あらあら、ネコさん大変な目にあっていますねぇ。揺れが酷い原因には線路もあるのでしょう。でも、鉄道車輛には乗心地をよくする工夫がいっぱいあります。ここでは、台車の秘密をお勉強してみましょう。乗心地の良し悪しのヒントがつかめるかもしれませんよ。

車輪を見てみよう
 鉄道車輛には無くてはならない『車輪』を見てみましょう。いろいろ難しい用語が出てくるけど、頑張って下さいね。

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 身近にある自動車(バスなど)などの多くの乗り物では、車輪は左右の両輪が独立して回転をします。鉄道に使用される車輪は大きな重量がかかるうえ、高速で運転する事から強度面で、車輪を『車軸』というものに固定し、両輪が一体となって回転をする構造となっているのが特徴です。車輪と車軸を組み合わせたものを『輪軸(りんじく)』と言い、軸受を介して車輛を支える方法と『台車』に組み合わせて使用されます。ただし、急曲線を通過するため、超低床路面電車などでは左右が独立している場合もあります。
 この輪軸の数え方は1軸、2軸、3軸・・・といった具合に「○軸」と言い、2軸貨車と言えば輪軸を2つ使用し貨車(車輪が4つ)という事です。他に、2軸ボギー台車を2台装備した車輛は輪軸の数が4本となります。
輪軸の名称

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 輪軸には写真のような名称が付いています。車輪には「踏面」と「フランジ」というものがあります。この2つは様々な所で出てくる言葉ですので、覚えておくと良いでしょう。
車輪が曲がる秘密

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 先ほど「鉄道以外の車輪のある乗り物は左右の車輪が独立している。」と言いましたが、もし輪軸を用いて固定したらどうなると思いますか。写真は大八車(だいはちぐるま)と言い、江戸時代に生まれた木製の荷車です。現代のトラックです。
 この大八車は動力が人力なので、その大きさはだいたいな感じでつかめますね。この程度の大きさならば、左右固定されてもさほど苦にはならないのですが、自動車のように大きくなると曲がり難くなってしまいます

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 車輪が曲がる時の左右の車輪の軌跡を見るとわかりますね。イメージ図の通り、内側と外側では車輪の転がる距離が異なるのがわかりますね。大きなものになるほど、小廻りが難しくなります。
 では、鉄道の車輪はつながっていて曲がれるのでしょう。車輪がレールに接する部分をよ~く見てみると・・・

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 車輪となる『踏面』はレールと接する部分で、自動車のタイヤが地面に接する部分に相当します。この踏面を斜めにする、つまり車輪は円錐(えんすい)の形をしているのです。これが実に都合が良いのです。
 曲線に入ると、左右車輪のどちらかは内側となるため、転がる距離が短い側は踏面の一番直径が小さい方を軸に動きます。もう一方の車輪は外側となり、転がる距離が長くなるので、踏面の直径が大きい方に動きます。この動きによって自然に曲線を進む事が出来ます。踏面がレールから外れてしまわないように内側には『フランジ』というものがあります。曲線において、レールと車輪が擦れ合う音がするのはこのフランジがレールに当たっている時の音なのです。
大事な「P」と「Q」
 フランジには角度が決められており、これを「フランジ角度」と言います。車輪が転がり出すと、フランジからレールに対し、水平方向に力を加えます。この力を『横圧(おうあつ)』と言い、横圧が大きくなるとレールを乗り越えてしまい滑り上がり脱線や乗り上がり脱線という大事故が起きてしまうため、フランジ角度の適した設定は車輪にとって重要な部分と言えます。
 また、車輪がレールに与える力は横圧だけではありません。踏面からレールの接する部分に上(垂直)からの重量(輪重)が加わります。
 車輛の重量は何十トン以上もあり、この負担を最終的に受けるのが車輪です。例えば、20tの車体があるとします。この時車軸が2軸とする場合(つまり2軸車)、20t÷2=10t、1つの軸に10tの負担がかかります。このような軸の負担できる数値を『軸重』といい、その負担を超えてしまうと軸がぽっきり、折れてしまいます。また、レールも許容される軸重が決められていますので、これを超えてしまうと線路が破壊されてしまいます。
 さらに、軸にかかった負担は車輪に伝わり、例の場合は4つの車輪ですから1つあたり5tを重さをレールに伝えています。
 このように軸にかける負担を減らすには、「軸を増やす」というのが簡単な解決法です。このため、2軸車で始まった鉄道車輛も大型化とともに、ボギー台車などを生み出すきっかけとなっています。
 この垂直に働く力である「輪重」を「P」、水平方向に働く力「横圧」を「Q」とアルファベットで表します。この2つの車輪に働く力を『脱線係数』と言い、脱線しないための安全性を知る上での重要な要素となります。

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 脱線係数は軌道の保守にも重要で、測定には「PQ輪軸」という特殊な輪軸を使用して計測を行います。この輪軸は特殊な構造であり、新しい線路を作った時や新型車輛の導入時などの限られた時に限られ、測定の間隔が開いてしまい、連続したデータが得られない問題がありました。

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 最近では営業運転を行いながら測定の出来る「PQモニタリング台車」(写真はFS580A台車)が開発され、連続したデータが得られるようになり、軌道の保守などに役立っています。
車輪の欠点

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 みなさん輪軸や車輪の仕組みが解りましたか?あまり見ないものですが、メカニカルな部分があるでしょう。車輪は「円錐」の形である。という事だけでも解って頂ければ幸いです。
 さて、この円錐という形状は曲線を曲がるために重要なのですが、直線では困った現象を引き起こすのです。それが『蛇行動(だこうどう)』というものです。
 輪軸はレールに図のように乗っていますね。輪軸につながった車輪は曲線ではどちらかに偏って曲がっていく。では、直線になるとどうなるのでしょう。もし、車輪が円錐ではなく円筒形であるとした場合、直線では力が均等に伝わるため、真直ぐ進みます。しかし、曲線が曲がれなくなってしまいます。
 円錐の場合は、転がり始めるとレールに対して、車輪が左右どちらかに偏り始め、その動きは車軸を介して、反対側の車輪がその偏りを元に戻そうと逆方向に力が働き始めます。この動きを『ヨーイング』と言い、輪軸に発生したヨーイングの動きを上から見た時、その動きが蛇のくねって進む動きに見える事から『蛇行動』と言います。
 蛇行動が発生すると、乗心地は悪くなり、線路(軌道)、台車、車体を傷つけてしまいます。さらには脱線事故を引き起こしてしまいます。速度が高いほど発生するため、蛇行動の対策は必須となっています。後ほど紹介する、台車で蛇行動と言う言葉がいくつか出てきますので、覚えて下さいね。

