このお部屋では、線路にまつわるものを紹介しましょう。
マワ車から、みんなにお願いがあるんだ。線路に近づいたり、立ち入ってはいけないよ。いつ列車がどこから来るかわからないからね。まして、線路に石や物を置くことは大変な危険な事だから、絶対にしないでね。これは立派な犯罪になってしまんだ。
良い写真を撮りたいからといって、線路に立ち入って撮るものが本当に良い写真なのか考えてみよう。

781posuta.jpg      20000posuta.jpg


線路を学んでみよう
 皆さんは、『線路』というと写真のようなイメージでしょうか。

senro-tan.jpg


どこまでも真直ぐ続く線路。こんなイメージでしょう。写真は宗谷本線です。

線路とは、鉄道車輛が通行するために必要なもの「軌道」、「路盤」、「橋梁」などの構造物を含めた総称を言います。一般的に「線路を書いて下さい。」と書いてもらうと、車輛を誘導するために必要な2本並行に敷かれたレールのイラストになるでしょう。これは「普通鉄道」と言い、この他に1本のレールを使用するモノレールや特殊な誘導レールを持つ案内軌条式鉄道、ワイヤーロープを使用した「索道」とも言われる「ロープウエイ」、急勾配を往来するために歯形のレールを用いたラック式鉄道などがあります。

線路のいろいろ

senro-fuku.jpg     senro-monorail-koza.jpg     senro-monorail-kensui.jpg


左より、普通鉄道の線路 モノレール(跨座式)の線路 モノレール(懸垂式)の線路
rackrail.jpg      rinimo.jpg


左より、ラック式鉄道の線路 リニアモーターカーの線路

線路はよく見ると、色々なもので構成されています。ここからは「普通鉄道」の線路を中心に構成されているものを学んでいきましょう。

道床(どうしょう)

線路の基礎となる部分で、『軌道』とも言います。様々な種類があります。幾つかの種類を紹介しましょう。
バラスト軌道
 路盤の上に『バラスト』と呼ばれる砂利を敷く、古くから採用されている方式です。このバラストとは、「バランスを取るための重し」と言う意味です。北ドイツ語(低地ドイツ語)・スカンディナヴィア語の「barlast」が語源で、「裸(bare)」がもとで、転じて「価値のない積荷」と言う意味になりました。バラストが使われた始まりは、イギリスで石炭輸送の際、捨てるだけの砂利が積荷としてあり、これをリサイクルした事に始まります。路盤強化が目的であり、線路を支える枕木が動かないようにバラストが巻かれ、最終的には線路がずれないようにする「重し」の役割をします。

barasuto.jpg


レールの周りに敷かれたバラストの様子。軌道1kmあたり1500t~3000tのバラストが必要です。

バラストは、列車(車輛)からレール、枕木を介して伝わる荷重を広範囲に路盤に伝え、列車の動揺やレールの伸縮、枕木の移動を防ぎます。バラストは砕石が使用されており、適度な隙間により、排水をよくするほか、騒音を吸収する効果もあります。しかし、長年使用し続けるとバラストの角が取れて、沈んでいきます。このようにってくると振動が発生し、バラストの交換や、掘り起こして敷き直さなければならないなどの手間が必要です。また、高速運転には不向きな構造で、高速走行時にバラストを巻き上げてしまった事故もあります。
実際にバラストが沈み込んでしまうと、『墳泥(ふんでい)』と呼ばれる現象が発生します。

fundei-3.jpg     fundei-2.jpg


写真のように泥が吹き上がった様子がわかります。雨の日には水たまりになっている事もあります。このようになってしまうと乗心地が失われ、放置をしておくと陥没や線路の変形などが発生してしまいます。

この後にご紹介する道床(軌道)の説明で出てくる言葉をここで説明しましょう。
ア.枕木(まくらぎ)
レールを支え、レールの間隔を一定に保ち、列車からレールを介して伝わる重量を道床へ伝える役割をします。主に丈夫な木材を使用していましたが、最近ではコンクリート製などが主流となってきたため、「まくらぎ」や「マクラギ」といった言葉に置換えらつつあるようです。枕木の配置はレールに対して、垂直に配置するのが基本となっています。

◎枕木の材質

木材を使用したもの。
 元祖、「枕木」です。耐久性のあるヒノキやヒバ、ブナが多く使用されてきました。経年劣化による腐食を遅くするため、クレオソート油(防腐剤)を使用しています。

makuragi-ki.jpg


コンクリートを使用したもの。
 「コンクリート枕木」とも言われるもので、一般的には『PC(ピーシー)枕木』と言います。このPCとは、プレスト・コンクリート(prestressed cincrete)の略語で、コンクリートは圧縮力(つぶれる力)に強く、引張力(引っ張られる力)に弱い特性があります。これをPC鋼材(PCに緊張を与える緊張材で、鉄筋コンクリートのものとは別のもの。)を用いて、圧縮力が作用した状態にしておき、荷重がかかった時(枕木では車輛やレールの荷重が加わった時)に、引張力が発生しないようにする、又は引張力を制御します。これにより、引張力によるひび割れを防ぎます。
 寿命は木材が長くて10年とちょっとですが、PC枕木は50年近くもつそうです。欠点はコストが高い事と、重量が相当あるため、無道床橋梁(バラストを使用しない橋梁)には使用出来ません。

makuragi-pc2.jpg


よく見ると、玉砂利などが見えるので判別できます。

合成繊維を使用したもの。
 数百キロの重量があるPC枕木の問題を改善したもので、『合成まくらぎ』と言われています。材質にFFU(ガラス長繊維強化プラスチック発泡体)を使用しており、重量を木材の枕木と同じぐらいとして、工事をし易くしました。耐久性はPC枕木と同じです。

makuragi-pc.jpg


イ.レール
 『軌条(きじょう)』とも言われる、軌道を構成する要素の一つです。一般的には「レール」と呼ばれており、材質は鉄(高炭素鋼)で、多くは細長い鉄の棒を2本使用しています。一部、特殊なものではモノレールなどにコンクリートが使われています。

レールの役割

車輛の重量を支え、その荷重を枕木、バラストに伝え、車輪に対して円滑な走行面を与えるとともに、脱線しないように案内をする。
信号制御に使用される軌道回路の信号電流や主電動機で使用された電流の帰線回路を担う。
という、2つの大きな役割があります。

レールの形状

 レールは見た目こそ同じように見えますが、断面を見ると様々な形状があります。代表的なものとして、橋型レール、双頭レール、牛頭レール、平底レール、溝付きレールなどがあります。

soutou.jpg      rail-danmen.jpg


左は双頭レール。上下の形が一緒で、すり減ると上下を逆にして使用できるレール。これを改良したものが、牛頭レールです。右は平底レールで、世界の鉄道で広く使用されているレールです。底を広くし、安定性を図ったものです。

