諸元
全 長  20000mm
全 幅  2950mm
全 高  3700mm
主電動機 かご形三相誘導電動機
制御方式 VVVFインバーター制御方式
制動方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、耐雪ブレーキ
動力台車 ボルスタレス台車(ヨーダンパ付き)

車内設備など
座 席 ロングシート(普通席)
乗降扉 片側4扉
トイレ なし

 JR西日本発足後、初めての通勤形電車で、片町線と福知山線を結ぶ片福連絡線(現在のJR東西線)の開業を平成9年に控え、207系が開発されました。当時、JR東日本に207系がありましたが、外見も構造も全く異なります。車番もJR東日本車が901~であるのに対し、本系列は1~となっており重複は発生していません。
 平成3年に先行試作車7両編成1本が登場。同社では初めてのVVVFインバーター制御方式(0番代は登場時はチョッパ制御方式も併用。)し、当時の通勤形電車では初めての運転最高速度120km/hに対応する高性能車輛です。また、地下鉄対策や半自動機能、耐雪ブレーキなど寒冷地の対策も施されています。
 地下鉄仕様の207系ですが、片町線や福知山線で活躍していた103系を置き換えるために登場しましたが、その他の路線で活躍する103系などを置き換える事も担うようになり、同社の標準型通勤車輛として大量に増備されました。12年にわたり製作されたため、車体などは共通であるものの、駆動や制御系などが登場した年によって異なっています。
 車体は通勤形電車の標準である片側4扉の20m級車。オールステンレス構体で、前頭部は普通鋼製で、側面、屋根部はFRP製となっています。車体幅は在来の通勤形電車では2800mmでしたが、国鉄、JRでは初めてとなるワイドボディの2950mmを採用した点が特徴の一つにあります。前面は非常用貫通扉を設けた、中央部に膨らみを持つ形となっています。これは踏切事故対策で、衝撃吸収の役割があります。
 車内は化粧板仕上げで、ロングシートの構成。座席は座面高さ、奥行きなど最適化が図られ、乗心地が向上しています。また、車内温度維持のため、長時間停車時などには半自動ドアスイッチによる乗降扱いとする事もできます。側面窓は複層ガラスの固定窓が採用されています。緊急時などにおいての換気を考え、開閉可能な大窓を妻面に設置、貫通扉はこの窓のため偏った位置にあり、特徴の一つともなっています。

0番代
 平成3年に登場しました。7両編成1本が先行試作車として登場します。運転最高速度120km/hを達成するために、パワートランジスタ素子を用いたインバーター装置が採用されています。パワートランジスタ素子は耐圧、耐電流容量が低いため、前段にGTOサイリスタチョッパ制御装置を使用しています。
 台車はボルスタレス台車で、電動車はWDT52形式、不随車はWTR235形式です。主電動機はWMT100形式(155kw)、ブレーキ方式は電気指令式空気ブレーキで、回生ブレーキ、抑速ブレーキ付きとなっています。
 量産車は先行試作車と異なり、編成を4両編成と3両編成としました。

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クハ206-1(クハ206-1)

先行試作車の偶数向き制御車です。量産車では自動解結装置が装備され、100番代となっているため、0番代はこの1両のみとなります。

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クハ206-101~(クハ206-112)

量産車で登場した偶数向き制御車です。3両編成及び4両編成に連結されており、電気連結器と自動解結装置を装備しています。

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クハ207-1~(クハ207-5)

先行試作車編成、量産車編成の4両編成に連結されている奇数向き制御車です。先行試作車編成を除いて、電気連結器が追加で装備されています。

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クハ207-101~(クハ207-132)

3両編成に連結されている奇数向き制御車です。クハ207-1~と同一構造ですが、電気連結器が装備されていることから番代区分されています。現在は0番代(先行試作車編成は除く)も同一の装備がされており、異なる点がなくなっています。

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モハ206-1~(モハ206-5)