車輪のいろいろ
タイヤ付車輪

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 リム部がタイヤと呼ばれる別のものとなっている車輪です。タイヤは輪心に焼きばめされて取り付けられます。長く走行し車輪が摩耗した時にタイヤだけを取り換える事ができる利点がある一方、焼きばめした部分が緩んだり、損傷する欠点があります。
 写真はスポーク車輪と呼ばれるもので、車軸の下側に位置するスポークが重量を主に支える構造です。左は松葉車輪と呼ばれるスポーク車輪の一つ。右は蒸気機関車用のスポーク車輪で、半月型の部分はおもりです。
ボックス車輪

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蒸気機関車用の車輪で、スポーク車輪はゆがみやすい欠点がありました。そこで、円周に均一に力が働き、ゆがみにくい車輪がアメリカで開発され、「BOXPOK」と名付けられ、D51形貨物用蒸気機関車から採用されました。輪心部分には軽量化のため穴が開いているのが特徴です。
一体圧延車輪

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 車輪全体を一体化してつくられた車輪で、圧延機で引き伸ばしてつくります。現在の車輪の殆どがこのタイプです。写真左は電車や気動車用のもの。中央は客車や貨車用のもの。写真右は『波打車輪』と呼ばれる派生したもので、板部を波打ったような形状にしたものです。この形状により剛性が増し、その分板厚を薄く出来、軽量化が図れます。最近の電車に見かける車輪です。
軽量車輪

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車輪の軽量化と揺れを軽減する目的で、輪心をアルミ合金でつくり、タイヤと輪心の間に防振ゴムを挟んだ車輪です。また、車輪の振動による騒音を防ぐため、リム内部に防音リングを付けた防音車輪(写真)もあります。
車軸のいろいろ
 車輪を左右一組としてつなぐ軸を『車軸』と言います。左右同時に回転させる役目があり、車輪とは圧入により組み立てられます。低床化などの理由により、車軸の無い独立車輪もあります。車軸は一般的には、ただの棒状の「中実車軸」と、軽量化を目的に中心に穴をあけた「中空車軸」を2種類があります。
動軸

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 車輛に搭載された動力源からつくられた動力をレールに伝える輪軸に使われる車軸を言います。電気車では歯車箱、気動車では減速機用の歯車箱を装備しています。
従軸
 動力の伝達に使わない付随車用の車軸です。

輪軸と車体を結ぶもの
 車輪(輪軸)と車体をつなぐものが今度は必要になります。輪軸を構成する車軸の先は「軸座受(じくざうけ)」と言い、ここに軸箱を取り付けます。この上に車体や台車を乗せます。この軸箱は主に2種類あります。
平軸受け(すべり軸受)

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 車軸の発明より使われているもので、軸の面(すべり面という)を受ける構造のものです。転がりをよくするため、また熱を発するので、一般的には潤滑油(グリスなど)を用いて油膜をつくり、接触を防ぎます。この油が切れてしまい、熱によって焼けてしまう事があり、これを『軸焼け』や『焼きつき』と言います。軸焼けを起こしてしまうと走る事は危険で、脱線などの原因になります。
ころ軸受(転がり軸受)

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 起源は紀元前40年以前に発明されたもので、大きなものを運ぶ時に丸太を何本か敷いて、その上を転がすと丸太が回転し進む。ピラミッドの大きな石を運んでいる姿が有名ですね。平軸受けよりも軸が回転する抵抗を少なくしたもので、車軸(輪軸)と軸箱の間にベアリングなどの球体や円柱、円錐などの丸い物を挟むようにして回転させるものです。潤滑油などで油膜をつくると更に、回転する抵抗が小さくなります。転がる抵抗が小さいので、平軸受けからころ軸受に変更した車輛もあります。

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軸箱を取り付けた様子。

走り装置

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 輪軸(車輪)と車体を結ぶ軸箱をつけると、上の写真のような車輛が出来上がります。このように走るための装置を車体に直接付けた走り装置を『固定軸受』や『固定車軸』と言います。台車ではないので注意が必要です。
 この車輛は、ゆっくり走る分にはさして問題はないでしょう。しかし、高速になるとどうなるでしょう。上下左右の揺れが直接伝わるため、乗心地は余り良くなさそうですね。
 鉄道が生まれた頃は2軸車が主流であり、まずは上下動の揺れを何とかしよう。という事で、荷馬車や自動車にも用いられている『板ばね』をサスペンション(懸架装置(けんかそうち))として採用しました。
①シュー式

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軸箱の上に板ばねを設置し、板ばねの両端に摺動用のシューを設置したもの。台枠にはその部分だけ接しており、固定はされていません。
②リンク式

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シュー式は上下動の振動は吸収するものの、前後動(ピッチング)が悪いため、板バネの両端を丸く(目玉形状)にして、ばね吊りと呼ばれるリンク(シャックル)で吊るしたもの。リンクは前後動に対応し、ばね両端の摩擦が少なくなり、車軸の動きが良くなりました。少し、高速化が出来るようになりました。後に登場する二段リンク式に対して、一段リンク式とも呼ばれます。
③二段リンク式

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シュー式や一段リンク式は高速になると蛇行動が発生し、速度向上の壁となっていました。蛇行動は速度が上がると発生し、一旦安定しますが、更に速度を上げると再度発生します。このため、シュー式や一段リンク式では、最初の蛇行動領域に入る前の速度(65km/h)以下で運転をしていましたが、二段リンク式ではこの蛇行動領域を下げる事で、高い高速領域を通常の運転速度に用いて安定させた方式です。運転最高速度が75km/hまで向上しました。
その仕組みは、リンクを2つ用いて、前後方向に強さを持たせ、左右方向に軟らかい支持剛性を持たせたもので、国内で現在活躍している二軸車は全てこの方式となっています。

