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 写真左を見て下さい。手前の線路の頭上には何もありませんが、奥の電車が走っている線路の頭上にはたくさんの設備がありますね。これは、走る車輛の動力による違いで、蒸気機関、内燃機関(ディーゼルエンジンやガスタービンエンジンなど)を搭載した車輛は自力で動くために、線路の設備があれば良いのです。一方で、車輛の動力を「電気」とした場合は外部から電気を取り込まなければならず、様々な設備をつくらなければなりません。これを『電化』と言います。電化されていない場合は「非電化」と言います。
 電化されるメリットは、燃料を車輛に搭載する必要がなく、電気動力は蒸気機関や内燃機関と比べるとエネルギー消費量が少ない。速度向上や快適性においても優れており、日本では多くの路線が電化されています。欠点として、写真右のように電化をすると地上側にたくさんの設備が必要になります。このお部屋ではこの地上設備を中心に学んでみましょう。

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非電化区間でも沿線に電柱が建っています。これは通信用などの電線で、その形状からファンからは「ハエ叩き」の愛称で呼ばれていました。

電気ってな~に?
 私たちの身近な存在である電気(Electricity)。難しく言えば、電荷の移動や相互作用によって発生する様々な物理の現象の総称を言い、自然界がもともとで、雷の放電現象が有名です。人間が電気を見つけたのは、古代ギリシャ人が琥珀(こはく)をこすると静電気が発生する事を発見した事で、琥珀:elektronが「琥珀のような」を意味するelectricusという言葉から電気という言葉が生まれました。

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古くは神の怒りとも称された雷。落ちるとおへそを取られてしまうかも。で現代でもお子さまには恐れられる存在です。

兎にも角にも電気が無いと現代の生活が成り立ちません。そんな電気には『直流』と『交流』の2種類があります。この2種類の違いがわかりますか?

直流 Direct Current:DC

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 図のように時間が経過しても、流れる方向が変化しない電流を言い、電圧が一定の電気を直流と言います。ただし、乾電池や蓄電池は時間が経過すると(使用し続けると)電圧が降下します。
 直流はプラス(+)の性質を持ち、マイナス(-)の回路を構成すると電気製品は動きます。身近な家電製品では、充電をして使うもの(携帯電話や携帯ゲーム機など)などがあります。鉄道では鉄道車輛に用いられる『直流電動機』があります。直流電動機は低い電圧時に大きな力を出せる利点があり、近年までは主力の電動機でした。
 大都市とその周辺では、直流電化がされていますが、これは直流電動機の利点を活かすためであり、高頻度運転の路線に適する電化方式と言えます。使用される電圧は600V~1500Vです。電圧が高ければ高いほど高出力を得られますが、電動機の絶縁能力の上限が3000Vとなっています。また、直流電化はシンプルな配線で済むため、鉄道車輛も簡単な構造で済みます。

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JRでは直流電化は1500Vを採用しています。

交流 Alternatinr Current:AC

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 図のように時間と共に周期的な大きさと向きが変化する電流を「交流」と言います。交流にはプラスとマイナスの2つの性質を持ちます。図を見ての通り波形となります。この波形を『正弦波(せいげんは)』と言い、一般的にはこのスタイルです。正弦波は交流の特徴になっています。
 交流は理論上、平等界磁中においてコイルを回転させると「フレミング右手の法則」により、導かれる方向に起電力が生じます。コイルの回転角に応じて半周が、正(+)もう半周が負(-)の弧を描きます。1周した分つまり、正と負を1サイクルとした弧を『周波数』と言い、単位を『Hz(ヘルツ)』で表します。身近な電化製品や鉄道の交流周波数を見てみると50Hzや60Hzとありますが、これは1秒間に何回の周波数を出す。というもので、50Hzは1秒間に50回。60Hzは1秒間に60回となります。また、1サイクルの時間幅を『パルス幅』と言い、電圧はプラス、マイナス、0Vの3種類があります。
 さて、図のような周波数を連続させてみましょう。直流との大きな違いがあります。それは、谷になっている部分です。山と山の間に谷があり、この部分には電気が流れていません。つまり、何かを動かすと、動いたり、止まったりを繰り返して、ぎこちない動きになります。さて、どうしましょうか。この谷の部分を小さくする、つまり周波数を増やしてみるのです。

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 間隔が詰まり、谷の部分が狭くなりました。周波数をどんどん増やしていけば良いのですが、機械の設計上の問題があるため限度があります。さらに細かくするにはどうしたらよいと思いますか?図は1本の線しかありませんね。これを『単相交流』と言います。つまり、周波数を増やせば良いのです。

