タンク車の紹介はまだまだ続きますよ。

buck tank1.jpg      go to tank3.jpg


※上の写真をクリックしますと、それぞれのタンク車のお部屋へ進みます。

タンク車の紹介の前に。
たくさん紹介するので、下記のように少し省略して説明をしますので、予めご了承下さい。
①全長 ②全幅 ③全高 ④走り装置又は台車形式 ⑤特殊標記符号 ⑥化成品分類番号
※同一形式で2つ以上ある場合は、2つ目以降は省略しています。

タキ3700形式30t積み酢酸及び無水酢酸専用タンク車
① 11900~14900mm ② 2400mm ③ 3877mm ④TR41A、TR41C形式 ⑤ア(純アルミタンク体のみ) ⑥侵燃83(無水酢酸)、侵燃38(酢酸)※意味は同じです。
昭和30年に登場したタンク車で、酢酸及び無水酢酸専用タンク車では初めてのボギー車です。酢酸、無水酢酸、酢酸及び無水酢酸の3種類がありましたが、晩年は酢酸ビニルを専用種別としている車輛もありました。平成22年に形式消滅しています。
積荷の説明
酢酸(さくさん:acetic acid)…化学式C、融点16.7℃、沸点118℃の刺激臭のある無色の可燃性液体。刺激性、腐食性が強いのが特徴。身近なものでは食酢に含まれており、強い酸味と刺激臭があります。この他、発酵した乳やチーズにも含まれています。試薬や工業製品として重要なものの1つで、アセチルセルロース(合成樹脂)やポリ塩化ビニルなどの製造、食用などの原材料に用いられています。
無水酢酸(むすいさくさん:acetic anhydride)…化学式C、融点-73℃、沸点140℃の刺激臭のある無色可燃性液体で、腐食性が強く、蒸気は催涙性があるのが特徴です。エタノールによく溶け、徐々に反応し酢酸エチルになります。この他エーテル、ベンゼンなどにも溶けます。水に溶かすと酢酸になります。平成28年からは毒劇令(毒物及び劇物指定令)に劇物として指定されています。酢酸セルロースの原料、医薬品、香料などの合成原料に用いられています。

taki3701.jpg

キセなし純アルミタンク体(タキ3701)

キセを持たない純アルミタンク体をもつ車輛で、タンク内部には補強のため波除け板が設置され、受台は純アルミタンク体車輛ではお馴染みの大型のものが8つ設置されています。自肌色(銀色)の車輛もありました。写真の車輛はTR41A形式からTR225形式に台車を変更しています。

taki3708.jpg

キセ付き純アルミタンク体(タキ3708)

キセなし純アルミタンク体車に保温用キセ、加熱管を設置したものです。写真のように受台が8つの車輛と4つの車輛がありました。

taki3733.jpg

キセ付き純アルミタンク体(タキ3733)

専用種別の酢酸、無水酢酸は腐食性物質であるため、上入れ上出し方式となっており、液出し管と空気管(空気を送り込んで積荷を押し出す。)が車体側面に導かれているタイプもありました。製造会社の違いで、細部も異なっています。

taki3722.jpg

キセ付きステンレス製タンク体(タキ3722)

タンク体の材質を酢酸輸送に適したモリブデン含有のステンレス製としたもので、このタイプの車輛はキセ付き、加熱管付きとなっています。この車輛はドーム部に液出し管や空気管が全て収められているスッキリとしたデザインです。

taki3723.jpg

キセ付きステンレス製タンク体(タキ3723)

タキ3722の次の車輛ですが、がらりと異なっています。タンク体キセや受台、ドーム部、加熱管など違いが見られます。

taki3732.jpg

キセ付きステンレス製タンク体(タキ3732)

たまねぎタイプのドーム部、加熱管が特徴的な車輛です。

taki3757.jpg

キセ付きステンレス製タンク体(タキ3757)