台車の誕生

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 鉄道が誕生した頃の蒸気機関車や客車、貨車は2軸車でした。(車輪が4つ)より多くの旅客や貨物を一度に輸送するためには、車体の大型化、重量の増大が伴います。これに対応するためには、多くの車輪や車軸が必要となりますが、2軸以上を車体に付けると曲線の通過が難しくなる問題があります。また、2軸としてもその間隔(軸距離)が長くなってしまうと、これも曲線の通過が難しくなってしまいます
 輪軸がレールと直角になる事が理想の状態で、曲線においても容易に走る事ができます。実際は軸間隔(ホイルベース)が平行に支持されており、直角にはならずどうしてもずれる角度が出てしまいます。この角度をアタック角と言い、車輪のフランジやレールを摩耗させるほか、きしり音といった騒音を発生させてしまいます。このアタック角が大きくなると走行抵抗は大きくなり、最後は脱線や軌道(線路)が破壊されてしまう問題があります。かつて「3軸車」というものがありましたが、走行性能の向上よりも、荷重増に対応したものです。
 2軸車が限界に達したために、車体と走り装置を別々にしてみたらどうなるだろうか。という事で台車が生まれる事になりました。

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 台車とは、車体に直接付いてなく、自由度のある構造のものを言います。走り装置も台車も同じ役割があり、輪軸を保持し、車体重量を車軸に伝え、制動装置、動力車の場合は走行装置を設置する事で、車輛の安定性や乗心地を考えなければなりません。
 台車は1つの車輛に1つ以上履かせたもので、『ボギー車』と呼びます。2軸車を小さくし、車体とレールの間に挟んだ装置とでも言いましょうか。ボギー車は大型化が容易で、曲線上においても抵抗が少なく、スムーズに走れるため高速化に適しているのが特徴です。走り装置と同じく、車体の大型化による重量増や荷重が大きい場合等では線路の負担を減らすため、軸を増やすなどの工夫が必要です。

台車の種類その1
 台車と言ってもいくつか種類があります。まずは、どんな台車があるか見てみましょう。
①一軸台車

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1つの輪軸で構成されている台車を言います。ED62形直流電気機関車の中間台車や連接台車などで採用されています。
②単台車

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2軸電車など、1車体に1台備えられている台車。台車が台枠に対してばねを介して付いているため、回転はしません。あれ?それって走り装置じゃないの?と思われる方もいるでしょう。走り装置は1つの輪軸が台枠(車体)に付いているのに対し、単台車は2つの輪軸が台車枠に付いているという違いで、これは台車の一つ。となります。
③ボギー台車
③-1 2軸ボギー台車

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 電車や客車などに多く採用されているポピュラーな台車で、1つの車体に2組付いています。
③-2 3軸ボギー台車

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 重量のある客車や荷重の大きい貨車に見られる台車です。現在でも貨車で僅かに残っており、貴重な台車です。
③-3 多軸台車

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1つの台車に4つ以上輪軸が付いた台車を言います。大物車の台車として使用されています。
③-4 複式ボギー台車

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 大物車では荷重を増やす度に、多軸台車の軸を1つ、また1つと増えていきました。1つの台車に軸が多くなると曲線を通過する際に1つの軸に負担が集中し、脱線や軌道破壊をする事がしばしばあったため、その改良として1つの台車に2軸又は3軸ボギー台車を2つ備えた台車をつくりました。これを複式ボギー台車と言います。
④先台車(せんだいしゃ)・従台車(じゅうだいしゃ)

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 旧型電気機関車や蒸気機関車の一部に見られる台車で、回転が出来るものを言います。(実は台車を最初に実用化したのは蒸気機関車で、それを旅客車(客車)に採用したのがボギー台車の始まりです。)
先台車(写真左、中央)とは動輪の先にある台車で、蒸気機関車では「先輪(せんりん)」とも言います。曲線において、車体や動輪を誘導する役割をします。蒸気機関車ではその役割に加えて、ボイラーを支える役目もしています。従台車(写真右)とは動輪より後ろにある台車を言い、蒸気機関車に見られます。軸重の軽減、運転台及び火室(石炭を燃やす部屋)を支える役割をもっています。
 国鉄では先台車、従台車に形式記号が与えられ、『LT』(英語で先台車をLeading Truckという事から。)という記号を使います。

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 ちなみに旧型電気機関車の動輪を持つ台車を「主台車」と言います。この台車も形式記号が与えられており、『HT』(ドイツ語で「主な」を意味するHauptから。)という記号を使います。
⑤中間台車

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 2軸ボギー台車を3組用いる機関車(F級機関車)は一見すると、同じ台車を3組使用しているように見えますが、中間台車は曲線時に線路への横圧が大きくならないように、横に動きやすくする特殊構造をしています。(写真左)
 中間台車を動力台車ではなく、付随台車として用いる場合もあります。主に軸重調整を目的としたものです。(写真右はDD51形ディーゼル機関車のもの)
⑥連接台車

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 車体と車体の間に台車をもつ「連接車」の台車を言います。多くは2軸ボギー台車ですが、中には1軸台車を使用している車輛もあります。連接車の車端に位置する台車は連接構造ではないため「端台車」と呼ばれています。
台車の種類その2
台車にはもう一つの区分の方法があります。
・動力台車
輪軸を回転させ、走行する動力を伝える台車です。動力車と呼ばれる車輛の台車です。電気車であれば主電動機、内燃車では推進軸の動力を伝える歯車箱を装備しています。国鉄(JR)では『DT』という記号を使います。この他、私鉄、最近のJR車輛では台車メーカーの記号や独自の記号を使用しています。
・付随台車
 客車、貨車、電車や内燃車の付随車に使われる台車です。一般的には制動装置(ブレーキ装置)を装備しています。動力車では2つの台車のうち、1つを付随台車としている事もあります。国鉄(JR)では『TR』という記号を使います。この他、私鉄、最近のJR車輛では台車メーカーの記号や独自の記号を使用しています。

