車輛基地ってなんだろう。
 日本全国津々浦々で活躍する鉄道。その主役の一つである「鉄道車輛」ですが、この車輛たちの自宅とも言うべき施設が『車輛基地』です。皆さんが学校で勉強を学んだり、会社で働いて、安らぐ場所?と同じで、鉄道車輛も方々でお客さんや貨物を運んで、仕事が終わると車輛基地に帰ってきます。
車輛基地の役割
 車輛基地は鉄道会社により様々ですが、1つだけという会社もあれば、たくさんある会社もあります。中には車輛基地が相互乗入れ先の会社にあるという珍しい基地もあります。車輛基地の役割は車輛の留置をはじめ、整備を中心とした事を行う設備です。鉄道車輛は必ず、何処かの車輛基地に所属しています。
 車輛基地と言っていますが、その役割によって一定の決まりがあって名称(呼び方)が変わります。呼び名は鉄道会社により違いがある事を予めご了承下さい。
①工場、検車区
 『工場』と呼ばれる車輛基地の一つ。鉄道車輛には様々な決まりがあり、一定の期間や走行距離に達すると検査をしなければなりません。この検査を行う事の出来る設備があるのが特徴です。私たちで言う、病院のような存在です。
 工場や検車区では、車輛の重要な部品などの検査や、全般検査などが行われるほか、修理や補修などを主に行います。国鉄では工場より職員数が少ない場合は『車両所』と呼んでいます。
②電車区、気動車区、機関区など
 『車庫』と呼ばれる車輛基地の一つ。一般的にはたくさんの車輛を留置する線路があるイメージですが、車輛の軽微な検査(仕業検査、交番検査などと呼ばれています。)を主に行っています。家に医務室があると考えると良いでしょうか。
 国鉄では運転関係の重要な設備で、車輛のほかに動力車乗務員(運転士)の基地を併せている場合もあります。所属する(配置される)車輛によって電車のみの「電車区」、気動車のみの「気動車区」、客車のみの「客車区」、客車、貨車が所属する「客貨区」、機関車のみの「機関区」(機関車の種類(電気機関車、ディーゼル機関車、蒸気機関車)により、第一機関区、第二機関区と分ける事もありました。)があり、車種を問わず配置する車輛基地を『運転区』と呼び、運転区よりも規模の大きい場合を『運転所』と呼びました。JRへ移行になり、この呼び名が変わり『車両センター』などに変更している箇所もあります。また、車輛配置がなく、動力車乗務員基地のみの区所もあります。(例:JR東日本八王子支社立川運転区(運転士のみ配置されており、国内最大級の鉄道運転関係現業機関です。)
 また、1つの車輛基地の中には別の箇所に車輛基地を配置する場合もあり、『派出』などと呼ばれています。(例:郡山総合車両センター郡山派出所など)
車輛基地の例

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左より、JR東日本大宮支社宇都宮運転所、JR東日本八王子支社豊田車両センター、東京地下鉄上野検車区

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左、関東鉄道水海道車両基地、右、ゆりかもめ有明車両基地

駅にあるのは車輛基地?
 車輛基地の配置で、駅に併設されている場合も多くあります。この中には車輛を留置するだけの設備しかないものがあります。これを『電留線(電車留置線)』や『留置線』など呼びます。車輛基地からの運用の都合により配置されています。
電留線や留置線の例

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左、南武線矢向駅構内 右、相模鉄道西横浜駅構内

車輛基地の中にある設備
 車輛基地の種類や役目は解ったかな?その車輛基地には色々な設備があります。主なものをお勉強してみましょう。設備の中には駅にあるものもあります。
①パンタグラフ点検台

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電車や機関車の屋根にあるパンタグラフを点検するものです。大きな基地では写真のように連続したものが用意され、あらゆる編成に対応できます。編成が決まっているような場所では、パンタグラフの部分だけに点検台があるタイプもあります。
②断路器・通電確認標

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 パンタグラフの点検や車輛の点検時に架線に電気が流れていると感電事故が起こる恐れがあり、大変危険です。そこで、架線の電気を切るスイッチが設けられており、これを『断路器』と言います。断路器を扱い、電気が来ているか否かを表す標識『通電確認標』がそれぞれの線路上に設置されています。
③洗浄機