中期タイプの車輛です。帯金方式ですが、近代的なタンク車のスタイルになっています。富士重工製の車輛です。

taki3761.jpg

キセ付きステンレス製タンク体(タキ3761)

こちらは汽車会社製の車輛で、後期車になります。タンク体は独特のちょっとレトロ感あるスタイルですが、手ブレーキから、側ブレーキへと変更されています。(60番以降)台車はTR225形式に履き替えていますね。

taki3769.jpg

ステンレス製タンク体(タキ3769)

タンク受台が帯金方式から押え金方式に変更された車輛の例です。

taki3900-3937.jpg

タキ3900形式30t積み石炭酸専用タンク車(タキ3937)

① 12000mm ② 2600mm ③ 3874mm ④TR41DS-13形式 ⑤コ ⑥毒61
タサ3400形式20t積み車の拡大形式で、初めての30t積み車として、昭和29年に登場し昭和44年までに65両が製作されました。1両(タキ3962)のみタキ8550形式からの改造車となっています。
保温キセの付いたステンレス製タンク体を持っており、積荷の輸送は固体で輸送するため、加熱装置などは特殊構造となっています。タンク体の両端にある液入管から積み込み、タンク体と台枠の間にある吐出管から積み下ろします。このため、タンク体が浮き上がったような構造で、腰高となっています。平成14年に形式消滅しています。
積荷の説明
フェノール(phenol)…化学式COH、融点40.5℃、沸点181℃の水彩絵具のような特異臭をもつ、常温では白色の結晶体。毒性、腐食性があり、皮膚に触れると薬傷を起こす。毒劇法で劇物に指定されています。「石炭酸」は和名。石油化学製品の一つで、有機合成化学工業では重要な原料の一つ。フェノール、エポキシなど各種プラスチックの原料、医薬品、農薬などに用いられています。

taki4000-24010.jpg

タキ4000形式35t積み濃硫酸及び発煙硫酸専用タンク車(タキ24010)

① 10000~10400mm ② 2590mm、2400mm ③ 3525mm、3528mm ④TR41C形式 ⑤コ ⑥侵(禁水)84
タキ300形式の拡大形式で、濃硫酸、発煙硫酸専用車では初の35t積みであると同時に、国内タンク車の歴史においても初めての35t積み車として知られています。昭和12年にタキ4000~11までの12両が登場し、20年以上の時を経て昭和35年からタキ4050~として増備が行われ、新製数では339両が製作、2両のみ改造車がありました。タキ300形式を延長したスタイルで、多数のロットがありましたが、形態の変化はあまりありませんでした。平成22年に形式消滅しています。
積荷の説明
本ページ、タキ5750形式をご覧下さい。

taki4000-43062.jpg

タキ4000形式35t積み濃硫酸及び発煙硫酸専用タンク車(コタキ34062)

両数のわりに形態的には変化の少ない形式ですが、タンク受台に違いがある車輛がありました。

taki4000-34065.jpg

タキ4000形式35t積み濃硫酸及び発煙硫酸専用タンク車(コタキ34065)

本形式の多くは台車はTR41C形式ですが、タキ34064及び写真の34065の2両はTR41C形式からTR41D形式に改造されていました。

タキ4200形式35t積み苛性ソーダ液専用タンク車
① 10800mm ② 2400mm ③ 3852mm ④TR41C形式、TR41D形式 ⑤コ ⑥侵81
 タキ2600形式、タキ2800形式の拡大形式(後継車種)として昭和31年から48年にかけて242両が製作されました。改造車は9両あり、タキ4100形式(初代)苛性ソーダ液専用タンク車から1両、タキ6900形式から8両あります。
 タンク体は普通鋼で、キセ付きゴムライニング加工が施されています。荷役方式は上入れ上出し方式です。ポピュラーな化成品タンク車の一つでしたが、平成21年に形式消滅しています。
積荷の説明
貨車のお部屋 その1 タキ2600形式をご覧下さい。

taki4201.jpg

ドーム付き新製車その1(タキ4201)