台車の役割と構造
 台車の役割は車体とレールの連絡役で、方向や速度などの力を伝えるほか、乗心地などの安定性を同時に果たす重要な役割を担っています。

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 台車と車体の関係は上の概略図の通りで、台車にかかる力(荷重)の伝わり方は車体とレールの上下左右とあらゆる方向から加わります。文字に表すと・・・

車体⇔車体支持装置⇔台車枠⇔軸箱支持装置⇔軸箱⇔軸受⇔輪軸⇔車輪⇔レール

となります。これだけでは何だか難しいですね。では、上の方から説明していきましょう。

車体支持装置

車体と台枠(台車)は前後方向は固定されており、牽引力と制動力を上下方向に、また回転運動を伝えます。

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写真左、Tuboフォトオフィス様撮影

台車が誕生し、車体と台車をつなぐ方法として、車体には『中心ピン』というものが設置され、車体と台車はここでつながっています。これにより台車の前後方向の固定や回転の中心を担う役割をします。台車では中心ピンを受ける『心皿(しんざら)』というものがあり、中心ピンと同じく牽引力や制動力、回転運動を担うほか、車体の重量を担う役割をします。

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この中心ピンと心皿は大きなものではないため、これだけで重量のある車体を受ける事はできません。そこで、台車には『側受』というものを設置し、傾きなどを抑えています。
これだけでは上下の振動をダイレクトに伝えてしまい、乗心地が悪いままとなってしまいます。貨物や荷物も傷んでしまいます。そこで、車体と台車の間に揺れや振動を抑えるものが必要となります。これが『枕ばね』と言い、車体支持装置とも言います。
この枕ばね(車体支持装置)の方式をいくつか見てみましょう。
①スイングハンガー方式(揺れ枕吊り方式)

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 古くからある方式で、上揺れ枕と下揺れ枕という2つの枕梁(ボルスタ)を持ち、この間に枕ばねを設置しています。この枕ばねは板ばねやコイルばねの他に、動揺をさらに抑えるため、油圧ダンパーを設置する場合もあります。下揺れ枕は吊りリンクで台枠に傾斜して吊り下げられ、左右に揺れる(スイングする)構造となっています。下揺れ枕は心皿の直下に重心を置き、左右に動くと元の位置に自然に戻る設計となっています。
 走行中は常に左右に動いていており、摺動部(擦れ合う部分)は摩耗が発生します。このため摩耗が進むと、台車枠と上揺れ枕に隙間ができます。つまり、がたつきが出て牽引力を伝達する際に動揺を起こしてしまいます。このがたつきは高速走行になると激しい振動を起こす欠点があります。この激しい振動はやがて前後方向にも起こり、やがて台車が蛇行動を始めます。これをさらに続けると脱線してしまいます。

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 蛇行動は速度や車輪の踏面形状などたくさんの事柄が複雑に絡み合って起こる現象です。特に台車の構造は蛇行動に与える影響が大きいのが特徴で、スイングハンガー方式は1点支持の車体支持機構である(揺れ枕守りによる牽引力伝達で、揺れ枕の中央のみが拘束されている構造であるため、水平面での回転を起こしやすい。)ため、その対策として中心ピン、心皿のある上揺れ枕のみの固定ではなく、揺れ枕両端を前後方向に支持する事にしました。この部品を『ボルスタアンカー』と言います。
 ボルスタアンカーは牽引力の伝達を行うと同時に、前後方向を固定する役割を目的として設置され、あわせて蛇行動発生を抑える役目も行っています。

★大失敗?歴史に残る迷台車!?

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 写真の台車はTR49形式と言う台車で、国鉄がつくったDT18形式台車グループの付随台車です。昭和26年にキハ44000形電気式気動車用の台車としてつくられ、以降同系列の車輛に使われ、キハ20系、キハ55系の登場する以前の気動車に使用されました。
 従来、側枠には一体鋳鋼製や帯板を組み立てた構造でしたが、プレス成型品を用いたモノコック構造を採用する近代的な台車です。この方法は軽量化が図れるもので、改良型となるDT19形式やTR49形式に採用されたほか、電車用でもDT21形式以降で国鉄台車の標準的な手法となりました。また、メンテナンス面でも一体圧延車輪や円錐ころ軸受を初めて採用しました。
 最大の特徴は国鉄で最初で最後となる直角カルダン駆動装置を搭載した事です。狭軌である事、1つの台車に2つの電動機(電気式気動車なので。)を搭載しなければならないなど、厳しい条件を超えなければならず、主電動機軸が枕梁(ボルスタ)を貫通する特殊な配置となりました。この構造となり、枕ばねのスペースを確保できなくなったため、金属ばねではなく、防振ゴムのブロックを上揺れ枕と下揺れ枕の間に設置しました。これが迷な事になるとは、誰が想像できたでしょう。
 枕ばねがゴムだけでは性能が不十分なため、軸ばねの高さを大きくとる必要があり(ばね定数を引き下げる)、下天秤ウイングばね式軸箱支持方式が採用されました。写真を見て下さい。軸箱の周囲に馬の鞍のような部品が見えます。設計時には台車のばねの役割が未解明であり、軸ばねは走行に、枕ばねが乗心地に大きな影響を与えるという事が解りました。
 これで乗心地も良くなった。と営業運転に入ってみると、ブレーキ時の振動は凄まじいもので、現代ならニュースのネタになるほどだったそうです。当時の人々がブレーキのかかるたびに苦痛に耐えた。という事ですから、現代人の私たちには想像を超えるものだったのかもしれません。
 枕ばね(乗心地の良し悪しを決めるばね)に不向きな防振ゴムを使用し、軸ばねのばね定数を引き下げて乗心地をよくする。という事は誤り。ですが、以降登場した同系の台車の枕ばねには手を付けられず、軸ばねにオイルダンパーを付けるなどして改善を図りましたが、この台車を履いた車輛に乗った乗客は最後まで、劣悪な環境から解放される事はありませんでした。
 その後、気動車は液体式が主流になり、台車も枕ばねをコイルばねにしたDT22形式(TR51形式)が登場。以降の標準台車となりました。