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 時間差で正弦波をつくれば、谷の部分がもっと小さくなり、頂点を結ぶと直流に近い感じになりますね。一般的には3本の正弦波を使った『三相交流』を使用します。
 交流の電化製品では、プラスとマイナスの領域があるため、電圧の変化に対応した構造が必要です。「正弦波の最大値」という考え方で、「√2~0~√-2」で電圧が変化します。一般的な100Vの場合、瞬間的に141Vの電圧がかかるという事。100Vという表示はこの平均値という事です。機器を設計する時はこの最大値となります。このため、機器が必要以上に大きくなったり、コストがかかってしまう欠点があります。鉄道では代表的なもので、かご形三相誘導電動機があります。構造が単純で安価、高速域での過負荷が少ない利点はありましたが、起動時のトルクが小さい問題があり、国鉄形電車では主電動機は直流電動機となっていました。
 利点として大電圧を容易に作る事が可能、電圧の変換(変電と言います。)が容易である。ということがあります。鉄道では交流は単相交流を使用し、在来線は20000V(20kv)、新幹線は25000V(25kv)を使用しています。

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在来線の交流電車(左)と新幹線電車(右)

 さて、電気は『発電所』で作られます。火力、水力、原子力などの発電所があります。電気は遠くまで送らなければなりません。遠くに送るには大電圧での送電が必要になります。この時、距離が遠くなれば遠くなるほどジュール熱を主に損失が発生します。このため、高電圧、低電流にして電気を送らなければなりません。直流では高電圧をつくるのが難しいため、交流となります。発電所にもよりますが、50万Vの超高電圧で送り出されます。
 この超高電圧を少しずつ低くしていきます。この時に電圧を下げる『変圧器』を通ります。交流を直流に変換する時は『整流器:コンバーター』、直流を交流に変換する時は『インバーター:逆変換装置』を使用します。交流では変圧器があれば容易に下げる事が出来、送電に採用される理由の一つになっています。
 変圧器などを通り、最終的に利用できる電圧になり、電車を動かしたり、家の明かりを灯したりとなるわけです。

この発電所から送られてきた電気を変換する施設を『変電所』と言います。
変電所のいろいろ

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左はJRの直流電化区間の変電所。大電圧の電気を取り込んでいるのがわかります。中央は私鉄の変電所です。電車を動かすための電気のほか、駅などの施設の電気もつくっているのでしょうか、ごちゃごちゃしていますね。右は変電所から直流電化区間へ電気を送っている様子です。(変電所は右のほうにあります。)

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左は変電所から交流電化区間へ電気を送る設備の様子です。中央は、交流電化区間で見つけた小さな変電所。右は施設系の変電所でしょうか、小さなトランス類が並んでいます。

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写真は「き電区分所」というもの。交流は周波数という波があります。電化区間の場合、供給される電気を送り届けられる範囲があり、隣り合った所では電気的に切られており、これを「セクション」と言います。この時、変電所ごとに周波数がバラバラになると電車は正しく動く事が出来ません。これを非同期と言いますが、架線が非同期とならないように絶縁されており、この絶縁状態をつくる施設がこのき電区分所です。

みんなにお願い

 電気の事が少し解って頂けたでしょうか?鉄道にはたくさんの電気が使われています。そして、電気は目に見えないので、どこに流れているかわかりません。
 変電所の中に入って遊んだり、線路脇のケーブルや架線を不用意にさわることは大変危険ですのでやめましょう。

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 電気に触れてしまう事を『感電』と言いますが、感電すると最悪は死んでしまう事もあります。感電事故は様々な条件などによって、傷を負います。軽い度合いではやけどになります。しかし、その傷は一生消える事のない、凄惨極まりない(とても酷い)傷もあります。また、感電によって体をつくる細胞が死んでしまい、腕や足、目を失わなければならない場合もあります。

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ちなみに写真のような光景を見た事があるでしょう。架線にハトなどの鳥が休んでいる光景です。なぜ、鳥は感電しないのでしょうか。答えは回路にあります。電気は回路が出来ることで通電をします。つまり、鳥が架線に止っている状態は回路が出来る前の状態なのです。写真のハトさんが、近くの木においしそうなエサを見つけて、エサに触れると…それは死の接吻になります。エサ→その木→地面で、回路が出来てしまうからです。皆さんは決してマネをしてはいけませんよ。

架線設備を学んでみよう
 皆さんが電化された路線で、上にあるもの。というと『架線』をさしますね。この架線はどうやって読みますか?「かせん」と呼ぶ方もいるでしょう。古くは国鉄時代に「かせん」では「河川」とも聞き間違えるなどがあるため、『がせん』と濁点を付けて呼ぶことにしました。
 この架線をよく見ると、様々なもので構成されています。まずは、その呼び名から説明しましょう。

