皆さんは、ネコさんのような経験があるでしょうか。路線にもよりますが、次の列車が来るまでに何時間も空く路線や、数分後に来る路線もあります。その理由は田舎の路線だから。などあります。ここでは、その理由の一つである「閉そく」というものを学んでみましょう。そして、閉そくに関係する「信号機」というものがありますが、種類や位置を学んでみましょう。

閉そくとはなんだろう?

「閉そく(閉塞)」とは聞きなれない言葉ですね。辞書で調べてみましょう。「閉じて塞ぐこと」や「出入りが出来なくなる事」を言います。鉄道の世界ではこの「閉そく」とは何でしょう?鉄道が生まれてしばらくは閉そくというものはなく、最初に登場したのは信号機です。

信号機の登場

1830年に世界初の鉄道としてリバプール・アンド・マンチェスター鉄道がイギリスに開通しました。この時は信号機はなく、機関士の注意力に頼って列車を運転していました。

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やがて列車の高速化が進むと、注意力だけに頼るのでは安全を確保する事が難しくなり、係員を配置し、駅構内や沿線の警備を兼ねながら、列車に対して手信号で指示を与える方法になりました。止める必要のある時だけ身振りで情報を伝えるシンプルなもので、やがて進行又は停止を示す動作が決められます。この係員を「オフィサー」などと呼ばれていました。まだ、この頃には閉そくという概念は生まれていません。
その後、先行する列車の追突事故を防止するため、一定間隔にオフィサーを配置し、自分の前を列車が通過した後、時間を測り(当時は時計が普及しておらず、砂時計を用いていました。)、一定時間前ならば徐行、一定時間以降ならば進行の指示を与える方法が行われました。難しい言葉では「時隔法(じかくほう)」と言います。時間を測るよりも電話などの通信設備を使えば良いのでは。という意見もありますが、当時は電話がまだ発明されていませんでした。
オフィサーは信号の現示をする仕事のほか、警備の仕事もしていたため、持ち場に常時居る訳にもいきませんでした。また、機関士は近づくとオフィサーを探し、手信号を読まなければなりませんでした。これらの問題を解決するため、1834年に初めて信号機が登場します。「方形板信号機」というもので、オフィサーが行う手信号の代わりとして、列車に対して板が正対している向きであれば停止、線路と平行であれば進行としており、先行列車の時間間隔が伝えられるようになっていました。

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方形板信号機

同じイギリスにあるグレート・ウエスタン鉄道では1837年にボール信号機が登場しました。

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ボール信号機

この信号機は赤いボールを吊るしてその位置により、停止か進行かを表す方式です。ボールが高い位置にある時(進行を表す時)を「ハイボール」と言い、鉄道係員の業界用語になりました。ちなみにこのボール信号機はアメリカでも使われており、隣の駅から係員が望遠鏡で監視していました。係員が監視しながら、バーボンをちびちび飲み、ボールが上がったら列車が来るの合図なので、その時にソーダ水を入れて飲み干したことからアルコール飲料の「ハイボール」の語源ともなっているそうです。
グレート・ウエスタン鉄道では1840年に円板方形板信号機も導入しました。方形板信号機の改良型で、停止指示の時だけ赤い板が見える仕組みに、進行も表示できるようにしたものです。進行の時は白い円板(後に赤色に変更)が、停止の時は黒色の方形板が正対するようになりました。方形板信号機では赤い板を見落とすと信号無視になりますが、円板方形板信号機では赤い円盤を正確に確認しなければ進行してはならないルールとなり、安全度が向上しました。この「信号の指示(現示)が不明な場合は停止として扱う。」という考え方は、現在の鉄道信号機でも用いられています。
その後の18世紀末より、遠距離通信の手段として用いられていた腕木通信を参考に「腕木信号機」がつくられました。

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腕木信号機(写真をクリックすると拡大して見れます。)

この腕木信号機は1841年に登場しました。水平の時は停止を表し、斜め45度で進行を表します。(写真は停止現示。)進行は夜間時は白色灯でしたが、見易くするため、後に緑色になりました。
1830年頃より電信技術が発達し、次第に実用的長距離通信手段として普及が進みました。

閉そくの登場

 鉄道が誕生し、次第に技術の進歩などにより列車は高速化していきました。鉄道車輛は自動車と比べても制動距離(ブレーキをかけて止まるまでの距離)が長く、車輛や列車を発見してから、ブレーキを扱っても衝突を防ぐ事は出来ません。
 閉そくの考え方が登場する以前は、列車の出発前に隣り合う駅同士で連絡をした後、ダイヤグラムに従って列車の運行が行われていました。しかし、列車の遅れや事故などの情報を相手駅に連絡するも取れない。(難しい言い方で、「通信の途絶」と言います。)場合や、駅係員(人間)の憶測や思い込みなどによって衝突や追突事故が多く発生していました。この事故を防ぐ方法として「閉そく」が考えられました。
 「閉そく」とは英語でblock system(ブロック システム)と言い、一定区間ごとに区切り、その区間を1つの列車に占有させる方法を言います。この区間を「閉そく区間」と言います。

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閉そく区間のイメージ

閉そく区間には大原則があります。
1つの閉そく区間には同時に2つ以上の列車は入らない(入れない)。つまり、1閉そく区間は1つの列車に占有させる。
現在においても、この大原則は信号保安システムの最も基本となっています。鉄道業界では常識になっています。

閉そく信号機

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さて、この閉そく区間は停車場と隣り合った停車場までを1つの閉そく区間としました。この境界として、すでに登場していた腕木信号機などが使われるようになり、この信号機を「閉そく信号機」と呼びます。

停車場とは?