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※DT18系台車の後継となる、DT22形式台車。

②ダイレクトマウント方式

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 台車には車体の重量を支えつつ、回転をするという性能が求められています。スイングハンガー式では枕梁(ボルスタ)を介して回転をするという構造でした。この構造は高速になると乗心地を悪くしてしまう欠点がありました。この方式では特急列車などの高速走行をする車輛には適しません。そこで、ボルスタアンカーという前後方向を固定して揺れを抑える方法を開発しました。
 乗心地において、コイルばねや板ばねでは高速走行においては振動の吸収が良くありません。そこで発明されたのが『空気ばね』というものです。エアサスペンション(air suspension)とも言われるもので、圧縮空気の弾力性を利用したばねです。気体の性質で「一定温度下で気体の圧力と体積は反比例の関係にある。」というボイルの法則がありますが、これは気体を1/2まで圧縮すると圧力が2倍になる。つまり反発力が2倍という事で、この性質を利用したものが空気ばねです。鉄道車輛には圧縮空気が使われており、これは都合が良い。という事で採用が始まりました。空気ばねは「ばね定数」という、簡単に言えばばねの固さは自由で、共振が少ない(揺れる事が少ない)。という特徴があり、乗心地向上には最適なものでした。
 この空気ばねを揺れを左右する枕ばねに使用出来ないか。しかし、この頃の空気ばねは前後方向に対する拘束力が弱かったのです。
 そこで、上下の振動を枕ばね(空気ばね)、台車の回転を枕梁、心皿、側受、そして牽引力の伝達をボルスタアンカーにすれば・・・どんな配置になるかな。
という事で、ダイレクトマウント方式が誕生しました。心皿、側受と枕梁の間で台車が回転するため、枕ばねは回転しない構造になっています。車体に固定されたボルスタアンカーが外観の特徴です。

③インダイレクトマウント方式

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 ダイレクトマウント方式の配置を基本としつつ、ボルスタアンカーを台車に装備したものです。枕ばねを揺れ枕(ボルスタ)と台車枠の間に挟んだ構造です。
 この方式もダイレクトマウント方式も力の流れは同じで、下記の通りになります。
上下方向の荷重(車体重量)
車体⇔側受、心皿⇔枕梁(揺れ枕)⇔枕ばね⇔台車枠⇔軸ばね
前後方向の荷重(牽引力)
車体⇔中心ピン⇔枕梁(揺れ枕)⇔ボルスタアンカー⇔台車枠、軸箱支持装置
という流れになりました。

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枕ばねには空気ばねが用いられるのが多く見られますが、中にはコイルばねを用いた台車(例:写真左、東急5000系(初代)のTS301形式)があります。また、台枠の形状を利用して、ボルスタアンカーを装備した台車(例:写真右 TR223G)があります。

④仮想心皿方式
 ①~③までの方式は枕梁機構(枕ばね)を持つ台車で、台車の回転は中心ピンと心皿を組み合わせた作用で動いています。この方法をちょっと変えてみましょう。

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 台車の左右にあるボルスタアンカーと直角クランクピンを用いて、1つのものにすると心皿や車体ピンを設けることなく、台車を回転させる事が出来ます。車体ピンは無くなると困るのでそのままですが、心皿をなくした台車の回転する構造を『仮想心皿方式』と言い、別名『ジャックマン方式』とも言います。心皿がないため、枕梁(ボルスタ)もいらない。ボルスタが無い…無い…レス。つまりボルスタレス台車の原型がここに出来上がりました。
仮想心皿方式の力の伝達は次の通りです。
車体重量(上下方向の荷重)
車体⇔枕ばね⇔台車枠⇔軸ばね
牽引力(前後方向の荷重)
車体⇔引張装置(ボルスタアンカー)⇔台車枠⇔軸箱支持装置
で、こんな方式を考えて何に使うの?という事になりますが、実際に使われたケースを2つご紹介しましょう。
イ.走行装置の位置的な干渉によるもの
 気動車で1つの台車で2軸駆動を行う場合に採用されたもので、気動車にはエンジンやトルクコンバータを車体に搭載し、発生した動力を推進軸を介して駆動力とします。この時、エンジン側に位置する1軸を駆動する場合は問題がないのですが、2軸を駆動させようとする場合、輪軸の間にも推進軸や動力を伝達する装置が必要になります。これを配置しようとすると枕梁がある(干渉する)ため、困難になる場合があり、この仮想心皿方式が都合が良くなります。

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キハ181系で採用されたDT36B形式仮想心皿方式の台車。(量産車はDT40形式)

ロ.軸重補償を必要とする場合
 貨物列車や客車列車などを牽き出す時、車輛にはどんな事が起きているのでしょう。車輪が動き出すと、その反力によって台車が進行方向とは逆の方向に傾く力(回転モーメント)が発生し、前方車輪の軸重は軽くなり、後方車輪の軸重が重くなります。この現象を『軸重移動』と言います。前方車輪では空転する現象が見られ、空転により牽引力は0。つまり無くなってしまい、列車を牽き出す事が困難になってしまいます。この他に勾配の影響で軸重移動が発生する事があります。
 特に大きな引張力を必要とする機関車で見られ、軸重移動の対策(軸重移動補償と言います。)は必須なものとなります。対策として、旧型機関車では重量のある3軸台車とし、台車同士を連結棒で連結しました。EF60形直流電気機関車以降の電気機関車では1つの台車に1つの電動機を搭載し、片側の車軸で発生した反力をもう一方の車軸で相殺する方法(1台車1主電動機方式)をEF30形式及びEF80形式で採用しました。(下写真はEF80形式のもの。)

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 牽引時の反力による回転モーメントは、牽引する力の伝達点がレール面に近ければ小さく、レール面では0になります。解り易い言い方では、読者のあなたが「綱引き」をする事をイメージして下さい。立ったままでは力が十分に出ず、相手に負かされてしまいますが、腰を落とすとどうでしょう。低くすると踏ん張りがきく。と思います。これと同じで、仮想心皿方式では、ボルスタアンカーに相当する「引張棒」を低く設置し、牽引力の伝達点(着力点)をレール面に近づけて、軸重移動の防止を図っており、あわせて牽引力を向上させています。