昭和31年製の初期車輛です。トップナンバーであるタキ4200はタキ5100形式へ改造されてしまい、本車輛が最も古い車輛となっていました。

taki4229.jpg

ドーム付き新製車その2(タキ4229)

多くの車輛がTR41C形式からTR41D形式へ改造されましたが、本車輛のみ車体長が長いためか、TR41C形式のまま残されていました。ドーム部も特徴がある1両で、専用種別も苛性カリ液になっていました。

taki4244.jpg

ドーム付き新製車その3(タキ4244)

かまぼこ型キセ付きの車輛の例です。ドーム部は角のあるタイプになっています。

taki14252.jpg

ドーム付き新製車その4(タキ14252)

側ブレーキを採用した車輛の例です。中期タイプ以降の車輛で見ることが出来ました。

taki14206.jpg

ドーム付き新製車その5(タキ14206)

丸ドーム付きのキセ付きでごく普通のタキ4200形式ですが、写真の車輛とタキ14205の2両は近畿車輛製なのです。旅客車輛ではお馴染みの会社ですが、苛性ソーダ液専用タンク車ではこの2両だけ製作しており、レアな車輛としてファンの間では知られていました。

taki24248.jpg

改造車(タキ24248)

タキ14298、99、24234、35、45~48の8両はタキ6900形式アクリルニトリル専用車からの改造車で、昭和43年に登場しました。種車の台枠以下を流用しており、台枠は2600mm短縮したため、切継いで使用しています。タンク体は新製しており、受台は押え金方式としています。

taki5000-5012.jpg

タキ5000形式30t積み塩酸専用タンク車(タキ5012)

① 10450mm ② 2438mm ③ 3878mm ④TR41C形式、TR41DS-12形式 ⑤コ ⑥侵82
昭和30年から46年にかけて59両が新製され、3両がタサ1700形式より改造、編入されています。塩酸専用車では初めてのボギー車で、タム5000形式の拡大形式です。塩酸の他に、アミノ酸、塩酸及びアミノ酸の専用種別がありますが、晩年は塩酸専用車のみでした。手ブレーキ車、側ブレーキ車、側梁省略車輛などバラエティーのある形式でしたが、平成21年に形式消滅しています。
積荷の説明
タンク車のお部屋その1 タム5000形式をご覧下さい。

タキ5050形式35t積み塩酸専用タンク車
① 10900~11900mm ② 2420~2606mm ③ 3860~3874mm ④TR41C形式など ⑤コ ⑥侵82
タキ5000形式を拡大した初めての35t積み車で、昭和40年から56年にかけて105両が製作されました。塩酸専用車ですが、他にもアミノ酸を専用種別としていた車輛もありました。タンク内部は腐食を防ぐために、塩酸専用車では一般的なゴムライニング加工が施されています。多数のロットがあり、製造時の違いの他に後天的な改造による外観の変化などバラエティーに富んだ形式の一つでもありましたが、平成21年に形式消滅しています。
積荷の説明
タンク車のお部屋その1 タム5000形式をご覧下さい。

taki5055.jpg

タキ5055

この車輛は10系タンク車をベースに設計したもので、側梁省略、タンク受は帯金方式のタイプです。台車はTR41C形式を履いていました。

taki5089.jpg

タキ5089

この車輛も側梁省略のタイプですが、10系タンク車をベースにはしていません。留置用ブレーキは側ブレーキに変更しており、タンク受も押え金方式となっています。

taki55074.jpg

タキ55074

この車輛は昭和49年の川崎製。側梁省略で手ブレーキのタイプです。

taki55081.jpg

タキ55081

この車輛は昭和50年の川崎製で、平型の台枠に手ブレーキのタイプです。台車はTR41E形式です。

taki55092.jpg

タキ55092

台車がTR225形式と近代的なスタイルとなった車輛の例です。また、ドーム部は独特の形状で、当時の貨車ファンからは「マジンガーZ」仕様とも呼ばれていました。

taki5068.jpg

改造車(タキ5068)