レールの種類

 日本の鉄道では長さ1mあたりの重量によって種類があります。60・50・40・37・30kgが規格としてあり、これらを『普通レール』と言います。重量の大きいものほど、乗心地が良くなります。使用する線区の列車の条件(重量のある列車がひんぱんに往来する、高速で列車が走行するなど)により、使用されるレールは決められています。
60kgレールは主に新幹線用、50kgレールは在来線幹線用、それ以下は亜幹線、ローカル線用として使用されています。また、普通レールを改良したN型レール(50kgN、40kgNのみ)と言うのもあります。

rail-nengetu.jpg


レールの側面を見てみると、写真のような刻印があります。写真は50N 1964||||とありますが、50kgNレールで、1964年(昭和39年)縦線4本なので、4月に製造という意味になります。
 レールは列車の通過によって、繰り返し荷重を受けます。そのため、摩耗や損傷などを受けます。(条件によっては塩害による腐食を受ける事などもあります。)曲線部ではさらに、車輪がレールに横圧により強く当たるため、レール頭部の摩耗量は直線よりも多くなります。通常は年数では10~25年程度、通過トン数では2~5億トンを交換の目安としています。しかし、急曲線などでは1年程度で交換という箇所もあります。
 普通レールの摩耗の進行を抑えるため、焼き入れという熱処理を施したレールもあります。熱処理を施す事により、強度、硬さを増したもので、熱処理レールと呼びます。この熱処理レールには、曲線部の外側に用いる「頭部全断面熱処理レール」というものと、レールに大きな負荷(力)が加わる箇所に用いる「端頭部熱処理レール」の2つの種類があります。

レールの長さ

 日本の場合、レール1本の標準となる長さは『25m』です。このレールを『定尺レール』と呼びます。このレールを並べて、継目板(つぎめいた)でつないで連続したものへとしていきます。レールとレールの間に少し隙間をあけてつなぎます。これは、レールが環境によって伸縮をするためで、夏はレールは日光で暖められて伸びてしまいます。そして、冬は寒さで縮んでしまいます。この時の余裕分を隙間としており、通過するとガタンゴトンと音がするのはこのためで、この音を『ジョイント音』と言い、通過する車輛で、多軸(車輪の多い)の機関車、大物車や2軸貨車の編成では独特のジョイント音となります。後者の2軸貨車編成(10両編成以上)のジョイント音は日本では聞くことのできないジョイント音として、一部の熱狂的なファンからは伝説として熱く語られているようです。

tugime-n.jpg


レールをつなぐ、継目板の様子。レールに隙間があるのがわかります。模型でもわざと隙間をあけて、ジョイント音を楽しむ殿方も多い。

 レールの役割では、電気車による電気を用いた運転方式において、使用された動力電流を変電所に戻す帰線や軌道回路の回路して利用しています。継目板とレールだけでは電気抵抗が大きくなってしまうため、継ぎ目にレールボンド信号ボンドという回路を設けています。継ぎ目に絶縁(電気を通さないようにする)する際は、絶縁用のプレートを継ぎ目(継ぎ目板に使うボルトにはボルトと継ぎ目板の間にチューブ)に挿入して、回路を断っています。

rail-renketu.jpg     zeten-tugime.jpg


左、レールボンドの様子。右は絶縁をした継ぎ目の様子。レールとレールの間にプレートが挿入されています。

その他の長さのレール

 レールとレールの継ぎ目の欠点として、ジョイント音による騒音、継ぎ目部の沈下による乗心地が悪化があります。このため、高速走行には適さないといった事があります。そこで、定尺レールを溶接したレールが登場しました。

tugime.jpg


継ぎ目がたくさんの線路。おや?

 定尺レールをつないで、25m以上200m未満の長さのレールを『長尺レール』、200m以上のレールを『ロングレール』といいます。ちなみに、5m~25m以下のレールを「短尺レール」と言い、調整用の端数レールとして使用されます。
 継ぎ目を少なくすることによって、定尺レールの欠点を無くし、安定した走行を図る事が出来ます。ロングレールを本格的に使用したのは「新幹線」です。

rail-tugime1.jpg      rail-tugime2.jpg


定尺レールを溶接した部分の様子。右は継目板を装着できるようにボルト穴が開いたレールを溶接しています。

 このロングレールの仕組みは、中央部を固く枕木に締結(固定する)し、バラストを十分に敷き詰めて、気温の変化によるレールの伸縮を少なくします。このため、両端端部は温度変化によって、定尺レールよりも大きく伸縮をするため、定尺レールのようにレールを突き合わせて、継ぎ足す事が出来ません。そこで、レールの先を細く斜めに切り、向かい合わせにした『伸縮継目』という継ぎ目を用いています。

longrail.jpg


伸縮継目の様子。

 ロングレールは締結力、バラストの量、レールの温度管理が適正でない場合や管理した数値以上の気候の場合、夏季ではレールがぐにゃぐにゃと曲がってしまう事故(張り出し、座屈(ざくつ))、冬季では収縮力に耐えきれず、レールが破断してしまう事故が起きてしまいます。また、長期間になるともともとの継ぎ目からジョイント音が聞こえてくる事もあります。
 ロングレールはどこまでも長くすることは出来ません。また、半径300m未満の曲線区間では、反発するため定尺レールを使用します。

ウ.締結装置
 レールを枕木に固定するものを「締結装置」と言います。レールを枕木に固定し、軌間の保持を行うと共に、レールから伝わる荷重や振動を枕木に伝えるものです。

the teiketu.jpg


レールを固定し、安全を守る縁の下の力持ち。それが締結装置です。

 締結装置の原点は明治5年に日本に鉄道が開業した時になります。レールは双頭レールを用いており、このレールの固定方法は鋳鉄で作られた「チェア」と呼ばれる座鉄に、木のくさびを打ち込む方法でした。

soutou-setumei.jpg


 やがて、平底レールにとって代わるようになると、木の枕木に固定する専用の釘が開発され、頭部の形が犬のような形から『犬釘』と言います。(現在使用されているものは、亀頭の形。亀釘とは言わない。)この犬釘を枕木に打ち込んで固定します。

inukugi.jpg


犬釘とレールの固定している様子。

 犬釘は現在でも、レールを固定する最も簡単な方法として、広く使用されています。この犬釘は上から、枕木に打ち込んでレールを固定しますが、振動により徐々に上に上がってきて、やがて抜けてしまいます。列車の高速化に伴い、近年では板バネやゴムパッドを用いて、レールを上下左右から軟らかく支持する『二重弾性締結方式』というものが主流になりつつあります。
◎二重弾性締結装置のいろいろ

f.jpg     102gata-kai.jpg


F形締結装置(左側)・・・木製枕木用のもの。右は形から、PCまくらぎ向けの仕様のようです。

5gatakai-u.jpg


5形改良形締結装置・・・在来線PCまくらぎ用のもの。半径600m以上の曲線や直線区間で見られます。(写真は50kgレール用)