先ほどから「停車場」という言葉が数回出てきましたが何なのでしょう。一般的には「駅」という言葉が用いられています。旅客や貨物を扱うものが一般的で、専門的な「停車場」では・・・
車輛の組成や留置などを目的とした「車輛基地
車輛の組成などを専門とする「操車場
列車の交換や通過待ち合わせなどを目的とした「信号場
があり、これらに共通する事柄があります。何でしょう?それは、『複数の線路がある』という事です。解り易い考え方にしましょう。停車場を家に置き換えてみて下さい。
皆さんのご自宅は一戸建て?借間?どのタイプでも共通すると思いますが、「複数の部屋」があるでしょう。リビング、居間、便所、浴室、納戸…これら一つ一つの部屋がありますが、それぞれ一線ずつの線路と思えば解り易いでしょう。
家には複数の部屋が、停車場では旅客を扱うホームのある線路などが複数ありますが、もし無人であった場合にどこに行けば良いかわかりませんよね。家に勝手に上がり込んで、好きな所に居られてしまっては困ります。鉄道も同じで、お客さんを降ろしたいのにホームの無い線路に旅客列車が来ては困ってしまいます。
そこで、指示をする人がいなければなりません。家では主人と言いますが、停車場では『駅長』(現業機関よりその他の呼び名もあります。)と言います。
皆さんが来訪者に「居間へどうぞ。」と言って、部屋に案内をするのと同じく、停車場でも駅長がやってくる列車に対し、どこの線路に入線をするように指示を与えます。そして、もう一つ。来訪者が帰る場合に皆さんが許可を与える(もう、お帰りですか。と言いつつ玄関にて見送る)のと同じく、列車が停車場から発車するための許可を与えるのも駅長の役割です。

停車場の閉そく信号機

駅長が、停車場にやって来る列車や出発を求める列車に対してその可否を伝えなければなりません。そこで、駅長の意思を伝えるのが信号機です。この信号機には次の名前が付けられています。
●列車に対し、停車場に『進入』を許可する閉そく信号機を『場内信号機
●列車に対し、停車場から『進出』を許可する閉そく信号機を『出発信号機
と言います。この2つの信号機は駅長の意思を表す大事な信号機で、別名『絶対信号機』としても扱われ、信号の現示には絶対に従わなければなりません。(停止現示だからといって、無視をして進入は許されません。)

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停車場の入口に信号機が見えてくると、その信号機は多くが場内信号機。線路名の下に場内信号機を意味する「場」の文字があります。進出する側には出発信号機のの下に「出発」や「出」と書いており、停車場のホームから見る事が出来ます。(場内信号機は車内から見る事が出来ます。)
上述の1閉そく区間に当てはめると、次のようになります。
停車場から次の停車場までの区間
出発信号機から次の停車場の場内信号機まで。
停車場内
場内信号機から出発信号機まで。
が一つの閉そく区間となります。

停車場の区域

停車場は一つの家に例えると解り易い。と申しましたが、停車場の区域、例えるなら家の大きさとはどうしているのでしょう。これを「停車場の区域」と呼びます。
この区域も皆さんのお家で考えると解り易いです。一般的な家屋では、建物の周囲に塀があり、「門扉」というものがあり、この門扉を通らなければ中に入る事が出来ません。この門扉が停車場では「場内信号機」に相当します。次に出ていく時に「玄関」から出発をしますね。この玄関が停車場では「出発信号機」に相当します。
この門扉と玄関の位置関係を考えてみて下さい。一番外側にあるのは「門扉」ですね。普通は門扉の外に玄関があるというお家は聞きませんよね。停車場も同じで、場内信号機が一番外側に配置され、停車場の区域の定義は『場内信号機とその反対線路の場内信号機までを境界』としています。その反対線路とは、異なる方向から進来してくる、下り、上りという事になります。
ちょっぴり文字ではイメージがつきにくいので、イラストにしてみましょう。赤い破線が停車場内となります。
●単線区間の停車場の境界のイメージ

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●複線区間の停車場の境界のイメージ

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●車止めのある停車場の境界のイメージその1

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イメージ図は単線区間で終点駅を停車場としている場合です。この場合は、線路の無い側に場内信号機が設けても意味がありません。この様な場合の停車場では場内信号機から車止めまでとしています。
●車止めのある停車場の境界のイメージその2

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停車場の中に留置線があるような場合です。車止めも境界の一つとなりますので、停車場の境界はイメージ図のような形になります。留置線の規模が大きくなると「車輛基地」と呼ばれます。停車場の一つに「車輛基地」がある。と申しましたが、停車場なのかどうかの判断に、場内信号機、出発信号機が必要である。という事があるので、車輛基地を眺めて、その信号機が無い場合は近隣の停車場の一部なんだ。と判断ができます。
●特殊な停車場。

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写真は中央本線日野駅の風景です。信号機が並んで立っていますが、この信号機をよく見てみると左側の信号機は「本一出」とあり、本線第一出発信号機という事です。右は「中三場」とあり、中線第三場内信号機という事で、出発信号機と場内信号機が並んでいる、妙な光景が見られます。一体どういう事なのでしょう。その答えは駅の線路配置にあります。