タキ5068、74~76の4両は改造車で、タキ5600形式30t積みシクロヘキサノン専用車及びタキ5650形式28t積みシクロヘキシルアミン専用車が種車となっています。台枠以下を流用しており、タンク体は新製しているようです。台車はTR41C形式となっていました。

taki5100-5119.jpg

タキ5100形式30t積二硫化炭素専用タンク車(タキ5119)

① 10600mm ② 2527mm ③ 3887mm ④TR41DS-12形式など ⑤コ ⑥燃毒36
二硫化炭素専用車では初の30t積みで、昭和31年から54年までに新製車33両、改造車1両が製作されました。化成品輸送用タンク車の標準的なタンク車で保冷キセを持つドーム付きタンク車となっています。11番までは帯金方式、12番以降は押え金方式のタンク受台となっています。平成19年に形式消滅しています。
積荷の説明
タンク車のお部屋その1 タム200形式をご覧下さい。

taki5100-5133.jpg

タキ5100形式30t積二硫化炭素専用タンク車(タキ5133)

タキ5130以降は保安対策車と呼ばれる車輛となっており、台車はTR225形式、TR213C形式を履いています。

taki5200-5282.jpg

タキ5200形式30t積みメタノール専用タンク車(タキ5282)

① 13700mm ② 2500mm ③ 3868mm ④TR41C形式 ⑤なし ⑥燃31
メタノール専用タンク車として初の30t積み車として昭和31年から42年にかけて104両が新製、5両が改造編入車として製作されました。当時のポピュラーなタンク車であるタキ3000形式によく似たスタイルです。塗装は貨車の標準色ともいえる黒色ですが、一時期のみ積荷から発生する水分を減らすため銀色や白色としていました。
平成14年に形式消滅しています。
積荷の説明
タンク車のお部屋その1 タム3700形式をご覧下さい。

タキ5450形式25t積み液化塩素専用タンク車
① 9460mm、10200mm ② 2420mm、2400mm ③3705mm、3700mm ④TR41D形式他 ⑤コ ⑥毒(G)26
 昭和32年、タム2300形式15t積み車の拡大形式としてタキ5400形式が登場しました。このタキ5400形式のタンク体の材質はボイラー鋼板を用いていました。昭和39年に増備する際にタンク体材質を高張力鋼に変更しました。このため形式を新しく起こす事になり、登場したのがタキ5450形式です。平成6年までに691両が製作されました。タキ5400形式からの改造車(タンク体を高張力鋼に交換)が1両あったほか、昭和44年にタム9300形式液化塩化ビニル専用車に改造し、半年ほどで原番号に復帰した(とある工場の事故により、塩化ビニル輸送の対応のため)車輛が5両ありました。
 特徴はタンク体の「黄色」です。高圧ガス取締法(平成8年より高圧ガス保安法に改題)の規定により黄色の塗装が指定されています。因みに先程触れたタム9300形式の液化塩化ビニルも規定により灰色が指定されています。(改造は塗装変更と一部設備の撤去のみ)また、保安上、中和剤として石灰箱が設置(航送用は液状苛性ソーダ箱も追加設置)されています。
黄色の目立つタンク車でしたが、平成中頃より老朽化に伴うコンテナ輸送に変更などで徐々に数を減らし、現在は形式消滅しています。
積荷の説明
塩素(えんそ:chlorine)…原子番号17の元素。元素記号はCl。一般に「塩素」という場合、塩素の単体となる塩素分子(Cl)を示す。常温では刺激臭を伴う黄緑色の気体(塩素ガス)で、腐食性と非常に有毒な性質を持つ。気体では扱うのが難しく、塩素ガスを冷却、加圧し、「液化塩素」にします。液化塩素は濃黄色油状の液体で塩素ガスと性質は同じ。工業では塩の電気分解によって得られ、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)と共に生産されています。塩酸などの有機塩素化合物の原料、ポリ塩化ビニルなど合成樹脂の原料、紙やパルプの漂白、上下水道の殺菌など様々に使用されています。

taki85475.jpg

側ブレーキ車(タキ85475)