102gata.jpg


102形締結装置・・・新幹線向けのPCまくらぎ用に開発されたもの。写真は外観は同じで、在来線など向けにされたもののようです。

cyokketu8gata.jpg


直結8形締結装置・・・スラブ軌道用として開発されたもの。レールに締結されたボルト・ナットの脇にある、タイププレート用のボルト・ナットがポイントです。

pando-rool-pc.jpg     tai-pando.jpg


パンドロール型締結装置・・・パンドロール(Pandrol)グリップという線ばね締結装置で、海外生まれ。特殊な線ばねを装着する事で、レールを抑える力が得られ、ボルトのように緩みの心配がない、省力化を図ったものです。右はタイプレートを用いて、木製枕木に使用している様子。

fosurogata.jpg


フォスロー(Vossloh)型締結装置・・・ドイツ生まれの締結装置。線ばね締結装置で、作業性を向上させたものです。

直結軌道
 鉄道の線路には古くからバラスト軌道が採用されてきました。レールと枕木をバラスト(砕石)の道床が支える方式で、適度な弾性と地盤沈下の際に容易に補修が行える利点があります。この利点の一つである、地盤の沈下は「軌道の沈下、専門用語で「軌道狂い」が生じる」という事です。このため、定期的な調整やバラストの交換が必要という欠点があります。このような定期的な点検を少なくする軌道、つまり「省力化軌道」が考えられ、登場したのがこの直結軌道です。
 直結軌道は道床部分をコンクリートとし、そこにコンクリート製のまくらぎを固定してレールを敷設する。という構造になっています。このため、軌道狂いはほとんど無いため、定期的な保守を必要としなくなりました。
 直結軌道を敷設するための条件は『地盤が強固』である事。このため、採用される箇所は長大なトンネルや地下鉄が主なものとなっています。

cyokketukidou.jpg


直結軌道は一般線区での採用例は少ない。近畿日本鉄道宇治山田駅はその一つです。

スラブ軌道
 この軌道もバラスト軌道に代わる省力化軌道の一つです。直結軌道と同じく、コンクリートを使用していますが、直結軌道は現場でコンクリートを打ちますが、スラブ軌道では、コンクリートの路盤の上に、セメントとアスファルトの混合モルタル層を設置し、その上に工場で製作された「コンクリートスラブ」というものを搬入して路盤にしています。この路盤の上にレールを敷きます。スラブ軌道の特徴として、コンクリート路盤部から突起を出し、モルタル層の継目に配し、レールの締結装置も調整が可能としたものを使用する事で、バラスト軌道と同じ弾性を持たせている事です。
 直結軌道よりも重量が軽く、高架橋への負担が低い事から、新幹線や高架線に使用されています。欠点として、列車走行時の騒音が高い事から路盤とモルタル層の間にゴム板を挟み、騒音を低減する「防振スラブ軌道」もあります。この他に、防音のためのバラストを散布している線区もあります。

surabu.jpg


スラブ軌道の例。線路の間にある丸い物が路盤からの突起。その周りと、モルタル層の間に緩衝ゴムが挿入されています。

④弾性枕木直結軌道
 スラブ軌道の進化したもので、直結軌道やスラブ軌道の欠点に騒音問題があります。この騒音を低減させる方法として、コンクリート道床の上に弾性材(ゴム)を敷き、枕木を固定する方式です。最新型は『D型弾性枕木直結軌道』という方式で、従来のものでは、弾性材の交換の際に道床を壊さなければなりませんでしたが、壊さず交換を可能としたものとなっています。更なる騒音低下のため、消音バラストを散布する場合もあります。

dannsei.jpg


ちょっぴり、バラスト軌道スタイルに戻った感じが特徴です。

ラダー軌道
 バラスト軌道では枕木の敷き方はレールに対して直角ですが、ラダー軌道はレールに対して平行に敷設したもので、軌間の間隔を保つため、一定の間隔で鋼管を入れています。その様子からはしご(ladder:ラダー)に見える事から名前の由来になっています。この軌道も省力化軌道の一つです。

lgatadaiza.jpg


ア.バラストラダー式・・・枕木の設置する作業の手間が省け、列車の重量や振動を分散させ、バラストの移動を低減する事が出来、つき固め作業を減らす事が出来ます。

boushinsouchituki-furotelingurada.jpg


イ.フローリングラダー式・・・道床をコンクリートにしたもので、道床と枕木の間に防振装置を挟んだものです。防振装置により、乗心地は良く、メンテナンスフリーである事が特徴です。

TC型省力化軌道
 JR東日本で開発した省力化軌道です。定期的に行われる保線作業では、バラスト交換や道床をつき固める作業などがあります。このコストを低減すると共に乗心地向上を図るために開発されました。
 見た目はバラスト軌道と似た感じですが、路盤上に透水性のある不織布とバラストを敷き詰めて、幅の広いコンクリートまくらぎを設置。その後にセメントモルタル系のてん充剤を注入して、バラストと枕木を一体化させるというものです。

tc-syouryokuka.jpg


E型省力化軌道
 道床をコンクリートとし、両端をアスファルトで固めたもので、コンクリートに大きいまくらぎを埋め込んで、線路を敷いています。中速から定速で運転される路線向けに開発された省力化軌道です。

tcsyouryokuka.jpg


曲線の秘密を学んでみよう。

chichibu-kyokusen.jpg     hitachinaka-kyokusen.jpg     uetu-kyokusen.jpg


 皆さんは列車に乗っていて、曲線部(カーブ)でふらついたり、停車した時に倒れた缶がコロコロ転がっている様子を見た事があるでしょうか。曲線を走っている列車や曲線上に停車している列車を撮影すると、傾いている事がわかります。
 また、曲線上に踏切があると、でこぼこで通り難かったり、車で通ったら床をこすった。なんて経験があるでしょうか?