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※ED75形式交流電気機関車の台車の様子。▲が伝達点(着力点)になります。
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※ちなみにF級電気機関車(写真はEF64形式0番代のDT120形式)は、心皿を低い位置に配置して、軸重移動を小さくしています。

⑤ボルスタレス方式
 軸重移動に伴う空転防止のため、機械的な軸重移動補償を実現するために仮想心皿方式(ジャックマン方式)が誕生しました。軸箱よりも低い位置に引張棒を設置し、台車に付け、Z字のリンクを形成して、心皿を必要としない台車の回転を実現したものです。
 日本では小さいD級(同軸が4つ)で、牽引力が重視される交流電気機関車や軸重移動補償に制約のあるEF62形式などに採用されました。

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EF62形式の装備する3軸ボギー台車。引張棒が軸箱下に見えますね。

 この構造(方式)は1つの台車で2軸駆動を行う気動車用にも採用され、それぞれの目的を達成する成果を出しました。しかし、仮想心皿方式は当時の設計では部品数が多く、構造が複雑。という問題がありました。
 そのような中、空気ばねが開発されます。1960年代後半には実用化され、ダイレクトマウント方式が出来ました。この空気ばねと仮想心皿方式で得られた牽引の構造をミックスしてシンプルな台車が出来ないか。つまり、台車は垂直荷重と牽引力、回転する力の3つ異なった力を伝達する必要があり、この3つの力を従来は枕梁と心皿で担っていましたが、垂直荷重と回転する力を空気ばねで、牽引力を牽引装置で分担する事で、枕梁や心皿を廃し、軽量化しよう。という考えに基づいて、次世代の台車の開発が日本や世界各国で始まりました。
 試作台車を経て、昭和55年に帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)8000系で量産化されました。

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 左のイメージ図を見てみると、その構造はシンプルという事がわかりますね。枕ばねには空気ばねを用いています。空気ばねの進化により、様々な方向からの力を受けられるようになり、ボルスタが必要ないのです。牽引装置は仮想心皿方式の配置を変更したもので、Zリンク式(右のイメージ図)、1本リンク式、門型板ばね式、積層ゴム式などが開発されました。現在はリンク式が一般的なものとなっています。
 私鉄各社では様々な台車を開発していましたが、ボルスタレス台車を広く普及させたのは国鉄でした。ボルスタレス台車の開発は大きく遅れており、当時は振り子式車輛の台車の開発をしていました。この振り子式車輛にはボルスタレス台車が採用されていましたが、この台車を基にDT50形式が誕生しました。(写真下)

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 極限まで簡素化されたシンプルな構造と機構、コスト面や走行性能などで従来の台車とは全く異なるものでした。分割民営化直前に誕生し、民営化後約10年に亘り大量生産され、電車をはじめ気動車にも普及し、様々な派生形式を誕生させました。その後もDT50形式を基本としつつ、軸箱支持機構を変更した形式が多数誕生する事になります。
 従来の台車とは全く異なる構造の軽量ボルスタレス台車は高速運転に適した構造を特徴としていますが、空気ばねに回転を依存するため、急曲線のある線区には使用が適さない。という欠点があります。高速走行を行う車輛では車体のヨーイング(蛇行動)を抑えるために『ヨーダンパ』(アンチヨーイングダンパ)が装備されています。

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ヨーダンパを付けたボルスタレス台車の例。ボルスタアンカーに似ていますが、シリンダーになっている点が違いです。つまり前後に伸縮し、振動を弱める働きをします。見間違えないようにしましょう。

台車枠

 車体支持装置と軸箱支持装置の間にあるもので、車体重量を均等に各車輪に分け、各輪軸を平行に保つ役割をします。
○台車枠の構造

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基本的な台車枠の構造を見ると、下記の3点からなります。
イ.側梁・・・前後に軸箱支持装置を接続し、輪軸を台車枠に保持します。また、ブレーキ装置を装備する事もあります。
ロ.横梁・・・2本の側梁をつなぐ梁。主電動機、歯車装置、ブレーキ装置などが装備されます。 
ハ.端梁・・・側梁の端をつなぐ梁。側梁、横梁だけでは必要な装置が搭載しきれない場合などの理由で設置されます。
上から見ると、側梁と横梁だけで構成されたものは『H』字の形をし、端梁を含めると『日』の文字になります。
○台車枠のいろいろ
A.菱枠台車

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 3本の平鋼板により、2本の柱と軸箱を支持する構造です。
B.アーチバー

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 枠の主要部材が弓(アーチ)形になっているもの。軸箱は固定されています。
C.ベッテンドルフ

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 アーチバーの強度と剛性(曲げやねじりの力に対し、変形のしづらさの度合い。)を向上させたもので、貨車に用いられています。TR41形式(写真左)は我が国のヒット作となっています。
D.アンドリュー(アンドリュース)

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 枠の形はベッテンドルフに似ていますが、軸箱が別となっており、上下の台枠で軸箱を挟み込む構造のものです。これを簡素化したものは「ヴァルカン」と言います。
E.インサイドフレーム(内側梁や内側枠式とも言います。)

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側梁と軸受が車輪の内側にある構造のものです。路面電車やLRTに採用されている例が多くあります。写真はDE10形式(DT132A形式)のもので、一見3軸台車みえますが、横圧軽減を図るため、各軸箱がリンクされており各1軸が独立して、左右に動くことのできる特殊な台車です。

軸箱支持装置

 輪軸、軸箱を台車枠に保持させるための構造や装置を言います。軸箱を上下自由に動けるようにする一方で、前後左右には固く支持をします。ただし、新幹線のように高速安定性に重きを置くものは前後をより固く、曲線を通過し易いようにするものは前後を少し柔らかく支持するものなど、用途や目的に応じて様々な種類があります。ここでは、主に見られる軸箱を支持する方式を見てみましょう。
●様々な軸箱支持方式
①軸箱守(じくばこもり)式(ペデスタル方式)
 古くからある軸箱支持方式です。ばねの種類や配置により様々な種類があります。
 ・板ばねを用いたもの