多数のロットがありますが、昭和43年頃より、主要部分の寸法を統一する「標準化設計」が行われいるため、形態的に大きな変化は少なく、構造面では側ブレーキ車と手ブレーキ車で大別されています。側ブレーキ車は初期~中期タイプに採用されていました。

taki105468.jpg

手ブレーキ車(タキ105468)

タキ95478以降の車輛はタンク体の材質が低温下においてのじん性に対応した低温用鋼に変更されています。外観、構造には変化はありません。台車は高圧ガスタンク車向けに設計されたTR211B-1形式を履いています。

taki105494.jpg

手ブレーキ車(タキ105494)

標準設計のため大きな違いは少ない形式ですが、一部タンク体のキセのつくりが変わっていた車輛もありました。この他、タキ105472以降の車輛の台車は廃車となった高圧ガスタンク車からのリサイクルとなっており、TR211B形式、TR216B形式などを履いています。

taki135486.jpg

手ブレーキ車(タキ135486)

タンク体のキセに違いがある車輛の例その2です。因みに(航送用)と書かれている車輛とそうでない車輛があり、航送用は鉄道連絡船を利用する事があり、その対策(石灰箱+液状苛性ソーダ)を施した車輛を意味しています。

taki165480.jpg

手ブレーキ車(タキ165480)

平成生まれの最終増備車になると、台車や連結器が灰色に変更されています。

taki5700-5700.jpg

タキ5700形式35t積み塩素酸石灰液専用タンク車(タキ5700)

① 10900mm ② 2380mm ③ 3655mm ④TR41C形式 ⑤コ ⑥95
昭和32年から46年にかけて14両が製作された貨車で、唯一の塩素酸石灰液専用車でした。外観はタキ4200形式に似たスタイルで、キセ付きの上入れ上出し方式、タンク内部はゴムライニング加工が施されています。平成8年に形式消滅しています。
積荷の説明
塩素酸石灰液(えんそさんせっかいえき)・・・消石灰(水酸化カルシウム)に塩素を吸着させた粉末で、「カルキ」、「塩化石灰」とも言います。水によく溶け、酸化力が強い特徴があります。漂白や消毒に使用されています。

タキ5750形式40t積み濃硫酸及び発煙硫酸専用タンク車
① 10800mm ② 2420mm ③ 3597mm ④TR41C形式、TR41E-13形式 ⑤コ ⑥侵(禁水)84
重化学工業の各分野で需要のある濃硫酸の需要増に対応するため、タキ4000形式を拡大した形式です。単に大きくする事は可能ですが、軸重増大により運用制限がかかってしまいます。荷重増、輸送効率向上の両面を立てるため、側梁省略など可能な限りの軽量化を図った極限設計車として製作された有名な形式で、非石油系の化成品タンク車では初となる40t積みを達成しました。昭和41年に登場し、昭和50年まで500両が製作されました。
自重を徹底的に軽減し、荷重増を成し遂げ、広範な運用を可能としましたが、昭和49年にタンク車の構造が見直され、側梁省略車(フレームレス構造車)の新規製作が禁止となってしまい、本形式は昭和50年で製造を打ち切りました。後継車種は保安対策を図ったタキ23900形式39t積み車となります。
各地で濃硫酸輸送の主力として活躍してきましたが、平成22年に形式消滅しています。
積荷の説明
硫酸(りゅうさん:sulfuric acid)…化学式HSO、融点10℃、沸点290℃の無色でやや粘性のある酸性の液体で、三酸化硫黄と水の反応で得られる。古くは「緑ばん油」とも言われ、金属精錬の副産物として製造されています。硫酸は濃度と温度によって大きく性質が異なり、濃度が低い(鉄道輸送では70%以下)硫酸を「希硫酸(きりゅうさん)」と言い、強酸性の液体ですが、酸化力や脱水作用はありません。一方、濃度が濃い(鉄道輸送では約70%以上)硫酸を「濃硫酸(のうりゅうさん)」と言い、無職油状の液体で酸化性、腐食性が強い特徴があります。金属精錬、工業用品、医薬品、肥料、パルプなど広汎に使用されています。
発煙硫酸(はつえんりゅうさん:Oleum)…濃硫酸に無水硫酸(三酸化硫黄)を吸収させたもので、湿った空気中では白煙と刺激臭を発する粘稠性のある液体。毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。有機合成においてスルホン化試薬で、染料や医薬品の原料として使用されています。