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日野駅を略図にするとこのようになります。立川寄りにホームがあり、その先に側線(中線)があります。駅の地形上このようなスタイルになっています。ホームの先にこの並んだ信号機があるのですが、一つは玄関(出発)へ進み、もう一つは別の部屋(場内)に進むため、性格の異なる信号機が並んでいます。
どうでしょう?ここまで「閉そく」と「停車場」、「信号機」など出てきましたが、ご理解頂けたでしょうか。

停車場以外の駅


 皆さんの利用する駅を見渡してみて下さい。ネコさんの言っている「信号機が見当たらない」という駅でしょうか?もう一つ、見てほしい物があります。それは「分岐する線路があるかどうか。(ポイントがあるかどうか。)」です。(保線用の線路は除く。)
どちらかの条件を満たしている駅は「停車場」とは言わず、『停留場』と言います。この停留場は1閉そく区間の中にある駅で、他の本線や待避線などの副本線を構成するポイント(分岐器)を持たないのが特徴で、本線のみで構成されています。本線のみでシンプルに構成されるため「棒線駅」とも言います。
※現在はルールが変更となり、区別なく『停車場』という呼び名に統一されています。
 この『停留所』にも境界があります。停留所の近辺を散策してみると、『停車場境界標』などというものが、線路脇にあります。これは、この停留所の場内信号機に相当する位置にあり、停車場の区域の考え方同じく、反対線路の場内信号機に相当する位置までを言います。

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鉄道事業者に呼び名が異なります。例として、左から「停車場区域標」(JR)、「停車場防護区間区域標」(小湊鉄道)、「駅境界」(京浜急行)
 どちらも区別が無くなり、少しややこしいですが、皆さんの使っている駅や旅先で見かけた駅がどちらになるか、もうわかるでしょう。
停車場境界標の設置のイメージ
●単線区間

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●複線区間

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 もう一つ、ちょっとしたトリビアを。停車場の中心を示す標もあります。これも鉄道事業者により呼び名が異なりますが、『停車場中心標』(JR)と言います。ただの中心を表すことなかれ、列車を運転するにあたり、通過駅の時刻を確認する時に何を基準にしているかご存知ですか?
一つは駅長事務室というもの。それが無い場合はこの標を通過する時を通過時刻としているのです。つまり、この標がある駅はホーム上に駅長事務室が無いとも言えるのです。

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いろいろな閉そく方式

「1閉そく区間に1列車を占有させる。」ために、まず1つの列車を決める必要があります。そして、その列車に対してその閉そく区間を占有する列車である事を証明する物を持たせなければなりません。この事柄を『閉そく方式』と言います。この閉そく方式には通常用いる「常用閉そく方式」と線路の故障や工事などで用いる「代用閉そく方式」の2つの種類があります。

軌道回路とは?

本題へ進みたいところですが、皆さんに1つだけ説明をする用語があります。『軌道回路』という言葉です。

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上のイラストのように乾電池と電球をつなぐと電池からの電気が流れて、電球が点灯します。電気は再び電池に戻ってきますね。このような構成を「回路」と言います。
さて、この回路に少し細工をしてみましょう。

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回路の途中にもう1本、別の回路を設けました。そちらの方へ回路を切り替えると電球の灯はどうなりますか?そうです、灯は消えてしまいますね。別の回路に電気が流れて行ってしまった事が原因です。これを「短絡(ショート)」と言います。
この原理を鉄道に応用すると・・・

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鉄道では信号機が電球、レール(軌道)を配線とし、短絡させるのは車輛の車輪です。つまり、通常は信号機の一定の範囲(難しい言い方で、信号機の防護区間と言います。)に電流を流しておき、その回路内に車輛が進入すると、車輪を通した回路が構成されて、信号機は停止信号(赤色の現示)を出す仕組みになっています。これを「軌道回路」と言います。
この軌道回路は、車輛や列車を検知するだけではなく、レールの折損や短絡を誘引するもの(軌道短絡器)が介在したとなど、信号機に電気が流れない時は「停止現示」を出す仕組みになっており、このようにもしもの時に安全な側へ作用する構造を「フェールセーフ」と言います。

非自動閉そく方式(non-automatic block system)

簡単に考えると、人手を介する閉そく方式です。閉そく方式が発明されて生まれた閉そく方式で、列車本数が多くなった路線では自動閉そく方式へ変更されたほか、本数は少なくとも合理化などにより特殊自動閉そく方式に変更されています。現在ではごくわずかに見られる閉そく方式です。
この閉そく方式では、1つの閉そく区間に走行する列車に対して、1つ(1種類)の定めた通行票を持たせ、これを持たない列車を閉そく区間内に入れない事で、閉そくを実現するものです。
この通行票は閉そく方式により呼び名が異なりますが(国鉄時代は全て通票と呼んでいました。)、スタフ票券タブレットという名称で呼びます。スタフは登場が最初で、棒状の金具でした。やがて、票券やタブレットと同じもので代用されるようになります。票券、タブレットは「たま」とも言われ、下の写真のような円盤状の金属で、中央に空けられた穴の形状で閉そく区間を区別します。このたまを写真右の「キャリアー」に入れて(下部に入れる所があり、外からも穴の形状が確認できます。)運転士に渡し、駅長と共に穴の形状を確認して運転をします。キャリアーの他にカバンなどもあります。

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スタフ閉そく式
1つの閉そく区間で1つのみの「スタフ(staff:棒杖)」を使用し、スタフを持たない列車は出発させない事で閉そくを作る方式です。設備はスタフのみとシンプルです。スタフを扱う駅は起点駅(下のイメージではA駅になります。)のみとなります。

