
無蓋車(むがいしゃ)とは?
無蓋車とは、車体に「蓋(ふた)がない貨車」を言います。蓋とは「屋根」を言い、屋根のない貨車を無蓋車と言います。有蓋車と同じく、鉄道による貨物輸送が始まったと同時に生まれた歴史のある種類です。記号はトラック(truck)の「ト」です。
無蓋車は風雨に晒されても問題のない貨物や有蓋車に収まらない貨物、有蓋車では荷役に難がある貨物を運びます。有蓋車では運べない貨物においては、必要に応じて雨水の浸入を防ぐ為、ホロで覆う処置を行います。専用車となる場合は屋根を設置している場合もあります。
積載する貨物のうち、専用車となる場合や構造の違いが見られるようになり、長物車、大物車、車運車、コンテナ車と派生車種が誕生しました。
国鉄時代からJR発足初頭にはポピュラーな存在でしたが、コンテナ化等で徐々に姿を消し、晩年は事業用車の代用(輪軸輸送等)に使われていました。JRで籍を置く車輛はなく、私鉄で事業用車の扱いでその姿を見る事が出来ます。
無蓋車の基本的な名称
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無蓋車の各部位の基本的な名称は写真の通りです。
妻板・・・車輛の前後に設置されるもので、貨物が飛び出たり、流れ出るのを防ぐ目的があります。
あおり戸・・・輸送中は貨物が左右に転げ落ちたり、流れ出る事を防ぐ目的とし、荷役時には外側へ約180℃展開し、走り装置や側ブレーキ等を保護する役割も兼ねるもの。開けたまま走る事は禁じられています。
床板・・・貨物を積載する部分で、汎用無蓋車では木製となっており、貨物の固定に釘打ち等が出来るようになっています。一方、砂利等の鉱石では鉄製となっている。木製は腐食の問題があり、鉄製として埋木を置いて固定に対応した構造を持つ無蓋車もあります。原木等の尺ものであおり戸の高さを超えて積載する場合、長物車と同じく柵柱を立てて使用するケースもあります。
トラ6000形式17t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 9550mm | 走り装置 | 一段リンク式、二段リンク式 | その他 | |
| 全 幅 | 2710mm | 台 車 | 特殊標記符号 | ||
| 全 高 | 2205mm | 専用種別 | |||
昭和16年から昭和29年にかけて6122両が製作された無蓋車。戦後に他形式からの改造車が加わり、6649両になっています。輸送力増強を目的に車体長を限界まで伸ばした「長トラ」と呼ばれる無蓋車の1形式で、妻板とあおり戸を鋼製としたトラ5000形式に対し、資材節約の為に木製としたのが本形式です。
新製車では戦前形(トラ6000~9519)、戦時形(トラ10000~12179)、戦後形(トラ12183~12782)の3つに大別されます。戦時中には28t積みのトキ66000形式に改造された車輛があります。二軸の間にもう1軸追加し、三軸貨車としたもので、側板を追加し嵩上げする事で28t積みとしました。これらは戦後に復元されています。また、昭和43年には二段リンク式に改造を行い、対象とならなかった車輛はトラ16000形式に変更しています。
戦前に生まれ、激動の時代に汎用無蓋車の主力の1形式として活躍しましたが、昭和58年に形式消滅しています。
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| トラ11348(3位側) |
トラ40000形式15t/17t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 8100mm | 走り装置 | 二段リンク式 | その他 | |
| 全 幅 | 2742mm | 台 車 | 特殊標記符号 | コ | |
| 全 高 | 2750mm | 専用種別 | |||
昭和35年に登場した無蓋車で3270両が製作されました。車長を抑えつつ、容積を増やし、砕石や石炭等のばら積み貨物を積載する場合は増トン(17t)を認めるトラ35000形式を嚆矢とする「コトラ」に属する形式です。
車体は荷崩れ防止や積み付けを容易にする為、木製であった事から固定し易く、人気のある貨車でした。昭和60年に形式消滅しています。
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| コトラ41143(3位側) |
トラ45000形式15t/17t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 8010mm | 走り装置 | 二段リンク式 | その他 | |