dekobokofumikiri.jpg


カントとは?
 この傾きの正体は『カント』と呼ばれています。このカントとは、曲線部において外側のレールや路面を内側よりも高くすること、その高低差を意味する言葉です。道路などでは「バンク」や「片勾配」などと呼ばれています。
 物体には地上に向かって働く『重力』が常に加わっています。もう一つ、物体が回転する時に働く力『遠心力』があります。重力は下向きの力、遠心力は物体の回る方向の反対側(外側)に向かって力が働きます。

kanto.jpg


①カントが無いとどうなる?
 上の①「カントなし」のイラストの通り、曲線部に何も手を加えない状態で車輛が通過する場合、速度が高くなると遠心力は強くなります。重力よりも遠心力の力が上回った時に、車内では人や貨物が外側に移動し、最終的に外側へ脱線してしまいます。
 身近に疑似体験できるとすれば、広場で曲がりながら走ってみて下さい。この時、姿勢は真直ぐです。出来るだけ急カーブで。すごく曲がりずらいはずです。
②カントがあると・・・
 カントは重力と遠心力の合力を線路の中心に向かって、垂直に近い角度に力を向ける事によって、遠心力を弱める働きをします。これによって曲線部を安定して通過出来るようになり、乗心地も安定します。カントの量は曲線の半径と通過する車輛の速度によって決められており、半径が小さいほど、速度が大きいほど大きいカント量が必要になります。つまり、車体の傾斜が大きくなります。ただし、停車時の乗心地や荷崩れなどを考えて、高くする限界があります。
 カントの設定は、通過する列車の平均速度から求められており、平均速度を上回る列車に対しては「カント不足」、下回る列車に対しては「カント超過」という事になります。古くからある路線では、その路線において一番低い速度の列車にカントが設定されており、速度向上の際にカント量を引き上げる事もあります。また、カント不足になり易い優等列車においては、特殊な構造を持った『振り子式車輛』でカント不足を補い、曲線区間の通過速度を高くしている例もあります。(イラスト③)

furiko-2.jpg     furiko-1.jpg


振り子装置の無い電車(189系)とある電車(E351系)を同じカーブで比較すると車体の傾きに違いがあるのがお解り頂けると思います。

 先ほどの広場で曲がって走る時に、姿勢を曲がる方向の内側に傾けると走り易くなります。かけっこを早くなりたい。というお子さまの必勝法の一つにカーブでは内側に傾くというのがあります。余り傾きすぎると滑って、転んでしまうので注意が必要です。
スラックとは?
 カント(傾斜)があれば、車輛がスムーズに曲がれる♪それだけではありません。スムーズに曲がるためにカントとセットで出てくる言葉があります。それが『スラック』という言葉です。
 曲線部の内側のレールを少し広げて間隔を広くし、曲線走行を滑らかにしています。この広げた幅をスラックと言います。
緩和曲線とは?
 皆さんが自動車に乗っている。と頭にイメージして下さい。真直ぐの道路を走っていて、いきなりカーブを曲がった時にどんな気持ちになりますか。多くの人は体が振られ、あまり良い気持ではない。と言うでしょう。
 鉄道も同じで、直線から曲線へそのまま進入すると、突然大きな遠心力が作用し、乗心地が悪くなるほか、乗客の転倒や荷崩れなど安全面でも問題があります。特に半径の小さい急曲線になるほど、その影響は大きくなります。そこで、直線から曲線へ移行する時はその間に徐々に曲がる曲線を設けます。(例 直線→R(半径)700R500R380→曲線R300)この曲線(例では水色の部分)を『緩和曲線』と言います。
 カントも同じで、直線から曲線へ移行する際、いきなり高くしてしまうと安全面に問題があるため、この緩和曲線を用いて徐々に高くして、乗心地や安全面を確保しています。

カント、スラック、緩和曲線の標
曲線標
 曲線に関する情報を書いた標で、円曲線と緩和曲線の境界に設置されています。三角状のもので、3つの面に情報が書かれています。

kyokusenhyou-1.jpg      kyokusenhyou-2.jpg      kyokusenhyou-3.jpg


表となる面には曲線(曲率)半径(左の例では3400mの半径(R))、裏面の1つにはカント量を表すC(Cant)とスラック量を表すS(Slack)(中央の例では、カント量は98㎜、スラック量は10㎜)が書かれています。もう一つの面には、曲線の長さを表すCCL(Circle Curve Lengthの略。)と緩和曲線の長さを表すTCL(Transition Curve Lengthの略。)が書かれています。
逓減標
 曲線区間にはカントを設けるのが基本です。直線区間ではカントは無いため、曲線部までの逓減区間(すりつけ区間)が必要です。この始点、終点に設置されているのが逓減標です。ただし、反向区間(S字カーブ)など緩和曲線が無い区間では、曲線部の途中や直線部の途中に逓減区間を設ける場合があり、そこに設置されています。

teigenhyou-a.jpg      teigenhyou-b.jpg


脱線事故を防ぐために。

furanji-senro.jpg


 上の写真はレールと車輪の状態を見たものです。多くの鉄道車輛では、車輪の内側に『フランジ』という、車輪をレールに沿って走らせ、同時に脱線を防ぐ張り出しが付けられています。
 車輪が脱線をする時には、車輪についているフランジがレールを乗り越えていく動きと、車輪そのものがレールの内側に落ちる動きがあり、この異なる2つの動きは同時に起こります脱線をさせないためには後者の、内側に落ちる働きの動きを抑える事が出来ればよい訳です。
 この脱線を防ぐために、『脱線防止ガード』というものがあります。この他の呼び名として、護輪軌条(ごりんきじょう)やガードレールなどがあります。レールの内側にレールと似た装置で、少し離れて設置されています。内側に車輪が落ちそうになった時に、脱線防止ガードに触れることで、脱線を防いでいます。
 さて、脱線する原因は何でしょう。色々な事がありますが、1.速度の出し過ぎ(遠心力の過剰な作用)、2.外部からの衝撃(踏切事故など)、3.自然の力(風など)があります。
 脱線防止ガードは決められた半径以下の曲線部(急な曲線)、踏切、橋梁上に多くみられます。最近では、東海道新幹線の直線部を含めての導入も見られます。これは、平成16年に発生した新潟県中越地震により起きた、上越新幹線脱線事故(地震により、新幹線が脱線。日本の新幹線では初めての脱線事故(営業中において)で、幸にも死傷者は出なかった。)を受けてのものです。

kyokusenbu.jpg     fumikiribu.jpg     kyouryoubu.jpg


左より、曲線部、踏切、橋梁に設置されている脱線防止ガードの様子。
kyokusenbu(soto).jpg     shinkansen.jpg     rinkousen.jpg


