諸元
全 長  20000mm
全 幅  2900mm
全 高  3654mm
主電動機 MT46形式(100kw)(401系・421系) MT54形式(403系・423系)
制御方式 直並列抵抗制御方式、弱め界磁制御方式
制動方式 発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ方式
動力台車 DT21B形式 不随台車 TR62形式

車内設備など
座 席 セミクロスシート
乗降扉 片側3扉
トイレ あり

 国鉄では戦後、電化推進を積極的に実施し、地方路線については交流電化を進めていました。電化区間は直流電化区間と交流電化区間の2種類となり、それらをそのまま直通運転が可能な車輛の開発も進められていました。車輛はモハ90系(後の101系)に始まる新性能電車が完成し、特急形及び急行形電車が開発されていきました。
 昭和36年常磐線取手~勝田駅間が交流電化及び山陽本線小郡(現:新山口駅)~下関間直流電化、鹿児島本線門司港~久留米駅間交流電化開業が決定し、これらに対応する普通列車用の車輛として401系、421系が交直両用電車の第1号として昭和35年に登場しました。
 車体は153系をベースに設計され、全金属製セミモノコック構造の車体幅2900mmの裾絞りのある形状とし、塗装色はローズピンク(赤13号)とし、前面に401系はクリーム1号、421系はクリーム2号の逆台形の警戒色を前面窓下に入れたものとし、以降の国鉄交直両用電車の標準色となりました。更に、周波数の識別のために401系は制御車前面窓上に細い帯、421系は全ての車輛の側面裾部に細帯を前面警戒色と同じ色で入っていました。
 通勤・通学での使用も考え、モハ70系と同じ、デッキのない片側3扉構造としました。車内の座席配置もモハ70系を改良したデザインとし、乗降扉横の戸袋部分及び車端部をロングシート、乗降扉間にクロスシートを配置しました。トイレは制御車に設置され、この構造は長らく新性能近郊形電車の標準仕様となりました。
 先頭車前面はクハ153形式0番代と同じく、パノラミックウィンドウが採用され、併結運転時に通行が出来るよう、貫通扉が設置されました。運転室は低運転台構造で前面窓は大きいものでしたが、踏切事故対策で途中よりクハ153形式500番代と同じ高運転台構造に変更されています。
 主回路機器や台車は101系をベースに交流電化区間での対策を講じたもので、基本的な構成は同じとなっています。一方、わが国の商用電源(交流)の周波数は50Hzと60Hzの2種類があります。開発の始まった1950年代当時、主変圧器や主整流器など50Hz/60Hz両用の交流機器が開発されておらず、商用電源周波数の違いにより別々の系列を登場させる事になりました。このため、常磐線用交流50Hz車は401系、九州地区用交流60Hz車は421系としています。
 昭和40年、主電動機の出力向上を図った系列が登場します。401系の出力向上系列として403系、421系は423系が登場しました。401系は平成3年、403系は平成20年、421系は平成8年、423系は平成13年にそれぞれ廃車され、いずれの系列も消滅しています。

401系・421系
 先述の通り、401系(交流50Hz用)は常磐線取手~勝田駅間交流電化開業、421系(交流60Hz用)は山陽本線小郡(現:新山口駅)~下関駅間直流電化、鹿児島本線門司港~久留米駅間交流電化開業に合わせて昭和35年に先行試作車4両編成2本ずつが登場しました。

tc40114.jpg

クハ401-1~22(クハ401-14)

401系の制御車として製作されたグループです。セミクロスシート仕様の車内に車端部にトイレが設置されています。運転台はクハ153-1~もモデルとしており、低運転台車となっています。床下には電動空気圧縮機を搭載しています。

tc40176.jpg

クハ401-23~88(クハ401-76)

23番以降は踏切事故対策で運転台がクハ153-501~と同じ高運転台仕様に変更しています。51番以降は403系の制御車として製作されました。403系の制御車として製作された車輛は運転台上の通風器を箱型のものに変更しています。なお、冷房化された際、集中式冷房装置を搭載した車輛は撤去されている車輛もありました。
写真は更なる踏切事故対策で前面強化、アンチクライマーを装備、冷房化(AU712形式搭載)で、床下に冷房電源用MGを搭載(偶数番号のみ)し、冷房装置制御盤設置により運転台後方の窓を埋めています。

tc40190.jpg

クハ401-89・90(クハ401-90)

