900番代
平成4年に登場した901系のA編成を量産化改造した番代です。川崎重工業製で、車体は同社の独自開発の2シート工法で製作されています。制御装置はパワートランジスタ素子を用いたもので、素子の耐圧が低い事から各VVVF装置を直列に接続しているのが特徴です。制御が不安定という欠点があり、平成13年に量産車と同じ装置に換装しています。
車内では、7人掛け座席の中央部の荷棚が無い(量産車化改造時に増設)といった特徴がありました。量産車に採用されたのはスクリュー式電動空気圧縮機です。運転台は操縦性に違和感が無いように2ハンドル式でした。これも量産車化改造時にワンハンドルに改造されています。
平成19年に廃車されました。その際、中間不随車1両は脱線試験用として、クハ209-901は東京総合車両センターに保存されるため、抜き取られ8両は解体処分となっています。
910番代
901系B編成を量産車化改造したグループです。東急車輛製で、車体は従来の工法に工夫を加え、軽量化したものとしています。主回路はGTO素子を用いた1M1C制御方式で、この制御方式は255系特急形直流電車で採用されました。電動空気圧縮機は既存車で一般的に見られるレシプロ式です。
客室窓は2分割のもの。車内はつり革を無くし、握り棒のみとした大胆なものとし、照明も枕木方向に配置する他に例のないものとなっていました。
本番代では電気式戸閉装置の試用が行われました。従来は空気式で開閉の度に圧縮空気が使用され、一定値まで減ると電動空気圧縮機が動作し、必要な量を供給します。都市部では開閉回数が多いため、電動空気圧縮機の動作回数も増え、メンテナンスもかかります。これを改善するために電気の力を使用する方法が考えられたのです。電気式では同時に自動開閉機能が試用されています。閉扉時に何かが挟まった際に生じる電圧を検知し、それにより自動で再度開扉し、少し経って閉扉する仕組みです。量産車が登場した後も、試験、開発が行われました。この電気式戸閉装置は0番代の3次車より正式に採用され、以降登場する車輛で一般的なものとなっていきました。
920番代
901系のC編成及びC’編成を量産車化改造時したグループです。C編成8両を川崎重工業、中間車2両のC’編成を自社の大船工場で製作しました。車体は川崎重工業は2シート工法、大船工場製は従来工法を改良したものとなっています。制御装置は量産車に採用されたGTO素子を用いた3レベル制御の1C4M方式です。
ドアエンジンは空気式、運転台も2ハンドル式と従来車に見られるものですが、1両だけ吊り広告を廃し、液晶式情報モニタ装置を設置しました。現在で言うデジタルサイネージのようなもので、ビデオテープに録画された動画広告を配信するというものがありました。
平成19年に廃車となっています。
0番代
901系の試用結果に基づいて製作された量産車のグループで、平成5年に登場しました。制御方式はVVVFインバーター制御方式で、C編成で試用されたGTO素子を用いた3レベル制御1C4M方式を採用。電動空気圧縮機はA編成で試用されたスクリュー式で、ドイツ製のものを採用しました。
車体は踏切事故対策として骨組みが追加され、強度を向上させたほか、運転台の空間拡大し、運転席背面に救出口が設置されました。運転士の操作するマスコンハンドルは賛否両論がありつつも、B編成で試用された左手で操作するワンハンドル式(B編成のものは量産車化改造時に改良をしている。)を採用しました。この他、205系500番代で採用された14インチモニタを使用した運転支援システムを継承し、液晶パネルが設置されています。
接客設備関係では、初期の車輛では乗降扉が空気式でしたが、3次車(第16編成以降)より戸挟み安全装置の付いた電気式に変更されています。この乗降扉の上部には3色LEDディスプレイを使用した旅客案内表示器が設置され、次の停車駅などの案内が表示されます。
京浜東北線、南武線に投入されましたが、平成28年に両線区での営業運転を終了。一部の車輛は2000番代、2200番代などに改造されました。
500番代
0番代のシステムを進化させた次世代車輛を開発するために平成10年に950番代(後のE231系900番代)が登場し、量産化に向けて試験が始まりました。その同じ年、中央・総武緩行線で活躍する103系に大きな輸送障害を伴う車輛故障が相次いで発生し、保有するJR東日本でも問題となりました。
103系を取り急ぎ置き換えるため、950番代の量産車が登場するまでのつなぎ役として登場したのがこのグループです。制御装置など機器類は0番代、車体は950番代で採用された拡幅車体(2950mm)を組み合わせたもので、過度的なスタイルが特徴にあります。つなぎ役であって10両編成17本が製作されたのみとなっています。
この番代での変更は客室座席のクッション材をポリエステル樹脂成型品に変更。汚損時などにおいての交換を容易にしたほか、廃棄時のリサイクル性を高めています。また、側面の大窓部は開閉可能な構造に変更し、妻面部にある非常用換気口を廃止しています。
中央・総武緩行線に投入され、その後京浜東北線で活躍。現在は武蔵野線(8両編成)を中心に活躍し、京葉線でも活躍しています。また、一部編成は4両編成になり、八高・川越線向けの3500番代に改造されています。
1000番代