架線設備の名称その1

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①架線柱
 架線のほか、電気車へ電力を供給する饋電(きでん)線(電気車へ電気を送る事を饋電(一般的にはき電と書くこともあります。)と言います。)や信号、通信関係などの電気ケーブルを地面に置いておくと安全面などで危険なため、空中を使います。それらを支える基礎として用いられる柱です。一般的には電柱。と言いますが、鉄道では架線柱と呼んでいます。
種類として、木材、コンクリート、鋼材、鋼管が主に使用されています。
木材・・・枕木と同様に、耐久性がある種類を使用し、防腐剤にクレオソートを用いています。
コンクリート・・・現在広く普及しているもので、丈夫で安価。しかし、重量があるため橋梁などでは負担となるため、使用出来ない面もあります。(写真のもの。)
鋼材・・・鉄柱の架線柱です。コンクリートよりやや耐久性のある部材で、トラス形状のものやH鋼が使用されています。
鋼管・・・最近見られるようになったもので、鋼材のトラスやH状と比べて省力化が図られています。
架線柱の写真はこれから別の説明で合せて出てきます。また、付いているものも多少異なっています。模型作りのご参考にしてみて下さい。

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架線柱の例。青梅線に点在する青梅電気鉄道時代に建てられた架線柱です。独特のリベット組みが特徴です。

ビーム
 架線柱に取り付け、饋電線ややぐらを通る電線を支える碍子(がいし)や架線を支えるプラケットなどの電線を支えるために必要な部品を取り付ける部品を言います。ビームの主な形状を見てみましょう。

イ.スパン線ビーム

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架線柱同士、又は電柱などにスパン線(ワイヤー)を張り、トロリー線(集電装置に電気を供給する電線。)などを吊るす単純な構造の方式。風などの影響を受け易く、高速走行をするとトロリー線とパンタグラフが離れてしまいます。これを離線と言います。このため、路面電車や低速度の路線での使用となっています。なお、スパン線と電柱の間には碍子を挿入し、漏電を防いでいます。

ロ.単ビーム

山型(見ようによってはL字型)鋼材を重ね合わせたビームを言います。単線のみを支えるものを『プラケットビーム』と言い、一本の柱で支える構造となっています。電線は見た目以上に重いもので、片側支持で2線分を吊るすとビームが折れたり、柱の変形や転倒が起きてしまいます。そこで、2線以上はもう1本架線柱を建てて、ビームを渡します。この方式を『クロスビーム』と言います。
プラケットビームのいろいろ

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左は架線柱がレール。下部を少し広げて強度アップしています。左から2番目も架線柱はレール。ホームにあるため、照明が付けられています。左から3番目はコンクリート製のもので、強度をあげるため、アームタイが付いています。写真は直流電化区間のもの。一番右は、木製架線柱が素晴らしい。プラケットビームのほかにやぐらが付いた頑張り屋さんの架線柱です。

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左は大正生まれの鉄骨架線柱。トラスのリベット止めが歴史を物語っています。少しずつ新しい物に変わりつつあります。中の2枚はコンクリート製架線柱に近代的なプレケットビームを装備したもので、左側が直流、右側が交流です。電圧が異なるため、碍子の数が異なっています。右は山手線田端駅で見つけたレール製の架線柱。レールを美しく曲げていますね。このような古い物は新しい物へ置き換えられつつありますので、撮影は早めの方がよいでしょう。

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写真は工事現場で見かけるプラケットビームの例。H鋼でつくられた簡易的なスタイルです。

クロスビームのいろいろ

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写真左は複線での使用例です。単線でもき電線などのケーブルを担う場合は補助の柱を建てて、クロスビームにしたものが多く見られます。
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補助の柱を建てて、クロスビームとしている例です。

ハ.Vトラスビーム

 き電線などのケーブル類や架線を吊るす部品はとても重く、クロスビームとして何線分も受け持ってしまうと歪みや折れてしまう原因になってしまいます。そこで、トラス状に組んだものが登場します。これがVトラスビームになります。中心に向かいV字状に組まれているのが特徴で、複線区間や駅構内でよく見かけるビームです。
Vトラスビームのいろいろ

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複線区間や駅構内ではおなじみのVトラスビームです。
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左は架線柱がレールでつくられている珍しいタイプです。中央と右は工事個所で見られる仮設のものです。H鋼を使っていますね。

平面トラスビーム・かご型トラスビーム

2つの山型鋼材を用いてトラス状に組んだものを平面トラスビーム」と言います。Vトラスビームと似ていますが、架線柱の高さなど制限されているなどの理由により小さくしている点が異なります。また、中心に向かってトラスを形成するのではなく、全体的にトラスが並ぶ点が外観の違いとなっています。
 この平面トラスビームを2組使用し、断面形状を四角形としたものを「かご型トラスビーム」と言います。このビームは多数の線路を支持する事が出来るほか、変電所から多数あるき電線を支える箇所で使われています。なお、かごだけにあって、鳥の巣が作られる事がままあります。(鳥は外敵から身を守るため、電車が多く通る場所に巣をつくると寄ってこないらしい事を知っているみたい。)このため、巣をつくられないように網を設置しているものもあります。
平面トラスビームのいろいろ