| 全 幅 | 2746mm | 台 車 | 特殊標記符号 | コ | |
| 全 高 | 2765mm | 専用種別 | |||
戦前製の老朽化した無蓋車を置き換える為、昭和35年に登場し8184両が製作されました。本形式も嵩高貨物の場合は15t、ばら積み貨物の場合は17t積みとするコトラに属する形式です。同時期に登場したトラ40000形式との違いは床面、妻面を鋼製としている点です。
床板が鋼製だと積荷の固定に必要な釘打ちが出来ず、転動防止が難しい。プレス構造の妻板も丈夫になった一方で、歪みが生じると補修が難しい欠点があります。この為、本形式は転動防止の不要なばら積み貨物を中心に使われていました。
転動防止の必要な貨物はトラ40000形式等の木床となっている車輛、通称「イタトラ(板トラ)」が使われていましたが、イタトラの廃車が進み、数が減ってきた為、本形式に対して木床化改造が昭和53年から行われました。
転動防止を容易にする為、鋼製の床を木製にし、妻板はプレス鋼板から、補強を入れた平板に交換しました。この工事を実施した車輛は原番号に100000をプラスしており、145000番代車と呼ばれています。
昭和59年ダイヤ改正では多くの汎用無蓋車が失職する中で145000番代車が生き残り、JR貨物に引き継がれましたが、車扱い貨物列車のコンテナ化等によって失職。晩年は事業用車(配給車代用)で活躍しました。
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| コトラ148466(1位側) | コトラ145270(2位側) |
JR貨物の事業用車として最後の活躍をしていた頃の様子。主に輪軸を運んでいました。
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| コトラ151676(3位側) | コトラ152462(3位側) |
写真左は「パイプ専用」の指定を受けた車輛で、車扱い貨物晩年に見られました。写真右は最後の現役車輛で、JR四国に所属しているトラ45000形式です。トロッコ車輛に改造され、気動車に連結されて運用されています。写真は初代塗装で、現在とは異なります。
トラ55000形式15t/18t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 8076mm | 走り装置 | 二段リンク式 | その他 | |
| 全 幅 | 2835mm | 台 車 | 特殊標記符号 | ス | |
| 全 高 | 2750mm | 専用種別 | |||
昭和37年に登場し、3205両が製作された無蓋車で、「コトラ」の系譜を汲む形式です。特徴は、初めて車体全体を鋼製とした点で、僅かに大きくした設計にもかかわらず、自重を軽減し、荷重を1t増とした点があります。他の無蓋車と区別する為、特殊標記符号は「ス」(鉄:steal)を使用しています。
試作車5両(トラ55000~55004)、初期量産車60両(トラ55010~55069)、量産車3140両(トラ55100~58239)に大別され、初期量産車はあおり戸を木製に戻しています。量産車では、転動防止対策として、床面に固定する際に釘打ちが出来るよう埋木が設置されました。
汎用無蓋車の1つとして活躍しましたが、昭和61年に形式消滅しています。写真は北海道小樽市にある小樽市総合博物館に保存されている貴重な1両です。
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| ストラ57964(3位側) |
トラ70000形式17t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 9456mm | 走り装置 | 二段リンク式 | その他 | |
| 全 幅 | 2700mm | 台 車 | 特殊標記符号 | ||
| 全 高 | 2750mm | 専用種別 | |||
昭和42年に登場した無蓋車で5100両製作されました。戦前~戦後にかけて製作されたトラ6000形式等、長尺物に対応した無蓋車(通称「長トラ」)の老朽化置換えを目的に製作。国鉄では最後の新製二軸無蓋車となります。
車体は全鋼製でトラ30000形式と同一の寸法を用い、全幅のみ社線への乗入れも考慮し、旧車輛限界としています。床面には転動防止用の埋木を4ヶ所設けています。
汎用無蓋車として全国で活躍。JR移行後、旅客会社各社でトロッコ列車用トロッコ車に改造が盛んに行われました。平成30年にJR九州に所属していた車輛が廃車となり、形式消滅しています。