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 走り装置となる2軸貨車を中心に見られるもので、軸箱が上に動くと板ばねが受け止める方式です。
 ・コイルばねを用いたもの(単式(軸ばね))

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 軸箱の上部に単列式のコイルばねを軸ばねとして配置したもの。シンプルな構造で様々な台車に採用されました。
 ・コイルばねを用いたもの(複式(ウイングばね))

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 軸箱の下部より左右に翼状にばね受座を出して、側枠の荷重を受け止める方式です。「たこ坊主式」という呼ばれ方もあります。
②イコライザー式(釣り合い梁式)

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 国鉄では昭和初期頃、大手私鉄では1950年代頃までの台車に多く採用された方式です。軸箱守式(ペデスタル方式)の1つで、側枠から伝えられる車体の荷重を『釣合いばね』を介して、側枠側面にある弓形の大きな梁(釣り合い梁(イコライザー))に伝えるものです。軸箱からはその逆となります。
③軸箱守のない方式
 ・円筒案内式(ウイングばね)

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 上下の案内に縦にした二重円筒(外筒と内筒)を用いて、相互に滑らせる方式です。

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 導入したメーカーによる呼び方もあります。写真はシュリーレン式(スイスの車輛メーカー(スイス車両エレベーター製造)のもので、本拠としていたシュリーレンという地名から名付けられたものです。この他にシンドラー式(ドイツのエスカレーター及びエレベーターメーカーの技術を用いたもの。)などがあります。写真左は近畿車輛製のTR53形式で国鉄オシ17形式(10系客車)で唯一使用していたものです。

 ・板ばね支持方式(ミンデンドイツ方式)

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 ミンデンとは、ドイツ国鉄(現:ドイツ鉄道)のミンデン研究所の事で、研究所の地名が由来です。「民間の電車」の略語と言うのは誤りです。このミンデン研究所で1930年代に考案された方式で、前後1枚ずつの板ばねで軸箱の位置を決めている方式です。水平支持が固いと板ばねが撓(たわ)む事が出来ないので、台車の中心から遠い所に垂直の板ばねを設置し、剛性を下げているのが特徴です。
 ・板ばね支持方式(S形ミンデン方式)

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 台車の中心側に伸びた上下2枚の板ばねで軸箱の位置を決める方式です。
 ・板ばね支持方式(SUミンデン方式)

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 板ばねの支持部分にゴムブッシュを用いて、水平方向の合成を下げたもので、ミンデンドイツ方式より台車の前後方向をコンパクトに出来る利点があります。

 ・軸梁方式

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 軸箱と一体となった軸梁を台車側梁の1ヶ所に稼働する部分を設けて支持する方法です。ボルスタレス方式の台車に多く見られるものです。
 ・軸梁方式(OK形台車)

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 戦後の昭和21年、鉄道技術研究所、各台車メーカーが参加し設立された「高速台車振動研究会」の成果を受けて、各車が開発した新型台車の一つです。このOK形台車は川崎車輛で設計したもので、川崎車輛の岡村技師の「O」と会社名の川崎の「K」のイニシャルを組み合わせたもので、『乗心地もOK。』という意味合いも込められたそうです。
 上下動を案内するペデスタル(軸箱守)をやめ、軸箱と一体となった軸梁が台枠の側梁の近く、1ヶ所で稼働する方式を採用しています。写真は様々登場したシリーズの一つであるOK-14形式で、土佐電気鉄道200形用の台車です。
 ・リンク方式(アルストム方式)

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 軸箱をワッツリンクと呼ばれる方式の2本のリンクで両側から支持する方法です。アルストムとはフランスの企業の会社名です。
 ・リンク方式(モノリンク方式)

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 『1本リンク方式』とも言われる方式で、側梁と軸箱の近くに可動リンクを設置して支持する方式です。軸梁式とはことなり、2ヶ所が可動するため前後の位置固定を、軸ばねの周囲の部分を円筒状にして固定しています。

 ・側梁緩衝ゴム方式

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 台車枠と軸箱両側の間をゴムで前後方向に支持を行う方式です。軸箱の上はコイルばねを使用しています。
 ・軸箱梁方式

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 軸箱と側梁を一体化した方式です。軸箱は円筒状の緩衝ゴム(ゴムブッシュ)で囲まれて支持されています。これは軸ばねの働きも兼ねています。写真は、エコノミカル台車(汽車製造KS76A形)と呼ばれるもので、この他にパイオニアⅢ形台車もあります。
 ・積層ゴム方式(シュブロン方式)

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 積層ゴム方式とは、ゴムに鉄板など挟むなどして積み重ねたものが、圧縮方向には固く、剪断(せんだん)方向(斜めにずれる)には柔らかい特性を利用したもので、軸箱の案内や軸ばねの役割を行うものです。付ける方法で名前があり、このシュブロン方式は、積層ゴムを、軸箱にハの字に挟む事で上下に柔らかく支持をします。シュブロンとは、ゴムの配置が山形になっており、この形がシュブロン(紋章)に見える事が由来です。
 JR貨物所有のコキ106形式やコキ107形式などで履くFT2形式では、軸箱の上にも別のゴムが配置されており、荷重を支持しています。(写真右)
 ・積層ゴム方式(円錐積層ゴム方式)

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 ゴムと鋼板を円錐状に重ねたもので、軸箱の両側に高さを変えて縦に設置した方式です。円錐積層ゴムは上下に柔らかく、前後方向に固い特性があり、円筒案内方式に似ていますが、案内と軸ばねの役割をしており、メンテナンスフリー化を図っています。

・軸箱直結方式

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 乗心地の関係ない貨車に見られるもの方式です。高速貨車では防振ゴムを挟んでいるものがあります。
・軸箱一体方式

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軸箱支持装置と呼べるものがないもので、貨車の台車に見られます。このグループに入るものではありませんが、このような方式もある事で見て下さい。