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かご型トラスビームのいろいろ

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H鋼型ビーム

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Vトラスビームや平面トラスビームなどはボルトの固定箇所が多いのが欠点です。この欠点をH鋼材を用いて改善したものが、H鋼型ビームです。メンテナンスフリーの先駆けとも言えるものです。工事個所の仮設架線柱などでも見られます。

鋼管ビーム

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H鋼型ビームを進化させたもので、さらに強度のある交換を使用すると共に、ボルト締結部分を減らしました。都市部を中心に見られるようになりました。このビームはインテグレード架線区間で多く使用されています。(インテグレート架線の説明は後ほど。)

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鋼管ビームの欠点として、重量がある事です。このため、既存のコンクリート架線柱をそのまま使用し、細い鋼管で平面トラスビームとした改良型が地方を中心に見られます。

ホームで見られるビーム

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ホームにあるビームは屋根の梁を延長したものや、架線柱を設けて設置するものがあります。よく見るとレールであったり、凝った設計のものがあったりします。

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中には、よく見ないと見落としてしまいそうな小さなビームもあります。

③ビームに付けられているもの
 架線柱にビームが取り付けられ、そのビームにやぐらや碍子、可動プラケットなどを付けていきます。電化方式により多少の違いがあります。
イ.直流電化区間(一般電化方式)

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 直流電化の場合はき電線が必ず必要で、電力の消費量により1本以上ありますが、消費量が少ない場合は省略されている事もあります。き電線のほかに三相交流の三相分又は、単相交流2線の6600Vの線がある場合があります。

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写真のように、ビームに直接、碍子を付けて吊架線を装備するタイプなどもあります。
ロ.直流電化区間(インテグレード方式)

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インテグレード(integrate)とは、「まとめる」、「統合する」などの意味で、従来のようにき電線、高圧配電線などを極力まとめてすっきりとした構造にし、保守性を向上させたものです。架線柱、ビームは鋼管製とし、地面にコンクリートトラフを設置してそこに一部配線を収納するようにしています。吊架線とき電線も統合されており、この線を「き電吊架線(フィーダーメッセンジャー)」と言います。都市部では景観が良くなるといった評価もあり、地方線区でも少しずつ広がりを見せつつあります。
ハ.交流電化区間

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交流電化区間では、発電所から変電所を経て送られる電気(き電)の方式により、BTき電方式とATき電方式の2つの種類があります。前者のBTとはブースタートランス(Booster Transformer:吸上変圧器)、後者のATとはオートトランス(Auto Transformer:単巻変圧器)の事です。交流の場合、電磁誘導障害対策が必要で、この2種類があります。話をするととても難しいので、ここでは省略です。このため、直流電化とは少し配置されるものが異なります。

その他(特別高圧送電線を併設しているもの。)

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鉄道の送電線のほかに、家や工場などに電力を供給する送電線を線路上に設けている風景もあります。場所などの都合でしょうか。その場合、柱がとても高くなり、見上げると何かわかりませんが、圧巻であると同時に美しささえ感じてしまいます。

●架線はなぜジグザグに張られているの?

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皆さんは架線をよ~く見た事があるかな?架線が左右にジグザグに張られているのが分かると思います。(写真左)これは、電気車に搭載された集電装置(一般的にはパンタグラフ)に付けられたすり板と呼ばれる架線と接する部分の摩耗を均一にするためなのです。一点にしてしまうと、その部分だけがすり減っていき、やがて溝が出来てしまいます。もし、左右どちらかに動こうとした時にこの溝に架線が挟まっていたらどうなるでしょう。架線が切断してしまったり、パンタグラフが壊れてしまいます。これを防ぐためにジグザグに張っているのです。

集電方式を学んでみよう。
 さて、架線設備をいくつか見てきましたが、ここからは集電方式を見てみましょう。集電方式には、さまざまありますが一般的に見る機会の多い『架空電車線方式』と『第三軌条方式』を説明しましょう。
架空電車線方式
 車輛の上部に架線を張り、ここからパンタグラフなどの集電装置を用いて集電する方法です。

架空電車線方式の種類

①直接吊架式(直接架線方式)
 集電装置に電力を供給するトロリー線のみを直接吊るした方式。設置費用は安価、構造は簡単という利点はありますが、トロリー線がたるみやすく、集電装置が押し上げて走行するため、摩耗が激しい。また、離線し易い構造でもあるため、低速走行の路面電車やトロリーバスで使用されています。走行速度を80km/h程度まで耐えられる構造にした改良型もあり、輸送量の少ないローカル線で採用されています。