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長い車体の側面を一気に洗う機械。比較的大きめの車輛基地にある設備です。様々なタイプがありますが、大きなブラシが回転してゴシゴシと汚れを落としてくれます。写真の下段右は自動車と同じ、洗浄機本体が動くタイプのものです。
③-1 コンテナ洗浄機

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仙台貨物ターミナル駅で見つけたものです。コンテナも使用していると汚れてきます。この汚れ落としに専用の洗浄機が使われています。コンテナを台に乗せて、後は同じ。ブラシできれいにしています。
④洗浄台

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洗浄機とセットになっている場合と、独立して設置されている場合があります。洗浄機では落としきれない部分や前面部分の洗浄のほか、車内の清掃などを行います。洗浄台のある線路を『洗浄線』という場合があります。
⑤給油設備

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気動車やディーゼル機関車、ディーゼルエンジンをもった客車が所属する基地で見られる設備で、給油機の仕組みは自動車のガソリンスタンドと同じです。燃料は軽油で、1回の給油で数百リットルから一千リットルを超える量が車輛に入れられます。

⑥給水設備

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トイレや洗面所などに使われる水を水タンクに入れるための設備。つまり蛇口です。駅の構内でも写真のように見られます。
⑦給水塔

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蒸気機関車が所属する機関区や運転される線区の終点駅、峠の麓(ふもと)駅などで見られる設備で、蒸気機関車に使用される水を溜めておく塔。蒸気機関車を横付けして給水をします。機関区では石炭を供給する設備が合せて設けられており、この設備はホッパー形状で石炭を上から豪快に落とすものでした。蒸気機関車が引退すると、この設備は撤去されましたが、給水塔は解体費用をかけたくないのか、残っているものがあります。
⑧検修庫

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左より、福井鉄道西武生駅(現:北府(きたご)駅)、JR東日本青梅線拝島駅、茨城交通(現:ひたちなか海浜鉄道)の検修庫
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左より、伊豆箱根鉄道大雄山線運転区、JR東日本豊田車両センター、京王電鉄高幡不動検車区の検修庫
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左、東海道新幹線大井車両基地、右、熊本車両センターの検修庫。(熊本車両センターの検修庫は現在はなくなりました。)

 車輛の点検や修繕を行う場所で、1~2両程度のサイズから新幹線のような16両編成を丸ごと入る大きなサイズまであります。
⑨転削庫

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鉄道の車輪は雨や雪などに弱く(難しい言い方で摩擦係数の少ない乗り物であるが故に。)、空転や滑走が発生してしまいます。車輪はレールよりも軟らかいため、削れて傷が出来てしまいます。この傷を『フラット』と言い、フラットがだんだん大きくなると車輪からダンダンダン…と大きな音が発生するほか、丸くなくなっているため乗心地が悪くなっていき、最後は脱線の危険もあります。このフラットを削って、再び丸い形に戻す(転削する)機械(旋盤)がある場所を転削庫と言います。かつては、台車を車体から外し、その台車から車輪を取って…と非常に手間と時間がかかるものでしたが、現在は車輛をそのまま載せて、車輪を回転させる方法もあります。この転削する機械がある線を『転削線』とも言います。(写真では、右の線路が転削線です。)

⑩扇形庫(せんけいこ)

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転車台に併設される形でつくられた機関車用の庫(くら)です。かつて蒸気機関車の時代は前後方向があり、多くの場所に向きを変える転車台がありました。機関区の場合、転車台に沿う形で庫があれば、設置する場所が節約できるなどのメリットがあるため。多くの機関区で採用されました。ディーゼル機関車や電気機関車のように方向転換をしなくても、前後の区別がなく運転出来る車輛が増えると、転車台と共に数を減らしていきました。現在でも、一部で使用されており、車輛は気動車やディーゼル機関車が使われています。
⑪ジャッキ、クレーン

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車輛の検査において、車体と台車を分離する機械です。クレーンは重いエンジンなどの部品を移動させるのに使用します。