曲線部では外側に脱線防止ガードが配置されている事もあり、これは脱線よりも、脱線をした後に車輛が飛び出て行かないようにしたものです。中央は東海道新幹線の脱線防止ガードの様子です。右は港湾地区で見られる臨港線の様子です。衝突事故を考えてでしょうか、直線にも脱線防止ガードが配されています。
 曲線部の脱線防止ガードについてですが、大幅な速度超過によるものに対しては、脱線を防止する効果は出ない場合があります。

レールを守るもの
 皆さんは列車に乗っていて、レールから発する金属音を聞いたことがあるでしょうか。(擬音が思いつかない・・・ゴメンナサイ。)この音の正体は、車輪とレールが擦れ合う音です。この音は、急カーブであれば聞く事が出来ます。
 擦れ合う。レール、車輪共に自分の身を削っている(摩耗(まもう)という。)のです。それぞれ、変形をしてしまう訳ですから、やがては脱線の原因になってしまいます。そこで、油や水を用いて接触時の抵抗を少なくして、摩耗や変形の進行を遅くするため、『塗油器』や『スプリンクラー』などが使用されています。地上設備であれば、列車が通過する時にだけ動作します。車輛に搭載したものもあり、こちらも車輪が曲線に入ると動作する仕組みになっています。

rail-toyuki.jpg     mizu.jpg     izuhakone.jpg


左より、塗油器を用いた例。中央と右はR100に設けられたスプリンクラー(散水方式)、そこを通る電車。台車の位置を見ると急カーブである事がわかります。(写真中央はTuboフォトオフィス様撮影)

toyuki.jpg


台車に取り付けられた塗油器の例。左側に噴射ノズルがあります。

分岐器を学んでみよう

 分岐器とは、1本の線路を2つの進路以上に分ける又は複数の線路を1本の線路にまとめる装置で、一般的には『ポイント』と呼ばれているものです。

zentai.jpg


分岐器の例

分岐器の構造

 分岐器にも前と後があり、1線側(上の写真では奥になる)が前端と言い、2線側(上の写真では手前)を後端と言います。分岐器は本線に列車を進入させる事が基本で、これを『定位』と言います。本線以外の線路(副本線)に進入させる事を『反位』と言います。また、列車が分岐器の分岐する方向へ進む事を『対向(たいこう)』と言い、逆に合流する側に向かう事を『背向(はいこう)』と言います。
分岐器は4つの部位から成り立っています。一般的な片開き分岐器で構造を見てみましょう。

point.jpg      rido-kurosu.jpg


①ポイント部
 分岐器の重要な役割である、線路を切り替え、進む方向をつくる部分です。(専門用語で、進路構成と言います。)『トングレール』という、分岐させるための尖ったレールとトングレールが密着する基本レールの部分を『ポイント部』と言います。
②リード部
 トングレールの先には『リードレール』という、車輪を進む方向へ導くレールがあります。このレールはクロッシング(レール)までを言い、この部分を『リード部』と言います。多くの分岐器では分岐する側のリードレールは曲線で、この曲線の半径を『リード半径』と言い、この半径の大きさが、分岐器を通過する列車の速度を決めます。列車の速度向上、騒音低減を目的にトングレールとリードレールを一体化した分岐器もあり、これを『弾性ポイント』と言い、全体を『弾性分岐器』と言います。
③クロッシング部
 分岐器でレールが交差している部分を言います。一部の分岐器(内方分岐器と外方分岐器)を除いて、直線形状で、ひときわずっしりした塊となっています。先のとがった部分を「ノーズ」と言います。このクロッシング部を固定したものが一般的ですが、高速走行や騒音対策で、ノーズを可動式としたものがあり、これを「ノーズ可動クロッシング」と言います。
④ガード部
 クロッシング部において、車輪が異なった方向へ進まないようにするために『ガードレール』あり、この部分を言います。

分岐器の種類

 分岐器もその形状や配置により、幾つかの種類や名称があります。
片開き分岐器

katabiraki.jpg


 直線から分岐する構造のもの。基本となる線路は直線で、分岐する側が曲線となります。この曲線が左へ分岐するものを「左片開き分岐器」、右へ分岐するものを「右片開き分岐器」と言います。

nagahamakyu29gou.jpg


 写真の分岐器は「旧長浜駅29号分岐器ポイント部」という鉄道記念物に指定されている分岐器です。長浜駅が開業した明治15年より活躍をし、約80年間使われた現存する分岐器では最古のものです。JR北陸本線長浜駅近くにある長浜鉄道スクエアに保存されています。
両開き分岐器

ryoubiraki.jpg


 直線から分岐する線が左右同一の角度で開いて分岐をするもの。「Y字分岐器」とも言われます。
③振分け分岐器
 両開き分岐器に似ていますが、左右の開く角度が異なる分岐をするもの。
④内方分岐器
 曲線区間上にある分岐器で、基本となる線路より、分岐する線路も同一方向の曲線でつくられているものを言います。左曲線の場合は「左内方分岐器」、右曲線の場合は「右内方分岐器」と言います。
⑤外方分岐器

gaihou.jpg


 曲線区間上にある分岐器で、基本となる線路とは異なる方向へ分岐をするものです。基本となる線路が左曲線の場合「右外方分岐器」、右曲線の場合は「左外方分岐器」と言います。
片渡り線(渡り線)(クロスオーバー、シングルクロス)

katawatari.jpg


 複線区間など、複数の線路が平行する箇所で見られるもので、隣接する線路にたすき掛けのように配置された線路形状を言います。よく見られるのが片開き分岐器の組み合わせですが、内方、外方分岐器、各種スリップ・スイッチで構成されているものもあります。
両渡り線(ダブルクロッシング、シーサスクロッシング)

ryouwatari.jpg


 両方向への片渡り線を同じ所に重ねて配置をしたもの。片渡り分岐器などの分岐器で構成されます。鉄道模型では最も値段の高いポイントですね。
交差(ダイヤモンド・クロッシング)

dc.jpg     dc-d.jpg


 線路同士の平面交差に使われるものです。線路の分岐はありませんが、分岐器の一つとなっています。⑦の両渡り線の中心の部分でもあります。写真右は騒音低減のためでしょうか、片方の線路が動くタイプで、鈍端ポイント(写真の少し曲がっている線路)が付いています。

dc-ootemachi2.jpg      dc-ootemachi1.jpg


 平面交差で珍しいものの一つに、路面電車と普通鉄道が交差する箇所を紹介しましょう。伊予鉄道大手町駅のすぐそばでその光景が見られます。日本国内ではここだけの場所です。線路交差部分のジョイント音はなかなかなものです。