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②カテナリー吊架式
 直接吊架式の欠点を改良した方式で、トロリー線のたるみを少なくしたものです。カテナリーとは懸垂線を意味します。
イ.シンプルカテナリー式
 最も多く用いられている方式で、トロリー線をハンガーと呼ばれる部品で吊るし、吊架線で支持する構造です。列車最高速度を100km/h程度までとなりました。トロリー線、吊架線を太くし、張力を高めた改良型があり、これを『ヘビーシンプルカテナリー式』と言い、列車最高速度は130km/hまで引き上げられました。

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シンプルカテナリー式の構造。トロリー線はイヤーという部品で装着されています。中央の写真は上から見た様子です。右はき電線から給電される部分の写真です。

ロ.ツインシンプルカテナリー式

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デュアル又はダブルシンプルカテナリー式とも言われる方式で、シンプルカテナリーを2組並べたものです。集電量を増大できるようにしたもので、列車密度の高い大都市部で見られます。設備的に手間がかかるため、ヘビーシンプルカテナリーに変更されているようです。
ハ.ダブルメッセンジャーシンプルカテナリー式

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吊架線を2本にしたもので、風による影響を抑えるために開発されました。高架線などで見る事が出来ます。
二.き電吊架式(フィーダーメッセンジャー)

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カテナリー式の吊架線をき電線も兼ねるものとした方式です。このため、吊架線とトロリー線は同じ材質となっています。呼び名にはいくつか種類があり、JR東日本では中央本線高尾以西の狭小トンネル区間では「π(パイ)架線方式」、その他の区間では「インテグレード架線」と呼ばれています。JR西日本でも同様の方式を「ハイパー架線」と開発名が付けられています。
ホ.コンパウンドカテナリー式
 パンタグラフによるトロリー線の押し上げられる量を平均化する目的で、吊架線とトロリー線の間に補助吊架線を組み入れた方式です。高速走行時の離線(パンタグラフとトロリー線が離れてしまう事。)が少なくなり、集電する量も増やす事が出来る事から、新幹線をはじめとする運転密度が高く、高速走行をする線区向けに採用されています。新幹線では線を太くし、張力を高くした「ヘビーコンパウンドカテナリー式」が採用されています。

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左は在来線向けのコンパウンドカテナリー式(写真はマワ車所蔵)、右は新幹線向けのヘビーコンパウンドカテナリー式です。

へ.合成コンパウンドカテナリー式
 東海道新幹線開業時に開発されたもので、高速で動く集電装置による架線の振動を抑えるために、コンパウンドカテナリー式の吊架線と補助吊架線の間にあるドロッパ―の一部を合成素子と呼ばれる、ばねとダンパーの機能を兼ね備えたハンガーを挿入したものです。新幹線では問題があったため、本格的な採用には至りませんでした。現在は私鉄の一部の線区で、シンプルカテナリー式のハンガーに代わって合成素子を採用している姿を見る事が出来ます。

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ト.剛体架線式
 鋼材をトロリー線としたものや、鋼材にトロリー線を付けた方式で、断線しにくい利点を持つ方式です。カテナリー式の吊る部分の場所が確保できない線区向けに開発されました。地下鉄線で多く見られる方式です。欠点として、鋼体であるが故に柔軟性(柔らかさ)がないため、高速走行には不向きで、パンタグラフの離線が多いという事があります。JR、私鉄では車輛のパンタグラフを増やして対応しています。(1両に2基パンタグラフを搭載している場合、カテナリー式区間では、1基のパンタグラフを使用し、剛体架線区間では2基とも使用する。と言った具合。)

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張力調整装置
 トロリー線はレールと同じく、気温による寒暖差やトロリー線そのものに流れる電気の熱で伸縮をします。熱により、たるんでしまうと集電装置の集電状況が変化し、トロリー線の異常な摩耗を引き起こすほか、集電装置との間に激しいアーク(火花)が発生して、集電装置の損傷やトロリー線の切断につながります。逆に張力が高まってしまうと(つまり、ピンッ!と張りつめた状態)、断線を起こす原因となります。このようにならないように、常に適度な状態にする必要があり、この状態を保つ装置がこの張力調整装置です。テンションバランサーとも言われます。
 張力調整装置はトロリー線のほか、吊架線も調整しており、終端部に設置されています。
①滑車式

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滑車と錘(おもり)を用いて、トロリー線、吊架線の張力を調整する方式。滑車は大歯車が錘、小歯車が架線につながっています。中には直接つながっているものもあります。
②ばね式

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バネの縮む力を利用したもので、駅の終端部や曲線区間で用いられます。また、コスト面やメンテナンス面で滑車式に代わって採用が増えています。