最終増備車となるこの2両は屋根上にある通風器をグローブ型から押込み型に変更しています。

tc42110.jpg

クハ421-1~22(クハ421-10)

421系の制御車として製作されたグループです。交流商用周波数が60Hzと異なるだけで、基本的な構造は401系と同じとなっています。

tc42158.jpg

クハ421-23~106(クハ421-58)

401系と同じく、踏切事故対策で高運転台になったグループです。41~60、67~106番は423系の制御車として登場しました。この423系用の制御車では運転台上の通風器を箱型のものに変更しています。

m42023.jpg

モハ420-1~(モハ420-23)

421系のパンタグラフ付き中間電動車です。401系のモハ400形式も同じ設計で、交流商用周波数が異なるだけです。主変圧器、主整流器など交流機器が搭載されています。パンタグラフ部分は絶縁距離を確保するために低屋根構造としています。モハ420-21~23番までは昭和39年にサヤ420形式という事業用車で誕生しました。
このサヤ420形式とは、東海道新幹線開業により、東海道本線で活躍していた151系特急形直流電車を山陽本線を経由して九州間のアクセス特急に転用する事が決まり、交流区間においてサービス用電源を供給する電源車です。門司~博多駅までは交流区間なので機関車で牽引する事で対応できますが、サービス用電源が確保出来無い問題が残りました。151系での運転はわずかな期間である事から、設計した車輛を任務終了後に421系に簡易な改造で編入できるようにモハ420形式をベースに設計(外観はモハ420形式そのまま)しています。昭和41年に主電動機や動力台車を履き、モハ420-21~13に改造しました。

m42123.jpg

モハ421-1~(モハ421-23)

モハ420-1~とユニットを組む中間電動車です。主制御器、主抵抗器などの直流機器を搭載するほか、単相交流100Vを出力する電動発電機(MG)を搭載しています。外観、機器類共に401系のモハ401形式も同じです。
写真の手前に大きなルーバーがありますが、これは冷房改造を行ったものです。集中式冷房装置の改造を行うと構体や屋根などに補強が必要になるため、コスト面に問題がありました。そこで、改造費用を抑えた方法が考えられました。JR九州で開発したものが、AU2X形床置き形冷房装置です。車内天井部にダクトを配して冷風を車内に供給します。ルーバー部に冷房装置(凝縮器)を設置し外気をここから取り入れ、凝縮した際に出る風を直上にある特大グローブ型排風器から排出する仕組みとなっていました。

m40218.jpg

モハ402-1~19(モハ402-18)

403系のパンタグラフ付き中間電動車です。モハ400形式の主電動機出力を向上させた形式で、主変圧器、主平滑リアクトルの一体化が行われ、機器配置の変更が行われています。また、メンテナンス作業を考え、パンタグラフ周辺の機器配置を455系、475系と共通にした変更が行われています。

m40220.jpg

モハ402-20(モハ402-20)

最終増備車となる20番は仕様が変更され、グローブ型ベンチレーターから押込み型ベンチレーターに変更しています。この他、乗降扉のステンレス化が行われています。423系ではモハ422-29、30番が同様の変更を行っています。

m40318.jpg

モハ403-1~19(モハ403-18)

403系の中間電動車で、モハ402形式とユニット組みます。主制御器、主抵抗器といった直流機器を搭載しています。モハ401形式の出力向上車で、外観はほぼ同じとなっています。

m40320.jpg

モハ403-20(モハ403-20)

モハ402-20とユニットを組む最終増備車で、屋根上通風器が押込み型に変更されています。423系ではモハ423-29、30番が同様に変更されています。

m42213.jpg

モハ422-1~28(モハ422-13)

423系のパンタグラフ付き中間電動車で、モハ420形式の出力向上を図った形式になります。29、30番は屋根上の通風器(ベンチレーター)がグローブ型から押込み型に変更されています。

m42319.jpg

モハ423-1~28(モハ423-19)

423系の中間電動車で、モハ422形式とユニットを組みます。交流商用周波数が異なるのみで、403系のモハ403形式と同一構造です。
写真の車輛は国鉄時代に開発したAU1X形冷房装置を搭載したものです。主変圧器2次巻線で降圧された交流1500Vを各車に搭載されている補助変圧器でさらに220Vまで降圧し、これを供給電源としたものです。欠点として交流電源によって供給されるため直流区間では冷房装置が使用できない問題があります。JR九州に移行して床置き形のAU2X形冷房装置の開発につながります。