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スタフ閉そく式のイメージ図
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スタフ閉そく式で本来のスタフ(棒杖)を用いる津軽鉄道(左)と名鉄築港線(右)。(津軽鉄道は許可を得て撮影させて頂きました。)
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スタフ閉そく式を使用していても、通票と同じものを使っている路線が多い。

スタフのみと設備面では簡単ですが、スタフが戻ってくるまで次列車が発車出来ないため、運用面での制約があります。主に行き止まり区間となる路線で使用されています。

票券閉そく式
スタフ閉そく式の欠点として「同一方向へ連続して列車を発車出来ない。」というものがあり、これを改良した閉そく方式です。
この閉そく方式では「票券」と「通券(列車運転許可証)」という2種類の閉そく区間内を通るための通行証が登場します。前者の「票券」は丸い金属の円盤に丸形や四角形、三角形などの穴をあけたもので、隣接する「票券」を出す停車場と同じにならないように穴の形が指定されました。この「票券」はその停車場に1つしかないものです。スタフ閉そく式と同じく、特に機械は使用しません。後者の「通券」は平たく言えば、専用の用紙です。運転をしてよい区間と列車番号などを記載したものです。
1つの列車だけの時は「票券」を渡しますが、2本以上続けて列車を同一方向へ運転する時は、先発列車に「通券(列車運転許可証)」を発行し、最終列車に「票券」を持たせる仕組みとなっています。

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票券閉そく式のイメージ図

上のイメージ図で説明しましょう。A駅より①→②の順番に列車を発車させます。A駅から通券と票券が発行されます。
イ.A駅は通券を発行し、①の列車に渡します。①の列車はB駅まで進み、B駅に通券を渡します。追突事故を防止するため、B駅はA駅に①の列車が到着したことを伝えます。
ロ.A駅に停車している②の列車は同一方向への最終列車となるため、票券を渡します。B駅は票券をもった②の列車が到着するまで、列車を発車させる事は出来ません。②の列車がB駅に到着し、持っている票券を③の列車に渡して、A駅まで進んでよい許可を与えます。

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票券閉そく箱・・・票券を収納する箱。

③の列車がA駅に到着し、票券が戻ってきた事で、A駅から列車の運転が再び出来ます。
ハ.何らかの理由により、①の列車の後に③の列車を発車させる場合(運転する順番の変更)が生じた場合は、「票券」を持たせなければならないので、A駅から自動車などでB駅まで届ける必要があります。(④)この間は運転見合わせとなります。
票券閉そく方式により、運用効率は向上しましたが、常に票券のある停車場からしか連続して列車を発車させる事が出来ない上、運休や事故などにより順序が変更となった時には票券を陸送する欠点があります。続行する列車が無ければ、スタフ閉そく式と同じという事がお解り頂けるでしょうか。

タブレット閉そく式
 票券閉そく式では通券、票券を発行する駅から同一方向に連続して列車の運転をする事しか出来ず、運転する順序が容易に変更できない問題がありました。これを解決するために生まれたのが、このタブレット閉そく式です。票券閉そく式では閉そく区間において通行票を「票券」と言っていましたが、タブレット閉そく式ではこの票券が「タブレット」という言葉に変わっています。
1つの閉そく区間の両端停車場に複数のタブレットを収めたタブレット閉そく機(写真)を設置し、専用電話を用いて停車場間同士で打合せを行い、出発させる停車場を決めてから、タブレットを取り出して列車を運転する仕組みです。

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タブレット閉そく機

このタブレット閉そく機は、出発させる停車場でタブレットを取り出すと、到着側の停車場からはタブレットを取り出せない仕組みで、さらにそのタブレットが到着側の停車場に収められないと出発側の停車場からタブレットを取り出す事が出来ません。出発させる列車を変更する時は再度の打合せが必要となります。この打合せと列車の運転を見てみましょう。

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タブレット閉そく式のイメージ図

① A駅とB駅の閉そく区間ではタブレットの穴の形状は△です。隣り合う閉そく区間はそれぞれ異なったものを使用しています。
② A駅及びB駅のそれぞれの駅長が専用電話で連絡をし、どちらの駅から列車を出発させるか打合せを行います。
③ ここではA駅から列車を出発させる事にします。A駅駅長及びB駅駅長は共同でタブレット閉そく機を操作し、A駅駅長はタブレット閉そく機からタブレットを取り出します。(B駅でタブレットを取り出すとA駅では取り出せなくなる他、それぞれ単独で取り出す事も出来ません。)
④ A駅に停車している運転士と共に、タブレットの穴形状を確認し、運転士(列車)はB駅まで進みます。

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タブレットを渡している様子。

⑤ B駅に列車が到着(通過)した後、A駅に連絡を行い、タブレットをタブレット閉そく機に収納します。
※タブレット閉そく式では、列車の通過が出来るようになりました。これは、予め各停車場でタブレットを出す停車場を決めているからです。
列車が通過する様子を見てみましょう。(隣接する停車場と閉そくを決めてからの扱いです。)
① 駅長はタブレットを収納したキャリアーを通票授器にセットします。

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通票授器にセットされたキャリアー(タブレット)

② 列車の運転士又は運転助士は持っているキャリアーをホーム先端にある通票受器に引っ掛けて通過をします。

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通票受器とキャリアーを引っ掛ける様子。

③ そのまま、次の閉そく区間の通行証となる通票授器を手で拾い取るか、タブレットキャッチャーで自動回収します。

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キャリアーを手で拾い取る様子とタブレットキャッチャー。

この時、取り損ねたりなど受け取れない時は直ちに停車をして取りに行かなければなりません。通行証であるタブレットを持たずに閉そく区間内に進入する事は出来ないからです。