●第三軌条方式
 走行用のレールとは別に、並行して給電用レール(第三のレール)を設けて、車輛に装備された集電装置(集電靴:コレクターシュー)によって集電をする方式です。
 地下鉄のように地中に長大なトンネルを建設する際、架空電車線方式では車輛のサイズよりも大きくしなければならず、建設コストが高くなってしまう問題があります。そこで、この方式が考え出されました。架空電車線方式より建設コストは安価ではありますが、摩擦による振動や騒音が大きいため、高速走行には適さない事や地上に高圧線を敷設するため、線路内に不用意に立ち入ると感電する危険があります。
 日本にこの方式が最初に投入されたのは、信越本線横川駅~軽井沢間(碓氷峠:現廃止。)です。架空電車線方式を採用しなかった理由は、非電化路線の規格で設計されたトンネルで、断面が小さく、改造する費用が莫大になってしまう事から採用されました。
 現在、第三軌条方式は地下鉄路線で見られます。この第三軌条方式に類似したものとして、モノレールや新交通システムの集電設備があります。

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※矢印の示すものが第三軌条です。①地下鉄の例 ②モノレールの例 ③新交通システムの例
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集電靴の様子です。第三軌条に下から接し、集電をする方法となっています。右の丸印部分が集電靴です。
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第三軌条方式を採用している路線に見られる注意の看板です。日本では600~750Vの高圧電気が流れています。

エアセクションとは?
 電気を用いた鉄道で出てくる言葉で、聞いたことがあるでしょうか。電力を供給するにあたって、一つの変電所で電気が供給できれば問題ありませんが、変電所から遠く離れるほど「電圧降下」という現象が起き、電力を供給する事が難しくなります。このため、いくつかの変電所が必要となります。また、保守をするうえでき電区間(給電区間)が1つの線では問題が多く発生してしまいます。
 また、架空電車線方式で使用されているトロリー線や吊架線は銅などの金属であり、重さなどの理由で1600m程度しか張る事が出来ないため、適度な間隔で切らなければなりません。あるき電区間と別のき電区間が重なり合っている部分を「セクション」と言います。
 き電区間では電気がお互いに行き渡らないように絶縁体を設けなければなりません。例えば750Vの電圧がかかっていると言っても、それぞれのき電区間では多少の誤差があります。また、保守などの理由により電圧を0V(停電)にする事もあるからです。この絶縁体に用いられるのが『空気(エアー)』なのです。この絶縁体を含めた言葉が「エアセクション(エアーセクション)」と呼ばれるものです。このエアセクションは『直流電化区間』のみに見られるもので、交流電化区間に使われている交流は性質上、空気を絶縁体とする事は出来ません。

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エアーセクションの様子(写真右は拡大したもの)異なるき電区間が重なり合っている部分がエアーセクションと呼ばれるもので、右の架線柱1~2スパン分の長さがあります。
 2つの架線は電気車が通過する際、パンタグラフ(集電装置)を介して短絡(ショート)してしまいますが、ある程度の速度で通過すれば問題はありません。しかし・・・

エアセクションに止ってしまうと。

 何かの理由(踏切支障報知装置の動作や防護無線の受信など)により、やむ得ない停車(緊急停車)をする場合があります。この際にエアセクションに停車してしまう事があります。

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 エアセクションは空気を絶縁体としてお互いの電気が行き渡らないようにしているのですが、パンタグラフ(集電装置)がここに止ってしまうと、上のイメージ図のように回路を構成した状態となってしまいます。つまり、短絡状態になっているのです。
 お互いの電位差が大きければ、この時点で激しいアーク(火花)が発生します。電気車は起動する時にたくさんの電気を消費するため、起動をすると激しいアークが発生します。このアークが発生すると同時に接触している部分では高温の発熱が発生します。トロリー線はピンッと張られた線で、この熱によって強度が低下し、張りに耐えられなくなると破断してしまいます。ここで耐えられたとしてもトロリー線が変形しているため、次のパンタグラフでアークが発生、やがて切れてしまいます。この様な現象を溶断と言います。
 トロリー線の溶断はエアセクション部に起こるほか、電気車の「母線引き通し」でも起こる場合があります。この母線引き通しとは、架線から安定して受電するために編成中のパンタグラフからの回路を母線と呼ばれる電線で1つにつないでいるもので、この構造である場合、エアセクションに直接停止しなくとも、編成中にエアセクションがある場合、溶断を起こす場合もあります。(車輛が故障する事もあります。)
 トロリー線が切れてしまうと修繕は容易ではありません。簡単に言えばその給電区分のトロリー線を張り直す必要があるため、復旧に途方もない時間を要してしまいます。
 エアセクションに停車してしまった場合、複数のパンタグラフがある場合は一度全てのパンタグラフを降下し、目視などによりエアセクションにかかっているパンタグラフを除いて上昇し、エアセクション外の安全な場所まで移動した後、全てを上昇させ運転再開となります。パンタグラフが1つの場合は救援手配となり、暫くそのままとなるそうです。

