大物車(おおものしゃ)

大物車(おおものしゃ)とは?

 無蓋車から派生した貨車で、無蓋車や長物車でも運ぶ事の出来ない大型の貨物や重量のある貨物を鉄道輸送する為に登場しました。登場した際は「重量品運搬車」を命名され、記号は「重量(じゅうりょう)」の頭文字「」となっています。
 過去には嵩高貨物を運ぶ事を目的とした大物車もあり、2軸車もありましたが、多くは車輛限界いっぱいの重量のある特大貨物を運ぶ大物車が主となります。
 けた外れた重量のある貨物を運ぶ際に、軌道(線路)に与える影響が問題となります。車輛がその重さを線路に伝える数値を軸重と言います。軸重の値が線路が耐えられる範囲内であれば、車輛の走行が可能となります。
 例えば、線路は軸重15tまで耐えられるとし、車輛と貨物合わせて200tを運ぶ場合はどうなるでしょう。最小単位の2軸では、2つに分散して、1軸は100tとなります。線路が全く耐えられる値ではありませんね。ボギー車ならどうでしょう。4軸なので、1軸あたり50t。軸をどんどん増やしていき、14軸にすると1軸あたり14tになり、ようやく走行が出来る値となりました。線路を走行する為には、沢山の車軸を持つ必要があり、車輪がずらりと並んでいる。というのが大物車の特徴の一つになっています。
 軌道に大きい負担を与え、車輛自体も大荷重を受けて走行する事から高速走行は難しく、運転最高速度は低めになっているのも特徴にあります。
 積載する貨物ですが、大きさなどに応じた積み方があり、4種類に分類する事が出来ます。積載する部分を「梁」と言い、A梁、B梁、C梁、D梁と言います。
A梁
低床式、弓形梁式とも呼ばれるもので、台枠を側面から見ると凹んだ形になっており、その凹んだ部分に貨物を載せるシンプルな方法。長物車に近い使い方となります。
B梁
ドイツ語でくちばしを意味する言葉を由来とする「シュナーベル式」、完全輸送を意味する「ファールバール式」とも呼ばれ、日本語では吊り掛け式とも言います。ドイツで考案されたもので、車体を前後に分割し、その間に貨物を挟み込む方法。貨物自体が車体の一部になる為、貨物自体にもある程度の強度が必要となります。貨物の長さによって車長が変化します。
C梁

落とし込み式とも言われるもので、幅の狭い大型貨物を輸送する為に登場しました。丈夫な両側材を車体の高い位置に掲げ、その間に貨物を落とし込み、抱えて運ぶもの。
D梁
分割低床式とも呼ばれるもので、低床部分を分割する方法です。貨物を積載し、走り装置と組み合わせて輸送をします。
運転される機会は少なく、運転最高速度の低さから夜間に運転される事が多く、見れる頻度は少ない。これも大物車の特徴と言えましょう。

シキ70形式30t積みA梁(低床式)大物車

諸   元     
全   長 12300mm  走り装置    その他  
全   幅  2280mm  台   車  TR41C形式  特殊標記符号  
全   高  2000mm  専用種別      

 大正時代に製作された大物車の置換えを目的に、昭和34年より16両製作された大物車です。昭和4年に登場したシキ40形式とほぼ同一設計ですが、全溶接組立、荷受け量の拡大が行われ、近代的なスタイルとなりました。30tクラスの輸送はトラック輸送に転換され、昭和61年に形式消滅しています。

シキ277(2位側)

シキ180形式(2代目)80t積みA梁(低床式)大物車

諸   元     
全   長 26070mm  走り装置    その他  
全   幅  2600mm  台   車  2-3複軸ボギー台車  特殊標記符号  
全   高  1600mm  専用種別      

 国鉄では様々な特大貨物を輸送できるように、多くの形式を製作。昭和35年に最大級となる100t積み低床式大物車を製作しました。しかし、大き過ぎて使い勝手が悪い事から、一回り小さくした本形式を昭和40年に1両製作しました。
 使い勝手を良くする為、低床面を長くしているのが特徴です。運転最高速度は空積問わず65km/hとなっており、車体には黄色帯が巻かれています。本形式は国鉄最後の大物車で、JR貨物にも継承されて活躍をしています。

シキ180(2-4位側)

シキ550形式50t積みA梁(低床式)大物車

諸   元     
全   長 16680mm  走り装置    その他  
全   幅  2500mm  台   車  TR78形式  特殊標記符号  
全   高  2050mm  専用種別      

 昭和36年より12両が製作された50t積みのA梁大物車です。老朽化の進む同クラスの大物車を置き換える為登場しました。一見すると弓形のシンプルなデザインですが、車体幅とレール面上の高さの両立を図る必要から、荷台上部が外側に張り出し、台車上から荷台部分にかけて外側に膨らんでいます。また、応力集中を避ける為に梁と床部の接合が円弧になっている等、複雑な設計が行われています。台車はタキ50000形式で開発された3軸ボギー台車のTR78形式で、台車ファンも必見の一形式となっています。
 使い勝手が良く、JR貨物に引き継がれ活躍をしています。

