました。
連結器

ホッパ車を見てみよう

 ホッパ車はそのスタイルから2つに大別する事が出来ます。このスタイルはお手本となった「石炭車」にあります。
 この石炭車は主に北海道と九州地区で活躍しましたが、導入にあたってお手本とした国が異なっていました。北海道はアメリカ、九州はドイツをお手本としたため、外観は大きく異なるものでした。ホッパ車は石炭車と運ぶものが異なる他はほぼ同じ構造となっています。この2つの方式はどのようなものでしょう。
アメリカ式

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アメリカ式は、積荷を車輛の側面に落とす方法です。車体側面に扉があり、ハンドル操作や圧縮空気による開扉で、豪快に積荷が飛び出てきます。
ドイツ式

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ドイツ式は貨車の真下に積荷を落とす方法です。漏斗状の取出し口があるのが特徴です。積荷を早く取り出すために、バイブレーション機能を貨車に装備したり、貨車ごと振動させる方法を行っている場合もあります。

タンク車を見てみよう

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タンク体
 積荷を入れる大きな容器。積荷は様々あり、それに合わせた構造になっているため多種多様な形があるのが特徴です。積荷によっては粘度が高いため、取り出しやすいように傾斜が付いているものもあります。この他、積荷によっては止まる際に内部で大きく動くため、ブレーキ扱いに悪影響を及ぼすため波よけ板というものを設けて、動きを抑える構造になっています。
 積荷によっては温度による変化してしまう場合もあります。写真右のタキ7750形式ではタンク体に保温材を巻きつけ、その上にキセ(覆いの外板)を設けている車輛もあります。

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 また、中には加熱管と呼ばれるものを装備している貨車もあります。タンク内部に配置し、高温蒸気などを充填して積荷の変化を防いでいます。
タンク受台
 丸いタンク体を支える台。タンク体中央部にあるものはタンク受板(センタアンカ)と言います。
鏡板
 タンク体の妻面に当たる部分を言います。ここにはタンク内部の点検をするために必要な点検蓋が設置されているタンク車もあります。
手ブレーキ
 留置用に使うもので、手ブレーキではなく、側ブレーキを備えたタンク車もあります。
台車
 かつては3軸ボギー車、2軸車(走り装置)の貨車もありました。現存する車輛は全てボギー台車となっています。

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マンホール
 積荷を入れる場所。積荷によって形が異なっています。
安全弁
 積荷によっては気化し易いものがあります。タンク内で圧力が高まると爆発する恐れがあるため、ある一定の圧力になると大気へ放出させる弁です。

液出し管(吐出管)空気管
 タンク車に積まれる貨物には可燃性、爆発性などが高い化成品などを輸送する事もあり、安全面については特に力がそそがれています。
 危険度が低い(万が一、漏えい(漏れ出ても)しても対処し易い)積荷は液出し管を下に設けた方法としています。(下図左)この方法を上入れ下出し方式と言います。液出し管が破損した場合を考えて、弁はタンク体内部に設置されています。

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 一方、少しでも漏れ出てしまうと困る危険度の高い積荷は液出し管をタンク体上部に設置します。積荷を取り出す方法は一般的には空気管を設置し、タンク内に空気を送り込み、圧力を加えて取り出します。空気管ですが、積荷によっては反応しない気体(窒素)を送り込みます。この方式を上入れ上出し方式と言います。
セメントや小麦粉などの粉粒体を取り出す場合は、底部より空気を送り込み浮かせる方法(エアスライド方式と言います。)を用いて行う圧送荷役方式があります。掃除機の要領で吸い出す吸引する方法もあります。

タンク車の安全装置
 上述の他にも、起こりうる事故を想定して緊急遮断弁などの装置が設置されています。
タンク車の横転事故も考えられており、強固な設計となっています。横転時に液出し管などの管が折れるなど破損した場合には、折れた際に栓をする役割をもった部品などが設けられています。

