諸元
全 長  20000mm
全 幅  2946mm
全 高  4066mm
主電動機 MT54D形式(120kw)
制御方式 直並列抵抗制御方式、弱め界磁制御方式
制動方式 発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ方式、抑速ブレーキ
動力台車 DT32E形式 不随台車 TR69H形式(0番代)
動力台車 DT50C形式 不随台車 TR235B形式(100番代・200番代)

車内設備など
座 席 転換式クロスシート
乗降扉 片側2扉
トイレ あり

 京阪神地区では古くより国鉄と民鉄各社との激しい競争が繰り広げられてきました。東海道本線及び山陽本線では「新快速」が運行されており、昭和47年より113系に代わって、新幹線開業で余剰となった153系急行形電車が就任しました。冷房装置が搭載され、空気ばね台車の乗心地の良さは評判でしたが、ボックスシートで片側2扉構造は混雑時間帯の輸送には不向きな一面もありました。また、老朽化や陳腐化も目立ち始めた頃の登場であったため、並行する私鉄各線で転換式クロスシート車などが投入されるとあっという間に見劣りするものとなってしまいました。 
 そこで国鉄では昭和54年に117系を登場させます。この117系は国鉄車輛の歴史に大きく名を残すものとなります。
 客室設備は昭和50年に北九州地区に登場したキハ67系をお手本とし、急行形車輛を上回る設備を持つ車輛として設計されました。従来は広域転配を考え、地域の事情等を考えない「標準化設計」でしたが、初めて地域の事情に応じた設計を行いました。
 車体は鋼製で片側2扉構造とし、戸袋窓部を除いて二段上昇式の窓を2セットずつ1組としたユニット窓を配しました。先頭部も独特のスタイル。鼻筋の通った流線形構造で、運転台下部に前部標識灯を左右2灯ずつ配し、中央には愛称表示器を設置しました。塗装はクリーム色(クリーム1号)をベースに茶色(ぶどう色2号)の帯を巻いたものです。この塗装は就任する「新快速」の前身となる「急行電車」に活躍したモハ52系などで採用された、大阪鉄道管理局の伝統的な塗装で、本来であるならば、電気方式によって塗装が定められていましたが、そのルールに従わず、伝統色を選択した、いわゆる地域色を採用した例であり、今日の地域色の先駆けとも言われています。
 153系に代わり、新快速に就任。153系時代には「ブルーライナー」(灰色9号の車体に青22号(スカイブルー)の帯が入れられていた事から。)に対し、「シティーライナー」という新しい愛称で活躍しました。昭和57年からは中京地区の快速に活躍する153系の置換えとして、「東海ライナー」という愛称で活躍しました。

0番代
 昭和54年に登場したグループです。近郊形電車では空気ばねのDT32系、TR69系を履いた豪華な仕様で、分割・併合作業を迅速化するために電気連結器を装備するなど、当時は大きな話題となりました。

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クハ116-1~(クハ116-11)

偶数向きの制御車です。車端部にトイレが設置されています。車内は全て転換式クロスシートとなっています。冷房装置はAU75B形集中式冷房装置で、その前後に新鮮外気導入装置が設置されています。この装置があるため、通風器は設置されていません。

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クハ116形式300番代(クハ116-302)

福知山線へ転属させる際、乗降時間短縮、着席サービス向上を図るために乗降扉付近の座席をロングシート化したグループです。原番号に300番を加えて区別しています。

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クハ117-1~(クハ117-23)

奇数向きの制御車です。1~21番までは京阪神地区向け。22~30番は中京地区向けの車輛で、トイレの設備があります。なお、京阪神地区向けの車輛にも一部、トイレが追加設置されています。

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クハ117形式300番代(クハ117-321)

クハ116形式300番代と同じく、座席の設備を変更したグループです。原番号に300番を加えています。一部の車輛ではワンマン運転化に対応するために改造された車輛もあります。

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モハ116-1~(モハ116-55)

モハ117形式とユニットを組む中間電動車です。電動発電機及び電動空気圧縮機が搭載されています。

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モハ116-1~(モハ116-32)

JR西日本所有車両の一部にバリアフリー対策として、車いす対応トイレが設置され、外観が大きく変化しています。

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モハ116形式300番代(モハ116-311)

平成4年に登場したグループで、乗降扉付近の座席をロングシート化したものです。

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モハ117-1~(モハ117-32)

パンタグラフ付き中間電動車です。主制御器、主抵抗器を搭載しています。

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モハ117形式300番代(モハ117-306)

他の300番代と同じく、乗降扉付近の座席をロングシート化したグループです。原番号に300番を加えています。写真のように、霜取り用パンタグラフを増設した車輛もあります。

100番代
 昭和61年に登場したグループで、新快速の増発や中京地区の編成短縮化に伴う制御車の不足を補充するための増備車です。0番代のモデルチェンジ車でもあり、バランサー付き一段下降窓、軽量ボルスタレス台車への変更と大きく外観が変化しました。この他、客室設備の改良や、電動車ユニット間の連結器を棒連結器に変更するなど改良が施されています。

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クハ116-101~103(クハ116-101)

クハ116-1~のマイナーチェンジ車です。京阪神地区向けに登場したもので、僅か3両のみとなっています。車端部にトイレが設置されています。

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クハ116-201~(クハ116-208)

中京地区向けに登場したもので、クハ116-101~のトイレなし仕様のグループです。

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クハ117-101~(クハ117-102)

クハ117-1~のマイナーチェンジ車で、101~103は京阪神地区向け、104~は中京地区向けとなっています。

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モハ116-101~(モハ116-105)

モハ116-1~のマイナーチェンジ車で、京阪神地区向けの車輛のみで6両製作されています。

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モハ117-101~(モハ117-101)

モハ117-1~のマイナーチェンジ車で、6両のみ製作。一部の車輛では霜取り用パンタグラフが増設されています。