特殊な台車

振り子式台車・車体傾斜装置付台車

 曲線部を通過する際に車輛には『遠心力』が働きます。この遠心力を打ち消すために線路の内側に向かって『カント』(傾斜)が設けられています。速度が高いほど遠心力を感じるようになり、乗心地が悪くなる他、最悪は転覆という事故になってしまいます。
 カントを高くする事は可能ですが、曲線上を低い速度で通過する列車や何らかの理由で止まった時を考えなければなりません。速度が低いため、また止まって、そのまま転覆しては困ります。この事を念頭に置きつつ、出てきた答えが『車体の傾斜』というものです。つまり、車体を自ら傾斜する方法を見いだせれば、高速で通過できる。という事で、「振り子式車輛」が出来ました。

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 台車の上にコロを用いれば、曲線部に入ると自然に車体が傾斜するという構造が開発されました。これを『自然振り子式』と言います。写真右は自然振り子式のDT46形式台車で、381系特急形電車が履いています。
 この自然振り子式は曲線通過時に「振り遅れ」や「揺り戻し」といった振動があり、乗り物酔いの原因となりました。

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 この問題を解決するため、アクティブ車体振動制御装置(アクティブサスペンション)や横圧低減対策などを採り入れ、自然振り子式を改良した『制御付自然振り子式』が開発されました。平たく説明をすると、予め線路の情報を車上装置(コンピューター)に記憶させ、その記録を基に、速度発電機から得られる速度、ATS地上子を使用して位置情報を算出し、曲線区間においての車体傾斜角度を計算します。その情報から曲線部に入る前より、アクチュエーターで徐々に車体を傾斜させる。というものです。
 国鉄時代に量産化したかったのですが、台所事情が火の車であったためお蔵入りに。日の目を見た(量産化された)のは、JR四国の2000系特急形気動車です。(写真右S-DT56形式)
 この制御付き自然振り子式の車体を傾斜させる構造にはコロ式(左のイメージ図)とベアリングガイド式の2種類があります。最初はコロ式が採用され、自然振り子式でも採用されました。しかし、装置の小型化が難しいなどの問題があり、改良型としてベアリングガイド式の開発が進められました。

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ベアリングガイド式を最初に採用したのはJR北海道のキハ281系(写真左)で、その後JR四国8000系(写真右)などで採用されました。
 台車ばかりに目がいってしまいますが、電車ではパンタグラフ装置も振り子式では問題となります。車体が傾斜することで、パンタグラフもその傾きを与える事になります。この際に傾きが大きすぎて、架線から外れてしまうなどの問題がありました。381系では線路のほか、架線設備を改良する事で解決しました。このため、線路設備の無い所では振り子装置が使用停止していました。特急「しなの」号では東海道本線が対応しておらず、振り子装置は使用していませんでした。また、福知山線などで使用した際は振り子装置が使用できず、乗心地が悪いと苦情が相次いだため、影響の出ない範囲の角度に設定して使用していました。(381系1000番代として使用されました。)
 381系が架線設備の改良が行えたのは、これから電化する。というものでした。最初からこうであればよいのですが、既存の設備を改良するとなると膨大な費用がかかってしまいます。そこで、JR東日本に颯爽と登場したE351系特急形電車ではパンタグラフを台車に直結した支持台に載せる方法が採られました。

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※E351系のDT62形式車体傾斜装置付台車とパンタグラフの様子。

 振り子車輛の無い路線に、振り子車輛を導入する。コスト面では多大なものになり、導入線区などの条件によっては見合うものではない。という事があります。そこで、これら特別な車体を傾斜する構造を用いらない方法が考えられました。『空気ばね車体傾斜方式』と言う方式です。空気ばねの伸縮差を利用したもので、これで車体を傾斜させようという方法です。ストローク式車体傾斜や簡易振り子式などの呼び方もあります。JRでは新幹線や在来線新型車輛に、私鉄でも採用されている方式です。見た目は普通の台車で、車体傾斜が僅かであるため乗心地に影響がほとんどでないことから、現在の主力になりそうな方式です。

操舵台車・ラジアル台車(輪軸操舵機構付台車)

 この台車は輪軸の方向を変えて、曲線部を滑らかに走行できるようにした台車です。
 台車の誕生の項で説明しましたが、2軸車の改良で誕生した台車。この台車も2軸車をコンパクトにした形態であり、アタック角の問題がありました。(詳しくは台車の項を見て下さい。)アタック角を0に近づける事で、摩耗や騒音を抑える事が出来ます。
 単台車を用いて台車枠と軸箱の位置を可変させ、横圧軽減をめざしたラジアル台車の研究が始まりとなりました。その後も様々な方法が世界各地で研究、開発されましたが、大きな問題が立ちはだかっていたのです。それは、台車の構造にあったのです。
直線では蛇行動などに耐えられる丈夫な構造』、『曲線部においてはしなやかな構造』という相反するもので、技術者の頭を悩ませる問題です。
 日本では自然振り子式が登場し、組み合わせた台車の研究、開発がはじまりました。様々な試験を経て、この相反する問題に対し、これを台車で半分ずつにすればよいのではないか。という事に気付きました。つまり、台車の半分ずつにそれぞれに必要な要素を採り入れた台車の開発です。こうして、JR東海383系特急形電車で、制御付き自然振り子車輛と自己操舵台車の組み合わせが実現しました。(写真下はC-TR245A形式です。)

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 JR北海道のキハ283系特急形気動車では、曲線部において車体に対し台車が回転をすると、位置関係の変化をリンク機構で輪軸に伝え、曲線の中心に向かって輪軸の角度が変化する方式の台車が開発されています。

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※キハ283系に使用されているN-DT283形式。横に伸びている棒がリンク機構です。

検測用台車

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検測車や試験車に用いられる台車です。写真左はJR東日本の総合検測車E491系のクヤE490形式が履いている軌道検測用のTR253形式。右は国鉄マヤ34形式の履く軌道検測用のTR202形式です。

試作台車

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新しい車輛の開発や性能向上などを目的につくられる台車。なかなか見る機会が少ないレアな台車(車輛そのものもそうですが。)です。写真はTR99-1形式で、コキ50000形式の台車の基となった試作台車です。