taki55752.jpg

ドームレス車その1(タキ55752)

タキ55761~55763及び汽車会社以外のタイプで、ドームレスタンク体の車輛です。写真は側ブレーキが片側の初期~中期の車輛。タンク体は耐候性高張力鋼を採用し、軽量化を図っています。

taki85763.jpg

ドームレス車その2(タキ85763)

タンク受台が垂直ではなく、斜めのタイプ。中期以降は側ブレーキが両側に設置されています。

taki115769.jpg

ドームレス車その3(タキ115769)

後期車は留置用ブレーキが手ブレーキに変更されているほか、台車はTR41E-13形式を履いています。

taki25766.jpg

ドーム付き車(タキ25766)

汽車会社製の車輛(一部、富士重工業製にも採用。)で、同社のオリジナル10系貨車の構造を採用しており、中梁にハット断面プレス品を使用し、側梁を省略しています。外観では側ブレーキに特徴があり、ブレーキテコの支点を台枠側梁直下に設置しており、ブレーキ引き棒が台枠上部にあるという独特のものでした。タンク受方式は帯金方式がほとんどで、後期車で押え金方式となっています。

taki55762.jpg

大容量タンク体(タキ55762)

昭和43年に登場したタキ55761~63の3両で、鉛室法で生産された低比重の硫酸を輸送するために製作されたもので、比重の関係からタンク体の直径が太くなり、変形車として有名になりました。タンク体の長さが短い事は受台の位置からもわかります。

taki5900-5900.jpg

タキ5900形式35t積みクロルスルホン酸専用タンク車(タキ5900)

① 10700mm ② 2400mm ③ 3553mm ④TR41C形式 ⑤コ ⑥侵(禁水)84
タム1850形式15t積み車の拡大形式で、昭和38年から46年にかけて9両が製作されました。ドーム付きのタンク車で、タンク体は腐食防止のためステンレス製となっており、塗装色は自肌色の銀色となっています。平成14年に形式消滅しています。
積荷の説明
塩化スルホン酸(えんかするほんさん:Chlorosulfuric acid)…化学式HSOCl又はSOCl(OH)、融点-80℃、沸点151℃の無色、淡黄色の油状液体で、強い刺激臭をもつ。クロルスルホン酸とも言います。吸湿性が強く、空気中で発煙をする。皮膚に触れると激しい薬傷を伴い、煙を吸入すると肺が侵される。毒劇法の劇物に指定されています。無水硫酸と塩化水素から合成され、有機合成におけるスルホン化剤として使用されるほか、合成洗剤や医薬品の原料として使用されています。

taki6050-6054.jpg

タキ6050形式35t積み液体硫酸アルミニウム専用タンク車(タキ6054)

