蒸気機関車とは?

 蒸気機関を用いた機関車で、Steam Locomotiveの頭文字をとって「SL(エスエル)」と呼ばれています。明治時代、日本に鉄道が産声を上げ、走り始めた時はこの蒸気機関車が最初となり、蒸気船に対して陸上での蒸気機関である事から「陸蒸気(おかじょうき)」とも呼ばれていました。この他、第二次世界大戦頃までは「汽罐車(きかんしゃ)」という表記もありました。この「汽罐」とはボイラーを意味しています。
蒸気機関車が誕生したのは1802年、英国の技術者リチャード・トレビシックが高圧蒸気機関を台車に載せたものが最初とされています。その後、1804年に鉄道史上初めて走行させました。この時、ペナダレン号と名付けられた蒸気機関車は10tの鉄と5両の客車に70人を乗せて、約16kmを4時間5分で輸送する事に成功しました。

蒸気機関車の動く仕組み

 蒸気機関車はどのように動くのでしょう。また、いろいろなものが付いていますが、どんなものかも合わせてみてみましょう。
動力源をつくる仕組み

c55-side.jpg


蒸気機関車は車輪の上に、運転台とボイラーが載っています。運転台は操縦をするほか、運転台のすぐ横に燃料となる石炭を燃やすための部屋「火室(かしつ)」があります。運転台の前方には「ボイラー」があり、この中は水で満たされています。燃やした石炭の熱を利用して、この水を温めてお湯にします。皆さんがやかんに水を入れて、温めていくと、蓋がカタカタ音を立てて動いたり、笛がピーッと鳴りますね。この時に蒸気という、水が沸騰して気体になったものが発生します。水よりも体積が大きいので、やかんの中には納まらず、外に出ようとする力が働いてやかんの蓋を動かしたり、笛を吹く力が生まれます。蒸気機関車も高圧の蒸気を動力源として、ピストンなど動かしています。

d51-kashitu-1.jpg     d51-kashitu-2.jpg


写真はD51形式の火室の外観(写真左)の様子です。赤い部分が火室で、中は写真右のようになっています。石炭の燃えかすは下に落ちるように格子状になっています。この火室に石炭を入れるのですが、シャベルで入れます。つまり、人力です。火室にまんべんなく石炭を入れる技術が要求され、燃え方が悪かったりすると蒸気圧が出ないといった事になります。

toutan-rensyu.jpg


上手に出来るように練習機も用意され、乗務する試験や実技大会も行われていたそうです。火室は大きいほど大きな熱エネルギーを出す事が出来ますが、人力では限界があるため、自動給炭装置(メカニカルストーカー)を装備した機関車もありました。

ugoku-shikumi.jpg


火室でつくられた高温の燃焼ガスは、火室内部の奥の方に見える穴へ導かれます。この穴「煙管(えんかん)」と言います。機関車の大きさなどにもよりますが、50本から200本ありボイラーへ続きます。ボイラー内部は水で満たされており、煙管からの熱伝導で水は温まり、やがて蒸気になります。この蒸気は一旦蒸気ダメへと送られ、ここから各種機器の動作や走行用と分配されます。走行用の蒸気は乾燥をした蒸気になり、走り装置のシリンダーへと送られます。蒸気は200℃のものは飽和蒸気と言い、これを使用する方式を「飽和式」と言い、さらに過熱して圧力を高め、蒸気の温度を300~400℃に高めた加熱蒸気を使用する「加熱式」の2種類があります。
ボイラーの先には「煙室(えんしつ)」というものがあります。これは、煙管を通った燃焼ガスとシリンダーでピストンを動かした蒸気の2つが混ざり合う場所です。蒸気は煙突めがけて勢いよく噴出する構造になっており、その際に真空の部分が発生します。周囲との気圧差が生じ、燃焼ガスが導かれる構造となっています。惰行運転や停車している時は蒸気ダメの加減弁(蒸気の流れる量を調整する弁)は閉じられているため、通風管という空気を送り込むものを使用して、煙突に向けて吹出す事で真空をつくり、燃焼ガスを導いています。