◎閉そく区間を作った後の停車場の取扱い
 ネコさんの言う通り、気付いた方もいらっしゃると思いますが、スタフ閉そく式、票券閉そく式、タブレット閉そく式、この後に紹介する連鎖閉そく式、連動閉そく式では、停車場間の閉そくを作った後に『信号機の防護区間』を作る作業があります。
 停車場内の絶対的権限は駅長にあるため、停車場内の安全をつくるのも仕事なのですね。

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上図のイラストに沿って説明しましょう。設定はA駅からB駅へ列車を進めるもので、閉そくは作っています。
① A駅駅長は出発信号機から場内信号機(停車場境界)までの間に車輛又は列車が無い事を確認します。
② 転てつ器を扱い、正しい方向へ進路が開通しているかを確認します。

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転てつ器の操作てこ

③ 出発信号機に進行を指示する信号を現示します。これでA駅の作業は終了です。
④ 受ける側となるB駅駅長は場内信号機(停車場境界)から列車の進入する線路の出発信号機(又は終端)までに車輛又は列車が無い事を確認します。
⑤ 転てつ器を扱い、正しい方向へ進路が開通しているかを確認します。
⑥ B駅場内信号機に進行を指示する信号を現示します。(通過の場合は通過信号機も合せて扱います。)

★連鎖閉そく式
 タブレット閉そく式の通票(タブレット)を用いない方式で、停車場場内信号機付近に短い軌道回路を設置します。隣り合う停車場の場内信号機2つの軌道回路を列車が通過する事で、閉そく区間内の列車の有無を検知する仕組みとしたものです。
 閉そくを作る機械の名称が変わり、『連鎖閉そく機』と言い、停車場同士の打合せや防護区間を作る作業はタブレット閉そく式と同じです。両停車場で同一方向へてこ扱い(分岐器などの進路を作る。)を行わないと列車を出発させる側の停車場の出発信号機には進行を指示する信号が現示されない仕組みとなっています。

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連鎖閉そく式のイメージ図

連動閉そく式
 連鎖閉そく式に似ていますが、停車場間の閉そく区間に連続した軌道回路を設けた方式で、列車の在線を確認するメリットがあります。この方式で閉そくを作る時は『連動閉そく機』を使います。

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連動閉そく式のイメージ図

自動閉そく方式(automatic block system)

  通常時は人手を介さない閉そく方式で、大都市など列車密度の高い線区向けに、自動で列車や車輛を検知する『軌道回路』を使用しているのが特徴です。列車密度が低い地方線区で使われていた非自動閉そく方式の線区でも軌道回路を付加した自動閉そく方式が開発され、現在では多くの路線で使用されています。この自動閉そく方式は集中制御が可能な上、保安度が格段に向上する利点があります。
 この集中制御をするための機器を列車集中制御装置CTCCentralized Traffic Control)」と言い、路線や一定の区間単位で信号や分岐器など連動装置を一括で遠隔制御出来るようにしたシステムです。このCTCが登場する以前は、各々の停車場に設けられた信号扱い所にて行われており、運転状況の把握は電話によるものでした。路線を統括する指令所では、それぞれの停車場から伝えられる連絡を待って、状況の判断や指示を出さなければなりませんでした。
 そこで、各停車場の信号機や分岐器とを接続する「駅装置」というものを設置し、駅装置とCTCセンターにある中央装置を結び、一括制御するシステムが考えられて登場しました。昭和33年に熱海と伊東を結ぶ伊東線に初めて導入され、昭和39年に誕生した東海道新幹線で本格的かつ大規模に導入が行われました。
 地方ローカル線を中心に導入が進められると同時に、新しい技術も開発されて自動進路制御装置(PRCProgrammed Route Control)や列車運行管理システムが登場します。全国の多くの路線で、これらCTCシステムを導入しており、例えばJR東日本ではシステムを更に進化させた東京圏輸送管理システム(ATOS:Autonomous decentralized Transport Operation System)や新幹線総合システム(COSMOS:Computerized Safety,Maintenance and Operation Systems of Shinkansen)があります。

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※CTC装置の様子。制御する線路に在線する列車が一目瞭然でわかります。何かあれば、すぐに対応が出来るなどの利点があります。

★自動閉そく式
 停車場内及び停車場間に連続した軌道回路を設け、車輛の車輪で回路を短絡させる事で閉そく、信号を扱う方式です。
 軌道回路が連続して設けられているため、停車場間に複数の閉そく区間を設定する事も可能であるため、列車本数を増やす事も可能です。この停車場間の閉そく区間に設けられる信号機を『閉そく信号機』と言います。(鉄道設備のお部屋の閉そく信号機でもう少し詳しく説明しています。)

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停車場間にある閉そく信号機。信号機の下に「4」の文字があり、第4閉そく信号機の意味です。