① 11200mm ② 2520mm ③ 3743mm ④TR41C形式など ⑤コ ⑥98
初めての液体硫酸アルミニウム専用車として昭和39年から昭和55年までに8両が製作されました。タンク体は普通鋼ですが、積荷が腐食性のある物質のため内部はゴムライニング加工が施されていました。タキ6050~54まではドーム付きタンク体、タキ6055~57まではドームレスタンク体となっており、6053までは受台は帯金方式、54以降は押え金方式となっています。平成10年に形式消滅しています。
積荷の説明
硫酸アルミニウム(りゅうさんあるみにうむ:Aluminum sulfate)…化学式Al2(SO4)3・16H2Oの無機化合物で、アルミニウムの硫酸塩です。別名、硫酸バン土やアラムなどとも言われています。ボーキサイトや粘土などを硫酸で処理し、不純物を除いてつくられます。水によく溶ける性質を持っています。鉄道輸送ではアルミナ分8%以上の水溶液で、弱酸性の液体です。水処理薬品(凝集剤)、食品添加物、製紙用薬品、医薬品、化学泡消火器、コンクリートの硬化促進剤など広く用いられています。

taki6100-6106.jpg

タキ6100形式30t積み四塩化炭素専用タンク車(タキ6106)

① 9100mm ② 2350mm ③ 3617mm ④TR41C形式、TR41D形式 ⑤コ ⑥毒61
四塩化炭素専用車では初のボギー車となる形式で、タム5600形式の拡大形式になります。昭和33年から38年にかけてタキ6100~7(6101は欠番)の7両が製作されました。トップナンバーとなるタキ6100はタキ1700形式からの改造車で、6102~7は新製車です。タンク体は積荷の純度を保つため、アルミクラッド(※クラッド…クラッド鋼や圧着鋼ともいうもので、二種類の性質の異なる金属を貼り合わせた鋼材の事。)又はステンレス製で、ドーム付きとなっています。タンク体は黒色となっています。平成19年に形式消滅しています。
積荷の説明
四塩化炭素(しえんかたんそ:carbon tetrachloride)…化学式CCl、融点-22.9℃、沸点76.8℃の香気ある無色透明の不燃性液体で有毒。天然ガス化学工業、石油化学工業の製品の一つで、有機塩素系溶剤の一つでもあります。溶剤や冷却材など広く利用されていましたが、毒性(麻酔性があり、高濃度の蒸気、溶液に晒されると中枢神経に悪影響を与える。慢性的な暴露では肝臓や腎臓に悪影響を及ぼす。)により、試薬としてのみ使用されています。

taki6150-6152.jpg

タキ6150形式30t積みパラフィン専用タンク車(タキ6152)

① 12020mm ② 2775mm ③ 3874mm ④TR41C形式 ⑤なし ⑥なし
パラフィン専用車では初の形式で、昭和42年に4両が製作されました。タキ11000形式を基礎とする11系タンク車の1つで、保温キセ付きの化成品輸送用タンク車です。中央部のタンク径が太い異径胴タンク体が特徴でした。平成11年に形式消滅しています。
積荷の説明
パラフィン(paraffin)…石油に含まれており、分留によって取り出されます。常温では半透明、白色の軟らかい固体で、科学的には安定した物質です。ケロシンと混同を避けるため「パラフィンワックス」とも呼ばれています。一方、流動パラフィンというものもあり、常温では無色の液体で非揮発性。最も身近な物としてベビーオイルがあります。ホワイト油、ミネラルオイルなど多数の呼び方があります。
ろうそく、クレヨン、着火剤などの原料、パラフィン紙(油紙)、可塑剤(ガムベースなど)、化粧品など多岐にわたって利用されています。

taki6250-6256.jpg

タキ6250形式35t積み無水硫酸専用タンク車(タキ6256)

① 10600mm ② 2500mm ③ 3729mm ④TR41DS-13形式 ⑤コ ⑥侵(禁水)84
タキ1200形式(二代)30t積み車の拡大形式として昭和42年から48年にかけて11両が製作されました。低温で固化する積荷のため、温度管理としてキセ付きとなり、荷役装置では漏洩及び防水対策が万全に施されています。晩年は濃硫酸及び発煙硫酸専用に改造され、不要な機器類の撤去が行われたため外観は大きく変わっています。(写真)平成19年に形式消滅しています。
積荷の説明
三酸化硫黄(さんさんかいおう:Sulfur trioxide)…化学式SO、融点16.9℃、沸点45℃の硫黄の酸化物です。無水硫酸とも呼ばれ、亜鉛精錬の副産物として生成されています。鉄道輸送では安定化剤を添加し、液状化したもので、腐食性が強い液体。有機合成におけるスルホン化剤として、合成洗剤などの原料として使用されています。

taki6400-16403.jpg

タキ6400形式35t積みアルミナ専用タンク車(タキ16403)