片渡り付交差(シングル・スリップ・スイッチ)

katawatari-kousa.jpg


ダイヤモンド・クロッシングに渡り線を1本つけて、交差する線路のうち1つの方向へ分岐を可能としたものです。
両渡り付交差(ダブル・スリップ・スイッチ)
 シングル・スリップ・スイッチにさらに渡り線を1本付けて、交差する線路の双方向へ分岐できるようにしたもの。構造はかなり複雑です。
三枝分岐器
 左右2つの片開き分岐器を重ねて、3方向へ分岐できるもの。
複分岐器
 左右2つの片開き又は振分け分岐器を重ねて、3方向へ分岐できるもの。三枝分岐器の両側は左右対称に別れていますが、複分岐器は分岐点が前後にずれています。
三線軌条の分岐器

sansenkijyo-1.jpg   sansenkijyo-3.jpg   sansenkijyo-4.jpg


 軌間の異なる線路の一つを分岐するものです。左は京浜急行、中央は箱根登山鉄道、右は秋田新幹線の分岐器です。

sansenkijyo-2.jpg


 京浜急行金沢八景駅近くには総合車両製作所があり、ここで新造される車輛の中には狭軌車輛があり、神武寺駅まで第三軌条となっています。その間には駅が幾つかあり、その駅を通過する際にホームに車輛が接触しないように外側へ車輛を案内する特殊分岐器があります。ちなみに、神武寺駅からはJR横須賀線逗子駅まで専用線があります。
乗越分岐器

norikoe.jpg    norikoe-jidou.jpg


 乗越ポイント又は乗越クロッシングの片方又は一方を使った分岐器。分岐する側への進入、進出する場合、基準となる線路を車輪が乗り越えていくワイルドな構造です。乗り越える際には『横取り装置』という覆いのような装置を使います。
 そのまま乗り越えると車輛の上下動が大きく、脱線する事もあります。このため、安全側線や保守車輛用の留置線に使われています。写真左は手動式で、横取り装置を用いて使用するものです。写真右側は自動式で、横取り装置がトングレールと一体となっています。写真の白く塗られている部分が横取り装置になっており、移動すると基準となる線路の上に覆いかぶさる構造となっています。

分岐器の番数ってなに?

 分岐器には先ほどの片開き分岐器などの名称のほかに「16番分岐器」といった数字を用いた呼び方をする場合もあります。
 この数字は、基準となる線と分岐線の開き具合を意味するもので、本線と分岐線が1m離れるのに必要な本線の長さをメートル単位で表したものです。
 例えば、片開き分岐器で、分岐点から基準線を分岐器後端へ16m進んだ時に分岐線と1m開いた場合、この分岐器を16番分岐器と言います。略語では「♯16」と書きます。この番数が大きいほど、リード半径が大きくする事が出来るので、列車の通過速度を高くする事が出来る利点がありますが、大きくすればするほど、分岐器が大きくなりコストや広い用地が必要になる欠点があります。

分岐器の速度制限

 分岐器の分岐側の通過速度ですが、分岐側の曲線半径となるリード半径、分岐器そのものの強度などをもとに一般の曲線部よりも低い速度制限となります。これは、トングレールなどの特殊なレールを使用しているためです。

案内軌条式(モノレール)・新交通システムの分岐器を見てみよう

 皆さんはモノレールといった案内軌条式の鉄道や新交通システムと呼ばれる鉄道はどうやって進む方向を変えているかわかりますか?紹介してきた分岐器と同じなのかなぁ。どうなんでしょう。百聞は一見にしかずと言いますので、見てみましょう。

モノレールの分岐器

モノレールは軌道の方式によって異なります。
跨座式

mono-koza.jpg


軌道の上に車輛が載る方式で、軌道そのものに重量があります。また、構造上軌道を繋ぎかえるという方法となっています。主な方式として関節式関節可撓式(かんせつかとうしき)の2つがあります。関節式は1つの分岐器を使用して軌道を曲げる方式です。この方式は乗心地が悪いという欠点があり、車輛基地内の分岐で使用されます。
関節可撓式はイメージ図を見てみましょう。

mono-bunki1.jpg


mono-bunki2.jpg


mono-bunki3.jpg


イメージ図のように複数の短い桁を組み合わせて軌道を転換する方式です。上の写真はこの関節可撓式です。(★印部分が分岐器になります。)関節式よりも滑らかになるため、乗心地をよくする事が出来ます。
懸垂式

mono-kensui-1.jpg     mono-kensui-2.jpg


懸垂式の場合は、鉄軌道(レールを用いた軌道)に似ており、トングレールとリードレールに相当する可動レール(★印の部分)を転轍させ、軌道を変える方式となっています。

新交通システムの分岐器

 新交通システムは世界中に様々なものがあります。私たち日本の場合、この新交通システムは「自動案内軌条式旅客輸送システム」というもので、一般的には『AGT(Automated Guidway Transit)』と呼ばれています。小型の車輛が自動運転により専用軌道上にある案内軌条に従い走行するものです。この車輛はゴムタイヤで動く車輛となっています。
新交通システムの場合、車輛を案内する方法により分岐器の方式も異なります。この車輛の案内には走行する箇所の左右に案内板を配置する「側方案内方式」と走行する箇所の中央に案内を設ける「中央案内方式」の2種類があります。
側方案内方式
 新交通システムの多くで採用されている方式で、昭和56年に開業した大阪市交通局南港ポートタウン線(ニュートラム)が最初になります。分岐の方法はいくつか種類がありますが、簡単な構造でかつ軽量で済む「水平可動案内板方式」が採用されています。

sokumen-annnai-2.jpg


車輛は台車に案内バー(案内車輪)が左右両側に配置されています。この案内車輪は案内軌条をスムーズに進ませるための案内車輪というものと分岐箇所で進行方向を変えるために使用する分岐輪という車輪が付けられています。

sokuann-bunki1.jpg


通常は案内軌条のみですが、分岐箇所には案内板が設置されています。イメージ図では案内軌条の横に配置されていますが、実際は案内軌条の下に配置されています。
イメージ図は直進をする場合で、車輛の分岐輪は進行方向左側の可動案内板に入り込み、直進方向へ車輛を導きます。図の下側の可動案内板は分岐輪に触れない位置にいます。

sokuann-bunki2.jpg


今度は進路を分岐する側にしてみましょう。先程の直進を指示する可動案内板は、分岐輪に触れない位置に転てつ器で動かし、曲がる側の可動案内板が出てきます。車輛が進んでくると分岐輪が曲がる側の可動案内板に入り込み、車輛は右側に進んでいきます。
両側案内方式