その他のセクション

 エアセクション内に停止すると大変な事になってしまう。という事が解って頂いたでしょうか。このエアセクションを通過する際には短絡状態でも、ある程度の速度なら問題なく通過出来ますが、力行や回生ブレーキといった架線に電力の変化を与える事はアークの発生などがあるため出来ません。そこで、エアセクション部の両架線部をコネクターにより接続し、同じき電区間として力行や回生ブレーキの使用を出来るようにしたものがあり、これをエアジョイントと言います。

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エアジョイントの様子。よく見ないとエアセクションなのかはわかりません。

 因みにエアセクションの問題である溶断に強いのは剛体架線と言われています。しかし、集電装置の追従性などの問題により高速化が難しい問題もあります。この他に温度上昇に耐えられる架線の研究なども行われているようです。
 低速で電気車が走行する停車場などでは、さらに線路の分岐もあって、この部分でもエアセクション程ではありませんが交わる箇所でのアークが発生し易くなっています。かといって、エアセクションを設置するのには無理があります。そこで考え出されたのが、直流電化区間では『FRPセクション』、交流電化区間(交流の位相差が無い(同相)に限る。)では『碍子型同相セクション』というものがあります。

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写真は直流区間に採用されているFRPセクションで、き電区分の間に挿入して使用します。アークなどが発生する事もありますが、エアセクションよりは丈夫な構造という事で採用されています。高速走行の多い本線で使いたいのですが、FRP=繊維強化プラスチックは固いため、集電装置を傷め易い欠点があり、主に停車場構内に限定されています。

セクションの標識

 エアセクションなどのセクションがある箇所を示す標識は『電車線区分標』があります。

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左が電車線区分標。右がエアセクション標識です。

 しかし、運転士の勘違いや見落としなどによるエアセクションが原因による架線トラブルがあるため、列車がエアセクション区間内である事を知らせる『エアセクション標識』もつくられました。

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上述のエアセクションの様子を見た写真をもう一度見てみると、架線柱の一番手前には「電車線区分標」がありますね。で、その先を見ると黄色い看板があります。なんでしょう?

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電車線区分標のある架線柱の次の架線柱には左の「×」印が書かれた看板となっています。これはエアセクション内にいる事を表しており、電気車1両では動かす事が出来なくなり、救援手配が必要です。さらに次の架線柱に進むと写真右のように「セクションクリア○(数字)」が書かれ、2、4、6、8、10、12といった具合の看板になります。これはエアセクション外に出た車輛数を表します。写真では6両がエアセクション外に停車している。というもので、運転士が自分の列車の編成両数を確認し、エアセクション内に何両目が停車しており、どのパンタグラフが上昇可能かを判断する目安の標識です。この標識はJR西日本のタイプで、JR東日本をはじめ各鉄道会社で見る事が出来、その標識は多少の違いがあります。この他に音声により、乗務員にエアセクションである事を知らせる機能を使用している鉄道会社もあります。

デッドセクションとは?
 電化された鉄道において、異なる電気方式(直流と交流)や会社間の相互乗入れに設置されるセクションの一つで、架線に給電されていない区間や地点を言います。無電区間や死電区間などとも言われます。

●デッドセクションの設置される場所と名称

①直流電化区間と交流電化区間の境界。これを電流区分セクション交直セクションと言います。

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例:山陽本線門司駅構内 関門トンネルの近くにあります。

②同一の電化方式ではありますが、使用する電圧の異なる区間の境界。例えば、直流750Vと直流1500Vといったものです。これを電圧区分セクションと言います。
③同一の電化方式、電圧の交流電化方式の区間で、交流電流の位相(単相交流と三相交流など)が異なる境界。変電所の送電区間の境目となる場合が多いです。これを異相区分セクションと言います。
④交流電化方式の区間で、周波数の異なる区間の境。これを周波数区分セクションと言います。
⑤電源方式、電圧が同一で、会社間の電源分離を行うために設置されるもの。また、上下線や設備上電気的に分離する場合。(本線と留置線など)これを電源区分セクションと言います。

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例:左より、東北本線、東武日光線栗橋駅構内。JR東日本と東武鉄道の直通特急列車運転のための連絡線にあります。中央、御殿場線、小田急小田原線松田駅構内 特急「あさぎり」号に使用する連絡線にあります。右、東海道本線、伊豆箱根鉄道駿豆線三島駅構内 特急「踊り子」号、伊豆箱根鉄道の車輛の甲種輸送用に用いられる連絡線にあります。
⑥異なる電化方式、電圧を用いる路線が平面交差をする地点。これを平面区分セクションと言います。
※③及び④は交交セクションとも言います。
 デッドセクションでは碍子やFRPなどのインシュレータ(絶縁材)をトロリー線に組み入れる方式と2つのエアーセクションの間に無加圧区間を設置する「中セクション方式」のどちらかで絶縁を行っています。後者の中セクション方式は、惰行運転区間が長いため高速運転ではやや不向きで、列車本数や編成長の制約を受ける欠点があります。
東海道新幹線では昭和39年の開業に際して、中セクション方式を採用した上、独自の改良を施したことで有名です。2つのエアーセクションの間に1km程度の中間セクションを設置。真空開閉器を用いて変電所やき電区分所に接続し、列車が中間セクションを通過している間にわずかな無電時間(0.05~0.3秒)をつくり、その間に進行方向後方から前方の変電所に自動的に切り換えるき電区分切替セクション方式を開発し、惰行する事無く異相区分セクションを通過できるようにしています。

