諸元
全 長  20000mm
全 幅  2800mm
全 高  4140mm
主電動機 MT63形式(150kw)
制御方式 VVVFインバーター制御方式(GTOサイリスタ素子)
制動方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、直通予備ブレーキ
動力台車 DT50E形式 不随台車 TR235F形式

車内設備など
座 席 ロングシート(普通席)
乗降扉 片側4扉
トイレ なし

 昭和61年に登場した直流通勤形電車です。この電車の制御方式は国鉄では最初で最後となるVVVFインバーター制御方式を採用している点が最大の特徴となります。
 VVVFインバーター制御方式(可変電圧可変周波数制御方式)は新幹線での採用を目標に、実車試験を行うなど実用化へ一歩ずつ進められました。そして、実用化として直流電源の下で行うとし、常磐緩行線が選ばれました。選ばれた理由は、相互乗り入れを行っている営団地下鉄(現:東京地下鉄)千代田線は、高加減速や省エネルギーの性能が要求される事、また同線には103系1000番代(抵抗制御方式)、203系(電機子チョッパ制御方式)が活躍しており、性能の比較が出来るからです。
 207系は10両編成1本が製作され、試作車を意味する900番代となっています。車体は当時の最新鋭205系を基本としたステンレス車体。地下鉄線を走行する事から、前面中央部に非常用貫通扉が設置されています。この他の設備等はA-A基準に対応したものとなっています。台車も205系に準じた設計です。
 制御方式は先述の通り、VVVFインバーター制御方式で、インバーター装置は各電動車に1台ずつ搭載し、電圧パルス変調装置により4個の三相誘導電動機を制御します。(1M4C制御方式)この事から、モハ207形式とモハ206形式はユニットではなく、1M方式に近いものとなっています。誘導障害対策として、インバーター装置はアルミ製の二重構造の箱に収められ、電線類もアルミ電線管に収められています。
 性能面では、当時の山手線205系10両編成(6M4T)と比較すると5M5Tで十分、性能を発揮する事が出来ました。しかし、当時のVVVFインバーター制御方式車の製造費は非常に高く、205系10両編成(6M4T)と同等にするには4M6Tとしなければなりません。しかし、営団側との決まりにおいて要求される加速性能が出せず、6M4T編成となりました。製造コストが高い事、降雨時などにおいて空転や滑走が多い欠点があり、2本目の製造はありませんでした。しかし、コスト面や性能面での問題は国鉄をはじめ、鉄道会社に与えた影響は大きく、後に様々なVVVFインバーター制御方式車が生まれるきっかけとなりました。
 平成20年に後継となるE233系2000番代投入により、廃車。廃系列となっています。
 

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クハ206-901(クハ206-901)

霞ヶ関方の偶数向き制御車です。床下にATC機器を搭載しています。

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クハ207-901(クハ207-901)

取手方の奇数向き制御車です。クハ206-901と同一の構造ですが、蓄電池を搭載しています。

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モハ206-901~903(モハ206-903)

インバーター装置、電動発電機(MG)を床下に搭載するM2車。モハ207形式900番代とユニットではありませんが、次位に連結されています。

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モハ207-901~903(モハ207-903)

パンタグラフ、インバーター装置、電動空気圧縮機(CM)、蓄電池を床下に搭載するM1車です。

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サハ207-901・902(サハ207-902)

中間不随車で、サハ205形式によく似た車輛です。車内も205系をベースとしています。