① 12200mm ② 2686mm ③ 3478mm ④TR41C形式 ⑤なし ⑥なし
昭和32年から44年にかけて58両が新製、タキ6419~35がタキ7400形式からの編入(タキ7400(タキ7408~24)として製作したが、附番に誤りがあったため。)となっています。多数のロットがあり、製造時期により箱型、角型、桶型(写真)の3タイプがありました。荷役方式はタンク体上部にある、とても大きな長円形の取卸し口2個の下にある、積込口と取卸し口によって行われ、積荷は真空吸引方式となっています。平成7年に形式消滅しています。
積荷の説明
ホッパ車のお部屋 ホキ3000形式をご覧下さい。

taki6600-6626.jpg

タキ6600形式30t積みエチレングリコール専用タンク車(タキ6626)

① 11600mm ② 2540mm ③ 3855mm ④TR41C形式 ⑤コ ⑥93
エチレングリコール専用車として初めての形式で、昭和33年から45年にかけて39両が製作されました。積荷の純度を保つためステンレス製タンク体となっています。タキ6600~31まではドーム付きタンク体で、受台は帯金方式となっています。
積荷の説明
エチレングリコール(ethylene glycol)…化学式C、融点-12.9℃、沸点197.3℃の粘稠のある無色の液体。吸湿性が強い特徴があります。エタン-1,2-ジオールや1,2-エタンジオールとも言われています。石油化学製品の一つで、ポリエチレンテレフタレート(PET)の主原料として知られているほか、各種ポリエステルの原料、不凍液、溶剤、界面活性剤の原料などに使用されています。

taki6600-6636.jpg

ドームレスタンク体(タキ6636)

タキ6632~36の5両はドームレスタンク体として製作されています。タンク体は普通鋼で、内面をステンレスでライニングしています。受台は押え金方式となっています。

taki6900-6900.jpg

タキ6900形式30t積みアクリルニトリル専用タンク車(タキ6900)

① 13200mm ② 2500mm ③ 3882mm ④TR41C形式 ⑤なし ⑥燃毒36
昭和33年から昭和40年にかけて44両が新製、タキ5200形式から1両が改造編入されています。タサ4600形式20t積み車の拡大形式になります。新製後、輸送需要が減少し15両が他形式に改造されています。
タキ3000形式といった標準的なタンク車をベースに有毒な液体を輸送するため、漏洩事故を防止する装備が施されています。ドーム部の前後には液出し弁と空気弁が設置され、破損防止のためプロテクターで保護されています。円柱タイプは三菱重工製、箱型は日車製となっていました。平成7年に形式消滅しています。
積荷の説明
アクリロニトリル(acrylonitrile)…化学式CN、融点-84℃、沸点77℃の無色透明で、特有の刺激臭を持つ液体。引火性及び毒性が非常に強く、毒劇法により劇物に指定されています。光や酸素、アルカリの作用により重合を起こすため、重合禁止剤(炭酸アンモニウムなど)が使用されます。化学工業において重要な有機化合物で、アクリルニトリル、アクリル酸ニトリル、シアン化ビニールなどの呼び名もあります。アクリル繊維、合成樹脂(ABS樹脂やAS樹脂)の原料に用いられるほか、アクリルアミド、アジポニトリルの原料としても使用されています。

buck tank1.jpg     go to tank3.jpg


※上の写真をクリックしますと、左はタンク車のお部屋その1、右はその3へ進みます。