常磐緩行線と営団地下鉄(現:東京地下鉄)千代田線の列車増発に伴い、平成11年に登場したグループです。当時、950番代や500番代に拡幅車体を採用していましたが、地下鉄線を走行する関係から裾絞りのない2800mm幅となっている他、先頭車の長さを中間車と同じとしています。
他の209系とは異なり、先頭車前面にはオフセット配置の非常用貫通扉が設けられています。また、地下鉄線内での性能条件を満たすため、初めて電動車の比率を高くした6M4T編成となっています。
基本的な機器構成は同時期に登場していた500番代に似たものとなっており、主電動機はE231系と同じMT73形式に変更されています。
平成30年まで活躍し、常磐緩行線から引退しました。一方、中央快速線ではE233系にグリーン車を組み込み、12連化の工事が実施される事になり、不足する車輛を補うため本番代に白羽の矢が立ちました。軽微な改造工事を行い、帯色もエメラルドグリーンからオレンジバーミリオンに変更され活躍をしています。
中央快速線に転属し、のびのびと軽快に走る209系1000番代。パンタグラフがシングルアーム式に変更されるなどの変化が見られます。
2000番代・2100番代
千葉支社管内で活躍する113系及び211系の置換え用として平成21年に登場したグループです。京浜東北線で活躍していた0番代を改造したもので、10両編成であったものを4両編成又は6両編成に変更したもので、帯色を211系で採用された黄色と青色の房総色にしました。
種車の0番代は、ドアエンジン方式が空気式と電気式の2種類があり、前者の方式となっている車輛を2000番代、後者の方式となっている車輛を2100番代としています。6両編成は10両編成から中間不随車4両を抜き取った形となっていますが、4両編成は複数の編成から再組成した編成もあり、空気式と電気式が混在しています。なお、転用にあたって、川崎重工業製の中間車(妻面にリブがある車輛)は構造の都合により、対象とされず廃車となっています。
転用にあたっては、主要機器の更新工事が実施されており、VVVFインバーター制御装置や補助電源装置は素子がGTOサイリスタからIGBT素子に更新。制御伝送装置も新しいものとなっています。行先表示器のLED化、セミクロスシートやトイレの設置、車内非常通報装置(SOSボタン)は警報式から通話式になりました。先頭車ではスカートを強化型に変更、増解結が多い事から、電気連結器及び自動解結装置の装備が行われています。
2200番代
南武線で活躍する209系は登場時に投入した空気式ドアエンジンを持つ1次車と電気式ドアエンジンの8次車の編成が1本ずつありました。異なる編成が存在するため、メンテナンスの統一を図る事になり、空気式ドアエンジンを持つ編成を廃車とし、電気式ドアエンジンを持つ編成を充当する事になりました。
平成21年に0番代を種車に登場したのがこの2200番代になります。その後、205系編成の転出や増発用で追加改造が行われ、最終的には6両編成3本が登場しました。改造内容は2000番代、2100番代とほぼ同じ、機器更新を中心にしたものとなっています。
平成29年まで活躍。2編成は廃車となり、1編成は「BOSO BICYCLE BASE」に転用され活躍しています。
3000番代
平成8年に八高線八王子~高麗川駅間電化開業時に登場したグループです。209系の6次車に当たり、仕様が0番代とは異なるため番代区分されました。
基本的には0番代と同一仕様ですが、停車時間が長い時も多いため、半自動機能が装備されているのが特徴です。ラインカラーは川越線の車輛と同じウグイス色と電化開業によって結ばれる中央線や青梅線の車輛と同じオレンジ色を組み合わせたものとなっています。
平成30年に209系3500番代、E231系3000番代への置換えにより、4本のうち1編成のユニットは訓練車に改造。先頭車は廃車。残る3本も疎開し、留置されており、運用は行われていません。
3100番代
平成17年に八高線、川越線向けに登場したグループです。同線で活躍する103系3000番代、同3500番代の置換えるにあたり、当初は全編成(4両編成7本)を205系3000番代で賄う予定でしたが、埼京線と東京臨海高速鉄道りんかい線の相互乗入れが拡大される事となり、205系が必要となった事から、3000番代は5本になってしまいました。
この相互乗入れでは、東京臨海高速鉄道の所有する70-000形が全編成で10両編成化する事になり、組み換えで先頭車4両、中間車2両が余剰になってしまいました。この余剰車をJR東日本が購入し、改造したものがこの3100番代になります。この6両は、民鉄や第三セクター鉄道に在籍する車輛をJR車籍に編入する最初の事例となりました。また、不足する中間車2両は新製されています。この新製車輛は209系では最後の新製車であり、当時最新鋭のE231系が増備する中、GTO素子を用いたインバーター制御装置を製作した珍しい事例とも言えます。
70-000形はもともと209系をベースに設計された車輛であり、改造にあたっては機器更新や保安装置の変更が主なものとなっています。209系3000番代と同一仕様とするために、半自動機能の追加、ラインカラーの変更などが加えられています。
3500番代
八高線、川越線で活躍する205系3000番代、209系3000番代を置き換えるために平成30年に登場したグループです。209系500番代を改造したもので、帯色の変更、半自動機能の追加などが行われています。4両編成5本が投入されています。