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 衝突事故の際に相手の貨車に乗り上げる事も考えられます。このためタンク車の前後には衝突時の衝撃を和らげ、直接当たる事を防ぐのを目的に台枠が長めになっています。この部分の長さを台枠緩衝長と言います。写真では右側のタンク車は旧基準、左側が現在の基準の長さで、少し長さが異なっていますね。

コンテナを見てみよう

有蓋コンテナ(側面)

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側板(側開き戸)
 側面に扉を持っているコンテナは外側に開く構造になっています。
妻板(妻開き戸)
 側開き戸と同じく扉は外側に開きます。

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内部は有蓋車でも説明した通りで、有蓋コンテナ、通風コンテナは合板が貼られています。(写真左)冷蔵コンテナや冷凍コンテナは低い温度を保つため断熱材が貼られています。(写真右)

 コンテナを置く為の台。
アンカー
 12ftコンテナに見られるもので、コンテナ車の緊締具で固定するもの。
フォークポケット
 フォークリフトの爪を挿入する部分。
隅金具
 コンテナの四隅にあるもので、コンテナ車に積載した際に固定金具を挿入する部分。
開閉てこ
 扉を開閉させるレバー。積荷がある場合は封印される。
ヒンジ(蝶番)
 開き戸を支え、開閉させるために必要な部品です。
この他に、コンテナの所在が判るようにIDタグというものがあります。

有蓋コンテナ(上部)

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フォークプロテクター
 2段積み以上の時、フォークリフトの爪から屋根を守る。
ずれ止め
 重ねて積み上げる時に、ずれないようにするためのもの。脚の部分がここにはまるようになっています。
上部隅金具
 クレーン荷役などを行う際に使う部品。無いコンテナもあります。

タンクコンテナを見てみよう

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基本的な構造はタンク車と同じです。20ft以上のコンテナや海上コンテナでは段積みをするので強固な枠でタンク体を守っています。荷役方式では、上入れ下出し方式の場合は、その構造により側面に液出し管を設置するのが難しいため、鏡面(妻面)に設置(中には管を導いて側面にしたものがあります。)しています。もちろん、危険な化成品を運ぶタンクコンテナでは上入れ上出し方式となっています。粉体の貨物では取り出す際に掃除機の要領で吸い出すものもあります。

コンテナの積み方を見てみよう。

 コンテナ車にコンテナが載せられていますが、このコンテナは大きさや重さに種類があります。安定した走行が求められるため、偏った積み方をするとバランスを崩して、脱線や転覆といった大きな事故になってしまいます。基本的には中央に荷重が加わるように載せて、左右のバランスをとるようにしています。下記のイラストは12ft5個積みのコンテナ車をイメージしたものです。

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コンテナ1個を載せる場合

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コンテナ車の中央に載せるのが基本です。40ftコンテナは大きいのでコンテナ車1両に1つしか載せられません。
コンテナ2個を載せる場合

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コンテナ車の中央に載せるのが基本ですが、20ft以上のコンテナは重量があるため、台車に近い位置に積載をして、安定走行できるようにします。イラスト下段右の20ftコンテナと30ft又は31ftコンテナの積載ではイラストの逆もあります。
コンテナ3個を載せる場合

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1個積みと2個積みの載せ方に基づいた配置となります。イラスト中段の右、20ftコンテナ1個と12ftコンテナ2個の積載ではイラストの逆もあります
コンテナ4個を載せる場合

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コンテナ車の関係で20ftコンテナを1個載せられますが、30ftコンテナ以上は4個積みは出来ません。12ftコンテナ3個と20ftコンテナ1個の積載ではイラストの逆もあります。
■コンテナ5個を載せる場合

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12ftコンテナのみとなります。
■コンテナを6個以上載せる場合

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背の低い無蓋コンテナで、回送する時に見られるものです。3段又は4段にして運ばれています。貨物を載せている時は重ねて運びません。