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| トラ70717(1位側) | トラ73134(2位側) |
写真左は一般貨物として活躍していた頃の様子。常備駅が表記されている事から、特定の品目を輸送していた。と推察されます。写真右は関東地方で有名だった「塩トラ」です。輸入される工業塩を輸送するのですが、そのままでは車体を傷めてしまうので、バスタブ状の専用容器に入れて輸送されていました。専用種別に「塩積専用」と表記されていました。また、個体の中にはあおり戸をプレス鋼板から平板に更新したものがありました。
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| トラ71422(2位側) |
トロッコ車輛に改造された例。屋根を設置し、テーブル付座席を配置。転落防止のガードフェンスの設置などが行われており、原形を殆ど残さない形となっています。
トキ15000形式35t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 13800mm | 走り装置 | その他 | ||
| 全 幅 | 2742mm | 台 車 | TR41形式 | 特殊標記符号 | |
| 全 高 | 2375mm | 専用種別 | |||
昭和18年、日中戦争勃発により増大した貨物輸送に対応する為、戦前製無蓋車として最大級となるトキ10形式が登場しました。戦後となる昭和23年、トキ10形式とほぼ同じ大きさの無蓋車として本形式が登場しました。
荷重はトキ10形式と同じ35t積み(石炭は30tまで)。違いは全長を200mm延長した他、初期型ではリベットと溶接の併用、後期車は全溶接としている点です。また、台車はトキ10形式ではアーチバー式のTR20形式でしたが、本形式では後に貨車の台車としてベストセラーとなるベッテンドルフ式のTR41形式を採用しています。
戦後を代表する大型無蓋車で、改造により多くの派生形式を登場させた他、私鉄の貨物輸送にも影響を与えました。昭和61年に形式消滅しています。
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| トキ20043(3位側) |
トキ25000形式36t積み無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 14186mm | 走り装置 | その他 | ||
| 全 幅 | 2835mm | 台 車 | TR209系、TR213系 | 特殊標記符号 | オ |
| 全 高 | 2851mm | 専用種別 | |||
戦後復興も兼ねて大量増備された大型無蓋車トキ15000形式の後継車種として、昭和41年に登場しました。全体を近代化したスタイルが特徴で、妻板とあおり戸はプレス鋼板、床板は平鋼板を使用。僅かに大型化していますが、自重は僅かに軽く、荷重を1t増加させています。荷重の違いを識別をする為、特殊標記符号「オ」が添えられます。
台車も近代的なコロ軸受けを用いたTR209系を採用。この事を識別する為に車体色は赤3号(赤茶色)としています。
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| オトキ25718(2位側) | オトキ28417(2位側) |
トキ25000~26299
トキ15000形式を近代化したトキ25000形式の最初のグループ。プレス鋼板の採用、TR41形式の軸受をコロ軸に変更したTR209形式台車を履いているのが特徴です。
トキ26300~28649
車体や台車は前ロットと同じですが、転動防止を容易にする為、埋木を設置しました。写真は2tトラックの荷台を輸送する為の改造を施した車輛で、ライトグリーンに塗装変更(一部は赤3号のまま)したものです。改造に伴う、改番や番代区分は行われていません。
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| オトキ28877(1-3位側) | オトキ29264(2位側) |
トキ28650~29149
あおり戸等の細部を改良したグループで、特徴は台車をTR209形式から枕ばねを板ばねからコイルばねに変更したTR213-2形式に変更している点で、より近代的なスタイルになりました。晩年は事業用車(配給車代用)で活躍をしていました。
トキ29150~29399