この閉そく信号機の特徴は、信号機の内方(防護区間)の安全を保障するもので、列車の進み具合で自動で現示されます。つまり、信号機自体を操作する事が出来ない特徴があります。
 停車場で複数の人がチェックする非自動閉そく方式とは異なり、信号機などの確認は運転士一人の注意力に頼らなければならないのが欠点で、運転士をサポートするATSなどの保安装置の導入が必ず必要になります。
★特殊自動閉そく式
 停車場間には軌道回路を設けず、停車場内のみに軌道回路を設けた閉そく方式で、単線区間専用の閉そく方式でもあります。
① 軌道回路検知式
 連鎖閉そく式を自動化したもので、軌道回路による列車位置をもとに、停車場の連動装置とつながっている駅連動装置制御盤をCTCで遠隔操作又はARC(自動進路制御装置)での制御を単独による自動制御としたものです。多くの単線区間で使用されている方式です。
② 電子符号照査式
 停車場間両駅にある閉そく装置が列車に付けられた固有番号を照査し、記憶する事で自動的に信号の制御を行い、閉そくを作る方法。地方ローカル線のCTC化が安価かつ早く出来る利点がある一方で、故障時などの取扱いにおいて欠点が多い特徴があります。
★車内信号閉そく式
 車輛(運転台)に信号を表示する方式です。通常はATC(自動列車制御装置)と組み合わせて使用されます。地下鉄や新幹線などの高速運転により、地上信号機が設置できない、確認が困難などの理由によるもので、この他高頻度運転の行われる路線にて採用されています。
 先行する列車との間隔や進路の条件に応じて、列車に対し許される速度を表示するものです。

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車内信号の例。速度計の周囲にある0、15・・・といった数字が信号現示になります。

信号の現示は速度計の周囲にある速度表示を点灯させる事で運転士に知らせます。0と×(写真では左下と下部にある)が現示された場合は停止現示となります。0が点灯した場合は条件により、停止現示を超えて運転をする事は可能ですが、×の現示の場合は場内信号機や出発信号機といった絶対信号機であるため、停止現示を超えての運転は出来ません。車内信号は速度の指示のほか、列車位置の検知も兼ねており、後方の列車はその位置をもとに信号現示が出されます。
 線路には信号機が無いため、閉そく区間の位置が判り難くなっています。そこで、閉そく区間を識別できる『閉そく境界標識』が軌道回路の始端に設置されています。

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閉そく境界標識はいくつか種類があり、出発信号機では「出」、場内信号機では「場」(写真は第5場内信号機)、閉そく信号機はその閉そく区間を表す数字(写真は第5閉そく信号機)で表しています。
◎列車の間隔を確保する装置による方法
 この方法は「閉そく方式」とは異なるものですが、近年の技術向上により、従来では考えられなかった新しい発想で生まれたものです。
 ATCやデジタルATCなどATC制御されるものを条件とし、閉そく区間に頼らず、ATCの間隔制御のみによって運転をする方法です。
 これらATCは先行列車との距離情報と自列車の減速度をもとに列車間隔を制御するもので、「1閉そく区間は、1列車に占有させる。」従来の閉そくの概念ではなく、「ATCにより、列車間隔を安全かつ適正な間隔に調整する。」という概念に変化したもので、列車検知は従来の軌道回路となっています。これをATC方式と言います。
JR東日本ではさらに進化した方式で、軌道回路も頼らない方法を実用化に向けて開発が進んでいます。

代用閉そく方式

 装置や線路の故障、計画的な工事などの理由により、常用閉そく方式が使用できない場合に用いられる閉そく方式です。「何か難しそう。」と身構えてしまいそうですが、この代用閉そく方式を行う場合に限って特別な考え方をするといった事はなく、自動閉そく方式では、非自動閉そく方式に似た運転方法になると考えると解り易いでしょうか?さらに言えば、「故障や工事で通常の信号機などの機器が使えないため、これらを人の手で代わりに務める閉そく方式」です。
 用いられる言葉で、戸惑ってしまうかもしれませんが、この2つの言葉の意味を理解すると解り易いと思います。
指導・・・人間の事です。非自動閉そく方式で言う、「スタフ」、「票券」の事を言います。
代用閉そく方式を行う際は、閉そく区間の通行票を物ではなく、人で行う場合に出てくる言葉です。この人を『指導者』と言い、この人には「指導者 ○○駅~△△駅」と表記された腕章をつけています。
その閉そく区間の閉そくが出来上がると、列車に通行票として添乗します。

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通信・・・電話などの通信機器の事です。停車場間で閉そくを作るため、連絡を取り合う方法の事を言います。

※常用閉そく方式から代用閉そく方式に移行する時は、その区間に列車や車輛が無い事を確かめた上で行います。では、どんなものがあるのでしょう。

指導式

 単線区間及び複線区間で単線区間を行う場合に行われる代用閉そく方式です。非自動閉そく方式の一つ、「スタフ閉そく式」を行う方式と考えると解り易いでしょう。

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  A駅、C駅は停車場。B駅は停留場ですね。イメージ図の設定はC駅で工事を行うために、A駅からB駅に指導式を行う。という設定です。破線は工事のため使用できない線路になります。A駅からB駅の実線が使用する線路、つまり指導式となる区間です。

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 指導式を行うにあたっては、A駅からB駅までにある出発信号機、閉そく信号機は使用しません。手信号で列車の運転を行います。そして、閉そく区間の安全を保障する必要があるので、「指導者」という1人を用意します。この指導者が「スタフ」の役目となります。起点となるA駅で用意し、指導者を運転士と共に区間などを確認して添乗します。B駅に着いたら、A駅に戻る列車に指導者を添乗させて、A駅に戻ります。
 以降は同じことを繰り返します。余談ですが、A駅からC駅が本来1閉そく区間となりますが、途中の停留所であるB駅までを1つの閉そく区間する。つまり、1閉そく区間の中で、閉そく区間を分割する事を「停車場間の分割」と言います。