chinkou-1.jpg     chinkou-2.jpg


側方案内方式のうち、分岐する方法に「浮沈式」を採用したものです。写真の通り、進みたい方向の案内板を必要な分を浮かせ、不要な部分を沈ませる方法です。分岐する時に一時的に片側のみで支える側方案内方式に対し、常に両側で案内をします。車輛は案内車輪のみで、分岐案内車輪や分岐用案内板が必要なく、軌道の幅を狭める事が出来ます。しかし、構造が複雑で建設費が高いため、昭和56年に開業した日本初のAGT路線である神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)のみの採用にとどまっています。
中央案内方式

cyuou-annai.jpg


①の側方案内方式、②の両側案内方式とは全く異なるシステムで、走行路の中央に案内を配置したもので、モノレールに似ていますが異なるものです。一般的なAGTは降りても歩けるほどの幅がありますが、開床構造となり幅を狭くする事が出来ます。しかし、避難通路として軌道が使えない事、車輛もボギー台車の実績しかないため普及するには至りませんでした。分岐の方法は「水平回転式」という、跨座式モノレールに似た方法が採用されています。車輛から飛び出る部分は無く、走行路ごと動かす方法です。可動部が大きいこと、建設費が高額という理由から普及しませんでした。現在は、昭和57年に開業した千葉県にある山万ユーカリが丘線のみに見る事が出来ます。

転てつ器を学んでみよう

 転てつ器(転轍器)とは、分岐器を操作する装置です。この装置を動かす方法は2つあり、手動転てつ器と自動転てつ器があります。

手動転てつ器

 その分岐器を人の力、つまり手動で切り換える方式です。動作する方法により3種類あります。それぞれの手動転てつ器には標識があります。詳しくは「標識・合図ってな~に?」を見て下さいね。
普通転てつ器
定位、反位ともに手動で切り換える転てつ器です。かつては本線でも使用されていました(ワイヤーを用いて、てこ扱い所という場所から一括して操作していました。)が、信号機の現示と合わない(別々のもの)ため、誤って出発する事故があったほか、途中転換という列車が分岐器を通過中に転てつ器を操作してしまい、脱線転覆させてしまう事故があり、これらが問題となって、自動転てつ器に置き換えられています。

daruma-1.jpg   daruma-2.jpg


上の写真は簡易式の普通転てつ器で、「だるま」や「だるまポイント」などと呼ばれるものです。てこを動かすだけのものです。写真左は、側線のうち使用頻度が少ない線で見られるものです。分岐の進路を変えた時(転換という。)、その進路を固定する(鎖錠(さじょう)と言います。)ものがありません。てこの部分におもりが付いていますが、まれに列車の振動などで動いてします。写真右はおもりが分岐器中央にあるタイプです。このタイプも鎖錠する機能はありません。

daruma-5.jpg   daruma-4.jpg


操作するてこがレバー式になったタイプです。レバーが少し離れており、金属棒やクランクが使われて構造が少し複雑になっています。このタイプでは鎖錠機能が付いているようです。

daruma-3.jpg


本線に隣接する箇所には転てつ器標識が付いています。

soudou.jpg


 転てつ器の中には、てこを扱うと別の転てつ器も一緒に操作できるタイプがあります。これを『双動転てつ器』などと言います。写真の場合奥の方に操作するてこがあり、手前の分岐器もあわせて操作しています。延々と続いている金属棒がポイントですね。

発条転てつ器
 発条とは「バネ」の事です。進路が定位側に固定されており、反位側から進出する列車(背向から来る列車)はトングレールを車輪で押し広げて(専門用語で「割出し」と言います。)通過します。通過後、暫くするとばねなどの力により定位に戻る仕組みです。転てつ器標識にSの文字があるので、見分けがつくと思います。

hatujyou.jpg


③脱線転てつ器
 単線区間の交換駅などで見られるもので、普通の分岐器ですが、ぷつんと線路が途切れている転てつ器です。安全側線の置けない場所(土地が狭いなどの理由から)で見られます。安全側線がある場合は、普通の分岐器若しくは乗越分岐器が設置されており、最終的には脱線を目的とします。

dassen.jpg    dassen-2.jpg


 写真は乗越分岐器のものです。左側が定位、右側が反位の様子です。

電動転てつ器

 電気指令によるものです。本体内部に制御リレー(継電器)と回路制御器を電気で作動させ、その後にモーターや空気シリンダーを動力源として切替えをする仕組みになっています。構造はレールを切り替える転換部と、分岐器を列車が通過している間に転てつ器を動かさないように鎖錠する転換鎖錠部の2つで構成されています。
 転換部はモーターから動作桿へそこからトングレールにつながっています。転換鎖錠部は接続桿につながっています。

denki-tenntetuki.jpg    point-2.jpg


転てつ器が故障した場合などには、手動で操作する事も可能で専用の手廻しハンドルで動作させる事が出来ます。転換が出来たかどうかを手廻し完了表示窓で確認します。(完了は鎖錠が出来た状態までのことです。)
 一般的には電動機(モーター)を使ったもので、素早い動作が要求される操車場などでは圧縮空気を用いた電空転てつ器を使用しています。
●転てつ器を動かす装置
 転てつ器を動かすもの装置を『連動装置』と言います。この連動装置は転てつ器の操作だけではなく、信号機の動作を制御も同時に行います
 列車が進行している間に、その進路の転てつ器が動かないように鎖錠をする、他の進路の信号機がその列車の進路に支障をさせないように制御をするなど、転てつ器と信号機の動作に連鎖関係を持たせる事によって、安全を守る保安装置の一つです。連動装置を扱う者が危険をもたらす操作をしても、この装置がそれを防ぐ仕組みとなっています。

rendouseigyoban.jpg


この連動装置は停車場に最低1つはあり、停車場構内の転てつ器、信号機の動作を制御します。操車場など転てつ器や信号機の数が多く、連動装置が複雑になってしまう場合は複数を備える事もあります。1つの連動装置で、1つの路線を管理する場合は、停車場間の閉そくの扱いも行っています。
 この連動装置がどのように動作するのかを表にしたものがあり、この表を『連動図表』と言います。連動図表には停車場の配線図が載せられており、分岐器、信号機の番号などの情報があります。

rendozuhyo.jpg


連動図表の例。場内・出発信号機が腕木信号機であるなど、その停車場の情報が一目でわかります。

●転てつ器を動かし続けるために。

kantera-dosa.jpg


 皆さんは、雪国や雪の日に駅でこのような光景を見た事があるでしょうか。分岐器の部分だけ雪が溶けています。何故でしょう。駅員さんが雪を取り除いている。雪が着かない油か何か怪しげな液体を使っている・・・
 分岐器は冬季になると降雪や低温により、ポイント部に雪の塊が挟まったり、凍結して動かなくなってしまいます。すると、分岐器が動かなくなり、運転が出来なくなってしまいます。そこで、降雪のある地域では『融雪器(ゆうせつき)』というものを設置して分岐器を守り、鉄道の安全を確保しています。