シキ551(3-1位側)

シキ1000形式55t積みD梁(分割低床式)大物車

諸   元     
全   長 24400mm  走り装置    その他  
全   幅  2445mm  台   車  NC-5形式2-2軸複式ボギー  特殊標記符号  
全   高  2581mm  専用種別      

 昭和50年に3両が製作された大物車です。大物車は積荷や車体構造等の理由により、運転最高速度は低く抑えられ、通常の貨物列車との併結は不可。と多くの制約があります。これらを改善し、運用効率を良くする事を目的に開発されているのが特徴です。
 運転最高速度は75km/hに向上、積載時は機関車の次位に連結しなければならない。等の制約はあるものの、通常の貨物列車にも連結が可能になりました。
 もともとは私有貨車で、日本通運が所有していましたが、昭和62年に除籍。平成2年にJR貨物が所有し、車籍が復活しています。

シキ1000(2-4位側)

私有貨車

シキ160形式130t積みB梁(吊掛け式)大物車

諸   元     
全   長 23756mm  走り装置    その他  
全   幅  2720mm  台   車  NC-2形式  特殊標記符号  
全   高  3372mm  専用種別      

 昭和30年に1両が製作された大物車で、変圧器の輸送を目的としています。荷受け梁がトラス構造となっており、外観の特徴となっています。
 登場時は95t積みでしたが、昭和36年に性能向上の改造が行われ、130t積みとなりました。昭和43年のヨンサントウでは運転最高速度65km/hの低速車に指定され、特殊標記符号の表記、車体には黄色の帯が巻かれました。平成14年に廃車となり、平成19年に三重県いなべ市にある貨物鉄道博物館に静態保存されています。

シキ160(4位側):日本AEパワーシステムズ

シキ280形式165t/125t積みB梁(吊掛け式)大物車

諸   元     
全   長 26900mm(B1)
26776mm(B2)
 走り装置    その他  
全   幅  2470mm(B1)
2720mm(B2)
 台   車  NC-3形式  特殊標記符号  
全   高  3359mm(B1)
3350mm(B2)
 専用種別      

 昭和33年に1両が製作された大物車です。富士電機(後の日本AEパワーシステムズ)所有のシキ160形式の増備車となります。
 本形式登場以前は多軸台車と呼ばれる1つの台車に複数の車軸を配置する方法が採られていました。積載荷重が大きくなると軸を増やします。シキ300形式では1つの台車に6軸配置するまでになりました。1つの台車に車軸が増えると、曲線通過時、1軸に負担か集中し、脱線や軌道破壊の原因となります。そこで、本形式では台車を増やす方法を採用。以後に登場する大物車の基本となりました。
 本形式の初仕事。貨物を無事届け終え、その帰路の事でした。突然、脱線事故を起こしてしまいました。原因は車体と台車を繋ぐ「心皿」から台車が抜けてしまったのです。これを心皿の脱出と言います。何故この様な事故が起きたのか、さらに調べると大物車に対し、急ブレーキをかけると100t近い衝撃が加わり、心皿の脱出が起きた事が判明。応急処置として、運転最高速度を下げました。本格的な対策として、心皿の改造、死重の搭載が行われました。これは他のB梁を持つ大物車に行われ、以降製作される大物車にも影響を与えています。
 改造により125t積みに変更されましたが、昭和35年に新しい梁が製作され、こちらは165t積みとなりました。165t積みの梁はB1梁、125t積みはB2梁としています。
 平成17年に廃車となりましたが、所有する日本AEパワーシステムズ工場内で試験用として保管されているそうです。

シキ280(4位側):日本AEパワーシステムズ

シキ290形式80t(A梁)、170t(B梁)、115t(C梁)大物車

諸   元     
全   長 33420mm(A梁)
26930mm(B梁)
33220mm(C梁)
 走り装置    その他  
全   幅  2100mm(A梁)
2606mm(B梁)
2700mm(C梁)
 台   車  NC-3B形式  特殊標記符号  
全   高  2480mm(A梁)
3359mm(B梁)
3445mm(C梁)
 専用種別      

 昭和35年及び昭和39年に1両ずつ、計2両製作された大物車で、シキ280形式を改良したものです。昭和35年に登場したシキ290はA~C梁3種類を選択できるマルチな存在。3種類を装備出来るのは私有貨車では本形式のみで、国鉄所有ではシキ120形式のみとなっています。昭和39年に登場したシキ291はC梁のみとなっています。どちらも2軸ボギー台車を8つ履いており、A梁(低床式)の大物車では唯一の形式となっています。平成16年に形式消滅しています。