ブレーキ装置をKC方式からARSD方式に変更したグループで、その他は前ロットと同じです。
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| オトキ29425(4位側) |
トキ29400~29499
昭和50年に登場した最終ロッドで、あおり戸や妻板を平板鋼板に変更したマイナーチェンジ車です。プレス鋼板を使用した車輛でも、老朽化による交換で平板鋼板に変更した車輛もあります。
トキ23900形式36t積み亜鉛塊専用無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 14186mm | 走り装置 | その他 | ||
| 全 幅 | 2835mm | 台 車 | TR209A形式 | 特殊標記符号 | オ |
| 全 高 | 2851mm | 専用種別 | 亜鉛塊 | ||
昭和54年にトキ25000形式から30両を改造して登場した物資別適合貨車となった無蓋車です。側面のあおり戸を撤去し、4分割スライド式のカバーを設置しました。この他は種車のままとなっており、塗装も赤3号となっています。平成7年に形式消滅しています。
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| オトキ23911(2位側) |
私有貨車
トキ80000形式30t積み大板ガラス専用無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 18630mm | 走り装置 | その他 | ||
| 全 幅 | 2700mm | 台 車 | TR211D形式 | 特殊標記符号 | |
| 全 高 | 3200mm | 専用種別 | 大板ガラス | ||
物資別適合貨車の1つです。大板ガラスを輸送する貨車として、国鉄がトキ15000形式から改造したトキ22000形式がありました。運べるサイズを更に大きくしたのが本形式で、日本板硝子が私有貨車として昭和48年に2両製作しました。
トキ25000形式と同じプレス鋼板のあおり戸と妻板部が荷台で、床面は積荷のガラスを落とし込む構造となっています。両側には積荷を支える支柱が12本立てられています。
落とし込み部がある事から、台枠の中梁が省略され、枕梁間の側梁は魚腹形となっています。この構造は大物車と同じ構造で、無蓋車としては非常に特異である。車端部にはブレーキ装置が設置されています。
運用を始めると連結器の緩衝装置(ゴム式)の能力不足により、積荷の破損事故を何度か起こし、全損事故を起こした事により、使用停止。登場から僅か11年後の昭和59年に形式消滅しています。
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| トキ80000(2ー4位側):日本板硝子 |
JR貨物トキ25000形式40t積み亜鉛精鉱専用無蓋車
| 諸 元 | |||||
| 全 長 | 14186mm | 走り装置 | その他 | ||
| 全 幅 | 2835mm | 台 車 | FТ1C形式 | 特殊標記符号 | オ |
| 全 高 | 2851mm | 専用種別 | 亜鉛精鉱 | ||
亜鉛精鉱を輸送してきたJR貨物所有のトキ25000形式(以下、JR車)の老朽化により、平成11年に私有貨車として12両を製作しました。主な寸法や車体色はJR車と同じですが、台車は運転最高速度を95km/hとしたFT1C形式とし、荷重を36tから40t積みに変更した為、台枠等の各部材の強化が行われています。
車体にはあおり戸が付いていますが、通常は使用しません。荷役はカーダンパーという車輛を傾斜させ積荷を卸す方法が用いられています。積荷を卸し易くする為、床板、妻板、あおり戸の各内張りにはステンレス板が付けられています。積荷は水分を嫌う為、空積問わず運用時にはカバーが張られています。
ブレーキ装置関係では、留置や突放時に使用する側ブレーキはJR車では足踏み式ですが、突放はしないのでハンドル式(手ブレーキ)に変更されています。
「安中貨物」の愛称で信越本線安中駅と福島臨海鉄道小名浜駅で活躍していましたが、生産体制の変更により役目を終えています。
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| オトキ25000-1(3-1位側):東邦亜鉛 | オトキ25000-7(2位側):東邦亜鉛 |
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