各部の名称
蒸気機関車を外から見てみましょう。

c62-zenmen.jpg


c55-saibu-1.jpg


除煙板(じょえんばん)・・・デフレクターとも言い、略してデフと言われています。ボイラー前頭部又は煙突を挟むように設置し、前方からの空気の流れを上方に導く事で煤煙を誘導する事で、運転室からの視界を良くするものです。このデフは地域によって特徴的な形状をしたものもあり、有名なものでは門司鉄道管理局式デフレクター、略して門デフというものがあります。
砂箱・・・機関車が空転をした時に粘着力を高めるために砂を動輪に撒きます。この砂の入った箱です。

c55-saibu-2.jpg


安全弁・・・ボイラー内部の圧力が高まってしまうと爆発して大事故になってしまいます。一定の圧力を超えた時、内部の圧力をこの弁から放出します。
汽笛・・・蒸気圧で動作します。
給水ポンプ・・・ボイラーに水を送るための装置。蒸気圧で動作します。

c55-cm.jpg


空気圧縮機・・・ブレーキなどに使用する圧縮空気をつくる機械。蒸気圧で動作します。

c55-hatudenki.jpg


写真は蒸気タービン発電機というもので、前部標識灯や運転台の灯りなどに必要な電気をつくります。

③走り装置を見てみよう

c55-dorin.jpg  d51-dorin-sento.jpg


写真上段の走り装置はワシャート式というもので、C55形式(写真左)とD51形式の様子です。
シリンダーに送られた蒸気はここでピストンを動かします。ピストンは往復運動をし、主連棒(メインロッド)を介して動輪に伝わり往復運動が回転運動となり、前後へ進みます。この主連棒に連結された動輪を主動輪といい、他の動輪とは連結棒(カップリングロッド)で結ばれています。動輪の左右は車軸でつながっており、連結棒は90度ずらして主連棒と連結しています。これは、片方のピストンが前方又は後方の死点に達し、力が0になっても、片方のピストンの力で最大になるように工夫されています。
動輪はその直径で運転最高速度が決まります。大きな動輪径にすると高速で走行が出来ます。ただし、大きなクランク構造の動輪は400rpmが限界となっています。

c55-jyurin.jpg


動輪の前後に小さな車輪が設けられている場合があります。動輪の前に設置される車輪を「先輪」又は「先台車」と言い、動輪の後方にある車輪を「従輪」また「従台車」と言います。前者は機関車の重量を負担するほか、曲線通過時に滑らかに進める事を目的としています。後者は機関車後部の重量を担う車輪で、軸重軽減の役割もあります。

c50-cab-1.jpg     c50-cab-2.jpg


蒸気機関車を滑らかに動かすためには、蒸気を適切に制御する必要があります。蒸気の出力を制御するものは運転室にある「加減弁ハンドル」と「逆転機ハンドル」の2つで制御します。
加減弁ハンドルは蒸気ダメに設けられている加減弁につながっており、操作すると蒸気がシリンダーに送り込まれ、そこに内蔵されたシリンダーを動かします。発車させる際に加減弁を一気に開けてしまうと、シリンダーに蒸気が一気に送り込まれてしまうため、動輪が空転して上手に発車させる事が出来ません。某アニメーションでC62形式が発車時に空転をするシーンがありますが、これは上手な操縦ではないということになります。惰性運転や停車時は加減弁を閉じて、シリンダーに蒸気を送らないようにします。