シキ291(1位側):高岳製作所

シキ610形式240t又は235t積みB梁(吊掛け式)大物車

諸   元     
全   長 32910mm  走り装置    その他  
全   幅  2770mm  台   車  NC-4A形式  特殊標記符号  
全   高  3478mm  専用種別      

 昭和37年から5両が製作された大型変圧器を輸送する大物車です。シキ600形式の改良したもので、外観はほぼ同じです。B梁の違いで240t又は235tまでの貨物を運びます。巨大な大物車ですが、運転最高速度は空車時は75km/h、積車時は45km/hと高性能となっています。
 シキ610は東芝(東芝物流)所有ですが、シキ611以降は日本通運の所有です。大物車の使用頻度は少なく、各電機メーカーで所有するよりも、共通で使用する事で効率が良くなる為です。現在はシキ611番のみが活躍をしています。

シキ611(1位側):日本通運 シキ613(4位側):日本通運

シキ800形式155t/160t積みB梁(吊掛け式)、C梁(落込式)大物車

諸   元     
全   長 25800mm(B梁)
32670mm(C梁)
 走り装置    その他  
全   幅  2800mm(B梁)
2800mm(C梁)
 台   車  NC-3C形式  特殊標記符号  
全   高  3465mm(B梁)
3270mm(C梁)
 専用種別      

 昭和48年、昭和49年に1両ずつ、計2両が製作された変圧器輸送用大物車です。大物車は電機メーカー各社が所有し、運用を行っていましたが、運用頻度を考え、各社で共通利用できる汎用大物車として本形式が登場しました。シキ610形式でも同様の事が行われましたが、ヒンジ形状の異なる会社があり、別の荷受け梁が製作されました。本形式では、継手を用意し、側梁を可動式として異なる寸法やヒンジ形状に対応出来るようにしています。
 シキ800はB2梁、C梁をシキ801はB1梁、B2梁、B2梁を用いてC梁(B2C)と形態を変える事が可能となっています。

シキ800(3位側):日本通運 シキ801(2-4位側):日本通運

シキ800形式10番代160t積みB梁(吊掛け式)大物車

諸   元     
全   長 26800mm  走り装置    その他  
全   幅  2990mm  台   車  TR213F形式  特殊標記符号  
全   高  3310mm  専用種別      

 平成8年に登場した大物車です。前作から期間が長く空いており、様々な改良を行っている為、10番代と区分されました。
 台車はTR213F形式とし、大物車では初めてのCSD方式(応荷重装置付き)を採用しています。基本的な構造は既存車と同じとなっています。塗装は青26号(スカイブルー)を採用。
 長い活躍を期待していましたが、平成21年にシキ801の更新の際、台車や台枠を供出し、廃車されてしまい番代消滅となっています。

シキ810(4位側):東芝物流

シキ850形式115t積みC梁(落込み式)、D梁(分割低床式)大物車

諸   元     
全   長 25350mm(C梁)
26430mm(D梁)
 走り装置    その他  
全   幅  2990mm(C梁)
2560mm(D梁)
 台   車  NC-7形式  特殊標記符号  
全   高  2811mm(C梁)
3077mm(D梁)
 専用種別      

 昭和51年に1両製作された大物車です。115t積みの分割落込み式(C梁)がつくられ、翌昭和52年にD梁(分割低床式)が製作されました。どちらの梁でも、空車時は75km/h、積車時は65km/hで、脱線対策で運転最高速度を低く設定されていたものを改良した高性能大物車となっています。日本通運が所有していましたが、現在はJR貨物が所有しているようです。

シキ850(C梁)(1位側):日本通運 シキ850(D梁)(1位側):日本通運

シム1形式15t積み低床式、平床式大物車

諸   元     
全   長 16380mm  走り装置    その他  
全   幅  2460mm  台   車  TR41C形式、TR228形式等  特殊標記符号  
全   高  1984mm  専用種別      

 大物車として登録されていますが、鉄道車輛会社が製造した鉄道車輛を輸送する事を目的とした、変わり種の大物車です。
 初登場は大正9年で、昭和62年までに34両が製作されました。68年にも及ぶ製作期間は、
私有貨車の同一形式製造期間の最長記録となっています。この他、私有貨車として初の大物車であり、ボギー台車を初採用した事でも知られています。
 シム1~10は登場時(大正9年~14年)はホシウ70形式で、昭和3年の改番によりシム1形式になっています。その後、モノレール輸送用等の車輛が製作され、シム11~19、101~117が製作、シム116、117は名義上、新製車ですがチキ7000形式からの改造車です。平成3年にはシム101、102の2両を新幹線車輛輸送用に改造し、シム1001、1002が登場しています。
 現存車はシム110~117、シム1001、1002で、いずれも新幹線車輛輸送用として籍を置いています。

シム1001(1位側):東急車輛


 


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