mizu.jpg


水(温水)を用いて、スプリンクラーによる散水・・・常に水をかけ続けている方式のもの。

kahanshiki.jpg     koteishiki.jpg


カンテラをレール底面や側面に配置し、灯油等を燃焼させ、その熱エネルギーでレールを暖める方式のもの。燃料は臭いから灯油が一般的のようです。

denkishiki.jpg


電気融雪器と呼ばれるもので、電気エネルギーを熱エネルギーに変換してレールを暖める方式のもの。燃焼式はそこまで行き、着火しなければならない上、燃料が切れると意味をなさなくなってしまいます。最近では電気融雪器が増えており、スイッチ一つで扱える優れものです。

kitaguni-point.jpg


雪が多く、気候が厳しい東北地方や北海道地方では転てつ器にもカバーをかけて故障を防いでいます。(温まるものなのかは不明。)

suow-seruta2.jpg     suow-seruta.jpg


豪雪地域や降雪により、融雪器を設置しても、その能力を超えてしまう場所やその場所へ到達が困難になる場所(山奥など)では、分岐器とその周囲、全体を覆ってしまう『スノーシェルター(雪囲い)』を設置している箇所もあります。

軌間を学んでみよう

 線路の色々を学んできましたが、この線路には『軌間』という言葉があります。これは、線路に敷かれた左右のレールの幅を言います。英語で「gauge:ゲージ」と言います。軌間はレール頭部の内側の最短距離を示すもので、機能や能力に大きく関係する重要な要素となります。
 この軌間は世界中の鉄道において、たくさんの種類があります。大きく別けると3つに区分され、1435㎜の標準軌』・標準軌より幅の広い『広軌』、標準軌より幅の狭い『狭軌』があります。
 世界では『標準軌』が多く採用されています。標準軌が最初に誕生しますが、この起源はイギリスの馬車鉄道に採用されていた4フィート8インチ軌間です。鉄道にこの線路幅を採用し、少し大きくなった4フィート8.5インチが標準軌となりました。
 ここから、様々な理由で広軌や狭軌といった線路幅が生まれます。一般的には軌間が広いと輸送力や最高速度などの能力は高まる。逆に狭くなると建設費が安価となる利点がありますが、鉄道には様々な要素が加わるため、軌間だけで全てのバランスが良くなるとは限りません。

日本の鉄道の軌間

 日本の鉄道にはどんな軌間が採用されているのでしょう。
①標準軌(1435㎜)
 鉄道が誕生した明治5年、軌間は3フィート6インチ(1067㎜)の狭軌が採用されました。これを選んだきっかけは土地が狭いなどの諸説があります。その後、国際標準の標準軌に改軌(軌間を変更する事。)を行う事が検討されましたが、計画はなくなりました。
一方、明治32年に登場した大師電気鉄道(現在の京浜急行電鉄)をはじめとして、私鉄や路面電車で標準軌が採用されました。昭和13年から計画された弾丸列車計画で、標準軌の新線が建設が予定されていましたが、中止に。その後、東海道本線輸送力改善を目的として、昭和39年に東海道新幹線が誕生し、標準軌が採用されました。
 新幹線は標準軌、在来線は狭軌となり、軌間幅が異なるため在来線との直通運転は出来ません。しかし、平成9年に田沢湖線を改軌した「ミニ新幹線(車体限界を在来線規格とした車体を持つ新幹線車輛のこと。)」が誕生し、直通運転が実現しています。

shinkansen.jpg


②狭軌(1067㎜)
 標準軌の軌間幅である4フィート8.5インチ以下の軌間幅を『狭軌』といい、日本では1067㎜(3フィート6インチ)が標準的なものとして、JR在来線や多くの私鉄で採用されている軌間幅です。

fuukei.jpg


左の線路を見てみると、幅の広い軌間が標準軌、内側に敷かれたレールの軌間幅が狭軌です。

 狭軌は多くの鉄道に採用されており、別名『三六軌間(さぶろくきかん)』とも言われています。

1067.jpg


③馬車軌間(1372㎜)
 狭軌の一つで、4フィート6インチ軌間で明治15年に開業した東京馬車鉄道(日本で初めての私鉄。後に東京都に買収され、東京都交通局になりました。)が初めて採用しました。この軌間は馬車軌間や標準軌や狭軌(1067㎜)と違い、その特殊性から偏軌(へんき)とも言われます。また、スコットランドの一部で使われていた事もあり、スコッチ・ゲージとも言います。
 現在、京王電鉄(井の頭線を除く)、東京都交通局都電荒川線及び都営新宿線(京王線との相互乗入れのため。)、函館市企業局交通部で使用されています。

1372.jpg


④特殊狭軌(762㎜など)
 日本では1067㎜以下の軌間を「特殊狭軌」と呼んでいます。かつては、地方では非常に多くの私鉄で採用されていましたが、第二次世界大戦の不要不急路線として廃止されたものやモータリゼーションにより廃止され、現在は次の路線で見る事が出来ます。四日市あすなろう鉄道内部線及び八王子線(762㎜)、三岐鉄道北勢線(762㎜)、黒部峡谷鉄道本線(762㎜)、安房森林鉄道(762㎜)、国土交通省立山砂防工事専用軌道(610㎜)

naro.jpg


5R運動

 線路のお部屋の締めくくりに、「5R運動」を紹介しましょう。

5rundou-1.jpg     5rundou-2.jpg


保線の方々など、線路を歩く時の基本のようです。そのスジの方に聞いてみると、線路にはいつ、どこから列車や車輛が来るか分からないので、線路を歩く時に守らなければならない事柄だそうです。
1.レールの中を歩かない・・・列車に轢かれてしまいます。なお、歩く時は列車が向かってくる状態にして歩行をしなければならないそうです。背を向けていては列車や車輛の存在に気付くのが遅れてしまうから。だそうです。
2.レールに腰をかけない・・・いざという時に逃げ遅れてしまいます。
3.レールに足をかけない・・・ここは船着き場ではありません。ちょっと足を置きたくなりますが、安全上好ましくありません。休憩は線路の敷地外で。
4.レールに接近しない・・・列車や車輛に接触しないように、ある程度離れて歩いたり、退避をしなければなりません。
5.レールは直角に横断する・・・線路は危険な個所なので、横断する時も最短距離で移動するのが鉄則だそうです。