指導通信式

 指導式と違って、「通信」という文字が加わりましたねぇ。指導=指導者と通信=電話など通信機器を用いる代用閉そく方式になります。非自動閉そく方式の一つ、「票券閉そく式」を行う方式と考えると解り易いでしょう。同一方向へ連続して運転を行う場合に行われるものです。

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 イメージ図の設定は、B駅とC駅の間で上り本線の×印で土砂崩れがあり運転が出来なくなってしまいました。調べてみると下り本線は使用できる事が判明しました。1閉そく間はA駅からC駅までで、この区間の上り本線は使用不可ですが、下り本線は使用が可能という事です。

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①A駅とC駅の駅長はそれぞれ、指導通信式を行う専用の電話を選定します。
②指導者を用意する駅を決めます。起点側や使用する線路の通常の方向の駅長が用意するのが一般的です。イメージ図では下り本線を使用する事から、A駅駅長が指導者を用意します。

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③A駅からC駅で連続して運転を行うため、1本目の列車には『指導券』という紙片を運転士に渡し、C駅までの運転します。票券閉そくの通券に該当するもので、閉そく区間の安全を保障しています。この指導券を携えた列車がC駅に到着したら、C駅の駅長はA駅に到着した事を伝えます。

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④A駅より、同一方向へ運転する最後の列車に指導者を添乗させ、C駅に向けて列車を運転を行います。もう一つポイントとして、C駅よりA駅へ指導券を用いて列車を運転する事は出来ません。指導者がC駅に到着したら、C駅の駅長はA駅の駅長に連絡をします。

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⑤指導者がC駅に行ってしまったので、A駅からの列車の運転は出来なくなり、C駅よりA駅に向けて、反対列車(イメージ図では上り列車)に指導者を添乗させて運転を行います。反対線路を逆走する形になりますので、出発信号機は使用できません。このため、手信号や代用信号機(写真)を用いて発車させます。A駅も同じく、場内信号機が使用できないので、A駅場内信号機に相当する位置に係員を配置して、C駅からやって来た列車をそこで、停止させます。駅長の許可がおりると手信号でA駅に向かいます。
A駅駅長はC駅駅長に列車が到着した事を連絡します。
以降は、この繰り返しとなります。

指導指令式

 単線区間、複線区間で単線運転を行う場合に行われる代用閉そく方式です。名前に『指令』という言葉が入っているのがこのポイントであり、特徴でもあります。
 CTCなどを使用している区間に限られており、閉そく区間内において列車又は車輛の有無を確認できる装置及び列車無線などの通信設備が利用できる場合に、CTCなどの輸送指令員が閉そく取扱い者行う、つまり駅長の代行を行う方式です。内容は指導通信式と同じです。

通信式

複線運転区間に行われる代用閉そく方式です。1つの線路において同一方向へのみ運転されるというのが条件になります。停車場間を1つの閉そく区間として、発車側の停車場から到着側の停車場へ通信を用いて連絡を行い、到着すると到着側の停車場から発車側の停車場へ連絡を行う方法です。

指令式

複線運転区間に行われる代用閉そく方式です。CTCなどを使用している区間に限られており、閉そく区間内において列車又は車輛の有無を確認できる装置及び列車無線などの通信設備が利用できる場合に、CTCなどの輸送指令員が閉そく取扱い者行う、つまり駅長の代行を行う方式です。内容は通信式と同じです。

無閉そく運転

 代用閉そくは停車場間で閉そくを作って行うもの。というのが解って頂けたでしょうか。自動閉そく方式を常用閉そく方式としている路線では、停車場間に「閉そく信号機」が設置されています。この信号機は「防護区間の状態と1つ先の信号機の現示状態を伝えるメッセンジャーの役割」をしており、自動的に現示が変化します。
 この閉そく信号機が『停止現示』の場合は、内方に列車がいる場合や故障が考えられます。誰にも管理されていないので、何が起きているかわかりません。また、進行を指示する現示が出るまでひたすら待つというのも、運転に重大な支障を与えると同時に、旅客サービス面でも好ましくありません。運転の支障を確認する必要があります。
 そこで、運転をする方法として「動力車を操縦する係員の注意力による方法。」(動力車を操縦する係員が前方の見通し、その他列車の安全な運転に必要な条件を考慮して運転する方法。)があり、その一つに「無閉そく運転」というのがあります。
 閉そく信号機の外方に停止現示で停止し、1分経過した後、ATSなどの保安装置を一時的に切った後、閉そく信号機内方へ運転最高速度15km/h以下で進入します。低い速度で運転する理由は、防護区間内に列車が存在していた場合や停止現示となる原因(レール折損や土砂崩れなどによる線路流出など)を発見した場合に、直ちに停止が出来るようにするためです。
 この無閉そく運転は次の閉そく信号機までとなっており、無閉そく運転を行っている区間内で、次の信号機の進行を指示する現示や中継信号機が停止以外の現示を認めても速度を上げてはいけません。この事柄が守られず、追突事故が度々発生し、安全性が低いという事から、現在では輸送指令との連絡を行い、指示をうけて行う「閉そく指示運転」に変更となっています。

閉そく準用法

 通信の途絶、その他何らかの理由により常用閉そく方式、代用閉そく方式のいずれも施行できない場合に行われていた方法で、現在は『伝令法』を除いて廃止されています。
 この方法は閉そく方式の概念をある意味無視した形であるため、準用法となっています。先行列車の到着確認などは一切行わず、ある一定の時間や間隔で列車を運転する保安度の低い方法です。通信設備の信頼性が向上した今日では、必要のない方法なのです。

伝令法(でんれいほう)