先行試作車編成と量産車編成の4両編成に連結されている中間電動車です。VVVFインバーター制御装置を床下に搭載しています。

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モハ207-1~(モハ207-30)

パンタグラフ付きの中間電動車です。VVVFインバータ装置、電動空気圧縮機を搭載しています。一部の車輛は500番代の種車となっています。

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サハ207-1・2(サハ207-2)

先行試作車編成のみに連結されている中間不随車です。

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モハ207形式500番代(モハ207-514)

4両編成を増やすため、3両編成(クハ207-100+モハ207+クハ206-100)にモハ207形式1500番代を組み込む事になり、この車輛の連結に対応できるよう、モハ207形式0番代を改造したグループで、原番号に500番を足しています。

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モハ207形式1500番代(モハ207-1525)

パンタグラフを持たない中間電動車です。4両編成を増やすために新製車2両(1534・1535)を製作し、その後モハ207形式1000番代を改造したグループです。新製車は1000番代の続番、改造車は原番号に500番を足しています。

1000番代
 将来的にはJR西日本エリアの全直流区間を走行できるように設計されたグループで、平成6年に登場しました。大きな特徴はユニット方式が無くなり、0番代ではなかったクモハ形式が誕生しています。機器類の統一化を図り、運転台も計器類を他の新製車輛と同じとする事で、取り扱いを統一しています。
 この統一化により、VVVFインバーター制御も1C1M方式としています。JR東西線の急こう配に対応するため、主電動機の出力を向上させたWMT102形式(200kw)(3次及び4次車はWMT104形式(220kw))に変更しています。パンタグラフは耐寒・耐雪構造が強化され、架線追従性能が向上したWPS27D形式下枠交差式パンタグラフになりました。パンタグラフは当初は1基のみで、もう1基は準備工事でしたが、現在は2基搭載しています。

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クモハ207-1001~(クモハ207-1035)

奇数向きのパンタグラフ付き制御電動車です。最小編成が2両にも出来るようになりました。本番代の基本となる形式で、どの編成でも奇数向きの先頭車は本形式となります。

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クハ206-1001~(クハ206-1074)

偶数向き制御車です。この形式もクモハ207形式と同じく、どの編成でも対応しています。床下には自車を含めて3両まで供給できる電動空気圧縮機を搭載しています。

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モハ207-1001~(モハ207-1022)

パンタグラフ付き中間電動車です。VVVFインバーター制御装置やSIV装置といった重量のある機器を集中して搭載しています。一部の車輛は1500番代へ改造されました。

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サハ207-1001~(サハ207-1016)

本番代の中間不随車です。ブレーキ制御関係の機器のみが搭載されています。

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サハ207-1101~(サハ207-1113)

サハ207-1001~と同一ですが、電動空気圧縮機を搭載した車輛で3両まで供給が出来ます。編成の長さによって連結されています。

2000番代
 片町線の区間快速を京田辺駅まで延長するにあたり、平成14年に登場したグループです。外観は1000番代とほぼ同じで、大きな変化は見られませんが、機器の艤装は223系2000番代をベースにしたほか、VVVFインバーターの素子がIGBTへと変更されています。また、台車は電動車はWDT62形式、不随車はWTR239B形式になっています。この他、コスト低減と乗務員からの意見を参考に、デジタル計器からアナログ計器に変更されています。

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クモハ207-2001~(クモハ207-2008)

上り方の奇数向き制御電動車です。パッと見た感じは1000番代ですが、主電動機の空気取り入れ口が設置されており、見分けるポイントになります。車輛制御装置(VVVFインバーター装置とSIV装置を一体化したもの。)が搭載されています。

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クハ206-2001~(クハ206-2005)

下り方の偶数向き制御車です。車内では車椅子スペースが設置されています。

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モハ207-2001~(モハ207-2004)

4両編成のみに連結されているパンタグラフ付き中間電動車です。

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サハ207-2001~(サハ207-2008)

3両編成、4両編成に連結されている中間不随車です。転落防止ホロは新製時より標準装備で、2000番代の特徴の一つでもあります。