●デッドセクションの標識

 デッドセクションでは列車が力行(加速)のまま通過をすると、パンタグラフが送電区間を出た瞬間に大きなアークが発生し、架線切断などの事故を起こす事があるため、『架線死区間予告標識』、『架線死区間標識』を設置するほか、切換地点である事を知らせるものを設置し、運転士に知らせ、惰行状態で通過させなければなりません。

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左は架線死区間予告標識、中央は架線死区間標識、右はデッドセクションが近づいている旨を知らせるもの。

デッドセクションの種類

 デッドセクションには次の種類があります。
①車上切替方式
 電気車がセクションを通過する前に、主回路(電気車が電気を取り込み、主電動機などを動かすための回路)を解放して惰性で走行。その後、運転士が電気方式を切り替えてデッドセクションを通過します。車輛では切り替えた電力を検知すると主回路が閉じ、再び力行や制動が可能となる方式です。簡単に言えば、車輛に搭載された電源装置を切り替える方法です。
イ.イメージ

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デッドセクションを上から見るとこのような感じで、電気が分けられています。(交直流の場合。)

ロ.外観の様子

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写真は常磐線取手~藤代間にあるデッドセクションの様子です。左は外観の様子。中央は死電区間の様子。右はセクションを通過するE531系の様子。通過中(電源切替中)は行先表示が消えています。手前のLEDでは切替忘れ防止のためのプリンカーライト(点滅しています。)です。
ハ.車内の様子

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国鉄形電車では、セクション通過中は車内の照明が消え、非常灯のみが点灯しています。回路を切り替えるため、ブレーカーが動作して停電状態になるためです。JRになり登場した新型電車では補助電源が動作し、室内灯は消える事がありませんが、空調装置やLED案内表示器の表示などが止まったり、消えたりするのでセクションの通過をうかがい知ることが出来ます。もちろん、これらを見れるのは交直両用電車であり、内燃車や客車のように架線からの電気の供給を受けない車輛では見る事が出来ません。

②地上切替方式
駅の構内で架線に流す電流を切り替える方式です。主に電気機関車が牽引する列車において、直流電気機関車から交流電気機関車へ交換するといった時に採用される方式です。電車が主流の日本では採用例が少なく、仙山線作並駅、奥羽本線福島~庭坂駅間、東北本線黒磯駅の3例しかありません。現在は東北本線黒磯駅のみとなっています。
設備など様々なものがたくさん必要である上、電気区分が非常に複雑であり、1つ間違えてしまうと(例えば直流電気車のいる架線に交流を流してしまう。)大変な事になってしまいます。黒磯駅ではかつては客車列車、貨物列車がひんぱんに機関車交換を行う光景が昼夜問わずに見られましたが、現在は貨物列車のみであり、機関車も交直両用電気機関車が主力であるため、車上切替方式に転換する事が決まっており、まもなくこの方式は日本から消えてしまいます。
イ.イメージ図

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イメージ図は直流電気機関車から交流電気機関車に交換する時のものです。直流区間を直流電気機関車が牽引してきて、駅に到着。切り離した後に直流の流れる引上げ線へ。その後、電気を交流に切替えて交流区間に引上げ線にいる交流電気機関車を連結して発車となります。縦2本線はセクションで、細かく電気区分が切られています。

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直流電気機関車(EF66)(写真左)と交流モードの交直両用電気機関車(EH500)(写真右)の交換の様子。同じ線路で電気方式の異なる車輛を見る事が出来ます。
ロ.地上切替方式のみに見られる標識
架線に流れている電気が目視できれば良いのですが、電気は見る事が出来ません。そこで、流れている電気がどちらかなのかが分かる標識があります。黒磯駅にしかない、特別な標識です。
架線電源識別標識

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この標識の先にある架線に流れている電気を示す標識です。写真左の青い灯が縦2つ点灯している時は『直流』、橙色の灯が横に2つ点灯している時は『交流』を示しています。
進路電源識別標識

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入換作業を行う際、進路にあたる架線の電気を示す標識です。写真左の青い横棒が2本点灯の時は『直流』(写真はイメージです。)、写真右の橙色の波形が点灯している時は『交流』を示しています。