 停車場間において、列車が故障や事故など、何らかの理由で動けなく事がある場合などがあります。このような場合には他の列車などで救援に向かう必要があります。救援にあたっては、止まっている列車や車輛がどこにいるのか判らないため、注意が必要です。(救援や故障、逸走した車輛は移動禁止の処置を行います。)
 この時に使われるものが、『伝令法』です。鉄道に関する技術上の基準を定める省令第101号第2項を見てみると、「救援列車を運転する場合又は工事列車がある区間に更に他の工事列車を運転する場合にあって、その列車の運転の安全を確保できる処置」と書いてあります。
 簡単に言うと、1つの閉そく区間に1つの列車や車輛が存在する所へ、もう1つの列車を運転させる方法という事になります。次の場合に伝令法が行われます。
① 停車場間で故障等により停車した列車を救援する時。
② 大雪により、停車場間に停車した列車を救援するために排雪列車を運転する時。
③ 停車場間に停車している工事列車の区間に、別の工事列車を運転する時。
④ 停車場間において、事故等により残してきた車輛、又は停車場より逸走した車輛を回収する時。
のいずれかの理由で行われます。いずれも、大まかな場所は判明しつつも、車輛や列車が存在しているため危険な運転という事になります。
そこで、現在では保安度を高めるため
イ.閉そくによる方法
ロ.列車間の間隔を確保する装置による方法
ハ.動力車を操縦する係員の注意力による方法
の3つが加えられ、いずれも実施できない時の例外中の例外として伝令法が存在しています。閉そく準用法の一つとしていましたが、列車の救援が目的であるため、独立しました。伝令法は単線、複線問わずに行います
さて、文言だけでは解らないので、また、実際に列車を救援する方法をイメージ図を用いて説明をしましょう。

伝令法を施行しない方法(閉そく方式を変更しない方法)

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イメージ図はB駅とC駅の駅間で列車が故障のため動けなくなってしまった。という設定です。

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停車場であるA駅からC駅までが1閉そく区間であり、この間にある閉そく信号機は使用が出来るため、閉そく方式を変更する事なく救援が可能ですね。
そこで、A駅にいる列車(青色)を救済列車として指定し、故障した列車に向かわせます。救済列車は信号に従い、B駅まで進みます。故障した列車の閉そく区間の入口側になる信号機は停止現示です。このまま、救援列車が進入して良いと思いますか?
閉そく方式は変更していない訳ですから、みだりに入るのはご法度です。機外でいったん停車した後、輸送指令に連絡を行い、閉そく指示運転の指示をもらいます。
指示をもらった後、故障した列車のいる閉そく区間内に進入。故障した列車と併結を行います。次にA駅、C駅どちらに進めば良いでしょう。これも、閉そく方式を変更していないので通常通りとなり、C駅に向かっていきます。
この方法のポイントは。
①閉そく方式を変更しない。
②救済列車の設定。
③順方向にしか進めない。
④停車場間にある閉そく信号機からでも救済列車を設定が出来る。この場合は自動閉そく式と車内信号閉そく式の2つのみに限られます。

伝令法を施行する場合

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イメージ図はとある非自動閉そく方式を用いている線区で、D駅とE駅の間で車輛故障が発生した。という設定です。
この場合、閉そく方式を変更しない。というルールが当てはまるでしょうか。停車場間が1つの閉そく・・・停車場は誰のもの?そう駅長です。停車場の出発信号機、場内信号機は絶対信号機とも言われ、駅長の許可が絶対に必要なのです。また、閉そく指示運転は閉そく信号機に対するものであるため、適用は出来ません。このため、「閉そくによる方法」は出来ません。次に、列車の間隔を確保する装置による方法ですが、これはATCなどの保安装置という事で、非自動閉そく方式なので適用できませんね。最後に動力車を操縦する係員の注意力による方法。これは閉そく指示運転を意味するもので、閉そく信号機のない、この事例では適用が出来ません。という事で、伝令法を行うことになります。

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①D駅とE駅の駅長は打合せを行い、D駅からE駅までの1閉そく区間を伝令法施行区間にします。

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②次に、D駅またはE駅から『伝令者』という係員を決めます。この伝令者は伝令法を行っている。という証で出発した後、伝令者を決めた停車場まで戻らないと伝令法を解除しない。とさせるための役目であり、伝令者は閉そく区間の保証ではないという点がポイントです。
イメージ図ではC駅に列車がいるため、ここから救援に向かいます。C駅の列車を『救援列車』とし伝令者を添乗させて、発車します。

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③伝令者が帰って来るまでの間、D駅、E駅双方からは列車を絶対に発車させてはいけません。救援列車がD駅に戻り、伝令者が帰ってくると伝令法は終了です。

如何でしょうか。何やら難しいなぁ。という顔をしているように伺えますが。
もう一度、おさらいをしてみると。
伝令法を行わないで、救援をする場合
救援をする列車の名称は「救済列車」、閉そく方式は変更しない。そして、救済列車は閉そく信号機からも設定が可能。「閉そく指示運転」で進入し、救援する。救援後は順方向にしか進めない。閉そく方式の変更がないため、通常通りの運転は可能。
伝令法を行う場合。
救援する列車の名称は「救援列車」。駅長の指示で救援に向かう。つまり、停車場からしか発車する事が出来ない。この際に伝令者の添乗が必須。救援後は出発した停車場に戻る。伝令法を行っている区間には他の列車や車輛は一切進入は出来ない。

如何でしょうか。ちょっぴり最後は難しかったかな。