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Tuboフォトオフィス様撮影

車体をそのまま床に置くわけにはいきませんので、ジャッキでそのまま鎮座させ、車体の検査や修繕等を行います。
⑫ピット

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車輛を分解せず、そのままの状態で床下を点検するためレールの間に穴を設けた場所です。
⑬仮台車

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台車の検査などの理由により、車体に履かせる一時的な台車です。地方私鉄などで見られます。ほんのわずかな移動が出来ればよいので、走行用とは異なり簡素な作りが特徴です。
⑭ターレットトラック

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小さな部品などを運ぶもので、工場内の運搬に使われているようです。写真はJR東日本豊田車両センターのもので、遊び心がありますね。
⑮事業用車

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※写真はイメージです。

鉄道車輛ではなく、自動車です。車輛の部品などを工場から運んだり、時には車輛故障などで修理に向かうなどの目的に使われています。車輛基地ではトラックやワゴン車、ヴヮンをよく見かけますね。ちなみに駅では軽自動車や軽ワゴンが主な感じです。
⑯水銀灯

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大きな車両基地や貨物駅などで見られる、一際背の高い照明。夕暮れになるとポヮヮ…と点いて、徐々に明るさを増していきます。電球の交換はさぞかし、大変だろうなぁ。とも思ってしまう。と同時にあそこから撮影したらどんな写真が撮れるのかなぁ。と考えてしまいます。電化されている箇所などではビーム(架線)に取り付けるタイプが使われる事もあり、見かけない存在になりつつあります。
⑰アント

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転削設備のある基地で見かける小型の移動用機関車?電車など鉄道車輛と比べるととても小さい。でも、これが10両編成の電車を牽くことが出来る力持ちなのです。小さな駅で数両の貨車を入換しているのも、このアントと呼ばれるもの。アントとは、製作会社の名前であり、商品名のようです。人が操縦するほか、無線で操縦が出来るようです。
⑱転車台(ターンテーブル)

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主に機関区に見られる設備で、蒸気機関車の方向転換の設備として有名ですが、現在では、電車や気動車などの車輛を方向転換するのにも使われています。動力は人力のほか電動機を用いたものがあります。一番右の写真は転車台の操作小屋です。
形態的には構造上『鉄道橋』の一部として扱われる事もあり、構造は桁橋(ガーター橋)と同じです。上路式(デッキガーター橋)(写真左)と下路式(スルーガーター橋)(写真右)の2種類が構造上分類できます。
⑲トラバーサー

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遷車台(せんしゃだい)とも言われる設備で、工場や路面電車の基地などで見られ、複数の線路の間を平行移動します。車輛の入換を行うとき、奥にある車輛を効率よく出すために考えられたのが始まりのようです。工場では作業場への移動に使われていますね。

⑳昇降台・安全通路

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車輛基地のほか、駅の留置線などで見られる設備で、乗務員さんが安全に乗降できるように設置されるものです。木製、鉄製、コンクリート(側溝をひっくり返して転用)などがあります。この昇降台の周りには犬走り(キャットウォークとも言う。)があります。これを『安全通路』と言い、ここを通って線路外まで歩きます。犬走りやキャットウォークは犬やネコさんが通れるぐらいの幅しかない通路という意味です。
21 びっくり棒

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車輛基地や貨物を扱う駅などで見られるもの。正式名称は不明ですが、その目的から考えた名前で言えば「接触事故防止棒」とでも言いましょうか。車輛の入換を行う際に、係の社員さんは車輛から少しはみ出た感じで行います。その際、建物や信号機などに接触してしまうと大変です。そこで、そのような場所の少し手前に建てられているのがこの棒です。これに触れる事により、ぶつからないように身を車体寄りに寄せるなどの対応を行います。
22 廃車体や廃コンテナを転用した倉庫

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使われなくなった車輛(主に有蓋車が多い。)や使われなくなったコンテナを倉庫として転用しています。車輛では走行関係の部品はすべて外され、コンテナは番号に線を入れて使えないような状態になっています。写真右はタンク車を転用した防火用水用のタンクです。

如何でしょうか、車輛基地には様々な設備があります。模型化するならば、一度車輛基地へ足を運んでみましょう。面白い物がきっと見つかるはずです。