蒸気機関車の種類

①車輪の配置による種類
蒸気機関車の動輪と従輪の配置はとても大切な要素です。動輪は径を大きくすると運転速度を高く出来ますが、一定の長さに収めるためには動軸数を減らす必要があり、牽引力は低下します。この様な場合は旅客列車を牽引するのに適しています。一方、動軸数を増やす事で牽引力は増しますが、動輪を小さく設計せねばならないので、こちらは貨物列車の牽引に適しています。
従輪は機関車の重量を負担するほか、先従輪では曲線を通過する際に動輪を滑らかに導く機能を持っています。高速で走る事を求められる旅客用機関車では2軸ボギー台車を装備したタイプが多い。一方、貨物用機関車では動輪に重量を集中させ、粘着力を高くするため従輪の数は少なく、高速である事も必要でないことから、1軸である場合が多くなっています。
皆さんは、蒸気機関車の呼び名で「ハドソン」や「ミカド」などと言った呼び方や4-6-2などの標記を見たことがあるでしょうか。車輪の配置が重要な蒸気機関車ではどのようなタイプの機関車かを判るようにしたものです。主なものは次の通りです。
国鉄式・・・日本ではおなじみの表記法で、軸の数で表したものです。先輪-動輪-従輪の順番で軸数を表しています。先輪と従輪は数字で表し、動輪の軸数はその数の順番に対応するアルファベットを用います。例えば動軸が3つの場合は「C」、4つであれば「D」となります。先従輪が無い場合は、その場所には表記しません。
ホワイト式・・・世界の標準的な表記法です。車輪の数を表したもので、先輪-動輪-従輪の順番にアラビア数字を用いて表記します。1軸につき車輪が2つなので、最小は2となります。従輪が無い場合は「」と表記するほか、タンク機関車の場合には「T」を付ける事があります。
アメリカ式・・・アメリカ合衆国の表現方法で、車輪の配置ごとに固有の名称を付けるというもの。ちょっぴり名前を覚えるのが難しい。
では、どのような表記になるのでしょうか。○は従輪、●は動輪を表し、左側が先頭になります。
例:C55
軸配置は○○●●●○となります。国鉄式では2C1、ホワイト式では4-6-2、アメリカ式ではパシフィックと呼びます。。
例:D51
軸配置は○●●●●○となります。国鉄式では1D1、ホワイト式では2-8-2、アメリカ式ではミカドと呼びます。

②車体の構成による種類
タンク式機関車

tank-sl.jpg


石炭、水を機関車本体に搭載する方式のもので小型蒸気機関車に多く見られます。入換作業など小回りがきく利点はありますが、長距離運転が出来ないといった欠点があります。
テンダー式機関車

c55-tenda.jpg   d51-tendarenketu.jpg


機関車とは別に石炭や水を積載するテンダー(炭水車)を連結させる方式です。通常はそれぞれが別々の運用を行う事は無いので、棒連結器で連結しています。長距離運転が可能となる利点はありますが、後退運転や小回りがきかない欠点があります。

蒸気機関車のごはん。

sekitan-mametan.jpg


蒸気機関車では一般的に「石炭」が使われています。この石炭と呼ばれるものの他に「豆炭」と呼ばれるものが使われています。違いがわかりますか?
石炭・・・遥か数億年前の植物が腐敗し、分解する前に地中に埋もれて、長い期間をかけて地熱や地圧を受けて石炭化したものです。植物の化石とでも言えます。
産業革命より20世紀初頭まで燃料として様々な分野で最も重要な燃料として使われました。現在でも火力発電などに使われています。
石炭は産地によって性質が異なっており、石炭化が進んでいる無煙炭、瀝青炭(れきせいたん)は高品位炭と呼ばれ、逆に進んでいない亜瀝青炭、褐炭、泥炭は低品位炭と呼ばれています。
蒸気機関車では無煙炭が主に使われていました。戦時中はこの他の石炭も使っていました。
豆炭・・・各種石炭に消臭剤などを加えて燃焼時の臭いを抑え、扱い易いよう形を「豆」の形にした固形燃料です。一般家庭向けの燃料で、こたつやバーベキューなどで見られます。鉄道では工業用の豆炭が使われており、消臭剤は添加されていません。ボイラーの燃焼、燃料の輸送の効率化を目的に利用されています。

石炭や豆炭の他に、コークスや重油といった化石燃料、薪やガスなどの炭素を含む資源を使っています。
燃料として蒸気機関車を区分すると、石炭などの燃料の他に無火機関車というものが蒸気機関車の種類の一つにあります。
この無火機関車はボイラーを持っていない。という特徴があります。外より熱水と高圧蒸気を供給し、タンク内に溜めてピストンを動かす方式です。火気厳禁である火薬工場や製油所などで使われました。この他に圧搾空気を用いた圧搾空気機関車や苛性ソーダなどの化学薬品を使用した機関車もつくられました。近年では、静態保存されている蒸気機関車の動力部を整備し、圧搾空気で短い距離を走らせるという試みも行われています。
世界ではこの他に、電力や原子力を利用した蒸気機関車が試作されたり、考えられていました。